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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
第29回マジック世界選手権 前編
こんにちは!市川(@serra2020)です!
今回は世界選手権に向けての調整記、大会レポートを綴っていこうと思います。
前編では、9月22日から24日までに行われた「第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」に向けての調整記をお送りします。よろしくお願いします。
0.近況と夢
市川がラスベガスに帰ってきた!
プロツアーに通年出場し、世界選手権に出場するためのポイントをせっせと稼いできました。プロツアートップ8入賞のような派手な招待方法ではありませんが、出てしまえば皆同じです!
泥臭く精算マッチ・ポイントランキングで上位に入賞し、2年連続、3回目の世界選手権出場を確定させました。
去年の世界選手権で若手のホープ(今やマジックの顔ですが)であったネイサン・ストイア/Nathan Steuerの優勝を間近で見届けました。
不肖市川、30も半ばを超えた齢ですが一つの夢を持ったのです。
「世界選手権で優勝したい。」
プレインズウォーカーの灯が消えるまで、その夢に向かって邁進すると決めました!
1.調整メンバー
今回はプロツアーでもいつも一緒に練習している、私を含めて5人。
市川 ユウキ
佐藤 レイ
高橋 優太
松浦 拓海
森山 真秀
プラス、世界選手権の権利を同じく有している国内の強豪の皆様に声を掛けて4名。合わせて9人で練習することになりました。
小笠原 智明
鬼塚 寛
京極 匡将
平山 怜
2.スタンダード
ここからはスタンダード・フォーマットについて。
5色アラーラ
1 《沼》 1 《森》 1 《山》 1 《島》 1 《平地》 1 《憑依された峰》 1 《難破船の湿地》 1 《嵐削りの海岸》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 3 《ジェトミアの庭》 3 《ラフィーンの塔》 3 《スパーラの本部》 1 《ザンダーの居室》 3 《ジアトラの試練場》 4 《ラノワールの荒原》 1 《ミレックス》 -土地(27)- 4 《墓所の冒涜者》 3 《ファイレクシアの肉体喰らい》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 2 《原初の征服者、エターリ》 4 《木苺の使い魔》 -クリーチャー(14)- |
1 《喉首狙い》 4 《群れの渡り》 4 《力線の束縛》 2 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 4 《アラーラへの侵攻》 4 《執念の徳目》 -呪文(19)- |
1 《寄生性掌握》 4 《鏡殻のカニ》 1 《ファイレクシアの肉体喰らい》 1 《歴史の彼方》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 2 《機械の母、エリシュ・ノーン》 1 《沈黙を破る者、スラーン》 1 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 2 《コグラとイダーロ》 1 《豆の木をのぼれ》 -サイドボード(15)- |
MTGアリーナとMagic Onlineに新セット『エルドレインの森』が導入されてはじめてのイベント。そこでは革新的な構築の5色ランプデッキが優勝しました。
どの辺りが革新的かというと、《アラーラへの侵攻》と《木苺の使い魔》のギミックです。
《アラーラへの侵攻》は4マナ以下の呪文が2枚捲れるまでライブラリーを掘り進めます。このデッキには4マナ以下の呪文が4枚の《木苺の使い魔》と1枚の《喉首狙い》しか採用されていません。
そのため、《アラーラへの侵攻》を唱えると確実に1枚は《木苺の使い魔》が捲れるわけです。
「マナ・コストを支払うことなく唱えてもよい」、は《木苺の使い魔》の出来事である《初めてのお使い》でも問題がなく、それによって5マナのカードをプレイしているにも関わらず7マナのカードの効用を確定で得られます。
《偉大なる統一者、アトラクサ》や《原初の征服者、エターリ》などのランプあるあるのフィニッシャーが捲れてもいいですが、このデッキの真の大当たりは《墓所の冒涜者》。これ7マナのカードを追放すればあら不思議、先ほど戦場に出た《アラーラへの侵攻》の守備カウンターをちょうど取り除くことが可能です。
7マナのカードは《初めてのお使い》で捲れて墓地に落ちていても良いですし、《群れの渡り》を序盤に基本土地に変えていればそれでも良いので意外と現実的な動きです。
5ターン目に《墓所の冒涜者》経由で《大渦の目覚め》をプレイする動きは環境随一のパワフルさで、この完成度のデッキが初週に出てくるのかと心底たまげたものです。
ただデッキとしての伸びしろは感じません。
《アラーラへの侵攻》で確実に《初めてのお使い》を唱えることが長所となっているデッキなので、4マナ以下のカードを《木苺の使い魔》以外だと1枚、リスクを取ったとしても2枚しか採用できないという強烈な縛りがあるためです。
《執念の徳目》や《力線の束縛》などの序盤動けるけど4マナ以下のカードではない呪文は重宝しますが、流石にカードプールにも限りがあります。
これらのカードを増やすことはできないので、赤単アグロや白単ウィニーなどの序盤からの盤面への干渉を求められるマッチアップでは苦戦を強いられます。
その縛りは《軽蔑的な一撃》を代表する相手のカウンター呪文への対応手段もなくします。
早いデッキと青いデッキに不利で、それらを覆すことはデッキ構築の制限がある以上難しい。また、それら以外のデッキは《魂なき看守》などの局所的なサイドカードを用意しはじめている始末で、八方塞がり。
世界選手権本番でいきなり現れたら環境を席巻する可能性すらあるポテンシャルを感じましたが、ネタバレしたら終わりです。
ゴルガリ・ミッドレンジ
1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《死天狗茸の林間地》 4 《眠らずの小屋》 4 《ラノワールの荒原》 5 《沼》 5 《森》 2 《ミシュラの鋳造所》 -土地(26)- 3 《しつこい負け犬》 4 《苔森の戦慄騎士》 2 《グリッサ・サンスレイヤー》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《墓地の侵入者》 3 《開花の亀》 2 《下水王、駆け抜け侯》 1 《苦難の影》 -クリーチャー(20)- |
2 《切り崩し》 1 《強迫》 4 《喉首狙い》 2 《ヴェールのリリアナ》 3 《執念の徳目》 1 《羅利骨灰》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 -呪文(14)- |
2 《切り崩し》 3 《強迫》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《羅利骨灰》 1 《墓地の侵入者》 1 《ファイレクシアの闘技場》 2 《向上した精霊信者、ニッサ》 2 《窃取》 2 《危難の道》 -サイドボード(15)- |
『エルドレインの森』のクリーチャーランドサイクルで最高のスペックを誇る《眠らずの小屋》。これを屋台骨として、前環境にはいなかったカラーリングである黒緑でデッキが構築されました。
《苔森の戦慄騎士》は環境随一の2マナクリーチャーで、適当に出して除去耐性ありで良し、後半は出来事経由で出して良し、なんか付いているトランプルもまぁまぁウザしで、七面六臂の活躍です。
ただ、ゴルガリのセールスポイントはここまで。
《開花の亀》は《眠らずの小屋》と相性が良く、除去されても損しないのはわかるんですが、盤面に残ったときのインパクトを考えれば4マナ域は《黙示録、シェオルドレッド》を優先させたいです。
《グリッサ・サンスレイヤー》は干渉手段の乏しいデッキ相手には無双するんですが、エスパー・ミッドレンジのような似たような黒いミッドレンジデッキのミラー対決では《喉首狙い》や《かき消し》などでテンポよく除去されたりします。
これは青くないミッドレンジデッキあるあるですが、ソーサリータイミングのカードばかりなのでプレイの面でエッジを出せないところもネックです。
クリーチャーをダンプせざるを得ず、《かき消し》され、相手に《婚礼の発表》のようなバリューのあるカードを先に解決されてしまう。
インスタントカードが豊富にあるデッキであれば相手が構えているなら自分も相手のターンエンドから動こうか、のような形で回し打つことも可能ですが、ゴルガリではそれが出来ません。
入っているカードがすべて優れているならカードをプレイし続けて押し込むことも可能ですが、《しつこい負け犬》のような明らかに《苔森の戦慄騎士》より劣ったカードが採用されていたりと、少しカードが足りていない印象も受けます。
赤単アグロ
2 《反逆のるつぼ、霜剣山》 18 《山》 4 《ミシュラの鋳造所》 -土地(24)- 4 《血に飢えた敵対者》 4 《シヴの壊滅者》 4 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 4 《僧院の速槍》 2 《魅力的な悪漢》 2 《ロノムの発掘家、フェルドン》 -クリーチャー(20)- |
4 《ナヒリの戦争術》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 4 《タルキールへの侵攻》 4 《巨怪の怒り》 -呪文(16)- |
3 《石術の連射》 3 《抹消する稲妻》 2 《怪しげな統治者、スクイー》 2 《巨竜戦争》 3 《レジスタンスの火、コス》 2 《歪んだ忠義》 -サイドボード(15)- |
「カードプールが広くなれば単色アグロが強くなる」はマジックのセオリーです。単色でも採用できるカードの幅が増え、弱いカードを採用し辛くなりますからね。
『エルドレインの森』にて《巨怪の怒り》を獲得。怪物・役割・トークンが残るので《巨大化》的な使い方をしても悪くないですし、《切り崩し》を《巨怪の怒り》でかわせば致命的な一打となり得ます。
《敬虔な新米、デニック》や《策謀の予見者、ラフィーン》などの除去をすればするだけテンポを失いやすいエスパー・レジェンズが展開してくるクリーチャー陣に対しても、《僧院の速槍》などのクリーチャーが除去を打つことなく攻撃に向かえるのもポジティブな要素です。
《擬態する歓楽者、ゴドリック》も期待の新加入クリーチャー。
《無謀な嵐探し》は《切り崩し》されるとマナ交換比率が高すぎて悶絶してしまうので当然の交代と言えます。
《熊野と渇苛斬の対峙》と相性が非常に良く、1ターン目に《熊野と渇苛斬の対峙》をプレイしていると3ターン目にちょうど《熊野の食刻》になってくれるので、3ターン目に《擬態する歓楽者、ゴドリック》をプレイすると祝祭を達成し、ドラゴンとして攻撃に参加することが可能です。
18 《平地》 4 《ミシュラの鋳造所》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(23)- 4 《銅纏いの先兵》 4 《救出専門家》 4 《徴兵士官》 4 《有望な信徒》 4 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《呪文書売り》 2 《離反ダニ、スクレルヴ》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 -クリーチャー(30)- |
3 《忠義の徳目》 4 《骨化》 -呪文(7)- |
4 《軍備放棄》 3 《静寂の呪い》 2 《邪悪を打ち砕く》 2 《ゴバカーンへの侵攻》 4 《婚礼の発表》 -サイドボード(15)- |
対となるアグロ……白単アグロも直近の大会で結果を残していましたが、チーム内の評価は赤単が優勢。
アグロスキーなメンバー曰く、赤単はサイドボード後《レジスタンスの火、コス》や《勝負服纏い、チャンドラ》などで軸をズラすことが可能だが、白単の《婚礼の発表》ではそれは微妙とのこと。
戦略の幅の広さを考えた場合、赤単に軍配が上がるようです。
エスパー・ミッドレンジ
2 《皇国の地、永岩城》 1 《島》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《アダーカー荒原》 1 《さびれた浜》 2 《金属海の沿岸》 2 《コイロスの洞窟》 3 《砕かれた聖域》 1 《眠らずの城塞》 4 《闇滑りの岸》 1 《地底の大河》 3 《ラフィーンの塔》 2 《英雄の公有地》 -土地(26)- 2 《フェアリーの黒幕》 2 《下水王、駆け抜け侯》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 4 《敬虔な新米、デニック》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 -クリーチャー(15)- |
2 《切り崩し》 3 《かき消し》 4 《喉首狙い》 4 《婚礼の発表》 3 《放浪皇》 3 《忠義の徳目》 -呪文(19)- |
1 《否認》 2 《強迫》 1 《復活したアーテイ》 1 《漆月魁渡》 1 《放浪皇》 1 《エルズペスの強打》 2 《邪悪を打ち砕く》 1 《一時的封鎖》 1 《ギックスの命令》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《第三の道のロラン》 1 《切り崩し》 -サイドボード(15)- |
前環境にいたエスパー・ミッドレンジが、《忠義の徳目》を得て順当にアップデートされました。序盤のアクションを出来事で埋めつつ、本体は《婚礼の発表》や《放浪皇》と相性が良く一気に盤面を圧倒します。
《下水王、駆け抜け侯》も《忠義の徳目》ほどではないですが、いぶし銀な強化要素。
《敬虔な新米、デニック》や《苔森の戦慄騎士》などの鬱陶しいクリーチャーたちへの牽制となる墓地対策、さらに《忠義の徳目》や《婚礼の発表》、《策謀の予見者、ラフィーン》など横並べで効果を発揮するカードが多いのでネズミ・トークンも後半活きてきます。
《フェアリーの黒幕》や《忠義の徳目》など瞬速系のカードも多く、相手が《かき消し》に飛び込まざるを得なかったりとプレイの難度を上げられる点も高評価です。
デッキパワーも高いため瞬速要素でプレイエッジが出やすく、そういうデッキが大好きな《フェアリーの黒幕》……じゃなかった高橋さんは早くからこのデッキにロックしていました。
19 《島》 2 《天上都市、大田原》 1 《ミシュラの鋳造所》 -土地(22)- 4 《お告げの行商人》 1 《十三嗜好症》 4 《惑乱のいかさま師》 3 《現実チップ》 1 《這い寄る継ぎ接ぎ》 4 《眠り呪いのフェアリー》 3 《ぎらつく予見者》 2 《高波エンジン》 1 《囁かれる希望の神》 1 《心悪しき隠遁者》 -クリーチャー(24)- |
4 《訓練場》 2 《触発された考え》 4 《アガサの魂の大釜》 2 《証人保護》 1 《異世界の凝視》 1 《考慮》 -呪文(14)- |
2 《心悪しき隠遁者》 1 《呪文貫き》 3 《囚われの奇魔》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《洗い落とし》 2 《ウィークストーンの支配力》 2 《証人保護》 2 《帳簿裂き》 1 《触発された考え》 -サイドボード(15)- |
2 《ヤヴィマヤの沿岸》 3 《夢根の滝》 1 《死天狗茸の林間地》 1 《ラノワールの荒原》 4 《闇滑りの岸》 3 《地底の大河》 2 《難破船の湿地》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《島》 2 《眠らずの小屋》 2 《ミレックス》 -土地(24)- 4 《眠り呪いのフェアリー》 4 《似姿の物あさり》 3 《ファラジの考古学者》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 4 《フェアリーの黒幕》 4 《囁かれる希望の神》 -クリーチャー(22)- |
4 《アガサの魂の大釜》 2 《かき消し》 3 《荒涼たる収穫》 4 《喉首狙い》 1 《呪文どもり》 -呪文(14)- |
2 《腐れ花》 2 《切り崩し》 3 《強迫》 1 《否認》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《墓地の侵入者》 2 《寄生性掌握》 -サイドボード(15)- |
その他、面白いけどまったく要領を得ない《アガサの魂の大釜》コンボデッキ。
1 《沼》 3 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《闇滑りの岸》 4 《ラノワールの荒原》 3 《難破船の湿地》 2 《死天狗茸の林間地》 2 《夢根の滝》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《森》 4 《眠らずの小屋》 -土地(26)- 2 《墓地の侵入者》 3 《しつこい負け犬》 4 《黙示録、シェオルドレッド》 3 《グリッサ・サンスレイヤー》 2 《下水王、駆け抜け侯》 2 《開花の亀》 4 《苔森の戦慄騎士》 -クリーチャー(20)- |
4 《喉首狙い》 1 《呪文貫き》 2 《ヴェールのリリアナ》 3 《切り崩し》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 3 《執念の徳目》 -呪文(14)- |
2 《強迫》 4 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《墓地の侵入者》 1 《漆月魁渡》 1 《切り崩し》 1 《羅利骨灰》 2 《ギックスの命令》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 1 《温厚な襞背》 -サイドボード(15)- |
青を足してランプにも勝つぞ!→まぁもっさりするゴルガリタッチ青。
面白いけどちょっとデッキパワーが足りていない《復興の領事、ピア・ナラー》デッキ、ディミーア・フェアリーなど、手当たり次第に環境デッキ、思いつくデッキを時間の許す限り試していきました。
3.使用候補
最終的に自分の使用候補となったデッキは4つ。
赤単アグロ
2 《反逆のるつぼ、霜剣山》 4 《ミシュラの鋳造所》 16 《山》 -土地(22)- 3 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 3 《怪しげな統治者、スクイー》 4 《血に飢えた敵対者》 4 《魅力的な悪漢》 1 《ロノムの発掘家、フェルドン》 4 《僧院の速槍》 2 《フェニックスの雛》 -クリーチャー(21)- |
4 《熊野と渇苛斬の対峙》 4 《ナヒリの戦争術》 1 《魔女跡追いの激情》 4 《稲妻の一撃》 2 《巨怪の怒り》 2 《火遊び》 -呪文(17)- |
3 《レジスタンスの火、コス》 4 《焼炉の懲罰者》 4 《タルキールへの侵攻》 4 《石術の連射》 -サイドボード(15)- |
前項でも取り上げた赤単アグロ。
松浦さん、佐藤さん、京極さんなどアグロスキーが日本の調整チームにしては珍しく多い背景から、環境初期から念入りに調整をしていました。
私自体は単色アグロはかなり苦手で、大型大会で使用したことはほとんどありません。
ただ、そんな私にも使用を考えさせられるほどのパワフルさがありました。
サイドボードも明確で、エスパー系の増加を見越して《焼炉の懲罰者》を採用したあたりからデッキに採用されているカードもビシッと決まり、使いたい欲もムクムク。
ただ、結果的には私は使用しませんでした。
まず、自分がやはりアグロデッキが不慣れな点が挙げられます。「良いと思うデッキが苦手なデッキ」はプロツアーなどの調整をしているとありがちで、いつも悩みのタネです。
長期的に見れば使用するべきです、苦手なデッキが減る良い機会ですからね。ただ、今回は世界選手権。このトーナメントのためにこの1年頑張ってきました。
長期的になんて見れません。求めるは結果、自分が出せる最大値。目指すは優勝です。
ランクマッチベースでも良いプレイができていないなと感じていたため、使用は断念。
ドメイン・ランプ
3 《森》 3 《平地》 1 《島》 1 《沼》 1 《山》 1 《廃墟の地》 1 《死天狗茸の林間地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《ジェトミアの庭》 1 《ラフィーンの塔》 4 《スパーラの本部》 4 《ジアトラの試練場》 1 《ミレックス》 -土地(26)- 4 《装飾庭園を踏み歩くもの》 4 《怒りの大天使》 4 《偉大なる統一者、アトラクサ》 -クリーチャー(12)- |
2 《喉首狙い》 1 《放浪皇》 3 《急使の手提げ鞄》 4 《力線の束縛》 4 《群れの渡り》 2 《骨化》 2 《太陽降下》 4 《ゼンディカーへの侵攻》 -呪文(22)- |
3 《軽蔑的な一撃》 2 《強迫》 2 《石術の連射》 1 《告別》 1 《放浪皇》 2 《痛烈な一撃》 1 《一時的封鎖》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 2 《金属の徒党の種子鮫》 -サイドボード(15)- |
《アラーラへの侵攻》を使ったランプ、ではなくドメイン(版図)ランプ。こちらも使用候補の一角でした。
5色アラーラは前述した通りデッキ構築の制限がありすぎて伸びしろを感じませんでしたが、ドメイン・ランプは違います。
赤単アグロなどに強い《怒りの大天使》を採用することもできますし、サイドボードにミラーマッチ用の《軽蔑的な一撃》などのカウンター呪文を取ることも可能です。
《アラーラへの侵攻》を採用しない関係からマナベースも緩く構築できますし、基本的にドメイン・ランプが5色アラーラと比較してマイナスな要素がないというのが調整の結論。
ただ、カウンターを擁するミッドレンジデッキ……具体的にはエスパー・ミッドレンジにはやはり不利。
チーム内スパーリングでも、それなりに惜しい展開にはなるんですがどうしてもエスパー・ミッドレンジに競り負けているなという感想。
また、デッキ構築の制限がなさすぎて逆に構築が難しいデッキでもあります。2マナの除去も《喉首狙い》が良いのか、《骨化》が良いのか。
除去を黒ベースにするのは良いけど、《怒りの大天使》や《太陽降下》などの白ダブル・シンボルの要求はちゃんと満たせるのだろうか、など。
カード採択からマナベースに至るまで、決まっていない点が多すぎます。
デッキを選択するタイミングはデッキサブミットの前日など、時間がない状況が殆どです。エスパー・ミッドレンジに現状では不利、デッキリストも満足いく形にまだなっていないと感じるのであれば、選べないのは致し方ないでしょう。
エスパー・レジェンズ
4 《英雄の公有地》 4 《コイロスの洞窟》 4 《闇滑りの岸》 1 《平地》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《天上都市、大田原》 3 《皇国の地、永岩城》 1 《難破船の湿地》 4 《金属海の沿岸》 2 《地底の大河》 -土地(27)- 3 《黙示録、シェオルドレッド》 3 《復活したアーテイ》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 2 《下水王、駆け抜け侯》 2 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《敬虔な新米、デニック》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《フェアリーの黒幕》 4 《離反ダニ、スクレルヴ》 -クリーチャー(30)- |
2 《喉首狙い》 1 《かき消し》 -呪文(3)- |
1 《夜明けの空、猗旺》 2 《第三の道のロラン》 3 《軽蔑的な一撃》 1 《喉首狙い》 4 《切り崩し》 4 《婚礼の発表》 -サイドボード(15)- |
これまでの環境を牽引してきたエスパー・レジェンズ。
『エルドレインの森』で加入したカードはわずかに《下水王、駆け抜け侯》のみ。ですがデッキのベースラインは依然強力です。《離反ダニ、スクレルヴ》、《スレイベンの守護者、サリア》、《策謀の予見者、ラフィーン》と先手で動いて返せるデッキは環境に存在しません。
環境で最も押し付ける力が強く、メタゲームによってブレずらい、主体性のあるデッキと言えます。
悪く言うと、それらの良い動き以外はすべて悪い動きと言えます。
早くからエスパー・レジェンズを気に入って使っていた森山さんのゲームを見ていたのですが、《離反ダニ、スクレルヴ》スタートとは言わないものの、《スレイベンの守護者、サリア》スタートくらいは目指してハードマリガン。
ダブルマリガン以内に良い初手が来なかった場合即負けに近く、初手への依存度が環境で一番高いデッキだなと感じました。
また、よく《スレイベンの守護者、サリア》がサイドアウトされて《婚礼の発表》がサイドインされていたのも気になりました。
環境的にクリーチャーをある程度採用している黒いミッドレンジデッキ、ゴルガリやエスパーが多いので、2/1先制というスタッツがそこまで活きない。
消耗戦になるので《婚礼の発表》が強い、というのはわかるのですが「それなら最初からエスパー・ミッドレンジで良くないか?」と感じてしまいました。
エスパー・ミッドレンジ
1 《島》 1 《英雄の公有地》 2 《ラフィーンの塔》 1 《皇国の地、永岩城》 2 《眠らずの城塞》 2 《砕かれた聖域》 4 《さびれた浜》 4 《闇滑りの岸》 2 《金属海の沿岸》 3 《コイロスの洞窟》 2 《地底の大河》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 -土地(26)- 1 《復活したアーテイ》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《下水王、駆け抜け侯》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 3 《フェアリーの黒幕》 3 《敬虔な新米、デニック》 -クリーチャー(14)- |
3 《放浪皇》 3 《忠義の徳目》 4 《喉首狙い》 4 《かき消し》 2 《切り崩し》 4 《婚礼の発表》 -呪文(20)- |
1 《復活したアーテイ》 1 《下水王、駆け抜け侯》 1 《強迫》 2 《否認》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《邪悪を打ち砕く》 2 《眼識の収集》 2 《切り崩し》 2 《一時的封鎖》 -サイドボード(15)- |
と、いうことで使用したのはメタゲームど真ん中のエスパー・ミッドレンジ。
使っていて特に不満に感じる点もなく、メインサイド合わせて不利だと感じるデッキもなかったです。
サイドボードも含めて使えていないカードはないなといった印象で、ラスベガス出発の前日にデッキを決めました。
と、いったところで前編は終わり。
後編はドラフト環境の考察からトーナメントレポートをお届けします。お楽しみに!
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