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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
構築譚 その8:nWo
『ドミナリア』も発売され、早くもプレイする機会を得た方は新カード・新デッキを楽しんだことだろう。まだまだ先週末は忙しくて……という方は、どんなデッキが活躍したのか気になってしょうがない状態だろう。
ここで早速、新デッキ紹介……といきたいところだけども、締め切りなどの関係で今回を書いている段階ではまだ、『ドミナリア』発売後の環境が不明で……だから、もう少しだけ! もう少しだけ待っていてほしい。このコラムでも新環境のデッキ、びしばし紹介していくのでよろしく!
さて、新メカニズム「英雄譚」にかけて過去の名デッキを紹介してきた「構築譚」シリーズ。今回は……新環境が始まったこととかけて、かつてマジック界に「新たな世界の秩序」を打ち出したデッキを紹介しよう。その名も「nWo」。
new World orderの略で、意味は新世界秩序。これはデッキのキーカード《自然の秩序》からつけられた名前で、同時代に世界中で一世を風靡したプロレスユニットnWoとかけたものになっている。当時大ブームで、街中でもこのユニットのTシャツを着た人を見かけることは少なくなかった。
マジックにおける「nWo」も同様に、スタンダード環境で存在感を示した。動きが面白いデッキなのでこれをコピーしたプレイヤーも多く、後継デッキである「ナイトメア・サバイバル」で爆発的な人気を得ることになるが……そっちのデッキはまた今度。
《自然の秩序》は今でもレガシーで使用されるレベルのパワーカード、スタンダードで使えた当時はまだ選択肢が少ないとはいえ、それでも十分強かった。《ラノワールのエルフ》や《極楽鳥》から3ターン目に唱えて大型クリーチャーで制圧する、シンプルではあるが決まってしまうと跳ね返すことは難しい、強烈な動きであった。
そしてこのデッキは、そのパワフルさで日本選手権1998を制するのである。
6 《森》 4 《宝石鉱山》 3 《反射池》 2 《真鍮の都》 2 《知られざる楽園》 1 《松のやせ地》 1 《ヴォルラスの要塞》 1 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《極楽鳥》 4 《花の壁》 4 《スパイクの飼育係》 3 《大クラゲ》 2 《ウークタビー・オランウータン》 2 《ネクラタル》 2 《貿易風ライダー》 1 《ルアゴイフ》 1 《スリヴァーの女王》 1 《新緑の魔力》 -クリーチャー(24)- |
2 《炎の嵐》 2 《ゴブリンの砲撃》 2 《根囲い》 2 《森の知恵》 3 《自然の秩序》 2 《ハルマゲドン》 3 《生ける屍》 -呪文(16)- |
1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《ファイレクシアの炉》 3 《紅蓮破》 1 《夜の戦慄》 1 《エメラルドの魔除け》 1 《炎の嵐》 1 《水流破》 2 《解呪》 1 《恐怖》 1 《魔力流出》 1 《道化の帽子》 1 《ロボトミー》 -サイドボード(15)- |
当時は多色土地に強いカードが多く、《極楽鳥》もいたことからこのような緑を中心とした5色の良いとこどりデッキがいくつか登場したのだが、その中でも「nWo」の系譜は最強と言っていいものだった。各色からやり手のクリーチャーをかき集め、さまざまな問題を解決できるようにしてある。相手がクリーチャーデッキであれば《大クラゲ》と《ネクラタル》で足止め、殴られても《スパイクの飼育係》で回復すればいい。アーティファクトを用いてくるのであれば《ウークタビー・オランウータン》の出番だ。といった具合に、各色から優秀なスタッフが一堂に集結しているのだ。
これらのクリーチャーを展開しつつ、《自然の秩序》からフィニッシャーへと繋いで圧殺を狙うのが勝ち筋その1。秩序からサーチするクリーチャーは緑である必要があり、当時この色で最も強力だったものといえば《スリヴァーの女王》《新緑の魔力》の二強である。
どちらも7/7とサイズに優れ殴りに行けるのに加えて、トークンを生成して盤面を抑え込めるという共通点がある。これらフィニッシャーを2種類に散らしているのには理由がある。
相手のデッキに黒い要素が見えた場合は、《スリヴァーの女王》の出番だ。先述の《ネクラタル》や《恐怖》など、当時の黒い除去手段は黒いクリーチャーには効かないものとなっている。色に黒を含むというのは、それだけで立派な除去耐性だ。
ただ、女王は5色のクリーチャーであるため、ありとあらゆる色対策に引っかかるという問題点も。《紅蓮破》《水流破》のように当時の色対策はコストが軽くて強いものが多く、それらに引っかかりにくい単色の《新緑の魔力》の安心感もなかなか。そもそもトークンを得るのにマナがかからないこともあって、のびのびと動けるのも良い点である。臨機応変に、相手とゲーム展開に合わせてこれらを高速展開しよう。
ただ、これらのクリーチャーも《神の怒り》などの前には割と簡単に沈んでしまう。そこで役に立つのが各種クリーチャーでない呪文だ。《生ける屍》はこのデッキの第2の勝ち筋で、除去されてしまったクリーチャーをまとめて墓地から戦場に戻してリソース勝負に持ち込める。
相手がクリーチャーデッキだった場合は、うまく戦場を整えて一方的な全体除去&こちらの盤面を強くするカードとして用いたいところ。そのため、このデッキには墓地にクリーチャーを送り込むために《炎の嵐》や《ゴブリンの砲撃》が搭載されている。《自然の秩序》or《生ける屍》、時代を代表するソーサリーの両方を使って勝利を目指せ!
そうそう、時代と言えば基本セットに《ハルマゲドン》が収録されているころでもある。これで土地を吹き飛ばし、《貿易風ライダー》で土地をバウンスし続けるという鬼のような勝ち方も狙えるぞ。
このデッキは先にも触れた通り日本選手権1998で優勝したもの。このトーナメントは『エクソダス』がトーナメントで使用可能となってから4日後に開催されたそうで、上位には《ドルイドの誓い》などの新カードを取り入れたものあったが、このデッキには『エクソダス』のカードがなんと0枚。新カードの真価を見定めるにはまだ時間が足りず、デッキの完成度が下がることを嫌って使い慣れた形を選択した結果らしい。
最近でも、小型セットが発売された週のトーナメントでは新カードをあまり使っていないデッキが優勝することが多いね。そこから段々とどれが強いのかわかる、というのが定番となっているが……『ドミナリア』以降はすべてのセットが大型となるため、この常識も覆されることになりそうだ。
この「nWo」も『エクソダス』抜きで結果は残したものの、《適者生存》と《繰り返す悪夢》という同セットが誇る超パワーカードの強さが知れ渡ってからはそれらを主軸とした派生形「サバイバル・ナイトメア」に取って代わられることとなり、《自然の秩序》からの大型クリーチャー、という戦術はほとんど見られなくなった。これもまた、新世界にもたらされた秩序。常に新しいデッキがやってくるからこそ、マジックは面白い。
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