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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:パニッシング・マーベリック(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:パニッシング・マーベリック(レガシー)
by 岩SHOW
今日は昔話をさせてもらえるかな。しょっちゅうやってるじゃないかって? まあ良いじゃないか、25年も続いてるゲームなんだぜ? 関わっている人それぞれに思い出がある、素敵なゲームなんだよということを、これから思い出を作っていく世代にも伝えたいなって。いやそこまで考えているわけじゃないけどね(どないや)。
時は遡って2011年。マジックにおいて、特にレガシーにおいて衝撃的なカードが2枚登場した。『ミラディン包囲戦』より、《緑の太陽の頂点》。そして初代『統率者』より《漁る軟泥》。この2枚の登場は、ちょっとした革命だった。
レガシーでは長きに渡って青が最強の色として扱われていた。打ち消しあり、ドローあり。コンボもコントロールもできる。この万能色・青に比べると、緑はやれることがそれなりにはあるんだけどもイケてるデッキを作れずにいる印象を受けたものだ。
この前年に《適者生存》デッキが大ブレイクを果たすも、2011年1月1日付で禁止カードに。Oh noooooo!!! あのカードによりさまざまな局面に対応するクリーチャーをズラリと1枚挿ししたシルバーバレットと呼ばれる形の構築が成立し、緑の時代がこれから始まると思われた矢先の出来事だった。(まあ《復讐蔦》を得て好き放題やっていてのでこれはしょうがない。《引き裂かれし永劫、エムラクール》を《忠臣》で釣られるのにも飽きていた頃ではあった。)
で、話は戻ってこの2枚。緑、やれることが増えた! 序盤に引けばマナ・クリーチャーに、中盤であれば相手を妨害するものに、終盤にはゲームを終わらせる打撃力にと臨機応変に使い分けることのできる《緑の太陽の頂点》。そしてそこからサーチされる選択肢の1つとして、対戦相手の墓地を喰らいつくしてライフを回復させ、自身のサイズも増長させるまさしく緑が誇る兵器である《漁る軟泥》。もっさりしてしまった緑が、またイキイキと輝きを取り戻したのである。
僕はこの頃、友人らとレガシーとリミテッドを中心に遊んでいた。当時はプレインズウォーカー・ポイントというものもなく、レーティングという勝ち負けで増減する数字をプレイヤーみんなが持っていた。これはフォーマットごとに設定されていたのだが、レガシーのレーティングで日本一を争い続けるプレイヤーたちが僕の周りに固まっていたのだ。東京の有名レガシープレイヤーたちには負けていられないと、彼らは切磋琢磨し日々勝ち星を重ね続けていたものである。
僕はプレイが下手なのでまったく上を目指してはいなかったのだが、彼らと一緒にデッキを調整することを楽しんでいたものである。そんなグループの一人が、「Zoo」と呼ばれる《野生のナカティル》などの軽量クリーチャーを用いたビートダウンデッキの使い手だったのだが、彼はこの2つの新カードをこのビートデッキに取り込むことにした。
エクステンデッドにおいてベン・ルビン/Ben Rubinが作り出した「ルビンZoo」の特徴である《罰する火》と《燃え柳の木立ち》による火力使いまわしエンジンを導入。
これで相手のクリーチャーは根絶やしにしつつ、こちらは《緑の太陽の頂点》から状況に即したクリーチャーを投下し続ける。中でも《聖遺の騎士》は最強クラスの1枚だった。
これで《燃え柳の木立ち》なり《不毛の大地》なり、その状況で一番強い土地を持ってきつつ墓地を肥やしてサイズアップ、殴りだしたらゲームエンドまでまっしぐらだ。相手の《罰する火》は《漁る軟泥》で食ってしまおう、土地も食って《聖遺の騎士》はこっちだけが大きい状況にしてしまおう、という対同型を強く意識した構築となっている。コントロール的な要素を色濃く持ちつつも《野生のナカティル》らでビートダウンもできる、そんな器用なデッキだ。
またこの年には《殴打頭蓋》もデビューしており、これと《石鍛冶の神秘家》のパッケージも貪欲に取り入れた。
このデッキを友人らのグループでシェアし、調整し、みんな同じ75枚で大会に出る......ということをやっていた。調整の集大成として選んだのはグランプリ・広島2011のサイドイベント、レガシーオープンだ。そこで、このデッキの創始者である徳山君が準優勝。懐かしいなぁ。
2 《森》 1 《山》 1 《平地》 1 《Taiga》 1 《Savannah》 1 《ドライアドの東屋》 2 《Plateau》 3 《樹木茂る山麓》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《乾燥台地》 3 《燃え柳の木立ち》 1 《カラカス》 1 《ボジューカの沼》 1 《不毛の大地》 -土地(24)- 4 《野生のナカティル》 3 《貴族の教主》 3 《クァーサルの群れ魔道士》 3 《石鍛冶の神秘家》 1 《漁る軟泥》 4 《聖遺の騎士》 1 《永遠の証人》 1 《最後のトロール、スラーン》 -クリーチャー(20)- |
4 《剣を鍬に》 4 《罰する火》 2 《森の知恵》 3 《緑の太陽の頂点》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《殴打頭蓋》 2 《遍歴の騎士、エルズペス》 -呪文(17)- |
3 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《ガドック・ティーグ》 2 《外科的摘出》 3 《赤霊破》 2 《流刑への道》 2 《窒息》 2 《クローサの掌握》 -サイドボード(15)- |
リストを見ると本当にいろいろと思い出す。《最後のトロール、スラーン》強かったなぁ、《遍歴の騎士、エルズペス》はこの時代の象徴的なカードだったが最近見なくなったなぁ、などなど......。
あと、決勝戦は5分で終わったことも思い出さずにはいられない。優勝者の使用デッキは瞬殺コンボデッキ「ベルチャー」だった。他のコンボデッキには勝てるようにサイドボードがしっかり用意してあるのだが、勢いが段違いの「ベルチャー」は話が別。1キル2キルで終わって、観戦していた僕らのところに「お待たせしました」と帰ってきたのが忘れられない、待ってないから(笑)。帰りの新幹線で調整仲間とあーだこーだ言いつつ、いつの間にか寝落ち。ああいう時間が良いんだよなぁマジックは。本当に。
なんでこのデッキの話をしだしたかというと、これを思い出させる、DNAを受け継いだデッキリストをつい先日見つけたからだ。
1 《森》 1 《平地》 2 《Savannah》 1 《Taiga》 1 《Bayou》 1 《Plateau》 1 《ドライアドの東屋》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《樹木茂る山麓》 3 《燃え柳の木立ち》 1 《カラカス》 3 《不毛の大地》 1 《演劇の舞台》 1 《暗黒の深部》 -土地(24)- 4 《ルーンの母》 3 《死儀礼のシャーマン》 1 《極楽鳥》 1 《貴族の教主》 2 《クァーサルの群れ魔道士》 2 《石鍛冶の神秘家》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《漁る軟泥》 1 《スクリブのレインジャー》 4 《聖遺の騎士》 1 《ラムナプの採掘者》 -クリーチャー(21)- |
4 《剣を鍬に》 4 《罰する火》 1 《森の知恵》 4 《緑の太陽の頂点》 1 《梅澤の十手》 1 《火と氷の剣》 -呪文(15)- |
2 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《再利用の賢者》 1 《鷺群れのシガルダ》 3 《輪作》 2 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《盲信的迫害》 2 《窒息》 1 《焦熱の裁き》 1 《ボジューカの沼》 -サイドボード(15)- |
《罰する火》《燃え柳の木立ち》コンボも、《聖遺の騎士》も、レガシーではすっかり見なくなったカードだ。だがしかし、使用者は確実に存在する。埋もれているだけなのだ、数の多いデッキに隠れがちなだけなのだ。あの頃回っていた燃え柳エンジンは止まってはいない。今でも、軽量クリーチャーを薙ぎ払っているんだ。世界のどこかで、《聖遺の騎士》が対戦相手を踏み潰している。《緑の太陽の頂点》から、《漁る軟泥》を出す動きは強いままなんだ。
そんな「あの頃」に、それ以降のセットで生み出されたカードやコンボが継ぎ足されている。《死儀礼のシャーマン》、《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボ、2017年に生まれたばかりの《ラムナプの採掘者》......まるで秘伝のタレだなこれは。
レガシー、その意味は遺産。引き継がれてるよ、2011年のあの頃が! まったく別のゲームなようで、繋がっているんだということをね。今回はデッキの動きどうこうよりも、そういうことを伝えたかった。
現在、この「パニッシング・マーベリック」を使っているプレイヤーも、何年か後に最新のレガシーのデッキを見てこう思うのだろう。「《ラムナプの採掘者》から土地使いまわすエンジン入ってる! 懐かしい~。」 この感覚、皆にもずっとずっとマジックをプレイし続けて味わってほしいなぁ。
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