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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナイトメア・サバイバル(過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナイトメア・サバイバル(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 マジックは変わり続ける。変化に変化を重ねるその姿は、現在進行形の進化の形とも言えるだろう。今後も、その留まらない進化を見届けていきたいものだ。

 先日、マローことマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがエキスパンション・セットの仕様変更および基本セットの復活に関する発表を行った。そこには、現行の仕様の成功した点と、そしてしっかりと問題だった点が挙げられていた。

 問題だった点を反省し、良かった点を伸ばす。蛇だって不要な足をバッサリと切り捨てたことで、機動力と柔軟さを獲得し世界中ありとあらゆる環境に適応し、繁栄した。環境に適合したものが生き延びる、まさしく《適者生存》ってやつだ。

 なんとか無理やりこじつけてみたが、マジックがこれからもますます進化していくことを祈って、そしてそのための新しい試みを祝う意味を込めて、今日はマジックの24年の歴史の中でも高い人気を誇ったデッキを紹介しよう!

Brian Selden - 「ナイトメア・サバイバル」
世界選手権1998 優勝 / スタンダード (1998年8月12~16日)[MO] [ARENA]
8 《
1 《
2 《カープルーザンの森
2 《地底の大河
3 《真鍮の都
2 《反射池
2 《知られざる楽園
1 《宝石鉱山
1 《ヴォルラスの要塞

-土地(22)-

4 《極楽鳥
4 《花の壁
2 《根の壁
1 《オークの移住者
1 《スラルの外科医
2 《スパイクの飼育係
2 《ウークタビー・オランウータン
1 《大クラゲ
2 《ネクラタル
1 《雲を追う鷲
1 《スパイクの織り手
1 《貿易風ライダー
1 《新緑の魔力
1 《夜のスピリット

-クリーチャー(24)-
2 《炎の嵐
2 《巻物棚
4 《適者生存
4 《繰り返す悪夢
2 《ロボトミー

-呪文(14)-
1 《堅牢な防衛隊
3 《エメラルドの魔除け
2 《夜の戦慄
2 《ファイレクシアの炉
2 《紅蓮破
1 《宝石の広間
4 《沸騰

-サイドボード(15)-
(製品「World Championship Decks 1998」より)

 「ナイトメア・サバイバル」!《適者生存》を使ったデッキはいずれも人気だが、やはりこのフルパワーな状態のデッキが最高だ。《適者生存》を使ったデッキはその英名から「~サバイバル」「サバイバル~」と呼ばれた。ではナイトメアとは? 《繰り返す悪夢》のことである。英語圏では「繰り返す」の部分をフィーチャーして「Recurring Survival」、さらに縮めて「Rec-Sur」なんて呼んだりも。

 この2枚はともに『エクソダス』に収録されたエンチャント。《適者生存》は手札からクリーチャー・カードを捨てることで、ライブラリーから他のクリーチャー・カードを探して手札に加えることができる。まさしくその名の通り、ゲームの状況に適したクリーチャーを手にすることができるというわけだ。

 手札を捨てて{G}も払って、というコストは初心者には一見あまり強そうに見えないかもしれない。このエンチャント1枚分、手札は減っているわけだしね。ただ、欲しいクリーチャーが思いのままに手に入るという報酬は、それらのコストを払ってもお釣りが出るレベルの強力アクション。ゲーム序盤は、マナ・コストが重いクリーチャーは不要で、《極楽鳥》のようなマナ・クリーチャーや《花の壁》などの盤面を支えたりアドバンテージを稼いでくれるクリーチャーのほうがありがたい。逆に終盤では、これらのクリーチャーは無駄ドローになってしまいがち。こんな問題も《適者生存》1枚で完全解決! 量的なアドバンテージは稼げずとも、質的アドバンテージはこれに比類するものがないレベルだ。

 《繰り返す悪夢》はこうして捨てられたクリーチャーを墓地に眠らせず、呼び戻す。このエンチャントを戦場に出し、クリーチャーを生け贄に捧げつつこれ自身を手札に戻すことで、クリーチャーを1体墓地から戦場に出すことができる。これでむしろ、フィニッシャーを通常よりも早いターンに叩きつけることも、もちろん特定のデッキに対して強烈な能力を持ったクリーチャーを何度も何度も使いまわすことだって可能だ。

 この2枚のエンチャントを軸に、考えうるあらゆるクリーチャーを詰め込んだのが「ナイトメア・サバイバル」だ。

 このデッキはストレートに言って、強すぎた。1枚挿しのクリーチャーを大量に採ることで、デッキの取れるアクションのバリエーションが非常に多い。クリーチャーでできることだけでも......

 なんだよこれ......有能な将を多数抱えた鋼の要塞、とでも言おうか。並大抵のデッキではこの牙城は切り崩せない。「ナイトメア・サバイバル」がここまでのデッキになったのは、2大エンチャントの強さと、クリーチャーのバリエーションの豊富さ、そしてそんな無茶な構成を支える多色土地の強さ。これら3つが重なった結果だ。時代に、環境に、最適なデッキだったと言えよう。

 ただ、その支配的な強さのあまり、2大エンチャントはそれぞれ別のタイミングではあるが禁止カードに指定されてしまった。これも今となっては英断だったと言えるのではないだろうか。すべての変化は、その先への進化のために。マジック:ザ・ギャザリングが、その歩みを止めることはないだろう。

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