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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:トリコツイン(ツインブレード)~ジェスカイという言葉がなかったころの話~(過去のスタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:トリコツイン(ツインブレード)~ジェスカイという言葉がなかったころの話~(過去のスタンダード)
by 岩SHOW
Magic Onlineの良いところ・好きなところは、環境末期になると行われる特殊なイベントだ。次なるセット、次なる環境に向けて充電期間に入るけれども、マジックは遊びたい......そんなプレイヤーの要望に応えるべく、特殊なリミテッド・フォーマットが期間限定で遊べる企画が催されるのだ。
9月上旬に行われたそれは「Throwback Standard Gauntlet」! Gauntlet(ガントレット)戦とは、用意されたデッキをランダムに託されてそれを用いて対戦を行うゲーム形式のこと。Throwback Standard、直訳するならスタンダードの先祖返り。すなわち、過去のスタンダード環境のデッキがランダムに支給され、それを用いて戦うというわけだ。古参プレイヤーは懐かしい気持ちに、新参プレイヤーは未知の体験ができて、僕はこの企画をとても良いものだなと楽しませてもらっている。
今回はシリーズ第7弾、テーマは『ワールドウェイク』。『アラーラの断片』ブロックと『ミラディンの傷跡』ブロックに挟まれた、『ゼンディカー』ブロック第2セット『ワールドウェイク』のカードが暴れまわった時代を再体験できる。2シーズン分のスタンダードのデッキが同居するため、当時でも味わえなかったドリームマッチも実現だ。そのためゲームバランスがとれているかというと、怪しい部分も多々あるが......懐かしさの前ではそんなもの吹っ飛ぶね!
そんなわけで、今回はこの企画で僕が最も多くプレイしたデッキ、「トリコツイン」を紹介しよう!
3 《島》 2 《平地》 3 《山》 4 《沸騰する小湖》 4 《乾燥台地》 1 《進化する未開地》 4 《金属海の沿岸》 3 《氷河の城砦》 2 《天界の列柱》 -土地(26)- 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《呪文滑り》 4 《詐欺師の総督》 1 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(10)- |
3 《ギタクシア派の調査》 4 《定業》 2 《呪文貫き》 2 《マナ漏出》 3 《四肢切断》 3 《欠片の双子》 1 《饗宴と飢餓の剣》 2 《殴打頭蓋》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(24)- |
1 《呪文滑り》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《業火のタイタン》 2 《精神的つまづき》 2 《よじれた映像》 3 《紅蓮地獄》 2 《焼却》 2 《神への捧げ物》 1 《天界の粛清》 -サイドボード(15)- |
「ツイン」とは、《欠片の双子》のことである。ご存知の方も多数、《詐欺師の総督》との2枚コンボを形成するオーラ呪文だ。
これを総督につける→総督タップで総督コピートークン→総督トークンの能力が誘発し、本家総督をアンタップ......これで好きな数だけトークンを生成できる。対戦相手のライフを削れるだけトークンを作って、総攻撃して終了。瞬殺コンボの代名詞として、近年でもモダンで活躍していたものだ(過去形、後に触れるよ)。
この2枚はスタンダード当時も同居していたため、コンボデッキ好きはこの2枚を用いたデッキを模索したものである。「トリコツイン」はそんなアプローチの1つだ。
このコンボの問題点は、クリーチャーにオーラをつける、という隙だらけのアクションを行わねばならないこと。《マナ漏出》などの打ち消し呪文を構えることもできるが、複数構えるのは難しい。この時代には《四肢切断》や《焼却》のような、軽かったり打ち消せない除去が存在したため、打ち消しがあるから通るというものでもなかったのだ。
そこで、「コンボを主軸にすると勝てないので、いくつかある勝ち手段の1つにしよう!」と組まれたこのデッキ。トリコ、というのはトリコロールの略。まだジェスカイという氏族がなかった頃、多くのプレイヤーは白青赤の3色デッキをフランス国旗を意味するトリコロールからとって「トリコ○○」と呼んでいたものである。懐かし~。
勝ち手段を増やすために白が足された理由は、このガントレットの中心に据えられた『ワールドウェイク』が生み出した鬼の1枚・《石鍛冶の神秘家》を使うためだ。
このクリーチャーは《殴打頭蓋》《饗宴と飢餓の剣》など規格外の装備品を探してきて、またそれを戦場に出すことができる能力を持っている。これ1枚で勝ち筋に十分なり得る、デンジャラス極まりないクリーチャーだ。
これを中心に据えた青白のデッキ「カウブレード」は、歴代スタンダードでも最強ではないかと囁かれる、とんでもない強さのデッキだった。これとツインデッキをハイブリッド、というのがこの「トリコツイン」だ。石鍛冶デッキ=剣を使うことから○○ブレードと呼ばれるため、「ツインブレード」と呼ぶこともある。まあこの辺は好みの問題だ。
デッキとしては......リストを見てもらうと分かるが、現行のモダンで使用が禁止されているカードがずらり。実に5種18枚! いかにこの時代に作られたカードが強力で、そしてそれらが飛び交うスタンダード環境が......もう「すごい」としか言えない語彙力を奪うレベルのものだったか、伝わると良いのだが。
基本は石鍛冶で《殴打頭蓋》を持ってきて、それを守りながら戦っていって......相手の隙を見て総督がターン終了フェイズに飛び出し、そして次のターンに双子コンボで勝つ。どちらかのプランが崩れても、もう片方がそれを補えるという、理論上は最強のように思えるデッキだ。
こんな無茶が許容されているのは《精神を刻む者、ジェイス》という稀代のぶっ壊れカードのおかげだ。
このカードは......とにかく、体感せずにマジック人生を終えるのはもったいない、唯一無二の体験をさせてくれる最強のアドバンテージエンジンであり、クリーチャー対策であり、対戦相手のトップデック封じであり、そしてフィニッシャーだ。だから勝ち筋は実質3本柱と言っても良いね、石鍛冶・双子・ジェイス。無敵感が止まらない。
こんなデッキ、最強に思えるでしょ? 実は、そんなことはなかった。純正の青白石鍛冶、上述の「カウブレード」があまりにも強かったため、それにわざわざ色を足してコントロール要素を下げたデッキでしかなかったりする。こんなに強そうなのに......実際に強いのに。『ゼンディカー』~『新たなるファイレクシア』期、恐るべし。世が世なら、天下を取っていたことだろう。周瑜みたいなもんだなぁ。
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