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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒コントロール(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒コントロール(スタンダード)
by 岩SHOW
「スタンダードの環境初期はアグロが勝つ」というのは近年のマジック界で定説とされている。コントロールデッキとは、ただ除去や打ち消しにアドバンテージの取れるカードを詰め合わせればデッキになるというわけではなく......仮想敵を見定めた上で相手が使用してくるカードやデッキに刺さるカードを選定して構築する必要があるので、未だ敵の全容が確認できない環境最初期においてはアグロデッキ側が優位に立ち回りやすい、ということだ。最近のマジックは低マナ・コストのクリーチャーも強力なものが多く、除去や打ち消しといった呪文はそれらに比べると弱めにデザインされていることが多いので、なおさらその傾向にあると言える。
それでも、世のコントロール・ラバーズは諦めない。発売前からカードギャラリーとにらめっこして、どんなアグロデッキ・あるいはコンボデッキが組まれるのかをしっかり想定して、それらに対して効果的なカードを採用すれば、定説を打ち破ることだってできるはずだ。特に『霊気紛争』は除去にも打ち消しにも、コントロール向けのGood Cardがズラリ。これだけ揃えば上等ッ!アグロもコンボも狩ってやるッッ!
8 《沼》 6 《島》 4 《窪み渓谷》 3 《詰まった河口》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 3 《進化する未開地》 -土地(25)- 4 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(4)- |
3 《予期》 4 《天才の片鱗》 1 《否認》 3 《不許可》 3 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 1 《橋上の戦い》 3 《ヤヘンニの巧技》 1 《餌食》 3 《最後の望み、リリアナ》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 2 《策謀家テゼレット》 3 《キランの真意号》 -呪文(32)- |
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《致命的な一押し》 2 《鞭打つ触手》 1 《餌食》 1 《ヤヘンニの巧技》 2 《否認》 2 《精神背信》 1 《失われた遺産》 2 《機械医学的召喚》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
『カラデシュ』以降のスタンダードでは定番の、クリーチャーは《奔流の機械巨人》一本スタイルが清々しくて好いたらしい。この6マナ5/6瞬速は、多大なるアドバンテージをもたらしつつあっという間にゲームを終わらせるパンチ力を持っている。どれだけ環境が変わろうとも、このカードがある限り青いコントロールはこれを使い続けることになるだろう。
まずは呪文を上から......《予期》《天才の片鱗》はカードを引き込む役割を担う。《天才の片鱗》はカード1枚が2枚になるのでアドバンテージを取れるが、《予期》は別に手数が増えるわけではない。ただ、コントロールはもし序盤に土地が詰まってしまったらそれだけで負けてしまうので、緊急時に土地を探せるカードがあるに越したことはない。逆にもう土地は要らんぞという状況で、2マナで有効な1枚を掘り出せるのも良いところだ。これらを使ってしっかりと土地を並べ、手札には対戦相手のアクションへの回答を補充していきたい。
打ち消し呪文は抑えめの4枚。定番の《否認》1枚(サイドに2枚)と、期待の新顔《不許可》3枚という組み合わせだ。
《不許可》は呪文だけでなく、起動型能力と誘発型能力も打ち消せる万能呪文。よく言われているのは、コントロールが苦手とするうっかり戦場に出てしまったプレインズウォーカーの大マイナス能力、俗に言う「奥義」を打ち消して敗北を防ぐことができるという点。もちろん、そもそもプレインズウォーカー自体を打ち消せればベストだが、保険があるというのはいいことだ。《虚空の粉砕》と同じマナ域なので、今後は能力を打ち消せる点と打ち消したカードを追放できる点で天秤にかけて、そのタイミングで効果的なカードが採用されることになりそうだ_あるいは両方とってメガパーミッション(※1)復権とかも?
(※1:呪文を打ち消すカードを主体に組まれた、古き時代に成立した青いコントロールデッキを「パーミッション」と呼ぶ。対戦相手が打ち消しがないか許可を得て(permission)から行動するのに由来する。これらの中でも打ち消し呪文を大量に積んだものは「メガ~」「フル~」など強調した名称を与えられていた)
『霊気紛争』の新戦力は打ち消しに留まらない。除去も充実だ。スタンダードを飛び越えてオールフォーマットでの活躍が予想される《致命的な一押し》。
機体デッキのような軽くて打点の高いクリーチャーや機体を1マナで弾ける除去はありがたく、これと《闇の掌握》で何とか戦っていけそうだ。《橋上の戦い》はお試し枠だろう。大型にもマナがあれば対処できて、ライフを吸える点が実戦の場でどれほど輝いたのか気になるところ。
そして『霊気紛争』から目玉サイクル(※2)の1つとして発売前から大注目されていた《ヤヘンニの巧技》!
(※2:ある特定のコンセプトを共有するカード群のこと。基本的には各色に1枚以上ずつ、同一レアリティで形成される。『霊気紛争』のこれは各色の伝説のクリーチャーと、そのクリーチャーの「巧技」がこれにあたる。時にはセットの壁、ブロックの壁を越えた長期間に渡って作られるメガ・サイクルやメガメガ・サイクルなども存在する。)
これは『マジック・オリジン』のスタンダード落ちにより《衰滅》という全体除去を失っていた黒コントロールには待望の逸品。1枚で複数のクリーチャーと交換することが可能な除去で、現実的な4マナというコストが嬉しい。さらに、この呪文は手札から3マナ以下の呪文を、それのマナ・コストを支払わずにプレイしても良いというオマケまでついてくる。ここが大きい。
全体除去は、撃った→再展開された→対処が追い付かない......ということが往々にして起こる。そこを4ターン目にすべての土地をタップして隙だらけになりながらも、クリーチャーをすべて除去した後に《最後の望み、リリアナ》を先出しできれば......話は大きく変わってくる。そこからはこちらが馬乗りになって、相手のやることなすことをすべて弾いていって勝利へと持っていけるかもしれない。このコンビネーションを試したいがためだけに、青黒のコントロールデッキを組んだという人も少なくないだろう。
リリアナの名が出たのでプレインズウォーカーにも触れていこう。このデッキに採用されている枚数は7枚と多めだ。リリアナは前述の巧技とのシナジーを抜きにしても小型のクリーチャーをプチプチと潰しながらゾンビ量産で勝ちにつながる、現スタンダードでも屈指の強力なプレインズウォーカーだ。《秘密の解明者、ジェイス》《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》と、ドローと除去を両方こなすアドバンテージの塊も納得の採用だ。
そして、青黒のコントロールということで《策謀家テゼレット》が採用されていることは見逃せない。
このプレインズウォーカーは一見するとアーティファクトを多数用いるデッキでこそ使われそうなカードに見えたが、このデッキのように枚数が少なくても存在感を発揮するようだ。エーテリウム電池を作ることでコントロールデッキにはいつだってほしいマナを確保し、それらを使わずに並べると[-2]能力でクリーチャーを潰すことができるようになる。このエーテリウム電池は《橋上の戦い》の即席に充てながらマナを出す......ということはできないので注意されたし。あとエーテリウム電池で紛争を達成できることを忘れずに。
このテゼレットをはじめ、多数投入されたプレインズウォーカーと相性が良いのは《キランの真意号》。特に忠誠度の高いテゼレットとの相性は抜群。
この機体でプレインズウォーカーを護りながら、4/4飛行・警戒で殴って早期決着も狙える。コントロールデッキの最悪の展開は、相手のアクションを捌ききるもこちらも全く攻められず、第二波第三波とリカバリーした相手に結局押し敗けること。軽いマナ・コストで隙無く展開でき、ゲームを終わらせる能力の高い《キランの真意号》は、機体デッキのみならずコントロール向きのカードでもあったのだ。
この環境初期に大型トーナメントの上位に入賞という好成績を収めた「青黒コントロール」。今後、スタンダード環境が二転三転した際にも、その流れを読み切って適応した形のものが姿を現すのだろうか? テゼレットのエーテリウム電池を活かして3色でも組める可能性もあるね。
自分のデッキをどうするかだけでなく、相手はいったい何者なのか、それを見極めるように意識しよう。彼を知り己を知れば百戦危うからず、策謀を張り巡らすべし。
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