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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント・アグロ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント・アグロ(スタンダード)

by 岩SHOW

 カードゲームのテクニックの1つに「ブラフ」がある。特定のカードを持っているorいないのにその逆であるかのように見せかけて対戦相手を騙すのである。海外のポーカー番組などを観ているととんでもないブラフをかまして勝利するプレイヤーがいたりする。

 マジックでは度が過ぎるブラフは非紳士的なので推奨しないが、土地を立てておいて対戦相手に「打ち消し呪文を構えているぞ」と見せかけて相手に大事な呪文の使用を躊躇させたり、4/4のクリーチャーが立ちふさがっているのに2/2で攻撃をして「《巨大化》を持っているぞ」と見せかけてダメージを通したり......こういったブラフで細かい差をつけて勝利を拾うことがゲーム中に存在する。最近だと、白を含む5マナを立てて不自然な攻撃を受けたら《大天使アヴァシン》がちらついてブロックし辛い...といった具合に。

 ブラフとは少々違うが、構築の段階でこれを行うこともある。あるデッキに似た構成ではあるものの、そのデッキでは定番となっている特定のカードを採用しない形のデッキを組む。1ゲーム目を戦った対戦相手は「○○デッキか、じゃあ××に効くこれをサイドインしよう」と特定のカードに対抗する手段をデッキに入れて2ゲーム目以降に臨むが......そんなものはデッキに入っていないので、対戦相手は不要なカードを抱えたままゲームを行うこととなるのだ。これはそう簡単に決まるわけではないが、フライデー・ナイト・マジックなんかで実験的にやってみるのも面白いんじゃないかなぁと。ちょうど良いサンプルがここにありまっせ!

Blade400 - 「バント・アグロ」
Magic Online Competitive Standard Constructed League 5勝0敗 / スタンダード (2016年8月14日)[MO] [ARENA]
3 《
4 《平地
2 《
3 《梢の眺望
3 《大草原の川
4 《ヤヴィマヤの沿岸
2 《伐採地の滝
4 《進化する未開地

-土地(25)-

4 《薄暮見の徴募兵
4 《森の代言者
3 《無私の霊魂
4 《反射魔道士
4 《呪文捕らえ
3 《不屈の追跡者
2 《異端聖戦士、サリア
1 《巨森の予見者、ニッサ
1 《大天使アヴァシン
4 《老いたる深海鬼

-クリーチャー(30)-
4 《ドロモカの命令
1 《実地研究者、タミヨウ

-呪文(5)-
2 《ラムホルトの平和主義者
1 《巨森の予見者、ニッサ
2 《石の宣告
2 《神聖なる月光
2 《否認
3 《オジュタイの命令
2 《即時却下
1 《悲劇的な傲慢

-サイドボード(15)-

 パッと見は「バント・カンパニー」なこのデッキ。はいはい何回紹介するねん!と思うのは早い、細部をよく見てほしい。カンパニーこと《集合した中隊》が...入ってない! ?これぞまさしく「ノーカンパニー」とでも言おうか、バントカラー(白青緑)で《集合した中隊》を用いないアグロデッキがMagic Onlineのスタンダードのリーグ戦で5勝0敗の成績を残していた。

 《集合した中隊》は4マナのカード1枚で3マナ以下のクリーチャーを2体戦場に送り出せる、このスタンダード環境屈指のパワーカードだ。打点の《森の代言者》、アドバンテージの《不屈の追跡者》《薄暮見の徴募兵》、妨害の《反射魔道士》《呪文捕らえ》と隙の無い布陣を取り揃えて、これらをインスタントのタイミングで展開するこのカードをデッキから抜くというのは......実験とは言え覚悟のいることだったんじゃないかなと。

 その中隊が抜けたスロットに入ったのが......《老いたる深海鬼》だ。プロツアー『異界月』にて「ティムール現出」のキーカードとして暴れまわったのも記憶に新しい。8マナと重いカードではあるが、現出能力でそのコストは4マナほどに軽くなる。そのコストで瞬速持ちの5/6が得られた上にパーマネントを4つもタップすることができるときたもんだからこれは強力なクリーチャーである。

 このエルドラージ・タコ、浅原さんが用いた最初期の現出デッキにおいても最高のフィニッシャーであったが、特に目立ったのは対「バント・カンパニー」での強さ。2/3や4/5に対して一方的に討ち取れる5/6というサイズ、クリーチャーをタップすることで面展開の攻撃も食い止めつつ次のターンの攻撃をねじ込むことのできるタップ能力、マナくい虫のカンパニーデッキには土地をタップするのも効果的......と、天敵のようなものである。カンパニーに勝つためにカンパニーを捨て、タコを選んだデッキ、と見て良いだろう。

 1枚のカードから2枚のカードを生み出す《集合した中隊》と違って1体のクリーチャーを犠牲としてしまうが......30枚もクリーチャーカードが入っているので問題なし! 仕事を終えた《反射魔道士》なんて格好の餌だ。「カンパニー同型は睨みあう展開となる」とよく言われるが、《老いたる深海鬼》でパーマネントをタップして道をこじ開けてやれば膠着状態が一転、一方的なまさしく「タコ殴り」状態となることだろう。......うまいこと言ったなんて思っていないぞ...ッッ。

 長期戦に突入したのであれば素で唱える8マナも捻出できるだろうし、すでに戦場に出ている深海鬼を食わせれば{U}{U}だけで唱えられるので連打も容易。う~む、使ってみたくなるじゃないか。メインではなるべくその姿を見せずに勝利して、サイド後にアッと言わせたいもんである。対戦相手が《集合した中隊》対策で入れてきた《否認》《払拭》《神聖なる月光》なんかをスカらせつつ、タップするパーマネントを指定する時の気持ちよさったらないだろうなぁ。

 対戦相手が「バント・カンパニー」っぽいけど、なかなか中隊を唱えてこない......なんて時には、土地をよく見てみるのも良いかもしれない。《》が2枚以上並んでいれば、もしかしたらこの《老いたる深海鬼》型の可能性がある。通常、「バント・カンパニー」には青のダブルシンボルを要求するカードは入っておらず、そのため《》は1枚採用という形がほとんどである。対戦相手がこの条件に当てはまったならご用心。

......と言ったところで、用心してどうにかなるタイプのカードでもなかったりするが......覚悟ができているのは幸福である、ということでわからん殺しされるよりは精神衛生的にも良いだろう。メインからガッツリ深海鬼という形ではなく、サイドに数枚忍ばせているスタイルのデッキも見られるようで、これからバントカラーとこのタコがどのようなデッキを生み出していくのか、見守るのも楽しそうだ。

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