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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ANT(レガシー)

岩SHOW

 この夏、最もホットなマジックイベント、それがエターナル・ウィークエンド・アジア2018

 ということで、お仕事で同イベントの会場まで行ってきた。黒田正城さん、浅原晃さんの「ジョン・フィンケルと同い年」世代のお二方と熱戦を見守ってきたのだが……いつにも増して、海外の方々からの反応が多いストリーミングとなった。エターナルの大型イベントはそれだけ注目に値するものなのだろう。

 レガシー選手権には600名を超すプレイヤーが参加しており、現在のレガシー環境を理解するサンプルとしては申し分のないものだ。このトーナメントを制したデッキは本当に強いデッキだと言い切れる!

 そして実際に優勝したデッキは、長きに渡ってレガシー環境に存在し続け、これまでに輝かしい実績を残し続けてきた伝統のコンボデッキだった。このデッキがアジア初のエターナルの祭典で優勝したというのも納得だ。「ANT」の最新リストをご覧あれ!

髙橋 勝貴 - 「ANT」
エターナル・ウィークエンド・アジア2018 レガシー選手権 優勝 (2018年8月18~19日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《
2 《Underground Sea
1 《Volcanic Island
1 《Bayou
4 《汚染された三角州
3 《霧深い雨林
1 《血染めのぬかるみ
-土地(15)-
 
-クリーチャー(0)-
4 《ライオンの瞳のダイアモンド
4 《水蓮の花びら
4 《渦まく知識
4 《思案
4 《定業
4 《思考囲い
3 《強迫
4 《暗黒の儀式
1 《汚物の雨
4 《陰謀団の儀式
4 《冥府の教示者
2 《炎の中の過去
1 《苦悶の触手
1 《むかつき
1 《闇の誓願
-呪文(45)-
1 《ザンティッドの大群
1 《トーモッドの墓所
2 《蒸気の連鎖
2 《夜の戦慄
2 《狼狽の嵐
1 《強迫
3 《突然の衰微
2 《ハーキルの召還術
1 《巣穴からの総出
-サイドボード(15)-
 

 ライフを失いながら好きなだけライブラリーの上から手札にカードを加えることができる《むかつき》。

 モダンでは《天使の嗜み》と併せて不死身になってライブラリーを引き切るコンボが一般的だが、レガシーではそこまでせずとも0~1マナの呪文を大量に採用することで死ぬことなく運用ができる。

 この《むかつき》を《暗黒の儀式》などのマナ加速から唱えて、さらにそれらのカードをかき集めて連打の後《苦悶の触手》で相手のライフを吸い尽くす……これが「ANT」だ。デッキ名は《むかつき》と《苦悶の触手》の英名を組み合わせたもの。大量カード獲得と、そのターンに唱えられた呪文の数だけコピーを生み出すストーム能力が噛み合わないわけがない。というわけで『アラーラの断片』発売当時に作られ、そして今日に至るまで存続する由緒正しきコンボデッキなのである。

 歴史が長い「ANT」は幾度もの変化を経てきたデッキだ。環境だけでなくルールの変化などによっても形を変えてきたこのデッキは、天敵と言われた《師範の占い独楽》+《相殺》コンボが環境の中心にある時ですら消滅せずに生き残ってきた。2018年7月の禁止改定により《ギタクシア派の調査》を失い、ここしばらくメジャーだった《陰謀団式療法》との合わせ技で相手の妨害手段をぶっこ抜いてからコンボを決めるスタイルでは存続不可能となったが……その程度のこと、さしたる問題ではない。

 このリストは原点回帰とも言える、速度重視のスタイルにまとめられており、かつての「1キル2キルが普通に飛び交う環境」というレガシーのイメージを定着させた速さに特化したコンボデッキとして蘇りを果たしている。黒いマナブーストは《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》に留まらず《汚物の雨》まで採用し、とにかく速いターンにマナを大量に出して《むかつき》を唱えたり《冥府の教示者》+《ライオンの瞳のダイアモンド》からの《炎の中の過去》を決めたりして、アクセルを踏んだら瞬間的にゲームが終わらせられるように設計されている。

 その爆発力に加えて、青い1マナドロー呪文が12枚採用されており安定感もマシマシ。初手にコンボパーツが揃っていなくても、これらを1~2ターン目に唱えて手札を整え、3ターン目には仕掛けられる。

 で、さらに手札破壊呪文もあるのが「ANT」の売り。安全確認からの一気の詰め、この動きは決勝ラウンドでも度々炸裂! ストリーミング視聴者たちに改めて「ANT」の強さを認知させたのだった。いやほんと、勢いに乗った「ANT」は最強と思える圧倒的な強さだったね。

 サイド後は《巣穴からの総出》で勝ち手段を増やす。

 《むかつき》であればストームを9以上稼いで20点のライフを失わせるのは容易いのだが、対策カードを積んだ相手にこの呪文は通りづらい。より少ないストーム5くらいでもゴブリン・トークンを12体生成でき、2回攻撃してゲームを終わらせることのできる総出で、実際にサイド後のゲームはほとんどこれで勝っていた。各種コンボデッキがサイド後に別の勝ち方を用意するためにサイドボードのスロットを食うのに対して、1枚だけの総出でそれが事足りて他の14枚はきちんと対策カードに割けるのも「ANT」の強さだなと再確認。

 手札を整え安全確認してしっかり決める、あるいはもう何も恐れずに1ターン目にすべてをかなぐり捨てる「ブッパ」で強引に勝つ! そのどちらもできる柔軟性を持ったレガシー界コンボ代表「ANT」。その全盛期は、もしかしたらここから始まるのかもしれない!

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