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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゼウスと波動機(スタンダード&過去のスタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゼウスと波動機(スタンダード&過去のスタンダード)
by 岩SHOW
デッキビルダーとは。文字通りデッキを作る人のことだ。やはりゼロからデッキを作るのはマジックの醍醐味、最高に楽しい瞬間である。
ただ、そのデッキで満足できるかというと、話は別である。ここで言う満足とは、満足のいく結果、すなわち勝利を重ねることだ。さすがに負けるためにマジックをしている人はいないはずで、ゲームをやる以上すべてのプレイヤーが目指しているのは勝利。自分のデッキで勝つことができればこれに勝る喜びはないわけだが、ただそれは決して簡単なことじゃない......そのデッキが独創的であればあるほど、勝利の美酒を味わうのは至難の業となっていく。困難であるからこそ、挑みたくなるってなもんなんだけどもね。
ビルダーの話となると出てこないわけがない男、AAさん(浅原晃)。AAさんは昔から変わらず、ユーモラスでありながらカッコイイ、そして強いデッキを作って、ここが大事なんだけども、そのデッキを使って自分自身の手で結果を残している。ただ突拍子もないデッキを作るのではなく、しっかりと「勝てる」ビジョンがあるからこそのデッキチョイス。素晴らしい、としか言いようがない。
「現出ドレッジ」はその後のさまざまな現出系デッキの始祖となり、《老いたる深海鬼》の強さを世界中に知らしめた。『アモンケット』ではこれまた異次元のデッキ「ゼウス・サイクル」......《新たな視点》コンボをプロツアー前に世に放ち、これはもしかしたら現出に続いてプロツアーでも暴れるのでは?とワクワクさせてくれた。
僕はこのデッキが世界にその存在を見せつけた最初の試合の実況をしていたのだが、初見では何が起こるのかわからないワクワク感、対戦相手を置き去りにして延々とカードを引き続ける浅原さんという見た目の面白さで、それはもう爆発的な盛り上がりを見せたものである。
5 《森》 1 《沼》 1 《島》 1 《平地》 2 《要塞化した村》 4 《まばらな木立ち》 4 《隠れた茂み》 4 《灌漑農地》 1 《異臭の池》 -土地(23)- 4 《砂時計の侍臣》 4 《シェフェトのオオトカゲ》 1 《終止符のスフィンクス》 -クリーチャー(9)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《花粉のもや》 4 《葬送の影》 4 《新たな信仰》 3 《奇妙な森》 4 《排斥》 4 《新たな視点》 1 《副陽の接近》 -呪文(28)- |
4 《うろつく蛇豹》 1 《周到の神ケフネト》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《造反の代弁者、サムト》 2 《終止符のスフィンクス》 3 《光輝の炎》 1 《過ぎ去った季節》 1 《山》 -サイドボード(15)- |
《新たな視点》によってサイクリングコストが{0}となったカードを投げ続け、《シェフェトのオオトカゲ》《砂時計の侍臣》のサイクリング時に誘発する能力を用いてマナを増やし、サイクリングしたカードを《葬送の影》で回収。
ドロー&マナ生産を繰り返した後に《副陽の接近》を唱える→7回サイクリングして《副陽の接近》を引き込み、そのまま唱えて勝ち、という......壮大な物語のようなコンボを決めて勝つ。
相手の攻撃を《花粉のもや》でいなして、その返しでコンボを決めるという、ビートダウンデッキには強い構成になっていたので、「マルドゥ機体」相手に勝ちまくっていたのも記憶に新しい。
このデッキを組んだAAさんに「どうやってこのコンボを思いついたんですか?」と聞くと「真剣にカードリストを眺めていればわかる。このデッキは開発側の意図を読み解くことができれば自然と組める」というお返事が。う~ん深いな。そういう、僕らにはない「新たな視点」を持つことで面白く、かつ勝てるデッキを作れるようになるのかも?
ちなみにこのリストは毎度おなじみの「サイドボードは適当」なので、このデッキを今使いたいのであれば各自ちゃんと今のスタンダードに合ったサイドを用意するのが良いだろうね......。
サイクリングと開発側の意図。このキーワードから思い浮かべられるデッキが、もうひとつある。今日はそちらも紹介しよう。《波動機》デッキだ!!
4 《漂う牧草地》 4 《離れ島》 4 《汚染されたぬかるみ》 4 《薄煙の火口》 4 《滑りやすいカルスト》 4 《枯渇地帯》 -土地(24)- 4 《フェアリーの大群》 2 《法の信奉者》 4 《ふくれたヒキガエル》 4 《闇番のエルフ》 4 《ペンドレルのドレイク》 4 《砂州の大海蛇》 -クリーチャー(22)- |
2 《水蓮の花びら》 3 《暗黒の儀式》 4 《波動機》 1 《排除》 2 《スクラップ》 2 《生ける屍》 -呪文(14)- |
特に結果を残したデッキではないので、当時大体こんな感じのリストだったよなぁというサンプルリストを。『ウルザズ・サーガ』において、初めてサイクリング能力が作られた。この時はまだ、すべてのサイクリングのコストは{2}に統一されており、事故った時に大型クリーチャーや、唱え時を逃した除去や打ち消し呪文なんかを捨てて他のカードへ、という逃げ道の用意されたカードとしてデザインされていた。その分《恐怖》→《抹殺》のように呪文自体のコストが重くなっていたり、《マハモティ・ジン》→《漂うジン》のようにカードパワーが下げられていたりと、サイクリングの無いカードよりは弱めにデザインされていた。サイクリングの可能性が広がったのは『オンスロート』からで、ウルザ時代はまだまだ事故回避の保険込みのカードに過ぎなかった。
このサイクリング・コストを、{2}軽くして{0}にしてしまうアーティファクト《波動機》。これが、開発側の意図に反するデッキを生み出してしまった。デッキの8割ほどをサイクリングカードで固め、《波動機》から延々サイクリングし続けて墓地をクリーチャーでパンパンにしたら《生ける屍》で全員復活!という派手な動きをするリアニメイト系コンボデッキが誕生。
《波動機》に完全依存ではあるが、割と安定してコンボを決められる。3ターンキルとかも狙えたりするのだが......サイクリングがこのように使われるとは開発陣も想定していなかったようで、《波動機》はあえなく禁止カードとなった。これはまあ、しょうがないね。後にエクステンデッドでデッキを組んでみたりしたが、この独特の動きはなかなか面白い。エクストリーム「Living End」とでも言おうか。一人回しが好きな人は組んで手元に置いておくと良いかもしれない。
どんなカードやセットにも、それを作った人の考えや思いが込められている。真意を見抜くことができれば、環境にマッチしたデッキを作ることができるかもしれない。『アモンケット』にもまだまだ秘められし"何か"があるかもしれない。今一度、全カードとにらめっこしてみる......か?
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