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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
おかえり、カナスレ!(レガシー)
2018年7月はカナダ民歓喜の月となった。あ、本当のカナダの人々ってことじゃないよ、レガシープレイヤーの中に一定数いる(いた)、「カナディアン・スレッショルド」愛好家のことね!
かつてレガシーで「打ち消して殴る」デッキを使いたいのであれば、最良の選択肢は「カナディアン・スレッショルド」、略してカナスレだった。
青からは1マナドロー呪文と《目くらまし》などの打ち消し、そして《もみ消し》を。
そして赤からは《稲妻》を始めとする軽量火力を。
これらを1つのデッキに放り込んで、極限まで土地を切り詰めた構築にしたもの……それがカナスレだった。
カナスレは後に《秘密を掘り下げる者》を得てバージョンアップ、「RUGデルバー」と呼ばれることも多くなった。クロック(対戦相手へのダメージ源)が8枚から12枚に増え、決定力と安定性が大きく上昇し全盛期を迎えた。
その後、《死儀礼のシャーマン》が登場。あのデッキもこのデッキもこのナチュラル墓地対策をメインデッキに4枚投入するようになったため、マングースがスレッショルドを迎えるのが困難に。《タルモゴイフ》のサイズも思い通りに維持しにくくなり、さらに手軽な《グルマグのアンコウ》が登場してからは、青と赤と組むのに緑はお役御免。黒にその座を譲って「グリクシス・デルバー」が天下を取るに至った。
で、死儀礼がいなくなった今。マングースやタルモは全盛期の力を取り戻したか? それはもうちょっと様子を見ないと断言できないが、めっきり姿を見ることがなかったカナスレを使用し、勝っているプレイヤーが増えてきたのは事実だ。いつぶりだろうか……あのころを思い出してワクワクしてくるなぁ。それじゃ最新型のリストを見てみようじゃないか!
3 《Tropical Island》 3 《Volcanic Island》 4 《樹木茂る山麓》 1 《溢れかえる岸辺》 1 《汚染された三角州》 1 《沸騰する小湖》 1 《霧深い雨林》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《敏捷なマングース》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《稲妻》 1 《二股の稲妻》 4 《もみ消し》 2 《呪文貫き》 2 《呪文嵌め》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 -呪文(30)- |
1 《硫黄の精霊》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《墓掘りの檻》 2 《紅蓮破》 1 《狼狽の嵐》 1 《外科的摘出》 1 《古えの遺恨》 1 《壌土からの生命》 1 《無のロッド》 2 《水没》 2 《乱暴 // 転落》 -サイドボード(15)- |
どんなデッキ?
軽い呪文での行動回数で勝負する、典型的なテンポデッキ。《渦まく知識》《思案》と軽量ドロー・ライブラリー操作呪文を連打し、《秘密を掘り下げる者》を変身させたり《敏捷なマングース》のスレッショルドを達成させたりして、低コストで高い打点を叩き出すクロックを確保し、殴るデッキである。
対戦相手の行動は《目くらまし》《意志の力》などで打ち消し、一方的に殴り続ける状態を維持しようというのが設計思想。
対戦相手の自由な行動を防ぐため、特に《目くらまし》の賞味期限を延ばすために、マナ否定戦略も採用されているのが特徴。それはレガシー環境特有のマナ基盤に働きかけるものだ。2種類の基本土地タイプを持ったデメリットなしの2色土地、通称デュアルランドは《不毛の大地》で粉砕! そのデュアルランドを戦場に出す起動型能力を持っており、水増しとデッキ圧縮・ライブラリーシャッフルの役目を持つ通称フェッチランドは、生け贄に捧げて能力を起動したところを《もみ消し》で打ち消す!これにより対戦相手のマナの自由を奪って、常にこちらの土俵での勝負を仕掛けようというわけだ。
《稲妻》などの火力はマングースとタルモの道を塞ぐクリーチャーを焼き払う除去であり、かつ対戦相手本体に投げ込んでいち早くゲームを終わらせるのを手伝う。かつてはこのスロットに《火 // 氷》が採用されるのが定番だった。同型のタルモを《氷》でタップするのが強かったりしたものだが、今では《火》と同じ効果で1マナで済む《二股の稲妻》が採用されている。タルモやアンコウには《四肢切断》で対抗しよう。
見ての通りカード・アドバンテージを獲得する手段は全く持っておらず、長期戦にもつれ込むと非常に不利。マナ否定戦略で序盤を継続させ、立て直される前に20点削って逃げ切りたいデッキである。《もみ消し》を構えるかクロックを展開するかなど、ベストな選択肢をチョイスして勝利するには熟練の技が必要になってくる。
テクニック!
《秘密を掘り下げる者》+《樹木茂る山麓》らフェッチランド:掘り下げる者を速やかに《昆虫の逸脱者》に変身させることが勝利の鍵。ライブラリー操作でインスタント or ソーサリーを積み込むことも時には必要になってくる。ただ、公開したカードが必要とは限らない。例えば、相手のデッキは2マナに重要なカードがないことを把握している場合などには《呪文嵌め》は無駄なドローになりかねない。アップキープに公開だけして変身し、フェッチランドを起動してシャッフルして引くカードは別のものへ……という小技もあることを忘れずに。
余談だが、青いデッキであるのにフェッチランドが《樹木茂る山麓》な点にも注目。《山》か《森》にアクセスできるということは《Volcanic Island》《Tropical Island》の両方をサーチ可能ということで、必ずしも《島》を参照するフェッチである必要はないってことだ。これを利用して、1ターン目に山麓をセットすることで果たして緑のデッキなのか、あるいはカナスレか?と対戦相手を惑わすこともできるだろう。
青いフェッチを散らしているのも、《溢れかえる岸辺》を見た相手が勝手に青白をイメージしてくれることを期待しているとかそういう理由があるのかも。1ターン目に置く土地から、すでに読み合いは始まっているのだ。
注目のカード:《乱暴 // 転落》
かつてカナスレの定番サイドカードだった、実に懐かしいカードである。《乱暴》は飛行を持たないクリーチャーに2点ダメージを与える。こちらのクリーチャーは《昆虫の逸脱者》にタルモに、スレッショルドしたマングースとこのカードで死ぬ可能性のあるものは少ない。一方的に機能する《紅蓮地獄》として、エルフや白単系などのクリーチャーを展開してくるデッキをこらしめてやろう。マナ基盤的にも状況的にも、《転落》をプレイすることはまずない(たった一度だけ、地元の大会で消耗戦の末に火を噴いているのを見たことがある)。
プレイヤーの腕……習熟度や環境理解度が問われる、テクニカルなデッキである。勝つときは対戦相手に何もさせずに押し込んでしまうので圧倒的に強いデッキに見えるが、その実、紙一重であることが多く、常に綱渡りなデッキなのだ。そのスリリングさが「マジックをやっている」と実感できるので大好きだという愛好家は少なくない。
さあ、復活の狼煙は上がっている。果たしてかつての栄華を取り戻すことになるのか……最注目デッキのひとつであることは言うまでもないね!
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