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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゾンビの横行(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゾンビの横行(モダン)
by 岩SHOW
かつて僕らは「Benzo(ベンツォ)」というデッキに恋をした。チーム「Your Move Games」(※1)のロブ・ドハティ/Rob Doughertyが作り上げたエクステンデッドの傑物、「Benzo」。デッキ名は《生き埋め》《納墓》《ゾンビの横行》の頭文字からなり、この3枚がキーカード。ライブラリーから直接クリーチャーを墓地に落とす《生き埋め》《納墓》で大型クリーチャーを墓地に落とし《再活性》《死体発掘》で釣り上げる、いわゆるリアニメイト戦術がメインの勝ち筋。
このデッキには、手札にその大物が来てしまっても捨てて釣り上げられるように《ゾンビの横行》が採用されている。この《ゾンビの横行》の役目は一本釣りのサポートだけではなく、クリーチャー除去に長けたデッキを相手にする場合は《ゴブリンの太守スクイー》や《Krovikan Horror》と組み合わせて毎ターンゾンビトークンを生成しつつ、《汚染》でマナをロックしてじっくりと攻め上げるプランも取れる、このデッキの核である。プロツアー・ニューオーリンズ2001でTOP8を勝ち取ったこのデッキ、当時僕らは雑誌でその異形ともいえる姿を見て衝撃を受けたものだった。とにかく、《ゾンビの横行》がカッコイイ。
(※1:今でいう「ChannelFireball」のような、プロツアーTOP8に安定して所属プレイヤーを輩出して一世を風靡したアメリカの名チーム。このチームのリーダーにして、かつて世界最高のデッキビルダーの一人に数えられていたのがロブ・ドハティ。この「Benzo」以外にもその進化形「ワイルドゾンビ」や「ティンカー」「ファイアーズ」などのデッキを制作・調整し、5度のプロツアーTOP8を経験している、プロツアー殿堂顕彰者である。)
「Benzo」初登場時から15年ほどの年月を経て、2016年3月になんとこのデッキの正当後継ともいえるデッキが登場。エクステンデッドからモダンへと戦場を変えて、《ゾンビの横行》を主軸としたデッキがまさしくゾンビの如く、蘇ってきたのだ。
2016年3月4〜6日、デトロイト・ボローニャ・メルボルンの世界3か所でモダンのグランプリが同時開催された。このトーナメントで、まずは初日金曜日に成果を挙げたデッキがこちら。
2 《森》 1 《沼》 1 《山》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 2 《寺院の庭》 2 《血の墓所》 4 《新緑の地下墓地》 4 《樹木茂る山麓》 1 《血染めのぬかるみ》 1 《地平線の梢》 1 《ダクムーアの回収場》 3 《幽霊街》 -土地(24)- 4 《恐血鬼》 3 《臭い草のインプ》 2 《ゴルガリの茶鱗》 3 《復讐に燃えたファラオ》 1 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(13)- |
4 《信仰無き物あさり》 2 《暗黒破》 4 《壌土からの生命》 4 《ゾンビの横行》 4 《未練ある魂》 1 《堀葬の儀式》 4 《燃焼》 -呪文(23)- |
1 《ゴルガリの茶鱗》 1 《復讐に燃えたファラオ》 2 《思考囲い》 1 《暗黒破》 1 《カラスの罪》 3 《古えの遺恨》 2 《天啓の光》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
グランプリ・デトロイト2016で金曜日に開催されたラストチャンス・トライアルで5-0の結果を残し、見事に2つの不戦勝を勝ち取ったElliott Smithの使用した「ゾンビの横行」デッキだ。デッキコンセプトとしては、《ゾンビの横行》を張って「《壌土からの生命》発掘→土地を3枚手札に戻す」を繰り返して、それにより得た手札でゾンビを量産。ついでに発掘で肥えた墓地から《恐血鬼》や《未練ある魂》《燃焼》などを使ってアドバンテージを得る。フィニッシュは《孔蹄のビヒモス》を《堀葬の儀式》で釣り上げて強化されたゾンビの群れが殺到して......というド派手なもの。《ゾンビの横行》と一本釣り......これぞまさしく、現代の「Benzo」だ!
一方、同日開催のグランプリ・メルボルン2016では......このデッキのコンセプトをさらに尖らせた、もう1つの「ゾンビの横行」デッキが、TOP8に入賞。ニュージーランドのプラチナレベル・プロプレイヤー、Jason Chungが使用したリストがこちらだ。
1 《森》 1 《沼》 1 《山》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《寺院の庭》 2 《血の墓所》 4 《新緑の地下墓地》 4 《樹木茂る山麓》 2 《血染めのぬかるみ》 4 《幽霊街》 1 《大天使の霊堂》 -土地(23)- 4 《恐血鬼》 4 《ゴブリンの太守スクイー》 1 《ゴルガリの茶鱗》 1 《屍の原形質》 1 《臭い草のインプ》 3 《復讐に燃えたファラオ》 1 《ゴルガリの墓トロール》 -クリーチャー(15)- |
4 《暗黒破》 4 《信仰無き物あさり》 1 《命取りの魅惑》 4 《壌土からの生命》 4 《ゾンビの横行》 2 《未練ある魂》 3 《燃焼》 -呪文(22)- |
4 《思考囲い》 2 《カラスの罪》 4 《古えの遺恨》 3 《天啓の光》 2 《記憶の旅》 -サイドボード(15)- |
Elliot Smithが使用したものから一本釣りプランをなくし、完全に《ゾンビの横行》一本で勝負するデッキとなっている。決意の《ゴブリンの太守スクイー》4枚が、唯々眩しい。
このスクイーと《浄土からの生命》で毎ターンゾンビを2、3体展開、相手のクリーチャーはこれらの肉壁で受け止めるか、《暗黒破》《燃焼》で除去、あるいは1枚刺しの激シブカード《命取りの魅惑》でゾンビの餌食に。また1回攻撃を受ける形にはなってしまうが、《復讐に燃えたファラオ》の誘発型能力で破壊することも可能だ。
これらで粘りながら発掘を続け、最終的には《大天使の霊堂》で接死・絆魂を得たゾンビ軍団がダメージレースをひっくり返す......というのがこのデッキの狙いだ。コンボはともかく、殴ってくるタイプのクリーチャーデッキには強そうである。対各種エルドラージデッキ(参考:2月29日の本記事)を想定して制作・使用されたデッキであることは間違いない。
僕も実際にJason Chungのバージョンを組んで回してみたが......このデッキ、めちゃくちゃ難しい。まずキープ基準。初手に《ゾンビの横行》が必須なのはわかるが、他に土地とどんなカードがあればキープして良いのか、ちょっと触った程度ではわからない。実際にゲームをやってみると、《ゾンビの横行》を引かずにダブルマリガン・トリプルマリガンせざるを得ないことが多々。この際の「ゾンビはないがこのハンドならキープしても良い」という妥協点が、数回プレイした程度では見えてこない。興味があるという方は、まずは《ゾンビの横行》なしでも発掘からの《恐血鬼》or《未練ある魂》+《孔蹄のビヒモス》で勝てるElliotバージョンを組んでみるのが良いだろう。
オートメーションでゾンビを生み出す動きは、好きな人はヤミツキになること間違いなし! ゴリッゴリのサウンドを聴きながらの一人回し、推奨ッ!
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