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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ターボフォグ(スタンダード)
ターボと聞くと、速いものを連想するのは自然な流れ。ではマジックの世界でターボというと、速攻を持ったクリーチャーでバンバン殴るデッキかというと……実はそういうデッキに対してこのフレーズを用いることはほとんどない。コンボデッキの類か、あるいはロック系のデッキが、「ターボ○○」と名乗るのが昔からの習わしだ。
ロックデッキというのは、相手をLockしてしまう、すなわち何もできなくさせて勝利するタイプのデッキのこと。古の《停滞》を用いた「ターボステイシス」なんかがその代表格。相手の動きを封じこめてライブラリーアウトを待ったりするデッキの、一体何がターボなのか? それは「ターボステイシス」に搭載された《吠えたける鉱山》のこと。ロックを成立させるためにこれを出して毎ターン2枚以上カードを引く様を、ドローが加速していくという意味合いでターボと表現したようだ。対戦相手のライブラリーもすごい勢いで消失していく、という点でもターボ感がある。以後、この鉱山かそれに類似するカードを用いたロック系のデッキはターボの系譜に名を連ねていくことになる。
そして2018年夏、新たなターボが誕生した。「ターボフォグ」である。
「ターボフォグ」自体はかなり昔からあるデッキで、『テンペスト』ブロックの時代にはすでにそういうデッキが登場していた。フォグこと《濃霧》で相手のクリーチャーから受けるダメージを防ぎ、時間を稼いでいる間に対戦相手をライブラリーアウトへ持ち込む。このデッキの完成度が最も高かったのは『アラーラの断片』ブロックが使えたころのスタンダード。《天使歌》《安全な道》で粘って《吠えたける鉱山》《神話の水盤》でゴリゴリとドローし、《ジェイス・ベレレン》の奥義で決める。当時の世界選手権でも活躍した実力派デッキで、勝ち手段をクリーチャーに頼っている不器用なデッキには滅法相性が良かった。
この《濃霧》系呪文でコントロールするという手法を現代に蘇らせたデッキが、マジック25周年記念プロツアーの会場で存在感を示していた。
4 《森》 1 《平地》 5 《島》 4 《内陸の湾港》 4 《まばらな木立ち》 2 《陽花弁の木立ち》 4 《灌漑農地》 2 《氷河の城砦》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《予期》 4 《花粉のもや》 4 《根の罠》 3 《アズカンタの探索》 4 《楽園の贈り物》 2 《砂の下から》 1 《テフェリーの誓い》 4 《運命のきずな》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 2 《ウルザの後継、カーン》 4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 -呪文(34)- |
4 《殺戮の暴君》 4 《ジェイスの敗北》 4 《否認》 3 《排斥》 -サイドボード(15)- |
このデッキは《運命のきずな》の登場により誕生した。
コンセプトは、プレインズウォーカーによる圧倒的なアドバンテージでの勝利。それを成すために、この《運命のきずな》で追加ターンを得たり、フォグ系の呪文で相手のクリーチャーを無効化しプレインズウォーカーを護る。《ウルザの後継、カーン》《ドミナリアの英雄、テフェリー》とお馴染みのメンツに加えて《自然に仕える者、ニッサ》も用いて、手札や盤面にアドバンテージをもたらすのだ。
理想的な動きは、プレインズウォーカーを出してその返しの攻撃をフォグで防ぎ、また安全に次のターンを迎えるという動き。これをするためには、例えばカーン+《花粉のもや》or《根の罠》構え=6マナも必要となる。なので《楽園の贈り物》《砂の下から》などのマナ加速を用いるのが基本だ。《開拓》《ルクサの恵み》まで採用して同じカードでドローもしちゃおうという構成のリストもある。
マナを伸ばして、無事にプレインズウォーカーが出せる状況になれば、カーンなりテフェリーなりで手札を潤し、ニッサでドローの質を高めよう。これらと《アズカンタの探索》および変身後の《水没遺跡、アズカンタ》がこのデッキのターボ要素だ。
《運命のきずな》や《テフェリーの誓い》まで採用し、忠誠度能力をとにかく連打して目指すはテフェリーの[-8]能力。これに到達すればまあほぼ勝ちである。相手のパーマネントを消失させ、勝ち手段を奪っていきながら追加のターンを得る。
一方的な展開にもっていって、ニッサで土地をクリーチャー化するなり、カーンで構築物・トークンを生成するなりして勝利する。終盤、ライブラリーを大体引き切った状態にすればもうそこから対戦相手に1ターンも渡さずに《運命のきずな》を連打し続けて勝利となる。この勝ち方は強烈だ。やっている方はもはや神の領域、最高の気分だろう。
「赤黒アグロ」「鉄葉ストンピィ」などクリーチャーで勝利するデッキが多いと踏んだチームがプロツアーではこのデッキを選択したようだ。実際にそれらのデッキ相手には狙い通りの戦果を挙げられたことだろう。この手のデッキは初見では攻略しにくい、という面も有利に働いたことだろう。
ロックデッキは仕組みがばれると脆い、というのもまた古より続く伝統である。大舞台で明るみに出た「ターボフォグ」は、はたして今後も活躍するのだろうか?
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