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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:太陽拳(とその亜種)(スタンダード・『ラヴニカ』ブロック期)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:太陽拳(とその亜種)(スタンダード・『ラヴニカ』ブロック期)
by 岩SHOW
『タルキール覇王譚』~『ゲートウォッチの誓い』までが使える現スタンダード環境で使われているデッキは? 「4色ラリー」「グリクシス・コントロール」「ナヤ・ブラック」「バント・カンパニー」「アブザン・アグロ」「エスパー・ドラゴン」「ダーク・ジェスカイ」......これらのデッキ名に共通しているのは、色を現す単語と戦術・デッキタイプ・キーカードを組み合わせたものであるということ。
2色の組み合わせはラヴニカに存在するギルド、3色はアラーラの各断片・タルキールの氏族名で表現することが可能になり、これらを知っていればデッキ名を見れば「赤と白と黒でコントロール、まあ除去とプレインズウォーカーで勝つんだろうな」と大体のことがわかる。覚えなくてはいけない単語は少なくないが、一度覚えてしまえば便利なもの。一度、こういうマジック用語をまとめて解説とかやってみたいな。
さて、上記のようにデッキの内容がデッキ名で分かりやすくなったのはスタンダードに限ったことではなく、モダンやレガシーでも最近のデッキは同様にわかりやすいものが主流となっている。ただ、僕のように十数年マジックに触れているプレイヤーにとっては......最近、個性的なデッキ名を耳にしなくなったのは寂しい限りである。
青春を「アングリーハーミット」「ピットサイクル」「ノワール」「みのむしぶらりんしゃん」「ベビーシッター」「服部半蔵トロン」といった個性的な名前のデッキとともに駆け抜けてきた。これらのデッキ名、パッと見て内容を把握するのは難しい。しかし、どれもカッコイイんやわこれが。デッキの内容を知り、その戦術や誕生背景を知ると納得のいくもので、しっくりくるのだ。
今日はそんな、デッキ名では何のことやらわからないデッキとその派生形を紹介しよう。「Graveyard Week」なので、もちろん墓地に関係のあるデッキだ。「太陽拳」、ご覧いただこう!
3 《平地》 1 《島》 2 《沼》 2 《アゾリウスの大法官庁》 3 《神無き祭殿》 2 《コイロスの洞窟》 2 《オルゾフの聖堂》 2 《湿った墓》 1 《地底の大河》 1 《永岩城》 1 《水辺の学舎、水面院》 1 《死の溜まる地、死蔵》 1 《海の中心、御心》 1 《嘆きの井戸、未練》 -土地(23)- 1 《曇り鏡のメロク》 2 《アダーカーの戦乙女》 2 《夜の星、黒瘴》 3 《絶望の天使》 -クリーチャー(8)- |
4 《アゾリウスの印鑑》 2 《ディミーアの印鑑》 4 《差し戻し》 4 《強迫的な研究》 3 《屈辱》 4 《神の怒り》 3 《ゾンビ化》 2 《迫害》 2 《ふるい分け》 1 《地底街の手中》 -呪文(29)- |
4 《糾弾》 4 《清麻呂の末裔》 3 《道化の王笏》 2 《頭蓋の摘出》 1 《象牙の仮面》 1 《迫害》 -サイドボード(15)- |
清水直樹が日本選手権2006で使用し、TOP8に残ったデッキ「太陽拳」。デッキとしては、青白黒、今ならエスパーと呼ばれる色の組み合わせで構成されたこのデッキ、要はコントロールデッキである。打ち消し呪文と除去で捌いて、大型のフィニッシャーに繋げる、古き良きコントロールデッキの動きをする。
ひとつ特徴的なところは、《夜の星、黒瘴》らフィニッシャーを、唱える以外の方法で戦場に出せる点。《強迫的な研究》《ふるい分け》と、このデッキのドロー呪文はカードを複数枚引いてから捨てるもので構成されている。これらのカードで有効なカードを引きつつ、序盤はお荷物である大型クリーチャーは墓地に眠らせる。その後、カウンターを構えるなど理想的な状態で《ゾンビ化》を用いてそれらを釣り上げるのだ。最速で動いて4ターン目に《絶望の天使》を出して土地を割りつつ攻めるというプランも取れる。リアニメイト要素が強いコントロールデッキ、という認識をしていただければ。
で、肝心の話。なぜ、このデッキを「太陽拳」と呼ぶのか? デッキリストのどこにもこの単語を想起する要素はないが......これはイラストを見なければわからない。上記の土地やクリーチャーを破壊する強力カード《絶望の天使》。彼女は、頭髪を剃ったスキンヘッドが印象的である。背景のオルゾフのギルドシンボルのようなものに照らされて、光を放っているように見えるこの頭部が......某世界的人気漫画にて、スキンヘッドのキャラクターたちが使用する目くらまし技、太陽拳を思い起こさせるからついた名前なのだとか。こういうイラストありきのデッキ名というのも珍しいものだ。
「太陽拳」のベースは山川洋明が作り上げたコントロールデッキで、これを清水が調整し日本のローカルトーナメントで使用して結果を残し、国内で流行する。このデッキは海を越えて広く使用されるようになり、各国で国別選手権を制したりと活躍を見せる。『ラヴニカ』ブロックが使えたころのスタンダードを象徴するデッキだ。海外では、さすがに「太陽拳」ではないものの、元デッキへのリスペクトを忘れぬ形で「Solar Flare(ソーラーフレア)」と呼ばれていた。日本国内でもこの呼び名を用いる人は多かったので、そちらで把握されている方も少なくないかも。
『神河』ブロックがスタンダードから退場しても、このデッキはダメージを受けるということはなかった。むしろ、新たに登場した『時のらせん』にはこのコンセプトを強化するシナジーを持ったカード、そして強力なフィニッシャーが収録されていたのだ。これらのカードを受けて、「太陽拳」の1つの進化の形として登場したのが「ソーラーポックス」だ。
2 《沼》 1 《島》 4 《湿った墓》 1 《ディミーアの水路》 4 《神無き祭殿》 1 《オルゾフの聖堂》 2 《神聖なる泉》 1 《アダーカー荒原》 4 《トロウケアの敷石》 2 《宝石鉱山》 1 《幽霊街》 -土地(23)- 4 《宮廷の軽騎兵》 2 《ストロームガルドの災い魔、ハーコン》 1 《骸骨の吸血鬼》 2 《絶望の天使》 2 《怒りの天使アクローマ》 -クリーチャー(11)- |
2 《オルゾフの印鑑》 2 《ファイレクシアのトーテム像》 2 《暗黒破》 1 《糾弾》 4 《小悪疫》 1 《安らぎ》 3 《強迫的な研究》 3 《屈辱》 4 《神の怒り》 3 《戦慄の復活》 -呪文(25)- 1 不明 -不明(1)- |
2 《糾弾》 3 《赤の防御円》 3 《聖なる場》 2 《計略縛り》 3 《迫害》 2 《福音》 -サイドボード(15)- |
従来の「太陽拳」同様、コントロール・リアニメイトデッキではあるが、《小悪疫》が採用されているのが最大の特徴。この黒い呪文にて対戦相手の土地を含むリソースを複数奪いつつ、こちらはこのカードのデメリットを《トロウケアの敷石》《ストロームガルドの災い魔、ハーコン》などで帳消しに......むしろメリットに変えてしまうデッキだ。フィニッシャーには、カードパワー的にも背景世界好きとしても満足できる《怒りの天使アクローマ》が採用されている。《戦慄の復活》で彼女を釣り上げれば、対戦相手が実際に戦慄すること間違いなし!
この「ソーラーポックス」、ヨーロッパの若きプレイヤーが戦ったEuropean Junior Finals 2006 にて、スウェーデンから参加した同トーナメント最年少プレイヤーElias Watsfeldtが使用し、準優勝の好成績を収め、スノーボードを勝ち取っている。なんともかわいい話ではないか。
しかし、ネット上に残されたデッキリストには、メインデッキに含まれていた1枚が不明となっている。Elias君!是非、マジック日本公式宛に情報を送ってください!僕はいつまでも、君からの返答を待っているぞ!
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