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戦略記事

市川ユウキの「プロツアー参戦記」

2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ) 前編

市川 ユウキ

 こんにちは! 市川です!

 今回はミシックチャンピオンシップ参戦記特別編といたしまして、MTGアリーナで行われた「2019ミシックチャンピオンシップⅤ」inカリフォルニア・ロングビーチをお届けしたいと思います!

0.突然の朗報

 MTGアリーナで行われるミシックチャンピオンシップですが、テーブルトップ(紙)のミシックチャンピオンシップと比較すると参加人数も68名と少なく、内訳はマジック・プロリーグ(MPL)のプレイヤーが32名、MTGアリーナで行われたMCQを突破した16名、さらに特別招待される配信者などが20名ほどと、参加するだけでも非常に困難なトーナメントです。

 私も御多分に漏れずMCQに挑戦はしてはいましたが、2000人程度が参加する大規模なトーナメント、なかなかTop16に入るのは難しく、今まで参加できないでいました。

 しかし賞金総額75万ドル、優勝は10万ドルと68名で行わるトーナメントにしては大盤振る舞いで、しかもMPLやライバルズ・リーグへの足掛けとなるミシックポイントもテーブルトップと比較して配点が多めです。

 こんなハイバリュートーナメント、いつか自分も出たい!と考えていたところに1通のメールが。

 ”差出人:Price, Nate”

 ネイトはウィザーズ本社で働く偉い人(詳しくは知らない)で、具体的には金子さんの75倍くらいのパワーがあります。面識はありますがメールが来るのは初めてです。いきなり俺になんの用だろう。

 ”Hello exceptional magician,”

 こ、このくだり……! 直訳すると「こんにちは例外的な魔術師、」です。つまり俺を特別視したメール……! こ、これはもしかして……! 俺もいよいよこの時が……! これでMTGアリーナのお知らせとかだったら金子さんに暴力的なメールを送ってしまうかもしれません。

 ちなみにChannelFireballのメールマガジンに登録すると良くLSV名義の広告メールが飛んで来ます。これは関係のない話です。

”I am reaching out on behalf of the Magic: The Gathering Esports team to offer you an invitation to compete in Mythic Championship V, taking place in Long Beach, California, from October 18-20!”

(スピリチュアル翻訳:お前をロングビーチで行われるミシックチャンピオンシップⅤに招待するぜ!)

 う、うおおおおおおおおおお!!!祭りだああああああああ!!!!!!(祭りではない)

 と、いうことで配信者枠として、日本人としては初めてMTGアリーナで行われるミシックチャンピオンシップに招待されました。

 これもひとえに日頃応援してくださっている皆様のおかげだと思います。

 この場を借りてお礼申し上げます。

1.環境初期

 2019ミシックチャンピオンシップⅤは、『エルドレインの王権』の発売後ということでスタンダードはローテーションをした後の環境になります。

 大きく変化したのはマナベースです。

 《氷河の城砦》や《森林の墓地》などの通称「コアランド」がスタンダードから姿を消し、全てのデッキ、特に友好2色のマナベースが脆弱になりました。

 対抗2色は友好2色と同じくコアランド自体はなくなりましたが、《神秘の神殿》などの通称「占術ランド」は健在で、友好2色と比べるとコアランドの喪失によるダメージは少ないでしょう。

 『エルドレインの王権』はローテーション後の大型エキスパンションには珍しく2色土地サイクルが収録されておらず、そのスロットには《進化する未開地》を強化した《寓話の小道》が入っています。

 環境にある2色土地は、環境の速度を定義することが多いです。

 具体的な例を挙げると、《感動的な眺望所》などの通称「ファストランド」がスタンダードで使える時は、概ね環境は速くなります。

 後半のタップインがデメリットにならない、かつ序盤のアンタップインを効率的に使えることが、ファストランドを十二分に活かしていることになりますからね。

 その点で現環境のマナベースを考慮すると、現環境は遅くなることが予想されます。

 《草むした墓》などの通称「ギルドランド」は強力な土地で、どのカラーリングでも入るのでこの話題から置いておきますが、

 友好2色の場合は《踏み鳴らされる地》と《寓話の小道》などで構成しなければならず、

 3色デッキもギルドランド+《疾病の神殿》などの占術ランドor《寓話の小道》などの序盤にアンタップインしない土地でマナベースを組まなければなりませんから、序盤の展開に手間取ることが多いでしょう。

2.環境初期

シミック・食物
Brad Nelson - 「シミック・食物」
Fandom Legends September 26, 2019 4位 / スタンダード (2019年9月26日:ローテーション適用後)[MO] [ARENA]
10 《
4 《
4 《繁殖池
4 《神秘の神殿
3 《ギャレンブリグ城
-土地(25)-

4 《金のガチョウ
4 《枝葉族のドルイド
4 《楽園のドルイド
3 《厚かましい借り手
4 《意地悪な狼
4 《大食のハイドラ
4 《ハイドロイド混成体
-クリーチャー(27)-
4 《王冠泥棒、オーコ
4 《世界を揺るがす者、ニッサ
-呪文(8)-
3 《恋煩いの野獣
1 《厚かましい借り手
2 《変容するケラトプス
2 《裏切りの工作員
3 《夏の帳
2 《霊気の疾風
2 《軽蔑的な一撃
-サイドボード(15)-

 まず最初に環境のトップに躍り出たのは『エルドレインの王権』の目玉カードである《王冠泥棒、オーコ》を軸にしたシミック(青緑)カラーのミッドレンジデッキ、「シミック・食物」です。

 《王冠泥棒、オーコ》は強いとは考えてはいましたが、私の想像するよりも、もっともっと強力なカードでした。

 [+2]能力で生成される食物・トークンはさながら環境を席捲した「ティムール・エネルギー」のエネルギーのようなもので、この食物・トークンが後のアドバンテージに繋がります。

 [+1]能力は盤面のアーティファクトかクリーチャーを3/3に変える能力ですが、これも想像よりはるかに強力。

 自分の生成した食物・トークンを3/3にすることによって、実質2ターンに1回3/3を生み出していますし、相手の重量級クリーチャーを何の能力もない3/3にグレードダウンさせることも可能です。

 [-5]能力はこれらの中で最も使わない能力ですが、範囲がパワー3以下と広く、後述する「バント・ゴロス」の《不屈の巡礼者、ゴロス》のコントロールを奪ったりなど、困った盤面をコントロールするパワーがあります。

 この超強力プレインズウォーカー《王冠泥棒、オーコ》をバックアップする布陣も完璧です。

 《金のガチョウ》はマナを生み出すために食物・トークンを必要としますが、《王冠泥棒、オーコ》と組み合わせれば快適な色マナ生活をお約束! しかも《金のガチョウ》を1ターン目にプレイできれば2ターン目に《王冠泥棒、オーコ》をかなりの確率でプレイすることが可能です。

 《金のガチョウ》の食物・トークンを生み出す起動型能力も2マナと軽く、《金のガチョウ》から食物・トークンを出す→《王冠泥棒、オーコ》で3/3にするというタッグムーブで毎ターン3/3が出てくる超《苦花》モードも演出でき、この2枚だけでコントロールデッキも泡を吹いて倒れることがあります。

 《意地悪な狼》は、私がすべてのカードが公開された時に完全に見落としていたカードでした。

 《王冠泥棒、オーコ》と組み合わせると令和の《火炎舌のカヴー》さながらに相手のクリーチャーを対処することが可能ですし、その後で盤面に居座り食物・トークンを添えるとあら不思議、無敵ブロッカーの誕生です。

 この《金のガチョウ》→《王冠泥棒、オーコ》→《意地悪な狼》の動きが対アグロデッキにおいてあまりにも強力で、環境初期は《朱地洞の族長、トーブラン》を主軸として「赤単アグロ」などが一定数いましたが、この「シミック・食物」がそれらを完璧に駆逐していまいました。

バント・ゴロス
佐藤 レイ - 「バント・ゴロス」
MPLエルドレイン・スプリット サファイア・ディビジョン 3位 / スタンダード (2019年10月1~6日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《平地
2 《
2 《寺院の庭
1 《花咲く砂地
1 《セレズニアのギルド門
2 《繁殖池
2 《神秘の神殿
1 《茨森の滝
1 《シミックのギルド門
1 《神聖なる泉
1 《平穏な入り江
1 《アゾリウスのギルド門
1 《疾病の神殿
1 《ゴルガリのギルド門
1 《ボロスのギルド門
1 《イゼットのギルド門
1 《調和の公有地
2 《寓話の小道
4 《死者の原野
-土地(29)-

1 《樹上の草食獣
4 《不屈の巡礼者、ゴロス
4 《豆の木の巨人
2 《裏切りの工作員
1 《王国まといの巨人
2 《ハイドロイド混成体
-クリーチャー(14)-
3 《むかしむかし
4 《成長のらせん
4 《迂回路
2 《時の一掃
4 《時を解す者、テフェリー
-呪文(17)-
1 《樹上の草食獣
2 《狼の友、トルシミール
1 《裏切りの工作員
1 《王国まといの巨人
1 《夏の帳
2 《敬虔な命令
2 《ガラスの棺
3 《神秘の論争
2 《夢を引き裂く者、アショク
-サイドボード(15)-
 

 ミッドレンジの王、「シミック・食物」の台頭の後に現れたデッキが「バント・ゴロス」です。

 《不屈の巡礼者、ゴロス》と《死者の原野》を主軸とした土地コンボで、前環境では《隠された手、ケシス》コンボを前に環境から退場していましたが、もともとポテンシャルのあるデッキ、自分より速いコンボデッキが環境に存在しないのであれば、また表舞台に戻って来るのは必然だったと言えます。

 このデッキの特徴は、その尽きないリソースです。

 このようなランプ・デッキはマナ加速しか引かないorフィニッシャーを打ち消しなどで対処されてしまうと弱かったりして、コントロールデッキなどに良いカモにされることが多いのですが、ことこの「バント・ゴロス」は違います。

 後半の《迂回路》は《死者の原野》と絡めて爆発的にゾンビ・トークンを生み出すことが可能ですし、《ハイドロイド混成体》は打ち消されても大量のドローをもたらしてくれます。

 《不屈の巡礼者、ゴロス》はデッキの名を冠するに恥じないパワーカードで、《不屈の巡礼者、ゴロス》の起動型能力が7マナであることで《不屈の巡礼者、ゴロス》プレイ→《死者の原野》をサーチ→次のターンに土地をセットランドして《不屈の巡礼者、ゴロス》の能力を起動と、《死者の原野》をサーチしながら、《不屈の巡礼者、ゴロス》をプレイしたターンに対戦相手に対処を迫ってきます。

 この圧倒的なスケールの大きさから、「シミック・食物」の《王冠泥棒、オーコ》や《意地悪な狼》を意に介さない展開も多く、環境で唯一「シミック・食物」に有利なデッキとして、瞬く間に環境を席捲しました。

ゴルガリ・出来事
Piotr Glogowski - 「ゴルガリ・出来事」
MPLエルドレイン・スプリット サファイア・ディビジョン 優勝 / スタンダード (2019年10月1~6日)[MO] [ARENA]
8 《
5 《
4 《草むした墓
4 《疾病の神殿
2 《寓話の小道
-土地(23)-

4 《エッジウォールの亭主
4 《穢れ沼の騎士
2 《真夜中の騎士団
4 《恋煩いの野獣
4 《残忍な騎士
4 《探索する獣
3 《悪ふざけの名人、ランクル
1 《虐殺少女
-クリーチャー(26)-
4 《むかしむかし
3 《暗殺者の戦利品
2 《軍団の最期
2 《採取 // 最終
-呪文(11)-
1 《虐殺少女
3 《強迫
2 《見栄え損ない
2 《夏の帳
4 《害悪な掌握
2 《夢を引き裂く者、アショク
1 《はぐれ影魔道士、ダブリエル
-サイドボード(15)-
 

 「バント・ゴロス」が環境のトップに躍り出て、MTGアリーナに「バント・ゴロス」があふれかえっている最中に行われたマジック・プロリーグのサファイア・ディビジョンを優勝したのはピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowskiの「ゴルガリ・出来事」でした。

 「ゴルガリ・出来事」は環境に一定数存在するデッキでしたが、《砕骨の巨人》をタッチしたジャンド型だったり、《幸運のクローバー》を入れた形だったりと、新しいデッキであるがために完成度も低く、イマイチな印象がありましたが、このリストはまさに「ゴルガリ・出来事」をネクストレベルに昇華した形と言えます。

 このリストの特徴は4マナ域のクリーチャー群です。出来事シナジーに寄せ過ぎず、《悪ふざけの名人、ランクル》や《探索する獣》のようなグッドスタッフなカードも採用しています。

 特に《探索する獣》は環境に跋扈する「バント・ゴロス」に効果的なカードです。

 《死者の原野》で出て来たゾンビ・トークンで止まらず、《不屈の巡礼者、ゴロス》でのブロックも4/4接死というボディが成立させません。

 「シミック・食物」、「バント・ゴロス」、「ゴルガリ・出来事」と、役者も揃い出し調整も佳境に入ります。

3.調整

 今回の調整は紆余曲折ありましたのでその辺りは省きますが、最終的に最後の3日間はマジック・プロリーグに所属する日本人プロ3人、行弘さん、八十岡さん、佐藤さんと調整をすることになりました。

 MTGアリーナのミシックチャンピオンシップ初出場で勝手もあまりわからない状態ですし、その中でプロリーグ所属の3人と一緒に調整できるというのは私としては願ったり叶ったり。

 家主の八十岡さんは仕事で忙しく、帰って来るまでは3人で調整→帰って来たら八十岡さんも交えてディスカッションの流れで、デッキリスト提出までベストデッキを模索します。

 共通見解として、ミシックチャンピオンシップに最も多いと思うのは「バント・ゴロス」。環境に半分いてもおかしくないと思わせるMTGアリーナでの使用率で、「バント・ゴロス」に強いデッキを作ることを目標に調整を開始しました。

バント・食物
Jessica Estephan - 「バント・食物」
MPLエルドレイン・スプリット サファイア・ディビジョン 準優勝 / スタンダード (2019年10月1~6日)[MO] [ARENA]
5 《
1 《平地
1 《
4 《寺院の庭
4 《繁殖池
1 《神秘の神殿
4 《神聖なる泉
4 《寓話の小道
-土地(24)-

4 《金のガチョウ
1 《樹上の草食獣
4 《枝葉族のドルイド
1 《楽園のドルイド
3 《発現する浅瀬
1 《拘留代理人
3 《意地悪な狼
2 《大食のハイドラ
4 《ハイドロイド混成体
-クリーチャー(23)-
1 《むかしむかし
4 《王冠泥棒、オーコ
4 《時を解す者、テフェリー
4 《世界を揺るがす者、ニッサ
-呪文(13)-
1 《拘留代理人
2 《探索する獣
2 《狼の友、トルシミール
2 《裏切りの工作員
2 《夏の帳
2 《軽蔑的な一撃
2 《ガラスの棺
2 《否認
-サイドボード(15)-
 

結果……×

 このMPLシーズンでディビジョン準優勝以外にも、各地でいろんな形で結果を残していた「バント・食物」。

 試してみるも感触は悪く。

 主な問題点は《時を解す者、テフェリー》の環境的な弱さです。

 「バント・ゴロス」、「シミック・食物」、「ゴルガリ・出来事」と、環境の上位デッキがタップアウトで動いてくる関係から常在型能力で動きに制限を掛けられることが少なく、ともすれば《時を解す者、テフェリー》は相対的に弱いカードになってしまいます。

 食物デッキに白を足す主なメリットは《時を解す者、テフェリー》ですから、それが弱いのであれば白を足す必要はなく、ギルドランドを増やす関係から土地へのライフ支払いが多くなることなども加味すれば、シミック2色でフードデッキは事足りるでしょう。

バント・ゴロス

結果……△

 環境大大トップメタである「バント・ゴロス」ですが、感想は使いたくはない。

 その理由のひとつとして構成の変化があります。

 「バント・ゴロス」のミラーマッチの鍵は、ズバリ構成です。

 お互いに《時の一掃》や《王国まといの巨人》などの全体除去を打ち合う関係から《死者の原野》でのゾンビ・トークンはなかなかゲームを決めてくれません。

 そのため、相手の《死者の原野》を奪い取る《裏切りの工作員》がミラーマッチの鍵とされていましたが、

 さらにその上のレイヤーを行く、《願いのフェイ》+《神秘を操る者、ジェイス》パッケージを搭載した形まで登場。

 お互いに《裏切りの工作員》を出し合い、《ハイドロイド混成体》で引き合い、《時の一掃》を打ち合うまで同じであると想定するのであれば、ライブラリーを引き切るまでゲームが終わりません。

 そこに終止符を打つのが《願いのフェイ》から《神秘を操る者、ジェイス》というわけです。

 ただ、やはり《願いのフェイ》自体がデッキにフィットしているカードではなく、ミラーマッチ以外ではほぼ不要牌となってしまうのですが、これだけミラーマッチが多いと想定せざるを得ませんし、ミラーマッチはデッキを引き切る展開になりがちなことから、入っていないと入っている形にほぼ勝てません。

 このように極度にミラーマッチを想定し、デッキの形を歪めている状態では、そのデッキ以外のファンデッキ、そのデッキ以外は全て勝つに値しないような環境でないと、抜け出せない迷路に嵌っている状態だと考えているので、「バント・ゴロス」を使いたいと思えませんでした。

ゴルガリ・出来事

結果……×

 マジック・プロリーグを勝ち抜いた「ゴルガリ・出来事」ですが、「バント・ゴロス」の完成度が上がるにつれて相性が悪くなり、使う理由もなくなりました。

Piotr-Glogowski-Profile-Photo.jpg

 決め手となったのは「ゴルガリ・出来事」マスターであり、プロリーグを勝ち抜いたピオトル・グロゴウスキさんの配信です。

 彼は調整過程を配信でよく流しているのですが、いろいろと形を変え試行錯誤するも、当たる「バント・ゴロス」にことごとく撃破されていました。

 マスタークラスである彼ですらMTGアリーナのランクドマッチで勝率を下げているわけですから、まして私がそれを使用してミシックチャンピオンシップを勝ち切れるわけがないだろうなと、配信を見ながら感じました。

グルール・アグロ

結果……△

 対「バント・ゴロス」の急先鋒として現れた「グルール・アグロ」。

 デッキリスト提出前には結構当たるようになり、ならば試してみるかとなるのは当然のことで。

 佐藤さんとチャレンジマッチで「バント・ゴロス」と当ててみたらなんと5-0の結果。

 《探索する獣》が「バント・ゴロス」に強いのは「ゴルガリ・出来事」の時に得た知見でもちろんですが、《エンバレスの宝剣》もインスタントタイミングでの干渉手段を用いない「バント・ゴロス」に対してキラーカードとなり得るカードパワー。

 一度《時の一掃》などの全体除去で盤面を流されたとしても《エンバレスの宝剣》は残りますし、《ザル=ターのゴブリン》などの速攻クリーチャーを多数有している「グルール・アグロ」はそれらの展開に対して耐性があります。

 これはもしかしてデッキが決まったか!と一同興奮しましたが、では2番手と予想している「シミック・食物」と当ててみると、その興奮も醒める0-5という結果に。

 《王冠泥棒、オーコ》→《意地悪な狼》→Azasita! の黄金ムーブにもうメロメロ。

 サイドボード後はシミックがミラー用に採用している《霊気の疾風》が悲しいことにクリーンヒットしてしまい、メインサイドともに絶望的な相性差。

ゴロス系が9割とかいるのであれば話は別ですが、そこまで超圧倒的支配になることは考え辛く、普通にフード系もいることを考えると食指は伸びません。

行弘 賢 - 「マルドゥ・騎士」
2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ) / スタンダード (2019年10月18~20日)[MO] [ARENA]
5 《
3 《
4 《血の墓所
4 《聖なる鋳造所
4 《神無き祭殿
4 《試合場
-土地(24)-

4 《熱烈な勇者
4 《漆黒軍の騎士
4 《黒槍の模範
4 《鼓舞する古参
4 《リムロックの騎士
4 《評判高い挑戦者
4 《朽ちゆくレギサウルス
-クリーチャー(28)-
4 《鋼爪の槍
4 《エンバレスの宝剣
-呪文(8)-
4 《アングラスの暴力
4 《軍団の最期
4 《害悪な掌握
3 《栄光の好機
-サイドボード(15)-
 

 ただ、この時に得た「《エンバレスの宝剣》はゴロスに強い」という知見をもとに、行弘さんが《エンバレスの宝剣》をフィーチャーした「マルドゥ・騎士」を構築。

 チーム内でもなかなか話題になり各自試してみましたが、そのピーキーな構成からみんな断念していき、最終的にデッキを構築した行弘さんのみがプレイすることになりました。

 その他、《創案の火》を入れてミラーマッチに強くなった評判の「ゴロス・ファイアーズ」だったり(引きムラが凄く、別にミラーマッチに強くなっていない)、

 《願いのフェイ》から何を持って来ても返せない盤面によくなる「ジェスカイ・ファイアーズ」だったりと、各《創案の火》デッキも試してみたり、

 八十岡さん謹製の「青白ライブラリーアウト」だったり。

 「バント・ゴロス」には異様に強いが、食物系に不利、「バント・ゴロス」メタで増えてきている「グルール・アグロ」にはもっと不利だったりと迷走に入ります。

4.急転

 無限にあると思われた時間も、残すところ12時間。

 みんなデッキが決まっておらず、かつ極度のプレッシャーからか、(八十岡さん以外)いよいよ精神が錯乱してきました。

 そんな中で私がポツリと、

「シミックでゴロスに勝てたらもうそれで良いんだけどなぁ。」

とボヤいてみると、

yasooka_photo.jpg

「俺、シミックでゴロスに負けたことないけどな。」

 というのは八十岡さんの弁。


 
 

 な、なんだってー!!!!!!!!!!!!!!

 といったところで前編は終了!

 後編は使用したデッキの解説と、トーナメントレポートをお届けしようと思います!

 お楽しみに!

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