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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Critical Mass(神河ブロック構築)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Critical Mass(神河ブロック構築)

by 岩SHOW

 ブロック構築というフォーマットがなくなって久しい。かつてはプロツアーのフォーマットにも採用される由緒正しき構築フォーマットのひとつだったのだが......1ブロック2セット制への移行に伴い、グランプリやプロツアーの種目から外れ、これを遊ぶ機会というものはなくなってしまった。

 個人的にはブロック構築は好きだった。『ローウィン』・『シャドウムーア』ブロック構築で開催されたグランプリ・神戸2008なんて、参加までにデッキを練るのが楽しくてしょうがなかったなぁ。スタンダードよりもカードプールが狭い分、意外なカードにお呼びがかかったり大活躍したりと、カード1枚1枚を愛する系おじさんがニンマリできるフォーマットだった。

 今日は昔を懐かしんで、かつてブロック構築で活躍したデッキを紹介しよう。このデッキは僕の中でいろいろと記憶に残るものとなっている。

Gerard Fabiano - 「Critical Mass」
グランプリ・メキシコシティ2005 6位 / 神河ブロック構築 (2005年9月3~4日)[MO] [ARENA]
10 《
7 《
1 《先祖の院、翁神社
1 《雲の宮殿、朧宮
1 《水辺の学舎、水面院
2 《氷の橋、天戸
1 《嘆きの井戸、未練

-土地(23)-

4 《桜族の長老
2 《悟りの武士、勲雄
4 《北の樹の木霊
4 《曇り鏡のメロク
4 《潮の星、京河

-クリーチャー(18)-
4 《師範の占い独楽
3 《密の反抗
4 《邪魔
4 《木霊の手の内
4 《梅澤の十手

-呪文(19)-
4 《呪師の弟子
2 《節くれ塊
2 《消耗の渦
1 《密の反抗
3 《不忠の糸
2 《引き裂く蔦
1 《抗い難い知力

-サイドボード(15)-
(記事「The Craft of Sideboarding」 より)

 このデッキは神河ブロック構築で使用された「Critical Mass」というものだ。リスト自体はグランプリ・メキシコシティ2005にてTOP8に残ったものである。デッキ名は日本語に訳すと「限界(臨界)質量」。なんのこっちゃだが......『神河救済』の構築済みデッキに同名のものが存在しているので、それの日本語名に助けてもらおう。『集積の力』。なるほど、まだよくわからん。ここでネタバレになってしまうのだが、このデッキ名の決め手となっているのは《節くれ塊》。

 これの英名は「Gnarled Mass」であり、このMassをかけたものとなっている。限界質量だとわかりづらいが、ある結果を得るために必要な数のことも意味する。勝利に必要なMassってことなのだろう。まあ言葉遊びにそうもこだわらなくても良いか。本編行ってみよう!

 神河ブロック構築に存在したデッキを振り返ってみよう。まず、この環境を代表するデッキ「けちコントロール」。《けちな贈り物》で特定のカードをサーチしつつ、《花の神》+《魂無き蘇生》も持ってきて秘儀呪文をぐるぐると回転させるコントロールデッキだ。また、同じコントロールで言えば「呪師コントロール」も忘れちゃいけない。同じコントロールでも《呪師の弟子》《巻物の君、あざみ》でドローしながら打ち消し呪文を連打する、いわゆるパーミッションデッキだ。《今田家の猟犬、勇丸》などの軽量クリーチャーを展開し、相手の動きは《塵を飲み込むもの、放粉痢》で締め付ける「白ウィニー」も数が多く、黒単や赤単のビートダウンがそれに続く、というところか。

 この環境において「Critical Mass」は、上記のコントロール2種に対して有利に立ち回れるクロック・パーミッション(※1)として誕生したのだった。

(※1:クロックとは、ダメージを刻むクリーチャーなどのパーマネントのこと。パワー2とパワー3のクリーチャーをコントロールしている場合、これで4回殴れば20点のダメージを与えて勝利することができる。すなわち、これらは「4ターンクロック」と言うことができる。このクロックを展開しつつ、パーミッション戦略を取るデッキのことをこう呼ぶ。パーミッションとは打ち消し呪文で対戦相手のアクションをコントロールすることで、呪文を唱えることを許可(Permission)することからこう呼ばれている。)

 「けちコントロール」はその名の通り《けちな贈り物》を使ってナンボのデッキだが、「Critical Mass」はこれを打ち消すことで機能不全に陥らせる。また、同じく打ち消し呪文を搭載する「呪師コントロール」との対戦では、緑を採用している分《桜族の長老》《木霊の手の内》を用いてマナを伸ばすことができ、1ターンに取れる手数で上回ってゲームを進めることができる。

 このデッキはマナを伸ばしながら対戦相手のアクションは打ち消す、という道筋をたどり、隙を見てクロックを展開。その面々も《北の樹の木霊》《曇り鏡のメロク》といった神河オールスターだ。

 これらを序盤に重ね引いても邪魔ではあるし、十分にマナが伸びているのに加速を引いても意味がない。そこで役に立つのが《師範の占い独楽》。序盤はマナ加速と打ち消しを、後半はクリーチャーたちと殺戮兵器《梅澤の十手》を探してくることでデッキを円滑に回す、このデッキにとってはなくてはならない存在だ。

 このデッキをご覧になった方の中で、比較的最近マジックを始めたプレイヤーの皆さんは「伝説のカードをこんなに採用するのか......」と驚かれるかもしれない。同一の伝説のクリーチャーおよびアーティファクトがこれだけ採用される構築は、今日のデッキではなかなか見られるものではない。これは当時、いわゆる「レジェンド・ルール」なるものが現在と違うものだったためだ。

 伝説のパーマネントは戦場全体で同時に1枚しか存在できず、後から同名のカードが出てくると双方を生け贄に捧げる「対消滅」という現象が起こった。ドッペルゲンガーに出会ってしまった、みたいなものと考えてくれるとわかりやすいかな。これ、言い換えれば対戦相手と同じ伝説のカード=除去として用いることができるということ。つまり、《梅澤の十手》に対抗するには《梅澤の十手》をデッキに4枚採用するのがベストというわけだ。対戦相手とクリーチャーのチョイスが被ってしまっても問題のないようにしっかりと重要どころも4枚採用だ。

 また、《潮の星、京河》はこのルールを利用して自分から2体目を出して対消滅、対戦相手のクリーチャーを2体奪うなんていうスーパームーブも可能だ。現行のレジェンド・ルールに変わった時は違和感がすごかったが、もうすっかり慣れたんだななぁとこの原稿を書いていて実感した。

 たまにはこうやって昔のデッキを振り返ることをどうか許してほしい。おじいちゃんには懐かしむという行動が必要なんじゃ......先人のデッキが若きプレイヤーたちに何かしらのインスピレーションをもたらしてくれたりしたら、デッキ紹介者冥利に尽きるというものだ。

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