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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Ravager Shop(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Ravager Shop(レガシー)
by 岩SHOW
たとえば格闘技の世界。階級の違う選手が戦ったらどうなるのか? えてして、重い階級の方が有利であるという結論に至る。中には階級を越えた実力を持った選手もいるが、階級=体格の大きな違いを埋めることは困難である。
それではマジックの話。階級、すなわちフォーマットを越えた無差別級の対戦結果はどうなるのか? これもまた、カードプールが拡がっていく階級の方が自ずと有利になってくる。
ただ、マジックの場合はもう1つの要素が、フォーマットを越えた戦いを面白くしている。最もカードプールの広いヴィンテージは最強のフォーマットに見えるが、一部レガシーに勝てない部分もある。それは制限カードの存在だ。レガシーにおいては、青いデッキであれば《渦まく知識》が4枚採用されているものである。この1マナ手札入れ替え呪文の強さは今さら語るまでもないが、ヴィンテージではこのカードを野放しにしてしまうと青が強くなりすぎてしまうため、制限カードに指定されている。
レガシーで4枚使えるカードが、ヴィンテージでは1枚しか使えない。《渦まく知識》に限らず、その他多くのカードで同様の現象が見られる。同様のカードをきっちり4枚採用し、デッキの安定感を高められるという点ではレガシーのデッキの方が勝っている部分もある。
ただ、ヴィンテージのデッキは《Ancestral Recall》のような、レガシーでは使用を許されていない超絶パワーの制限カードで武装している。実際に昔、ヴィンテージ vs レガシーを体験したことがあるが、ヴィンテージ側がパワーでねじ伏せることもあれば、レガシー側が華麗な動きで捌き切る展開もあったりと、イメージしていたよりもヴィンテージのデッキに抗うことができた。そもそも仮想敵が異なるため、デッキ構成の方向性も大きく異なるというのも、ヴィンテージ vs レガシーをヴィンテージが圧倒的有利と言い切れない要素になっているだろう。
では、ヴィンテージのデッキをレガシーに輸入するとどうなるだろうか? レガシーで組めないデッキをヴィンテージで組めるように、その逆もまた然り。制限カードのない世界で組まれたヴィンテージのデッキはこんな感じだ。
4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 4 《ミシュラの工廠》 4 《不毛の大地》 2 《発明博覧会》 2 《カラカス》 -土地(20)- 4 《大霊堂のスカージ》 4 《電結の荒廃者》 4 《ファイレクシアの破棄者》 4 《鋼の監視者》 2 《磁石のゴーレム》 4 《歩行バリスタ》 2 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(24)- |
4 《水蓮の花びら》 3 《オパールのモックス》 4 《アメジストのとげ》 4 《虚空の杯》 1 《火と氷の剣》 -呪文(16)- |
2 《呪文滑り》 2 《漸増爆弾》 2 《魔術遠眼鏡》 1 《梅澤の十手》 4 《罠の橋》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
ヴィンテージ環境には土地1枚で3マナを生み出す《Mishra's Workshop》というぶっ飛んだカードにより、早いターンからアーティファクトをばら撒くデッキが存在している。《Mox Pearl》などMoxサイクルに加えて、《太陽の指輪》《魔力の墓所》などで最序盤に手札を吐き出し、マナが不要な後半はこれらを《電結の荒廃者》に食わせて打点に変換するという戦法を用いる。このデッキを、荒廃者とWorkshopから「Ravager Shop」と呼ぶのが最近の風潮だ(昔は「MUD」と呼ぶことが多かった)。
この「Ravager Shop」をレガシーに輸入したのが上記のリストとである。レガシーにはもちろん《Mishra's Workshop》は存在しないが、それでも《裏切り者の都》《古えの墳墓》と2マナ生み出す土地がある。
《Black Lotus》もMoxもないが、《オパールのモックス》と《水蓮の花びら》(これはヴィンテージでは制限カードだ!)で代わりを務められなくもない。
ここまでは、ただただヴィンテージからスケールダウンしたデッキの話になってしまっている。では、このデッキがヴィンテージの鎖から解き放たれている点に触れるとしよう。《虚空の杯》と《磁石のゴーレム》が好きなだけ使える!これに尽きるね。
どちらもヴィンテージで好き放題暴れ回った結果、制限カードに指定されているカードだ。レガシーでは、これらで対戦相手を苦しめ放題。《意志の力》で消されてはい終了ではなく、二の矢三の矢を飛ばすことができるのだ。これらのカードが早いターンに出てくると、それだけ行動不可能に陥り打つ手なしとなるデッキもある。ヴィンテージからその攻撃性を受け継ぎ、レガシーに殴り込んできたってわけだ。
デッキの動きとしては、まず2マナ土地から《虚空の杯》X=1か《アメジストのとげ》を設置するのが理想的。これで対戦相手の行動に制限をかけ、しかる後にモダンの「親和」デッキでも活躍している《大霊堂のスカージ》《鋼の監視者》そして《電結の荒廃者》などを展開。これらで殴ってゲームエンドまで駆け抜けるデッキだ。攻防一体の《磁石のゴーレム》、そのパンチ力の高さは一度使って味わってほしい。
アドバンテージの回復手段には乏しく、それらをかなぐり捨ててでも対戦相手の足を止めてその隙に殴る、というデッキなので、プレイングも思い切りよくやった方が良い結果に繋がるだろう。
レガシーの無色デッキと言えばエルドラージ軍団が思い浮かぶが、それらとはまた違った強さ・魅力がある。ちょっとしたヴィンテージ気分を味わいつつ、「ここにWorkshopが加わったら......」とヴィンテージはやっぱり恐ろしいなという感覚を体感するのも乙なもんだ。
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