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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:BantamGeddon(Old School 93/94)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:BantamGeddon(Old School 93/94)

by 岩SHOW

 1993年。マジック:ザ・ギャザリング、誕生。元々はカード背面にも書かれているDECKMASTERシリーズの一作品として単発で作られたそうだが、それまでになかったトレーディング・カード・ゲームというジャンルを切り開いたこのゲームは予想をはるかに上回る人気を博し、増産。この『アルファ』『ベータ』『アンリミテッド』を基本のセットとし、ゲーム性および世界観を拡張するエキスパンションセット『アラビアンナイト』が発売される。

 1994年。『アラビアンナイト』に続くエキスパンションセット『アンティキティー』『レジェンド』『ザ・ダーク』『フォールン・エンパイア』が、そしてそれらからの再録カードを含む基本セット第2弾『リバイズド』が登場し、そこから20年以上続くマジックの歴史の礎を作った。

 この2年間の成功がなければ、今日僕らが遊んでいるこの素晴らしいゲームは存在しなかったり、大きく形が変わっていたかもしれない。特に、この始まりの年からマジックを遊んでいて、その躍進とともに成長してきた・青春を過ごしてきたという方々には、思い入れの強い期間だろう。日本にはこの時期から遊んでいたプレイヤーはなかなかいないかもしれないが、海の向こうでは「遊び始めて23年目だぜHAHAHA」というプレイヤーがたくさん。そんなプレイヤーが集まって「いや~昔のマジックは良かったよな、《Black Lotus》から《アーナム・ジン》出したりしてな(笑)」なんて話していた連中がいたのだろう。ここまでは日本でも大会後に飯でも食いながらワイワイこういう話は起こるが......「じゃあ、そういうデッキで遊んでみようや」と実行した男前がいた。

 「Old School 93/94」は過ぎ去りし青春を取り戻し、今を生きる若い世代にもマジック黎明期の空気を味わってもらえる、素敵なマイナーフォーマットだ。構築で使用可能なセットは、この93/94に発売された『アルファ』『ベータ』『アンリミテッド』の初代基本セットと『アラビアンナイト』『アンティキティー』『レジェンド』『ザ・ダーク』の英語版のカードのみ。禁止・制限カードはヴィンテージと大体同じではあるが、少々異なる部分も。《Braingeyser》《Mana Drain》が制限カードになっていたり、逆に《魔力の櫃》は問題なく4枚使えたり。何より正式フォーマットでは完全に使用が禁止されている、マジックに物理を持ち込むカード《Chaos Orb》が制限ではあるが使用できたりと、なかなかにクレイジーな環境。

 これらは開催している団体によって、『フォールン・エンパイア』も使用可能であったり、コレクション用のカードである『Collector's Edition』『International Collector's Edition』も使用可能としていたりと、各地域のプレイヤー層に合わせた形で開催されている。興味のある人は「Old School 93/94」で検索だ!

 今回は、シカゴのコミュニティが開催した交流会(上記の『フォールン・エンパイア』ありルール)で全6回戦を5-1の結果で終えたDominic Dottererのデッキを紹介しよう、その名の「BantamGeddon」だ!強そうな名前やね。

Dominic Dotterer - 「BantamGeddon」
Chicago Old School 93-94 February 2016 Tournament 5勝1敗 / 「Old School 93/94」[MO] [ARENA]
1 《平地
4 《Savannah
4 《Tundra
4 《Tropical Island
2 《真鍮の都
1 《Library of Alexandria
1 《露天鉱床

-土地(17)-

4 《極楽鳥
4 《ラノワールのエルフ
4 《Serendib Efreet
4 《アーナム・ジン
4 《セラの天使

-クリーチャー(20)-
1 《Black Lotus
1 《Mox Emerald
1 《Mox Jet
1 《Mox Pearl
1 《Mox Ruby
1 《Mox Sapphire
4 《剣を鍬に
1 《Ancestral Recall
4 《解呪
1 《Chaos Orb
1 《新たな芽吹き
1 《森の知恵
1 《Time Walk
1 《Braingeyser
1 《Timetwister
2 《ハルマゲドン

-呪文(23)-
1 《King Suleiman
1 《疾風のデルヴィッシュ
1 《Preacher
2 《青霊破
1 《魂の絆
1 《赤の防御円
1 《緊急阻止
1 《Mana Drain
3 《魔力流出
2 《心霊破
1 《支配魔法

-サイドボード(15)-

 こんなデッキ、これまでマジックをやってきて見たことがない。これぞ、真の意味での古のマジックだ。各種Moxと《Black Lotus》でマナをブーストして、叩き付けるのは......《セラの天使》に《アーナム・ジン》!いやぁ、良いね!こういう未来のテクノロジーで恐竜を呼び出すようなデッキは噂には聞くものの、当時デッキリストというものを提出する大会など皆無だったため(そもそもスタンダードというフォーマットが制定されたのは1995年1月1日)、その実体がどんなものだったのかはハッキリとしなかった。こうやって当時の姿を拝め、それらのデッキが対戦している光景を見られるなんて......古代生物学者の気分である。

 デッキ自体は、要するに「アーニーゲドン(アーナムゲドン)」。スタンダード黎明期に愛されたデッキタイプで、《アーナム・ジン》のような大型クリーチャーを展開してから《ハルマゲドン》で土地を流し去ることによって、相手の展開や除去を封じながら殴りきるビートダウンだ。《アーナム・ジン》の対戦相手のクリーチャーに森渡りを与えてしまうデメリット能力も、土地がなければ意味はなく......そんな白緑のビートダウンだ。このデッキコンセプトに、Power 9を初めとするヴィンテージ級カードを乗っけたというのが「BantamGeddon」、白緑青のバント(Bant)カラーのアーナム(Erhnam)ゲドン(Geddon)デッキという意味なのだろう。デッキリストの芸術点も高く、メタゲームがわからなくても強いデッキだということがよくわかる。

 ちなみに、他にどんなデッキが存在するのかというと......

「青赤カウンターバーン」:最高のコストパフォーマンスを誇る《Serendib Efreet》で殴って、カウンターとドローで相手を捌いて、《稲妻》《火の玉》でとどめを刺すデッキ。

「白単ウィニー」:古き良きウィニー戦略(小粒クリーチャーで攻める)で戦うデッキで、Power 9などが不要なので組みやすい。《十字軍》4枚が眩しい。

「黒単アーティファクト」:《サルディアの巨像》《トリスケリオン》などアーティファクト・クリーチャーを《暗黒の儀式》《Priest of Yawgmoth》といったマナ加速から叩き付けるパワフルデッキ。《Guardian Beast》とか超カッコイイ。

 う~ん、やりたくなってきたぞ!なんとか『アンリミテッド』のカードでも集めて、単色デッキでも組んでみるか......ちなみに、英語版公式放送で実況解説を行っているランディ・ビューラー/Randy Buehlerもこのフォーマットで遊んでいるようで。皆もお近くのElder(エルダー・古老)と一緒に遊んでみよう!

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