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戦略記事

市川ユウキの「プロツアー参戦記」

プロツアー・指輪物語 後編

市川 ユウキ


 こんにちは!市川です!

 前編に続き、後編の今回はドラフト環境の考察から「プロツアー・指輪物語」の大会レポートを綴っていこうと思います。よろしくお願いします。
 

0.ドラフト雑感

 まずは『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフトの雑感から。

 まず前提として黒一強環境。コモンの最強除去と最強クリーチャー、どちらも黒に存在しています。

 優れた2マナ域。

 優れたリソースカード、デッキを安定させる土地サイクリングを持ちながらコモンで十分にフィニッシャーを務めるクリーチャー。

 その他にも優れたサイドカードである《黒の息》や、黒のコモンでは下から数えたほうが早い《モルグルの刃による傷》のようなカードでもプレイアブルと質、量ともにあまりにも優れています。

 アンコモンやレア・神話レアなどに目を向けても基本的に環境トップの強さで、黒いレアから黒、黒いアンコモンから黒、何もないから取り敢えずコモンから黒……と、様々な角度から黒への参入が肯定されます。

 環境ベストカラーは動員をフルに活かせる黒赤ですが、正直層の厚さから2色目をカバーしても余りあります

 黒さえできていれば何色と組み合わせても強く、《ウルク=ハイの隊長、マウフール》や《サウロンの口》などの優れたマルチカラーのアンコモンで2色目に参入するパターンが多いです。

 黒軸の次点は青赤です。

 レアを凌駕するパワーカードである《引退した忍びの者、ビルボ》を軸としたスペルデッキで、小粒のクリーチャーで構成されますが《誕生日の旅立ち》などで「指輪があなたを誘惑する」の進行度も早いので見た目より早いクロックを出すことが出来ます。

 除去呪文も《不死者の討滅》や《輝かしき突風》と優秀で、それらを一周以内にピックし、2周目ないしは6手目付近で《エレボール山の炎鍛冶》と《ペラルギルの生き残り》が取れるような流れが理想的です。

 青赤は組めた場合は黒軸のデッキと同等のパワーが出るのですが、結局どこまでいっても《引退した忍びの者、ビルボ》次第といった印象で、薄っすら青と赤が流れてきているから参入、のようなピックがし辛く、強くはあるが参入もし辛いのが欠点です。

 この辺りからあまりやりたくないカラーリングになってきます。

 3番手は緑軸のビートダウン。《フロド・バギンズ》と《アルウェン・ウンドーミエル》は黒いカードと並べても遜色のないパワーカードです。フロドは白緑特有の伝説クリーチャー多めになりがちな構成を後押ししますし、アルウェンは青緑のコンセプトである占術ギミックと爆発的にシナジーします。

 白緑と青緑はほぼこの《フロド・バギンズ》と《アルウェン・ウンドーミエル》からしか入れません。

 そんなわけですから、1パック目の3手目などで流れてきた場合は取り敢えずピックしておき、その後もなおカードが流れてくるようなら本格的に参入する流れになります。

 最もプレイしたくないのが白軸のビートダウンです。除去がわかりやすく弱く、《エドラスからの追放》や《ホビットのつらぬき》など取り回しが悪い除去が続きます。

 その中でも《塚山丘陵の霧》は一級品の弱さ。最近のセットでは《次元壊しの掌握》や《次元の撹乱》など超《平和な心》が収録されていたので、弱《平和な心》たる《塚山丘陵の霧》はそのギャップが凄いです。

 3マナなら軍団・トークンくらい完封しても良いじゃないかと思うんですが、クリーチャー・タイプが変更されるためそうもいかず。生け贄をコストにしてプレイできるカードが多く、単純にオーラ除去が弱い環境であることも拍車をかけます。

 12手目あたりまで流れてくることもあり、私の知る限り過去最弱の《平和な心》なのは間違いありません。

 2マナ域もタフネス1ゆえに良くサイドボード後対戦相手にいじめられる《トゥック家の収穫人》や、《ウェストフォルドの乗り手》が手ぐすね引いて待ち構えています。

 白赤なら人間であることも加味して、ほぼただの2/2警戒である《東マーク軍団の騎兵》がトップという地獄。

 5マナも《オスギリアスの壮士》と、赤なら《ゴルゴロスの戦獣》、緑なら《怒り猛るフオルン》のマナ域だと考えると物足りなさは否めません。

 白の参入ルートは白のアンコモン以下で数少ないただ強いカード《剛毅なるサムワイズ》、《南小路のロージー・コトン》から。

 その後《フロド・バギンズ》や《統治する執政、デネソール》などの優れたアンコモンから他の色に渡り、白いカードつまむ程度の形に出来るのが理想です。

 白赤は《ローハンの王、セオデン》や《ウェストフォルドの領主、エルケンブランド》など優れたアンコモンがあるのですが、それらを十分に使おうとすると《角笛城での結集》が必須になってきます……が、《角笛城での結集》は青赤や赤黒などでも普通にいいカードなので一周は期待できず、これを早く取らなければならない以上ピックのハードルは高い印象です。

 白青は最も悲惨で、伝説で並べられないのが痛すぎる常在型能力を持つ《公正なるイムラヒル大公》、同じく出し辛い伝説の《セラの天使》こと《風早彦グワイヒア》。

 ただマルチカラーのレアは一級品なので、《イシリアンの領主、ファラミア》や《城塞の近衛兵、ピピン》から入られれば白青になるのかなといった印象。

 しかしこれらは《城塞の大広間》でタッチ出来ることからあまり流れてこない、取れたとしても自分がそのアプローチで他のカラーリングでも使えることを考えるとやはりほぼほぼないなと感じます。

 黒がやれるならやるべきです。ただ、プロツアー参加者がどれくらい黒に参入してくるかわからない、これが今回のドラフトの難しさでした。

 MTGアリーナのBO1ドラフトでは、6手目くらいで比喩ではなく黒いカードがパックに1枚もないみたいなことは日常茶飯事。MTGアリーナですらこの状態ですから、プロツアー参加者も当然この前提は理解しています。

 そうなってくると今度は「黒が強いからやる」のか、「黒が強くて混むから避ける」のかの読み合いが発生します。実際にリアルで集まって卓ドラフトで練習した感じでは黒の卓許容人数は思ったより多くなく、基本は3人で黒いカードが多く出た場合は4人までといったところ。

 そのためアリーナのような流れ方で強引に黒に入った場合は1勝2敗、もしくは0勝3敗も全然あり得るなと感じました。

 つまるところ、今回の作戦は臨機応変に。白軸のアグロ、具体的には白赤、白青だけ自分の中で落とし込めていないのでそこだけは自信がないのでやりたくない。それでいて今シーズンの最初のプロツアー、「プロツアー・ファイレクシア」の苦い経験から人気のカラーリングはあまり手を付けたくない。

 玉石混交になりがちな初日のドラフトではそれは顕著になります。

 特に今回は精算マッチ・ポイントの上乗せで世界選手権が決まる大事なプロツアー。

 ですので、ドラフトでの0勝3敗は絶対に避けたい。リスクを取らず、流れにも逆らわず、明鏡止水の心で本番に臨みます。
 

1.出発~前日

 今回のプロツアーが行われるのは、スペインはバルセロナ!ヨーロッパのプロツアーは普段行われるアメリカと嗜好が違って、たまにあると特別感があってよきかなよきかな。

 特にバルセロナは暖かく、ご飯が美味しく、そしてここが大事ですが夜遅くまでレストランが開いているのでトーナメント終了後のディナーも安心!平たくいって最高です。

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 ただ旅程は長く。

 まずエティハド航空で10時間程度掛けてアブダビまで。エティハド航空はアラブ首長国連邦が運営している国営の航空会社です、機内のアナウンスで知りました。

 写真は飛行機到着後ターミナルまでバスで移動するところ。着陸場所が遠いとたまにこの展開になります。

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 アブダビ到着後は4時間待って次の飛行機に乗ってバルセロナへ。ラクダくんがいたので記念にパシャリ。このとき現地時間で23時、眠いです。

 眠い目をこすりながらアリーナでドラフトをしていると、写真の後ろの空間で寝転がって眠りだす人で隙間もなくなりました。まさに打ち上がった魚のような様相でこれが世界基準……と典型的日本人たる私は衝撃を受けました。

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 これは、約2,000円のバーガーキング。この値段も世界基準……!

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 アブダビから6時間程度飛行機に乗って、現地時間朝8時にバルセロナへ到着。

 ホテルのチェックインは大体15時からですが、今回は部屋が空いているとのことでアーリーチェックインで即入室できて助かりました。

 今回も行われるプレイヤーパーティーの時間まで爆睡。

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 こちらはパーティーの様子。今回もフリードリンク、フリーフードで最高!

 プロツアー前日は旅程に余裕がないと晩ごはんを食べる場所を探すのにも一苦労なので、本当に助かりますね。

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 会場閉場後にホテルのロビーで貰ったパックでドラフトに興じる人々。

 プロツアーあるあるで、最近はプロツアー参加者だけでなくMagic Con参加者もいるので、ここだけでなく至るところで毎日のようにロビーがマジックプレイヤーでにぎやかになります。

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 私たち日本勢もご多分に漏れず貰ったパックでドラフト。ただ時間も遅かったのでピックだけ、その後品評会です。品評会会長の八十岡さんをして3勝のお墨付きをいただきました。

 私のパックから出た《一つの指輪》ですが、卓を囲んだ8人で厳正なる抽選を行った結果森山さんの手に渡りました。平たくいって最高です
 

2.初日/ブースタードラフト

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 ブースタードラフトのはじまる前。パックはジャッジによりチェックされ、スタンプが押され、パックごとに帯で締められ更にプレイヤーごとにまとめられています。

 開始直前は私語も少なく、一気にみんな緊張した面持ちになります。

 かくいう私もその一人。

 目の前の自分のパックたちを見つめながら、プロツアーのこれまでの練習が走馬灯のように……何回やっても緊張で心臓が口から飛び出そうです。

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市川ユウキ - 「黒赤」
プロツアー・指輪物語 / ブースタードラフト(2023年7月28日)[MO] [ARENA]
9 《
8 《
-土地(17)-

1 《死者の沼地の亡者
3 《歴戦のゴブリン
1 《褐色国のクレバイン
1 《ハラドリムの槍使い
2 《戦利品運び、シャグラト
2 《ゴルゴロスの戦獣
-クリーチャー(10)-
1 《モルドールの召集
2 《マザルブルの書
1 《オークの急襲
1 《ゴラムへの拷問
1 《シェロブの待ち伏せ
2 《不死者の討滅
1 《間に合わせの棍棒
1 《指輪の誘い
1 《ミスリルの胴着
2 《いとしいものを取り返す
-呪文(13)-

-サイドボード(0)-

 初手はトップアンコモンの一角の《オークの急襲》。

 同じパックに《恐れを知らぬ騎士、エオウィン》があって下と赤で被りそうなのは懸念されますが、それを補って余りあるパワーです。ちなみにこれらのカードをおじさんはすべて《火炎舌のカヴー》と呼称します

 2手目は《不死者の討滅》、3手目に《マザルブルの書》と赤に爆進。

 途中《ホビットのつらぬき》を2枚つまんだりもしましたが、《間に合わせの棍棒》、《歴戦のゴブリン》、《ゴルゴロスの戦獣》と、《恐れを知らぬ騎士、エオウィン》を取ったであろう下が赤を諦められるように赤いカードは尽くピックし、シグナルを送ります。

 2パック目の初手は《いとしいものを取り返す》。

 1パック目時点で黒いカードで取っていたのは《城門破り、グロンド》だけでしたが、他にめぼしいカードもなかったのでピック。そうすると……2手目で強力レアの《指輪の誘い》が!

 その後も5手目で2枚目の《不死者の討滅》が流れてくるなどの空きっぷりで、「人気のカラーリングはやりたくない」とはなんだったのか、最強カラーリングの黒赤でデッキが完成!

第1回戦:vs. 4色伝説 ◯◯
第2回戦:vs. 青赤 ◯◯
第3回戦:vs. 白黒 ◯◯

 危なげなく3勝、流石に最強カラーリングを伸び伸びとできたら3勝します。サイドボードも《火の中へ投げ捨てる》、《黒の息》などがしっかり取れていて、まったく隙がありませんでした。

 下で《恐れを知らぬ騎士、エオウィン》をピックしていそうなプレイヤーは《指輪の誘い》も《不死者の討滅》も流してきたし、果たして何色をやっていたんだろうと考えていたんですが、《城塞の大広間》をたくさん取って4色の伝説デッキを組んでいて膝を打ちました。
 

3.初日/モダン構築戦

 使用デッキは4色オムナス、使用理由などは前編記事をご参照ください。

Yuuki Ichikawa - 「Four-Color Omnath」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《
1 《天上都市、大田原
1 《ラウグリンのトライオーム
1 《繁殖池
1 《平地
1 《
4 《霧深い雨林
1 《聖なる鋳造所
1 《蒸気孔
1 《踏み鳴らされる地
1 《寺院の庭
4 《吹きさらしの荒野
4 《溢れかえる岸辺
1 《インダサのトライオーム
-土地(24)-

2 《激情
4 《孤独
4 《創造の座、オムナス
2 《復活した精霊信者、ニッサ
4 《喜ぶハーフリング
-クリーチャー(16)-
4 《時を解す者、テフェリー
4 《レンと六番
4 《虹色の終焉
4 《一つの指輪
4 《力線の束縛
-呪文(20)-
1 《隔離するタイタン
1 《機械の母、エリシュ・ノーン
2 《忍耐
3 《砕骨の巨人
2 《ドビンの拒否権
1 《エラダムリーの呼び声
2 《虚空の杯
3 《耐え抜くもの、母聖樹
-サイドボード(15)-

第4回戦:vs. ティムール続唱 ××
第5回戦:vs. 5色《御霊の復讐》 ×○×
第6回戦:vs. イゼット・コントロール ○×○
第7回戦:vs. ディミーア・ライブラリーアウト ○××
第8回戦:vs. 4色オムナス ○×○

 構築は2勝3敗。トータル5勝3敗で初日抜け。

 初日を抜けて世界選手権の権利(ほぼ)獲得!は朗報ですが、このトーナメントだけで考えた場合、ドラフトラウンド3勝からスタートして5勝3敗で初日を終えるのはなんとも寂しい。

 構築の初戦はフィーチャーマッチでしたが、ティムール続唱になすすべなく敗北。

 《喜ぶハーフリング》を《火 // 氷》され、《断片無き工作員》から《衝撃の足音》。《時を解す者、テフェリー》は《否定の力》から《暴力的な突発》のエリアルレイヴが炸裂。

 《時を解す者、テフェリー》で《衝撃の足音》を封殺できれば勝つんですが、《時を解す者、テフェリー》は《否定の力》《緻密》とまぁまぁ対応されてしまいます。

 それでいて《衝撃の足音》を解決されてしまうと概ね劣勢、《至高の評決》や《仕組まれた爆薬》のような応じ手があるわけでもないので出てきたサイに《虹色の終焉》などの単体除去で細かく対処しなければならず、二の矢の《暴力的な衝撃》などが続けばそこから捲くる手段がこちらには中々ありません……もしかして、不利?

 その他勝った2つが《アノールの焔》を《瞬唱の魔道士》で使い回すイゼット・コントロール(面白そう)だったり、ミラーマッチだったりとなんとも手応えのない感じ。

 2日目、もしかしてオムナスヤバいかも……と思いながらも初日は終了。

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 トーナメントが終わったらもちろん晩ごはん!

 可能なら毎日食べたいパエリアは無情にも売り切れだったので、店員さんオススメのでかい肉と……。

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 でかい魚を食べました。うまい!
 

4.2日目/ブースタードラフト

 2日目です。

 世界選手権の権利は(ほぼ)獲得しましたが、プロツアーに出ているからには1勝でも多くしたいものです。

 8勝8敗以上で前回の「プロツアー・機械兵団の進軍」の11勝と合わせて2024年のシカゴで行われる「プロツアー1」の次の「プロツアー2」の権利を獲得することが出来ます。

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市川ユウキ - 「赤緑タッチ黒」
プロツアー・指輪物語 / ブースタードラフト(2023年7月29日)[MO] [ARENA]
7 《
6 《
1 《
-土地(14)-

1 《闇の森の蜘蛛
1 《ロスロリアンの見張り番
2 《ウォーゼの先導者
1 《勇敢なる救い手、グロールフィンデル
1 《弓の名人、レゴラス
1 《偶然出会ったエルフ
1 《役立つ案内人、スメアゴル
1 《死を悼む復讐者、ギムリ
1 《賢者ケレボルン
1 《容赦なきロヒアリム
1 《北方のレンジャー、ストライダー
2 《怒り猛るフオルン
1 《性急なエント、せっかち
1 《ウンゴリアントの末裔、シェロブ
1 《気前のよいエント
-クリーチャー(17)-
2 《エルフの遠見
1 《数々の別れ
1 《ボンバディルの歌
1 《ギムリの怒り
1 《旅の仲間の断絶
1 《不死者の討滅
1 《ホビット庄の段々畑
-呪文(8)-

-サイドボード(0)-

 緑軸のドラフトの解説の項で赤緑は解説しませんでした。

 なぜかというと、この環境のドラフトは赤緑にならないからです

 同じくらい弱い白青は《城塞の近衛兵、ピピン》や《イシリアンの領主、ファラミア》などの爆弾レアがありますが、赤緑にはそれがありません。アンコモンも弱く、4マナ4/4に毛が生えた程度の《北方のレンジャー、ストライダー》、弱くはないけどコモンの《エントの憤怒》で事足りているよねと思う《友情の対抗心》など。

 コモンの平均点が低く、またアンコモン以上も取り立てて強いカードがない赤緑。

 でもね、なったんです。赤緑に。恐ろしいですね~(他人事)

 初手は《剛毅なるサムワイズ》。

 白自体は苦手意識がありますが《剛毅なるサムワイズ》は別。指輪を進められアドバンテージも取れる、言うことはないでしょう。

 2手目は特に選択肢もなく《ウンゴリアントの末裔、シェロブ》。

 ただ、ここで問題があって次点が同色の《柳じじい》。《ウンゴリアントの末裔、シェロブ》を取らざるを得ないんですが、下も黒緑に入るのは必至。上から流れてくるカードをせき止めつつ下には黒緑を諦めてもらうしかありません。

 最悪《ウンゴリアントの末裔、シェロブ》はタッチでも良いのでその可能性もあります。

 3手目で《ウルク=ハイの狂戦士》などを取り黒いカードを流さないようにしますが、そもそもそこから黒いカードが流れて来ません。

 遅めの順目で複数の《怒り猛るフオルン》、《気前のよいエント》が流れてきたことから緑は確定。その後はめぼしいカードも取れず、一周した《北方のレンジャー、ストライダー》と《死を悼む復讐者、ギムリ》を「もしも」のときの為にピックします。

 2パック目の初手で《いとしいものを取り返す》をピックしますが返しも黒は絶望的。

 「正順で黒いカードが流れてこないから逆順で黒いカードが流れてくるはず」、なんてことはありません。それは即ち下も同じことを考えられるわけですからね。どけない理由を下が持っていたら同じ思考で流れてきません。

 緑だけはそれなりに流れてきてくれて、《弓の名人、レゴラス》や《性急なエント、せっかち》、2マナのクリーチャーなんかをピック。

 2色目が未だ決まらずに2パック目を終了します。

 そして3パック目。

 比較的遅めの順目で《不死者の討滅》、《容赦なきロヒアリム》が流れてきた関係から屈辱の赤緑にカラーリングが決定。

 ピックが終わったときの感想は「これが初日じゃなくてよかった」でした。初日にこのデッキを組んでいたらかなりの確率で初日落ちしていましたからね。

第9回戦 :vs. 黒赤 ○×○
第10回戦:vs. 青黒赤 ○××
第11回戦:vs. 青黒 ××

 このデッキの最大値を見せた初戦以外は負けて1勝2敗。正直0勝もあり得たと思うので、1勝できただけで御の字です。

 3戦目は《ウォーゼの先導者》を出した返しに《オークの弓使い》で卒倒。

 サイドボード後タフネス1をすべて抜いたらマナカーブが悪くなりすぎて2ランドで止まり何もできずに負け、ああ無情。
 

5.2日目/モダン構築戦

第12回戦 :vs. イゼット・ブリーチ ○××
第13回戦 :vs. ゴルガリ・ヨーグモス ○×○
第14回戦 :vs. ラクドス想起 ○○
第15回戦 :vs. グリクシス・シャドウ ××
第16回戦 :vs. 4色続唱 ○×○

 構築3勝2敗。トータル9勝7敗でした。

 最低限の目標だった2024年の「プロツアー2」の権利を獲得。

 青赤系に2回負けたのが効きました。

 《喜ぶハーフリング》を《稲妻》などで対処されてしまうと、こちらは相手にとってはやりやすい重いソーサリータイミングのミッドレンジデッキ。プレイでズラすことも難しく、手のひらの上で転がされる展開が多かったです。

 《夏の帳》や《狼狽の嵐》のような1マナで相手のカウンターに対抗できるカードがサイドボードに必要だったかも知れません。

 これは計算大好き、殿堂プレイヤーで米国公式ライターでもあるフランク・カーステン/Frank Karstenさんのプロツアーの各マッチアップの勝率表です。

 ここで気になるのは、4色オムナスの対ティムール続唱の勝率。

 まさかの42%で負け越し!有利とはなんだったのか……。

 ただ、これなら自分の本番での体感と一致します。少なくとも《仕組まれた爆薬》のような相手のサイ・トークンに後出しで対処できるカードがないと厳しそうです。

 ここの相性差を間違えなければ、ティムール続唱で出場する選択肢もあったかも知れません。

 対オムナス専用サイドとなる《嵐の息吹のドラゴン》は不要ですし、そうなれば広い範囲を見れる《徴用》を取ることが出来ます。

 ティムール続唱の対トロンの勝率は39%で、ここは見誤っていなかったのですが、ここまで勝てないならもう対トロンは割り切って《血染めの月》で他に勝てるようにしても良かったかも知れなかったですね。

 モダンはこういう割り切りが必要なフォーマットだと重々承知しているんですけど、安定志向で中々こういう踏ん切りがつかないものです。

Kai Budde - 「Temur Rhinos」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
1 《蒸気孔
1 《沸騰する小湖
4 《樹木茂る山麓
2 《
1 《踏み鳴らされる地
1 《ケトリアのトライオーム
4 《霧深い雨林
2 《宝石の洞窟
2 《
1 《天上都市、大田原
1 《繁殖池
1 《耐え抜くもの、母聖樹
-土地(21)-

1 《濁浪の執政
2 《探索する獣
2 《緻密
4 《断片無き工作員
-クリーチャー(9)-
4 《ロリアンの発見
4 《衝撃の足音
4 《死亡 // 退場
4 《火 // 氷
4 《否定の力
4 《暴力的な突発
2 《四肢切断
4 《神秘の論争
-呪文(30)-
2 《激情
1 《緻密
4 《忍耐
1 《活性の力
3 《アノールの焔
2 《血染めの月
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《宝石の洞窟
-サイドボード(15)-

 トップ8にも入ったカイ・ブッディ/Kai Buddeさんのティムール続唱は素晴らしいリスト。

 メインに《四肢切断》を取ってラクドス想起や4色オムナスを重く見ています。さらに《探索する獣》もメインに採用し、対戦相手の《一つの指輪》プレイをリスキーに。

 《》を抜いて《》を2枚採用しているのも良いですね。《血染めの月》と《探索する獣》の併用を考慮しての採択だと思います。

 サイドの《アノールの焔》も良い!自分はウィザードがいないので選択肢にも入れなかったのですが、確かに選べるモードがどれもサイドボード後の展開にマッチしています。

 例えばラクドス想起とのサイド後、《虚空の杯》はもちろん対処しなければならないカードですが、ただのアーティファクト破壊を入れても相手が《虚空の杯》を引かなければ手札で腐ってしまいます。

 その点《アノールの焔》なら2ドローでプレイすることもでき非常に機能的。《黙示録、シェオルドレッド》も4/4のサイ・トークンで攻める関係上障害になりやすいのですが、それにも5点ダメージで対応できています。

Simon Nielsen - 「Mono-Green Tron」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
2 《ウルザの物語
3 《
4 《ウルザの鉱山
4 《ウルザの魔力炉
1 《耐え抜くもの、母聖樹
4 《ウルザの塔
-土地(18)-

2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
2 《ワームとぐろエンジン
1 《歩行バリスタ
-クリーチャー(5)-
1 《解放された者、カーン
4 《大いなる創造者、カーン
3 《森の占術
4 《古きものの活性
3 《四肢切断
1 《歪める嘆き
4 《一つの指輪
4 《忘却石
1 《反発のタリスマン
3 《大祖始の遺産
4 《探検の地図
1 《彩色の星
4 《彩色の宝球
-呪文(37)-
1 《隔離するタイタン
1 《街並みの地ならし屋
1 《ワームとぐろエンジン
1 《ファイレクシアの変形者
2 《機能不全ダニ
1 《歩行バリスタ
1 《罠の橋
1 《石の脳
1 《液鋼の塗膜
1 《真髄の針
1 《墓掘りの檻
1 《虚空の杯
1 《仕組まれた爆薬
1 《トーモッドの墓所
-サイドボード(15)-

 今をときめく世界最高のチーム、「Team Handshake」謹製の緑単トロン。

 緑単トロンの固定パーツと思われていた《彩色の星》と《森の占術》が、まさかの1枚と3枚。

 《彩色の星》は《ダウスィーの虚空歩き》でドローが止まる関係から減らしたい→そうなると緑マナが怪しいので《森の占術》を減らそうという思考だと思いますが、その発想がなかったので本当に驚きました。

 その分増えているのは《四肢切断》。

 《四肢切断》はラクドス想起の緑単トロンへのベストムーブである1ターン目《激情》+《フェイン・デス》コンボに待ったをかける1枚です。これが3枚入っていることによって、ラクドス想起側の動きに大きくリスクが伴います。

 この2つのリストには大変感銘を受けた反面、世界との壁を感じましたね。

 この2つは具体的に認識できていたのにそれらを改善するアプローチに進まず、そのデッキを諦め、他のデッキを検討していたのは本当に悔しいです。

 もちろんそれらの試行が無駄な時間に終わることも多いですが、もう一歩踏み込んで構築していかないとウィンドウショッピング感覚でのデッキ選びから脱却できません。

 今シーズンのプロツアー、ドラフトのスコアは高く12勝6敗。一方構築はトータルで17勝13敗と、好成績のドラフトと比較するとピリッとしませんでした。

 ここでプロツアーごとに1勝でも増やすことができれば、一流プレイヤーの仲間入り。

 課題は明確なので、来シーズンは構築の成績改善に努めたいですね。

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 話は戻りまして、晩ごはんは念願のパエリアを食べました。うますぎ
 

6.おまけとまとめ

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 最終日は観光!

 ここは確か以前にワールド・マジック・カップがあった会場。プレイヤーとしては縁がなかったですが、何回か解説として行かせて頂きました。

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 コロシアム的な建物に見せかけた商業施設。観光は解像度低めでお届けします。

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 日本を代表するニュータウン「コモア四方津」を彷彿とさせる長いエスカレーター。

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 なんか有名らしい公園、当日券完売で入れませんでした。

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 なんか有名らしい広場。

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 なんか有名らしい通り。言語化の鬼。

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 アイス。

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 これはわかる!コロンブスの像。

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 海です。

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 フォアグラステーキ。肉と脂なのでうまいです

 五感でバルセロナを体感していると、世界選手権確定の報が!

 結果的にはボーダーは42点、参加時点で権利は確定していたみたいですね。

 これで私史上初、2年連続で世界選手権に参加できます。

 去年のネイサン・ストイア/Nathan Steuer選手の優勝を見て心を動かされたおじさんカードゲーマー、優勝目指してがんばります!

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 次は9月に行われる「第29回マジック世界選手権」!アメリカはラスベガスでお会いしましょ~。

 ではまた。

市川

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