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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:5CB(過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:5CB(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 「3色デッキは無理」と言われたものの、フタを開けてみれば「バント・カンパニー」「エスパー・ドラゴン」「スゥルタイ・季節」「ナヤ・コントロール」などなど、3色のデッキが活躍していたりする現スタンダード環境。ちょっと前には黒や青の単色デッキが暴れまわっていた時代があったが...ここ2年ほどは、3色以上のデッキが強くて当たり前の環境が続いている。『テーロス』・『タルキール』・『戦乱のゼンディカー』......いずれのブロックも豊かなマナベースに恵まれてきたからだ。

 スタンダードの歴史を遡れば、2色土地がほとんどない時期もあれば、2色どころか5色土地にあふれかえった時期もあり......今日はそんな、虹色の時代を駆け抜けたデッキを紹介しよう。世界選手権1997を制したヤコブ・スレマー/Jakub Slemrの「5CB」だ!

Jakub Slemr - 「5CB」
世界選手権1997 優勝 /スタンダード (1997年8月13〜17日)[MO] [ARENA]
10 《
2 《硫黄泉
1 《地底の大河
3 《真鍮の都
3 《宝石鉱山
3 《知られざる楽園

-土地(22)-

2 《祭影師ギルドの魔道士
4 《黒騎士
4 《墜ちたるアスカーリ
4 《ストロームガルドの騎士
4 《大クラゲ
2 《ウークタビー・オランウータン
1 《ネクロエイトグ
4 《ネクラタル

-クリーチャー(25)-
4 《火葬
2 《地震
4 《押し寄せる砂
4 《Contagion

-呪文(14)-
3 《紅蓮破
2 《黒檀の魔除け
2 《水流破
2 《解呪
1 《名誉の道行き
2 《Dystopia
2 《絶望の荒野
1 《流刑

-サイドボード(15)-

 「5CB」とは5 Color Blackの略だ。5色黒、これの意味するところはそのまんま。5色のカードが使える黒デッキ、ということだ。5色デッキのくせに《》が10枚という信じられないマナベースとなっているが、2色土地が3枚、そして5色土地が9枚とこちらも信じられない値となっている。《真鍮の都》《知られざる楽園》《宝石鉱山》という、それぞれに異なるデメリットを持ちながらも5色のマナを生み出せる土地が3種共存、こんな環境、そうそうあったもんじゃない(実は『第7版』+『オデッセイ』ブロック+『オンスロート』ブロックでも5色土地3種が共存したことはあるが、そのすべてがダメージを受けるものであり......一緒に使うには「覚悟」が試された)。

 この優秀な5色土地祭りの中では、色は「タッチ(色のちょい足し)し得」。このデッキのように、基本単色デッキだけども各色から優秀な除去やサイドカードを引っ張ってきて作られた「トリコロール(青白赤)」「4CB(4色黒)」「5CG(5色緑)」などの3色以上のデッキの姿を見ることが出来た。

 「5CB」は《墜ちたるアスカーリ》《黒騎士》《ストロームガルドの騎士》ら黒の優秀な2マナクリーチャーを中心に作られている。いずれも2マナでパワー2、側面攻撃や先制攻撃、プロテクション(白)といったブロックされにくい能力を持っており、軽量クリーチャーの質が全体的に良くなかったこの時代にはガンガンとアタックしていけるナイスクリーチャーであった。

 彼ら漆黒の騎士の攻勢をサポートするのが《火葬》《Contagion》《祭影師ギルドの魔道士》。先制攻撃で戦闘ダメージを与えたり、側面攻撃でサイズダウンさせてから火力でダメージを与えたり《Contagion》でタフネスを下げることで、大型クリーチャーが道を塞いでも突破できるように作られている。あるいは《大クラゲ》《ネクラタル》でクリーチャーを出しつつ除去ってしまうのも手っ取り早い。これらでガンガン殴って勝利を目指すビートダウンデッキだ。ある程度ライフを削ったら《火葬》《地震》で直接ライフをもぎ取ることができるのも強み。そういう点で《押し寄せる砂》は相手の妨害をしつつライフを削れるナイスカードだ。

 後はサイドボードに各色の優秀な対策カードを積んで完成。黒単色では絶対に触れることができないエンチャントやアーティファクト(※1)には《解呪》とメインの《ウークタビー・オランウータン》で。青の打ち消しと赤の火力を用いる「カウンターバーン」(※2)には《水流破》《紅蓮破》で対処する、といった具合に。デッキの根幹は黒単で、事故らないレベルでの色足しで各色の美味しいところをいただく。つくづく美しいビートダウンだ。

(※1:実はこの時代の黒は、頑張ればアーティファクトに対処することができた。《ファイレクシアへの貢ぎ物》がそれだ。こちらのクリーチャー2体とこのカードの3枚を消費して相手のアーティファクトを1枚破壊する。...What? そりゃオランウータンの手も借りたい。)

(※2:クリーチャーは極力展開せずに、土地を置いて自身のターンを終える。相手のターンで動きがあれば打ち消しで捌き、クリーチャーは火力で除去、対処するものがなければ本体に火力を撃ち、ドロー呪文で手札を増やす...こうしたデッキの戦略と青と赤という相反する2色の共存を愛するプレイヤーは数知れず。作るデッキがすべて「カウンターバーン」というプレイヤーも存在しているくらいの、愛されアーキタイプ)

 こうして約20年前のデッキを眺めると、現在と比べてカードパワーがやたら高い部分と、逆に低すぎる部分とが浮き彫りになってなかなか面白い。マジックはインフレしているか、否か、答えは......いつだって最高のゲームってことだよ!

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