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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

クロマティック・ブラック(スタンダード)

岩SHOW

 『トーメント』の衝撃は忘れない。マジック史上初の5色のバランスが均等ではないセットだ。陰謀団の隆盛を描いており、セット内では黒のカードが最も多い。すなわち強力なカードも多数収録され、黒いカードが好きな人間にはたまらなかったものである。どうでもいい話だが、高校の時にアルバイトで稼いだお金で初めてボックスを購入した思い出のセットでもある。

 このセットに収録されたカードの中でも存在感を放っていたのは《陰謀団の貴重品室》。沼の数だけ黒マナを生み出す強烈な加速能力を持った土地であり、これが使えるのが黒単の強みであった。これから得たマナで《ナントゥーコの影》をでっかくしてワンパン勝ち、みたいな動きに憧れたプレイヤーも多かったことだろう。

 《陰謀団の貴重品室》は今この時代のスタンダードに持ってくるには少々危険なデザインだ。しかしながらこのカードのファンが多いのも事実。そこで《陰謀団の要塞》が作られた。

 マイルドに調整しており、貴重品室ほどの爆発力はないが大量にマナを得られる可能性のある土地として、ロマンにはあふれている。大量にマナを得られる、現実的な手段がスタンダード環境にあるのだ。あとはそのマナを何に使うか、だ。

 現環境には黒単色で大量にマナを払うことでゲームに多大な影響を与えるカードが……少ない。《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》は10マナあればイカしたフィニッシャーにはなれるが、伝説であることや機能しにくい状況・相手もいることを考えると他の選択肢も欲しい。大量にマナを支払って1枚で勝てるカードと言えば《苦悩火》だが、それでは基本の《》しか扱えない《陰謀団の要塞》デッキのコンセプトから外れてしまう……どうすれば?

 この問題を解決する方法は、案外簡単なものだった。黒単色でマナを大量に生み出しつつ、他の色の呪文を唱える……矛盾した存在、黒単5色デッキ、「クロマティック・ブラック」を紹介しよう!

Nein_Soy_Milk - 「クロマティック・ブラック」
Magic Online Competitive Standard Constructed League 5勝0敗 / スタンダード (2018年12月16日)[MO] [ARENA]
21 《
4 《陰謀団の要塞
-土地(25)-

1 《リッチの騎士、ジョス・ヴェス
2 《パルン、ニヴ=ミゼット
1 《悪魔王ベルゼンロック
-クリーチャー(4)-
4 《宝物の地図
2 《渇望の時
2 《魔学コンパス
4 《彩色の灯籠
2 《黄金の死
4 《首謀者の収得
3 《ヴラスカの侮辱
2 《煤の儀式
3 《最古再誕
1 《ミラーリ予想
4 《ウルザの後継、カーン
-呪文(31)-
1 《原初の災厄、ザカマ
4 《強迫
2 《アルゲールの断血
1 《喪心
1 《黄金の死
1 《ヴラスカの侮辱
1 《浄化の輝き
1 《溢れ出る洞察
1 《絶滅の星
1 《苦悩火
-サイドボード(14)-
 

 《彩色の灯籠》により、すべての色マナを得る!

 これで黒単色=基本の《》ばかりで構成されたマナベースで、《陰謀団の要塞》から大量のマナを得て、それを別の色の重いカードに使うことができるッ!

 そこまでやる必要があるのかと思うかもしれないが、こういうデッキはそこまでやれてしまうという事実が重要。パワフルなマジックを楽しみたい、それに応えられるデッキがある、ならば使う! 最高じゃないか。

 このデッキの重要なパーツは《彩色の灯籠》なのは言うまでもないが、実はこのカードは最後の最後に手元にやってくれば良い。それよりもゲームプランを組み立てるのに貢献するのは《宝物の地図》と《ウルザの後継、カーン》だ。

 地図の占術でドローを調整しながら(往々にして土地を求めて起動する)、《宝物の入り江》に変身させる。この時に得た宝物でアーティファクトを水増しし、カーンの生成する構築物・トークンのサイズを確保。黒の強みである除去呪文で相手のクリーチャーを捌きながら、構築物で戦線を保って徐々に圧をかけていく……と、まるで「ビッグ・レッド」そっくりの動きをする。地図とカーンを主軸としたこれらのデッキは、色は全く違えど兄弟と言えるね。

 地図・カーン・除去でゆったりコントロールしていけば、いつしか灯籠と要塞で色も量も、好きなだけマナを得られるようになっているはず。ここらで5色になっていることの真価を発揮しよう。《首謀者の収得》の出番だ。

 このカードは、灯籠なしでは唱えられない=ゲーム序盤で引いても役に立つことのないカードをサイドボードから引っ張ってこられる、デッキの肝とも言える1枚だ。

 緊急時には《絶滅の星》《浄化の輝き》など盤面を掃除する呪文も持ってこられる点が嬉しい。相手のライフが少なければ《苦悩火》、自分の手札を補充したい場合には《溢れ出る洞察》と、ヘビー級の呪文で勝負を決めに行こう。

 まあ、一番使いたいのは……《原初の災厄、ザカマ》、これなんだよなぁ。

 9マナという普通のデッキでは扱うのに骨が折れるコストも、このデッキならばかわいいもの。要塞から得た黒マナは不特定マナの支払いに充て、灯籠のパワーで白赤緑の3色マナを得て唱えてやろう。手札から真面目に唱えたことで、ザカマは君の土地を全てアンタップしてくれる。また要塞から黒マナ、他の土地からそれ以外の色マナを得て……ザカマの能力を思う存分連打しよう! 特に白の3点回復能力が素晴らしい。僕はこの能力で一桁だったライフを一気に20点台まで引き戻し、最終的には75点まで回復して相手の闘争本能をへし折って勝利したことがある。あれはこの上ない、極上のマジック体験だった……

 ザカマを引いたけれども3色の良いデッキが組めていなかった、という方には朗報じゃないかな。まさか黒単こそがザカマを最も輝かせるデッキだったなんて……アーティファクト or エンチャント破壊能力、クリーチャーに3点ダメージも兼ね備えており隙がなく、巷で最強フィニッシャーと称され大きな顔をしている《殺戮の暴君》を軽く踏み潰す9/9到達・警戒・トランプルのイクサラン大陸最強の生物! 君もその破壊力を、黒単で味わってみないか?

 ザカマに加えて、メインからジョスや《パルン、ニヴ=ミゼット》といったゲームを終わらせるカードを多数備えている、グレートにヘビーな「クロマティック・ブラック」。個人的にはニヴの枠を《殺戮の暴君》と入れ替えたものの方が回しやすかったので、そっちもオススメしたいな。

 『ラヴニカの献身』では《有事の力》という重くてすごい呪文が登場するが、これもこのデッキに入ってくるだろうか……とにかくカードプールが拡がれば拡がるほど楽しみが増えていく、これは5色デッキならではの強みだな!

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