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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ケスコン:グリクシスのバリエーション(レガシー)
皆、『統率者(2018年版)』の新カードは試したかな? 毎年発売される『統率者』シリーズだが、このセットには明らかにエターナル環境での使用を意図してデザインされているカードが含まれることがある。また、多人数戦用に作ったらたまたまエターナル環境でも結構強かった、なんてカードもある。カードリストを今一度眺めて、おや?と思えるカードがないか探してみてほしい。
今日は、昨年発売された『統率者(2017年版)』からのカードが採用されているデッキを紹介しよう。そのカードとは《反体制魔道士、ケス》!
どうだろう、『統率者』セットをしっかり追っていなかったプレイヤーの中には完全に初見だという方もいるんじゃないかな。彼女はアラーラの断片の1つ、グリクシスに住む人間の魔術師。この荒れ果てた、ゾンビたちが住まう地にわずかに残った生きた土地の出身で、この地で失われたものを復元させるための活動をしているとのこと。
なんだか応援したくなってくるが、背景設定はこの辺にして能力をチェック。グリクシス出身らしい青黒赤の3色を含む4マナで3/4飛行、スペックはまあ悪くない。《稲妻》《致命的な一押し》《突然の衰微》といった環境に蔓延る除去で落ちない点はナイス、ただ色が多いので《紅蓮破》《水流破》なんかに引っかかるのは玉に瑕。まあこれはメインでは死ににくい恩恵の方が大きいので気にしない方向で。
肝心の能力だが、これがなかなかすごい。自分のターンに1度、墓地からインスタントかソーサリーを唱えることができるのだ。これ、自分のターンで手札破壊を連発しても良いし、相手のターンに唱えたインスタントを自分のターンにも使えるってことだ。このアドバンテージで複数の対戦相手と戦う統率者戦を乗り切ろうというデザインなのだろうが、1対1のゲームにおいてこそ、その真の力が発揮できそうだ。
このカードを採用したレガシーのデッキリストを見てみようじゃないか。
2 《島》 2 《沼》 2 《湿った墓》 3 《Volcanic Island》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 3 《血染めのぬかるみ》 -土地(20)- 4 《悪意の大梟》 4 《瞬唱の魔道士》 2 《真の名の宿敵》 1 《反体制魔道士、ケス》 -クリーチャー(11)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 3 《稲妻》 1 《致命的な一押し》 1 《撹乱》 1 《狼狽の嵐》 2 《思考囲い》 3 《トーラックへの賛歌》 1 《対抗呪文》 1 《目くらまし》 2 《コラガンの命令》 3 《意志の力》 1 《残忍な切断》 1 《最後の望み、リリアナ》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(29)- |
2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《呪文貫き》 1 《強迫》 1 《狼狽の嵐》 1 《外科的摘出》 2 《苦花》 2 《血染めの月》 1 《罠の橋》 1 《滅び》 1 《袖の下》 1 《捕縛の言葉》 -サイドボード(15)- |
いわゆる「グリクシス・コントロール」というデッキである。《悪意の大梟》《瞬唱の魔道士》でアドバンテージをとって、これらのカードを《コラガンの命令》で使いまわす……そうやって対戦相手とこちらのリソースの差をつけて勝利する、大体どんなデッキにも対応できるオールラウンダーなデッキだ。
今レガシーで勝ちたければこれを使うと安定した成績を収められるだろう、そんな「丸い」デッキなのだが……このリストでは《反体制魔道士、ケス》が入ることで一般的なそれのリストとは趣が異なっている。
低コストで展開できるフィニッシャー兼ブロッカーである《グルマグのアンコウ》は不採用だ。それもそのはず、墓地にカードがあってナンボなケスと探査で大量にカードを食べてしまうアンコウは相性が良いはずもない。このデッキでは盤面の制圧は《真の名の宿敵》に任せて、ケスによるアドバンテージでフィニッシュまで持っていくのだ。
ケスのバリューを最大限に活かすために、このデッキにはちょっとした工夫が凝らされている。それは、似た役割のカードを散らして採用することだ。《渦まく知識》以外に4枚採用されている非クリーチャー呪文はなく、ケスでできる行動の選択肢をバリエーション豊かにすることで能力を最大限活かそうというわけだ。
手札破壊で相手の手札をズタズタにして主導権を握るのが基本戦略だが、《思考囲い》《トーラックへの賛歌》を使い分けることでより状況・対戦相手に合ったプレイが可能。
《稲妻》《致命的な一押し》《残忍な切断》と、対象にするものが大きく異なる除去群も散らしてあることで空振る可能性を軽減。《稲妻》最優先なのは、クリーチャーデッキでない相手に本体に連打してゲームを終わらせるためだ。
レガシーではこちらのターンに相手がさまざまなアクションを仕掛けてくることも多く、そういう状況ではケスで打ち消しを使いまわすのが強みになることも。このリストでは懐かしの《撹乱》まで散らして採用されている。
こちらの手札破壊に対する打ち消しを《撹乱》の手札と墓地から2連発で打ち消したりすると……たまらんだろうなぁ。
《コラガンの命令》を使いまわせばもうめちゃくちゃ、勝ったも同然。そんなケスを活かすために、サイドボードにも《捕縛の言葉》や《袖の下》が採用されているのは実に面白い。
「グリクシス・コントロール」と聞くとよくあるリストが浮かびがちだが、カードチョイスで全く違うデッキにできるってわけだ。
このデッキは日本選手権のサイドイベント、レガシー選手権でベスト4の結果を残している。《Underground Sea》ではなく《湿った墓》を採用しているが、そのぐらいの弱点は創意工夫でカバーできるということが証明されたようなものだ。
これを見て良いデッキだなと思ったら、君も負けてられない! 何か面白いカードを見つけて、自分だけのデッキを組んでみよう。その過程こそ、マジックの醍醐味なのだ。
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