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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジェスカイ・ミッドレンジ:パワーカードの集合体(スタンダード)
マジックをやっているとよく耳にする「パワーカード」というフレーズ。このコラムでもよく用いている表現だが、よくよく考えてみれば初心者の方にはわかりにくいかもしれない。マジックのルール用語に「パワー」自体が含まれているため、《原初の飢え、ガルタ》のようなパワーの値が大きいクリーチャーのことに思ってしまうかもしれない。
まあ実際にガルタはなかなかのパワーカードであるわけだが、ここで言うパワーとは「強力な」という意味。例えば放っておけばそれ1枚でゲームが終わる・でもカード1枚では太刀打ちできない、そういうとても強いカードは「カードパワーが高い」とか「屈指のパワーカード」という風に呼ばれるわけだ。
《再燃するフェニックス》とかまさしくそうだね。
このカードは現環境の赤単のデッキには大体入っている、入っていない方が珍しい。このように環境の色を定義づけるようなカードこそ、まさしくパワーカードだ。
白系のデッキなら《ベナリア史》、黒緑なら《秘宝探究者、ヴラスカ》、青白なら《ドミナリアの英雄、テフェリー》、色を選ばぬ《ウルザの後継、カーン》なんてのも。こういったカードを覚えておくと、相手の土地の色から大体何をプレイされる可能性があるのかがわかってくるようになる。パワーカードを覚えることで、スタンダード初心者からステップアップ!
ところで、先に挙げたようなパワーカードの大半を採用しているデッキを見つけた。このデッキと相対した場合、置いてくる土地から「アレが来そうだな」「あれもしかしたらコレも……?」なんて考えている間にそれらパワーカードがほんとに全部出てきて圧殺されてしまいそうだ。欲深ぇぇぇデッキですわ!
3 《平地》 1 《島》 1 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《断崖の避難所》 4 《氷河の城砦》 4 《蒸気孔》 4 《硫黄の滝》 1 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《再燃するフェニックス》 2 《包囲攻撃の司令官》 -クリーチャー(6)- |
4 《裁きの一撃》 2 《アズカンタの探索》 4 《ベナリア史》 3 《轟音のクラリオン》 3 《イオン化》 2 《イクサランの束縛》 2 《残骸の漂着》 1 《反応 // 反正》 2 《ウルザの後継、カーン》 4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 1 《戦場の詩人、ファートリ》 -呪文(28)- |
4 《アダントの先兵》 3 《トカートリの儀仗兵》 2 《防御牝馬》 1 《豊潤の声、シャライ》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 2 《苦悩火》 -サイドボード(15)- |
パワーカードの集合体! 一見するとその姿は異様で、西洋で言うところの合成獣・キマイラ的な禍々しさを感じずにはいられない。先に挙げた《ベナリア史》から始まる、4ターン目《再燃するフェニックス》、5ターン目《ドミナリアの英雄、テフェリー》の文字通りのパワーカード連打は「対処できなきゃ負けるぞ」というプレッシャーを与えるものだ。
これらをすべて完璧に対処し続けることはどんなデッキにとっても簡単なことではなく、仮になんとかできたとしても自身の戦力も大幅に持っていかれ、思った通りのゲームプランで戦えなくなってしまうだろう。このように相手を対応する側に陥れ、打ち漏らしたカードでそのまま勝つ……よく聞く「押し付けデッキ」と言われるのはこういう戦術を用いるデッキのことを指す。
ただこのデッキは押し付けるだけのデッキではないのもポイント高し。ベースになっているのは「ジェスカイ・コントロール」。白青赤のどちらかというと受け身な対応をする側のデッキだが、そこから打ち消し呪文を《イオン化》以外削って、自分からもパーマネントを展開していくデッキになっている。
単体でサイズの大きいクリーチャーには《裁きの一撃》、トークンなどの横並べデッキには《轟音のクラリオン》で一掃、《殺戮の暴君》などのどちらでも厳しいクリーチャーには《残骸の漂着》と、バシバシ除去を唱えて片付けていく。
これらのカードはテフェリーやカーン、《アズカンタの探索》や変身後の《水没遺跡、アズカンタ》でかき集めていこう。《轟音のクラリオン》はコチラが押している際にはクリーチャーに絆魂を付与するという使い方もできてGood。
ゲームに勝つにはクリーチャーで殴るプランで。《ベナリア史》の騎士・トークンやフェニックス、カーンの構築物などの他に《戦場の詩人、ファートリ》から3/3の恐竜・トークンを毎ターン生成したり、《包囲攻撃の司令官》から一気にゴブリン・トークンを展開したり。
ゴブリンデッキじゃないのに司令官?と思われるかもしれないが、このカードは何もゴブリンの部族シナジーがなくてもカード1枚で5点相当の打点があり、それ以上のダメージを飛ばしたり除去になったり相手の単体除去1枚で対処しきれなかったり……と十分なカードパワーを備えている。クラリオンから全員に絆魂を与えて殴って、その後トークンをすべてぶん投げればゴリゴリッとライフを回復できたりするぞ。
トークンを生成するカードやフェニックスなど、一見なんの接点もないカードの寄せ集めに見えて「相手の除去呪文1枚で何もできずに戦場を去っていくというケースになりづらいカード」という共通のテーマを持ったカードが採用されている点に注目してほしい。どんなデッキでも、1つのテーマに沿って構築するというのは大切だ。この中に単体除去でコロッとやられるクリーチャーを複数枚混ぜると、ゲームを通して相手の除去を機能させにくくするというプランがうまく機能しない、なんてことになりかねない。適当に組まれたように見えて、しっかり計算されているリストなのだ。
サイドボードには《トカートリの儀仗兵》の姿が。
これは《貪欲なチュパカブラ》や各種探検クリーチャーなど、ゴルガリに対してとても効果のある1枚で、いま旬なカードである。これらのデッキに苦しめられている人は一度試してみてほしい。
今後こういった形のデッキが主流になるか、それとも古き時代より生き続ける打ち消しを構えるどっしりコントロールするデッキがやっぱり支持されるのか……プロツアー『ラヴニカのギルド』にて、その答えを見ることができるかもしれない。今季のスタンダードはデッキの移り変わり・進化が頻繁に起こりそうで、プロツアー後のグランプリなんかもとても楽しみだ!
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