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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤現出(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤現出(スタンダード)
by 岩SHOW
結局のところ、『破滅の刻』というセットの登場でスタンダード主要デッキに新たに加わったのは、赤単の速攻デッキ「ラムナプ・レッド(ハゾレッドの方が良いという意見もあるね)」と、《約束の刻》を用いて土地を伸ばす「砂漠ランプ」といったところか。あとは既存のデッキにちょちょいと差し込まれるカードがそこそこあって、そして中には恩恵を受けられなかったデッキもある。まあ大体いつものスタンダードの光景ではある。
こういう時に肝心なのが、小さな変化は果たしてどれぐらいの意味を持つのかというところ。ちょうど1年ほど前からあるデッキを例に見てみよう。
6 《島》 4 《山》 4 《尖塔断の運河》 4 《さまよう噴気孔》 1 《高地の湖》 2 《ラムナプの遺跡》 2 《ウギンの聖域》 -土地(23)- 4 《秘蔵の縫合体》 4 《縫い翼のスカーブ》 3 《改良された縫い翼》 4 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー(15)- |
2 《稲妻の斧》 4 《安堵の再会》 4 《巧みな軍略》 2 《苦しめる声》 4 《熱病の幻視》 4 《コジレックの帰還》 2 《嘲笑 // 負傷》 -呪文(22)- |
1 《傲慢な新生子》 1 《ギラプールの希望》 1 《不憫なグリフ》 4 《払拭》 1 《稲妻の斧》 2 《暴力の激励》 1 《削剥》 2 《焼けつく双陽》 1 《即時却下》 1 《敵意ある砂漠》 -サイドボード(15)- |
青赤の現出デッキだ。生け贄に捧げたクリーチャーのマナ・コスト分だけ唱えるためのコストが安くなるが、普通に唱える場合には不要な色マナの支払いが必要になるという、一風変わった能力を持った無色のクリーチャー、それが現出持ち。それぞれ他の生物がエムラクールによりエルドラージに変質したもので、外見は気味が悪いものばかり。カードとしては《老いたる深海鬼》が頭3つほど飛びぬけて強く、これを唱えることをデッキのコンセプトとする価値は十分にある。中でも主流はこの青赤型だ。
知らない人のために、「青赤現出」のたどる勝利への道筋をおさらいしよう。このデッキはまず、縫い翼を墓地に置くところを第一目標とする。《縫い翼のスカーブ》そして《改良された縫い翼》だ。これらは両者ともに、墓地にある時にマナを支払い手札を捨てることをコストとして戦場に戻るという起動型能力を備えている。これで縫い翼を普通に唱えるのではなく、墓地から戦場に出そう。その際には《安堵の再会》《稲妻の斧》などで手札から墓地に落とし込みたい。
縫い翼が墓地から蘇ると、それにつられて《秘蔵の縫合体》も墓地から這い出してくる。これを縫い翼の捨てる手札のコストに充ててやれば、マナ効率の非常に良い展開を行うことができる。
ただ、これだけでゲームに勝てるほど現在のスタンダードは甘くない。ここから現出に繋げるのだ。縫い翼はそれぞれ点数で見たマナ・コストが4と5。これを現出コストとして捧げてやれば、《老いたる深海鬼》は3~4マナで唱えることができる。この深海鬼の奇襲でゲームを終わらせにかかるのだ。
対戦相手のアップキープにこれを唱えて、パーマネントを4つタップ。この際に、墓地に《コジレックの帰還》も落としておいてその能力も誘発させる。すべてのクリーチャーに5点ダメージを与え、戦場を更地に。その上で、上述のタップ能力で土地でも縛ってやれば、対戦相手は丸裸でこちらにターンを返すことになるだろう。プレイするタイミングを上手く調整してやれば、深海鬼を唱えて《コジレックの帰還》ですべて燃やし尽くされた後に《秘蔵の縫合体》が蘇り、戦場が一方的なものとなる。この理想の状況を作り出すことを目的としたデッキだ。
この「青赤現出」が新たに得たカードは......一般的には《機知の勇者》であるとして知られる。戦場に出た際に墓地を肥やすことができ、現出の生け贄にしてしまっても後々永遠能力で使いまわせる。一見、このデッキにはぴったりの1枚である。
しかし本日紹介するリストではこのカードは採用されていない。代わりに、新たにスタンダードに加わった《巧みな軍略》がしっかり4枚採用されている。
このカードは、ライブラリーの上から3枚を見て、その中の1枚を手札に、2枚を墓地に置くことができる。《機知の勇者》と同じ、墓地を2枚肥やすことができるのだ。墓地への貢献度は同じで、こちらはコストが2マナ。3ターン目の縫い翼の帰還を狙うのであれば、この《巧みな軍略》の方が秀でているというわけだ。後々の永遠能力よりも、現出を少しでも早く行うことを狙うことを考えれば、《巧みな軍略》の方がデッキに合っているかもしれない。
これで縫い翼と縫合体を墓地に置きつつ、3枚目の土地を見つけられたら完璧だ。ゲーム開始時の手札のハードルを下げる役目も担っているね。土地2枚でもなんとかゲームを始めることが許容されるのはありがたい。《屍肉あさりの地》が各デッキで採用されていることを考えても、より早く動けて、相手が隙がある時に複数行動で一気に現出を狙うということが可能な、コストの軽い《巧みな軍略》の利点は大きい。
ただこれが必ずしも正解というわけではない。《機知の勇者》にも強みはあるし、両者を組み合わせて採用するというのも手だ。登場から1年、『イクサラン』までの限られた期間で、現出デッキはどのような最終形態に至るのか。夏から秋にかけて、見届けてやりたいものである。
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