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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナシフと謎めいた命令(モダン+過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナシフと謎めいた命令(モダン+過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 恒例行事である、プロツアー構築ラウンド成績優秀者のデッキリストを見ていた。8勝1敗1分けという堂々たるラインに、このリストがあった。まずはこちらをご覧いただきたい。

Gabriel Nassif - 「青白コントロール」
プロツアー『イクサランの相克』 モダン部門 8勝1敗1分け / モダン (2018年2月2~4日)[MO] [ARENA]
6 《
3 《平地
2 《神聖なる泉
4 《溢れかえる岸辺
4 《天界の列柱
2 《秘教の門
4 《廃墟の地

-土地(25)-

2 《瞬唱の魔道士
1 《前兆の壁
2 《ヴェンディリオン三人衆

-クリーチャー(5)-
4 《流刑への道
4 《血清の幻視
1 《呪文嵌め
4 《広がりゆく海
1 《アズカンタの探索
1 《否認
1 《差し戻し
2 《拘留の宝球
3 《謎めいた命令
3 《至高の評決
1 《天才の片鱗
1 《残骸の漂着
1 《論理の結び目
1 《試練に臨むギデオン
1 《思考を築く者、ジェイス
1 《ギデオン・ジュラ

-呪文(30)-
1 《呪文捕らえ
2 《払拭
3 《石のような静寂
1 《安らかなる眠り
2 《天界の粛清
2 《軽蔑的な一撃
1 《否認
2 《機を見た援軍
1 《残骸の漂着

-サイドボード(15)-

 青白のコントロールデッキだ。それもド典型的な、ロングゲームを戦うために作られたもの。古典的なスタイルでありながら、そのリストには1枚挿しのカードが多く、そのプレイヤーの好みを色濃く反映している。

 使用者は、プロツアー殿堂顕彰者・フランスを代表する大ベテラン、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifだ。ナシフはこういう、同じような役目のカードでも統一するよりは散らして採用するという構築が好きなように思える。どんなデッキでも使いこなす高いスキルを持っているが、特に青が絡んだコントロールデッキを使用しているイメージが強い。

 デッキの話をすると、打ち消し呪文の枚数自体はそう多くなく、癖のあるものを散らして採用しているので見た目ほど構えて戦うデッキではなさそうだ。《広がりゆく海》で相手の土地を攻め、《至高の評決》で流し、ギデオン&ジェイスで優位を確固たるものにする、割と自分から動いていき要所でしっかりと打ち消しを使用する、そういうデッキだろう。

 平たく言うと、結構難しそう。ナシフをずっと応援していた・憧れていたという人はトライしてみると良いかもしれないが、この構築はおそらくプロツアーに狙いを定めてのもの。自身が参加するトーナメントの仮想敵をしっかりと予想して、自分に合う構成に調整する必要があるだろうね。


 さて、ナシフが《謎めいた命令》を用いている、となるとどうしても1つのデッキを思い出してしまう。プロツアー・京都2009で彼が優勝した際に使用していたコントロールデッキだ。僕も場内で開催されているサイドイベントを楽しみながら、世界中のトッププレイヤーが日本で繰り広げる熱戦を観戦していた。あれからもう9年になるのか。未だ色あせない、ヴィヴィッドなデッキリストがこれだ!

Gabriel Nassif - 「残酷コントロール」
プロツアー・京都2009 優勝 / スタンダード (2009年2月27日~3月1日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《秘教の門
4 《沈んだ廃墟
2 《滝の断崖
2 《風変わりな果樹園
4 《反射池
2 《鮮烈な草地
4 《鮮烈な小川
3 《鮮烈な湿地
2 《鮮烈な岩山

-土地(27)-

3 《羽毛覆い
3 《崇敬の壁
4 《熟考漂い
3 《若き群れのドラゴン

-クリーチャー(13)-
1 《真髄の針
1 《天界の粛清
1 《恐怖
4 《エスパーの魔除け
4 《火山の流弾
4 《謎めいた命令
2 《残酷な根本原理
4 《砕けた野望

-呪文(21)-
1 《薄れ馬
2 《噛み付く突風、ウィドウェン
4 《遁走の王笏
2 《否認
1 《天界の粛清
1 《霊魂放逐
2 《蔓延
2 《神の怒り

-サイドボード(15)-

 《謎めいた命令》と《若き群れのドラゴン》が同居するというとんでもない色マナ要求を、こともなげに支える鮮烈土地と《反射池》による土地基盤! 改めて、どうかしているデッキだなぁと思わずにはいられない。その名も「残酷コントロール」!

 決勝ラウンドでナシフが連発した《残酷な根本原理》の無慈悲なまでの強さを、あの会場にいた人たちは忘れないだろう。大きなスクリーンに映し出された盤面、ナシフが3枚引いて対戦相手が3枚捨て、ナシフが墓地から《熟考漂い》を拾い対戦相手がクリーチャーを1体生け贄に、そしてナシフが5点のライフを対戦相手から奪い取る......その光景に「Ohhhh!」という歓声とも悲鳴ともつかない声が上がったものである。

 当時のビートダウンを相手に生き残る術と、コントロールを相手にアドバンテージで打ちのめす手段が贅沢に採用されている。特徴的なカードは《崇敬の壁》。

 1/6飛行として対戦相手の攻撃を食い止めつつ、横に《羽毛覆い》なんかがいたりするとぐんぐんとライフを射程圏外へと逃がしてくれる。心をへし折る、このデッキの影のフィニッシャーだ。

 壁で受け止め、《熟考漂い》を想起で唱えたり《エスパーの魔除け》もドローに使ったりして手札は切らさず、毎ターンしっかりと使えるマナを伸ばしながらゲームをコントロールしていく。《謎めいた命令》もそうだが、同じカードでもモードの選択でまったく異なる使い方が可能なものが複数採用されており、それらを状況に合わせて使いこなす技術を要求するデッキだ。

 このデッキを使っていて最も難しいと感じるのは、土地の置き方だ。次のターンやその次のターンのことをイメージしながら、それらのターンにそのアクションを取るには一体どのような順番で土地を置いていけばよいのか? これは初めてプレイする際に直面する壁だった。

 当たり前のようにプレイするナシフと、それができない僕ら。プロプレイヤーって、プロツアーで優勝する人ってすごいんだな! そんなことを教えてもくれた、忘れられない名デッキである。

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