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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒ミル(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒ミル(モダン)
by 岩SHOW
勝利の価値観は人それぞれ......何をもって勝利と言うのか。マジックではそれが定義されている。基本的には対戦相手のライフを0にすれば勝利となる。これにはクリーチャーを使って戦闘を行うのが最も一般的で、プレイヤーは皆20点のダメージを与えるのに効率の良いデッキ・あるいはそれを阻害するデッキを構築することになる。
ただ、このクリーチャーなどを用いてダメージで勝利するデッキを好まないプレイヤーも少なくない。そういう人たちはどういった勝利を目指すのか?
マジックのルールにはもう1つ、勝利を叶えてくれる方法がある。ライブラリーからカードを引けなくなったプレイヤーは、ゲームに敗北する。通常は40枚ないし60枚以上のデッキを用いるのだが......こちらからそのライブラリーの枚数を減らしてしまい無理やり引き切らせてしまう、というアプローチで戦うデッキ、およびそれの愛好家が存在する。ライブラリーアウトと呼ばれるこの戦略、実際にどういったデッキが作られているのかと言うと、こんな具合。
3 《島》 2 《沼》 2 《湿った墓》 4 《汚染された三角州》 3 《溢れかえる岸辺》 1 《湿地の干潟》 2 《闇滑りの岸》 3 《殻船着の島》 3 《幽霊街》 -土地(23)- 4 《面晶体のカニ》 4 《ジェイスの幻》 4 《躁の書記官》 -クリーチャー(12)- |
4 《彼方の映像》 4 《不可思の一瞥》 4 《催眠の宝珠》 3 《墓所への乱入》 3 《罠の橋》 3 《精神の葬送》 4 《書庫の罠》 -呪文(25)- |
2 《呪文滑り》 3 《外科的摘出》 3 《根絶》 3 《不敬な遺品》 3 《漂流》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
以前より一定数の愛好家が調整していた、モダン環境のライブラリーアウト。最近では初代ライブラリー破壊カードである《石臼》から名を取って「Mill」と呼ばれているようで、今回は郷に従って「青黒ミル」と呼ぶことにしよう。このデッキは『イニストラードを覆う影』で若干パワーアップしたようだ。まずはいつも通りパーツから......見ても、しょうがないかもしれない。何せ、土地以外のほとんどのカードがライブラリーを攻めるカードだ!
なので変則的ではあるが、ライブラリーを削る以外の役目を持ったカードからまずは解説しよう。ただライブラリー破壊呪文を撃ち続けていても相手のクリーチャーとのダメージレースに敗れてしまうことだろう。そこで採用されているのが《罠の橋》。これを設置して手札を全力で消費していくのが、「青黒ミル」の勝ちパターンだ。
現モダンのデッキの大多数がクリーチャーでの勝利を狙うものであり、それらをほぼ完封できてしまう《罠の橋》はこういうデッキのお供に最適である。これを設置して手札の火力を対戦相手に投げまくる「ブリッジバーン」と呼ばれるデッキタイプが存在したが、あれと似たようなものだと思ってもらって問題ないだろう。
《彼方の映像》《殻船着の島》は息切れを防いでくれる素晴らしいアドバンテージ源。《彼方の映像》は先述の《罠の橋》と相性が悪く見えるが、引いてくるカードは1〜2マナのものが多く、すぐさま使い切るので問題なし。モダン環境で使える《Ancestral Recall》の強さに酔いしれよう。最後の数枚を《殻船着の島》から唱えた呪文で削りきると、いわゆる「実績解除」的な気持ち良さがあることだろう。
《墓所への乱入》はライフを回復して延命するため、そして《引き裂かれし永劫、エムラクール》対策という2つの役目を担っている。特に後者はライブラリーアウトで勝つデッキにとっては重要だ。エムラクールは墓地に落ちた時に、すべての墓地のカードとともにライブラリーに戻ってしまうという誘発型能力を持っている。せっかく削ったライブラリーを修復されてはたまったもんじゃない。《先駆ける者、ナヒリ》とのパッケージが流行っている現環境、メインからこれに対処できるカードは必須なのでこのカードが取られている。エムラクールの気配を感じたら、なるべく3マナ構えて行動するようにしよう。
《ジェイスの幻》もエムラクールによりライブラリーを削りきるのが難しい相手や、《罠の橋》で封じられないコンボデッキ相手には役に立つ別の勝ちパターンとなるだろう。相手の墓地に10枚カードが貯まれば5/5飛行となってくれる凄いヤツ。ライブラリー破壊を1発2発仕掛けて育った幻で殴りきる、というプランを選択するゲームも少なくないだろう。
さて、本題のライブラリー破壊カードについてだが......最もわかりやすい《不可思の一瞥》を基に、古今東西様々なセットからライブラリーを削るクリーチャー及び呪文が寄せ集められている。冒頭でも触れた新戦力は《躁の書記官》。
戦場に出ればライブラリーを3枚削り、昂揚を達成すれば毎ターン3枚削る能力が誘発する、継続的なクロックとなってくれるかもしれない1枚。このデッキでは土地・ソーサリーが簡単に墓地に落ち、あとはクリーチャー・アーティファクト・インスタントのいずれかが相手の除去や手札破壊なんかで落としてもらえれば......昂揚達成となる。もし条件を満たせなくとも、相手からすれば立っているだけでプレッシャーとなるので除去を使ってくれることも多いだろうし、タフネス3の壁として相手のクリーチャーを受け止めてくれるので、カード1枚の働きとしては十分なものを提供してくれることだろう。
それ以外は《面晶体のカニ》《書庫の罠》《精神の葬送》とライブラリー破壊の定番カードが並ぶのだが、1つシブいカードがあるので特別に取り上げたい。《催眠の宝珠》だ。
この見慣れないアーティファクト、パーマネントがアンタップするたびにライブラリーを1枚削るというなかなかに強烈なライブラリー破壊能力を有している。《山》から《ゴブリンの先達》を唱えてアタック、これの返しで《催眠の宝珠》を置かれるだけでライブラリーが2枚削れてしまう。展開しないと勝てないが、展開すると敗北が一歩忍び寄るというジレンマに相手を追い込むことができるぞ。自分のライブラリーも削れてしまうが、そこは《躁の書記官》の昂揚を狙えるのでむしろ恩恵である。
こうして見ると、物凄く強そうなデッキに見えてくるから不思議である。実際は結構カツカツ、ギリギリのデッキなので本当に好きな人にしかオススメはできないかなぁ。このデッキを相手にした時にはどうするか? う〜ん、どうもこうもないというのが本音。1ターン目、とりあえずフェッチランドを起動して土地を探して......ってやるだけで《書庫の罠》が飛んでくるからね......。相手のデッキが判明したら、ライブラリーからカードを探したりカードを引くというアクションは極力とらずに、それでいてさっさと相手を殴り倒してしまうというアクションを取るべきだろう。相手の除去は薄いので、ためらわずに打点の最も高いクリーチャーを出して攻撃あるのみ!
逆に使う側は、《罠の橋》を初手のキープ基準にして何がなんでも耐えるべし!削り勝ちがギリギリ間に合ったときはゲームクリアな達成感を味わえるよ!
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