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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:プリズン(エクステンデッド)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:プリズン(エクステンデッド)

by 岩SHOW

 変形サイドボードの歴史は長い、と今週の頭で述べた。では遡ればどこまでいくことができるのだろうか。

 これが最古、というものではないが、これより20年前にその姿を発見。1997年、プロツアー・シカゴ第3位、Jon Finkelのリストを見てみよう!......いや待て。フィンケル?そう、ジョン・フィンケル/Jon Finkelその人だ。プロツアーTOP8入賞回数16回、と考えれば確かにこの頃から勝っててもおかしくはないが......いや~おそろしい。ちなみに、これが彼自身3度目のTOP8だ。ひぇ~。その前の2回はジュニア部門でのものであるため、本格的にデビューしたのこのプロツアーと考えることもできる。

 閑話休題。改めて、我らが殿堂、ミスター・プロプレイヤーのフィンケルが使用したデッキを見てみよう!

Jon Finkel - 「プリズン」
プロツアー・シカゴ1997 3位 / エクステンデッド (1997年10月10~12日)[MO] [ARENA]
4 《Tundra
3 《Savannah
2 《Plateau
1 《Volcanic Island
1 《氾濫原
4 《ミシュラの工廠
2 《知られざる楽園

-土地(17)-


-クリーチャー(0)-
4 《税収
2 《剣を鍬に
4 《対抗呪文
4 《乳白色のダイアモンド
3 《空色のダイアモンド
3 《冬の宝珠
2 《ガイアの祝福
2 《森の知恵
1 《紅蓮地獄
3 《沈黙のオーラ
4 《氷の干渉器
3 《ハルマゲドン
3 《鋸刃の矢
3 《神の怒り
2 《ジェラードの知恵

-呪文(43)-
3 《アーナム・ジン
3 《ワイルドファイアの密使
2 《紅蓮破
1 《赤霊破
1 《解呪
1 《ガイアの祝福
1 《ハーキルの召還術
1 《沈黙のオーラ
2 《ジェラードの知恵

-サイドボード(15)-

 何とも時代を感じるリストで...色々たまらんなぁ。フォーマットは発足したばかりのエクステンデッド。ローテーションによりスタンダードを去ったカードの受け皿として作られたフォーマットで、その黎明期にはこのデッキのようにデュアルランド(2色土地)をがっつり積んで、中心となる1色を他の3・4色のカードでサポートした、そんなデッキがとにかく多数見られる。特に白絡み。《税収》のおかげで簡単にデュアルランドをサーチできるため、白いデッキは色を足し得環境だったのだ。

 この白タッチ青赤緑のデッキは、「プリズン」と呼ばれるデッキタイプに属する。プリズンとはPrison、牢獄の意。対戦相手を閉じ込め、自由を奪うという意味だ。

 この戦略の中核を担うのは《冬の宝珠》と《氷の干渉器》。干渉器というなんでもタッパーと、土地のアンタップを阻害する宝珠。この2つの組み合わせは見た目以上に極悪で......《冬の宝珠》はタップ状態であればそのアンタップ制限能力のスイッチがオフになる。これを利用して、対戦相手のターン終了時に宝珠のスイッチを干渉器でオフ、自分のターンは普通に土地をアンタップしてマナを使い、対戦相手のターンのみ冬が訪れる......という一方的なマナロックに持ち込むことが可能だ。

 毎ターン頑張って土地を1つアンタップしてマナを確保しようにも、それを干渉器で氷漬けにされたり《ハルマゲドン》で吹き飛ばされて宝珠でハマって......と、凍結地獄で相手の行動をシャットアウト。後は......特段フィニッシャーを展開せず、そのままダッラダラと長い冬を過ごしてもらう。ライブラリーアウトを《ガイアの祝福》で回避して......あとは対戦相手の投了を待つのみ。気が長すぎるデッキである。

 このデッキが持つ変形サイドボードは《アーナム・ジン》《ワイルドファイアの密使》。これら4マナのアタッカー2体を投入し、マナロック状態の相手をブン殴る!

 メインで時間のかかるデッキだからこそ、サイド後はクリーチャーでの短期決戦を狙うというのは理にかなっている。これぞ、変形サイドがアグレッシブ・サイドボードと呼ばれていたゆえん。

 フィンケルは当時18歳そこらのはずだが......もうマジックで、プロツアーで「勝つ」ための手法を身につけていたのだ。おそろしや......。ちなみ当時はこのサイド後に戦法を変えることを「スイッチャルー」と呼んでいたらしい。なんだかかわいいね。

 まあこのデッキを使うなんて場面はほぼ確実にやってこないだろうけども、化石を見る感覚で楽しんでもらえたのなら幸いだ。僕は常々、今現在活躍しているプロプレイヤーが過去にタイムワープすればどうなるか?ということを考えている。確実に今よりもマジックの研究が進んでいなかった時代である。その最新鋭の理論・感覚を持ち込むと、全く違うデッキが生まれたりするのだろうか? このプリズンも、まだまだ進化するかもしれない。何かの役に立つ時間じゃないけど、マジックが遺してくれた20年の歴史は、まだまだまだまだ噛めば噛むほど味が出る。

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