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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アブザン・アグロ(スタンダード・『タルキール覇王譚』~『ゲートウォッチの誓い』)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アブザン・アグロ(スタンダード・『タルキール覇王譚』~『ゲートウォッチの誓い』)
by 岩SHOW
2014年9月26日。『タルキール覇王譚』、発売される。これまでに大きなテーマを与えられなかった3色の組み合わせにフィーチャーし、それらに個性的な能力を与えた。このセットの登場により、スタンダードはもちろんのこと、モダン・レガシー・ヴィンテージとあらゆるフォーマットがそれまでと異なる環境へと変化した。とてつもない影響を与えた、近年稀に見るモンスターセットだったと言えよう。
この『タルキール覇王譚』が使用可能だったスタンダードの1年半は、一体どんな期間だったのか? 多くのプレイヤーが挙げるのは、あのカードの存在。4マナ4/5トランプルというナイスサイズに、対戦相手のライフを3点失わせ自分にはそれを与える、ダメージレースの概念を破壊する驚異のクリーチャー。その名も《包囲サイ》だ。
アブザン家に属する、白黒緑の3色クリーチャー。マジックにおいて、カードの持つ能力というのはそれ自身の色が増えれば増えるほど強力になっていく。このサイも、3色ならこのぐらいの強さで良いだろう、皆頑張って使ってくれよな、という思いの元にデザインされたのだろう。ただ、このサイのカードパワーはその見た目以上に高く......そして、このカードを使用する3色デッキを現実的なものとするのに十分な多色土地が環境に同居していた。
かくして、この最強と呼んで差し支えの無いクリーチャーは、世界中のありとあらゆるトーナメントで「アブザン・アグロ」というデッキの主砲として、数え切れない量のライフを吸い取ってきたのだ。「この1年半は、とにかく《包囲サイ》。サイを使い、サイを使われる日々だった。」そう語るプレイヤーは少なくない。
今日はもう去ってしまったデッキ、前スタンダード環境の絶対王者「アブザン・アグロ」を紹介しよう。
2 《平地》 2 《森》 2 《梢の眺望》 1 《窪み渓谷》 1 《燻る湿地》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 4 《乱脈な気孔》 1 《風切る泥沼》 1 《ラノワールの荒原》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《森の代言者》 2 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(20)- |
2 《ドロモカの命令》 2 《絹包み》 4 《アブザンの魔除け》 3 《残忍な切断》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(14)- |
2 《冷酷な軍族》 3 《強迫》 3 《神聖なる月光》 2 《自傷疵》 2 《精神背信》 1 《絹包み》 2 《苦い真理》 -サイドボード(15)- |
こうやって改めてデッキリストを眺めると、それを構成するすべてのものが強力だ。
クリーチャー:《始まりの木の管理人》→能力起動で3/3に→《先頭に立つもの、アナフェンザ》→《包囲サイ》→《風番いのロック》と、順番に展開しているだけで勝ててしまうクリーチャー陣の恐ろしさよ。カードを回収しつつブロックされにくいアタッカーにもなる《棲み家の防御者》に、自身のスペックも《タルモゴイフ》級になる上にクリーチャー化する土地も強化する《森の代言者》と、強いカードしか取り揃えていない王者の風格を感じる。
サイ&ロックのダブルエースはAri Laxをプロツアー『タルキール覇王譚』王者へと導いた。思えばここから、タルキールのカードはずっと使われ続けているんだなぁ。
呪文:優秀な除去を散らして採用。この環境は《残忍な切断》が本当に使いやすく、頼りになる除去であった。個人的には4枚採用されている《アブザンの魔除け》が去ってゆくのも寂しいところ。追放除去・コンバットトリック・ドローと、どのモードも腐らず安定した活躍を見せる、歴代魔除けサイクルで見ても最高傑作とも言える1枚だった。
除去でない呪文はプレインズウォーカーである《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のみというのも男らしい。プロツアー『戦乱のゼンディカー』では、このギデオンが大暴れ。瀧村和幸が優勝し、久しぶりの日本人プロツアー王者を誕生させたのもこの「アブザン・アグロ」というデッキだ。
土地:これらの3色のカードを無理なく運用できているのも、『タルキール覇王譚』『戦乱のゼンディカー』が共存するこの環境ならではのマナベースによるもの。ライブラリーから2種類の基本土地タイプを持った土地をサーチできる『タルキール覇王譚』のいわゆるフェッチランドと、2種類の基本土地タイプを持つ『戦乱のゼンディカー』の通称バトルランドが組み合わされば、色マナに不自由するということはほぼなかった。《乱脈な気孔》という強力なクリーチャー化する土地、即ちミシュラランドを擁するのもこのデッキの強みである。
いまさら語るまでもないデッキではあるが、本当にこう、貫禄のあるデッキだなぁと改めて思う。こんなすごいデッキが暴れた後の、『イニストラードを覆う影』入りスタンダード環境。ゲームは新たな局面を見せるのか、タルキールは嵐の前の静けさに過ぎなかったのか、今からワクワクが止まらない(執筆時は『イニストラードを覆う影』発売前)。
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