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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット・フェニックス in モダン

岩SHOW

 「キャントリップ」というマジック用語がある。ルールで定められた言葉ではないので覚えなくても良いのだが、古くからやっているプレイヤーはこの言葉を用いることがあるため、知っておくと円滑にコミュニケーションが取れるかもしれない。

 キャントリップとは魔女のまじない、すなわち、ちっぽけな魔法のような意味。マジックでは「取るに足らないような効果だが、手札を消費せずに唱えられる呪文」を生み出そうとしてキャントリップがデザインされた。要するに、1枚ドロー付きのカードのことであり、インスタントとソーサリーに対して用いられる。

 良い例は《活力回復》。

 ライフを3点回復するだけなんて、とてもじゃないがカード1枚使ってやるに見合わない微々たる効果だが、それに1枚ドローがついてくれば手札損失はゼロ。こうなるだけで随分とよく見えるし、実際にこのカードはさまざまなデッキで採用されている使い勝手の良いカードだ。

 マジックでは定期的にこのキャントリップ・カードが登場する。長い歴史の中では名作も多数ある。プレイヤーによっては1マナドロー系の呪文はすべて広い意味でキャントリップと総称することもある。

 モダンやレガシーではこれらのカードで固めた、毎ターン手札をグルグルと入れ替えていく回転力の高いデッキが人気である。ドローするという行為はカードゲーマーなら誰しもが好きなものだからね。そうやってたくさん呪文を唱えることで、それ自体はゲームに影響を及ぼさなくとも、何らかのキーカードでボーナスを得る……そういうデッキはいつだって人気だ。

 現スタンダードにおける「イゼット・フェニックス」なんかまさしくそうだ。《弧光のフェニックス》は、キャントリップがより強いモダンにおいてもデッキを成立させた。

 今日はグランプリにてトップ32入りしたリストを見てみよう!

Andrew Schneider - 「イゼット・フェニックス」
グランプリ・アトランタ2018 27位 / モダン (2018年11月3~4日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
3 《蒸気孔
4 《沸騰する小湖
4 《尖塔断の運河
1 《シヴの浅瀬

-土地(18)-

4 《氷の中の存在
4 《弧光のフェニックス
4 《騒乱の歓楽者

-クリーチャー(12)-
4 《信仰無き物あさり
4 《血清の幻視
4 《思考掃き
4 《稲妻
2 《噴出の稲妻
4 《航路の作成
4 《魔力変
4 《癇しゃく

-呪文(30)-
4 《トーモッドの墓所
2 《高山の月
2 《払拭
2 《削剥
2 《ドラゴンの爪
3 《神々の憤怒

-サイドボード(15)-

 モダンにはすでに、インスタントとソーサリーを連打してボーナスを得るデッキが存在する。《氷の中の存在》と《騒乱の歓楽者》、それぞれモダンプレイヤーの間では脅威として知られるクリーチャーだ。

 2マナ0/4を7/8に育てる、あるいは8マナで3枚ドロー付きの3/4を2マナで唱える……どちらも夢のような話だが、モダンが誇るキャントリップ呪文があればお茶の子さいさいだ。特に手札だけでなくマナも消費しないという《魔力変》が存在するのが大きい。

 さらには1マナで2枚ドローして手札を2枚捨てる《信仰無き物あさり》、ライブラリーから墓地にカードを落とす《思考掃き》などは、そのデメリットにも見える部分を墓地が肥やせるというメリットに置き換えていろいろと悪さをしている。これらのカードと《弧光のフェニックス》の相性……無論、最高だ。

 というわけでこれらのクリーチャー3種と、軽量のインスタント&ソーサリーを詰め込んだのがこのデッキだ。

 最もやりたい動きは、《氷の中の存在》を出して、これを速やかに《目覚めた恐怖》へと変身させること。このデッキは火力こそ採用しているが、相手のクリーチャーをすべて焼き尽くせるほどあるわけではなく、このカードの変身時の誘発型能力でまとめて吹っ飛ばしたい。同時にパワー7のクラーケンで殴って、さっさとゲームに勝つのが狙いだ。

 このアクションへの準備段階で《信仰無き物あさり》《思考掃き》《航路の作成》でフェニックスを墓地に落とすことができれば最高だ。変身後、戦闘に入ってからフェニックスの戦場に戻る能力が誘発するので、一方的な戦場を作って一気に二桁ダメージを叩き出すことだってできるぞ。

 この動きでさっさと決着がつけられなかった時には、《騒乱の歓楽者》の出番。この3/4果敢持ちで手札を補充して、《稲妻》などの火力を得て相手のライフを攻めたい。このカードは戦場に出た際に手札をすべて捨てることを強要してくるが、これもフェニックスを捨てることができればメリットにさえなる。一見、無関係に見えるカードたちだが、その相性は良好でデッキとしてまとまっている。それゆえ、モダンという環境の荒波を乗り越えて好成績を収めることに成功したのだろう。

 このように「ちょっとモダンでやれそうじゃないか」というカードは、どんどんと持ち込んで試してやってほしい。スタンダードでは相方に恵まれなかっただけで、実はとてつもないポテンシャルを秘めている……そんなカードを、実は見逃しているかもしれない。自分を信じて、レッツ構築!

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