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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『戦乱のゼンディカー』 前編
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『戦乱のゼンディカー』 前編
こんにちは!Team Cygames所属の市川です。
今シーズンから、プロツアーに向けての調整記/大会レポートを連載させていただくことになりました。
今回は10月16日~18日にかけて行われましたプロツアー『戦乱のゼンディカー』に向けての調整記を綴ろうと思います。よろしくお願いします。
0.全カードを見ての印象
■カラーコンビネーション毎によるマナベースの強弱
ローテーション後の新環境ということで、まずはどのデッキでも下地となる土地周りをチェック。
《疾病の神殿》などの「占術ランド」が無くなったことからデッキの安定性は損なわれ、引きムラをある程度構築でカバーしなければなりません。
アグロ以外のデッキではマナスクリューをカバーするような構築はなかなか難しいため、基本的にデッキ構築でマナフラッドを受けやすく組むこととなります。
その点新しく加入した《乱脈な気孔》、《伐採地の滝》は2色土地でありながらマナフラッドを緩和してくれるため非常に強力です。
《乱脈な気孔》、《伐採地の滝》はともに、クリーチャー化した時のスペックも高く、是非デッキに組み込みたいカードと言えるでしょう。
《燃えがらの林間地》、《大草原の川》などの基本土地タイプを有する2色土地「バトルランド」が新加入。
これにより、《汚染された三角州》などのフェッチランドを絡めたマナベースの構築が強固になりました。
バトルランド、フェッチランドともに有効色のみプールに存在するため、色の適合しているフェッチランドからその場に応じてバトルランドを持って来る動きは、カラー・ホイール上で隣接する「友好3色」でしか行えません。
- 白青黒(エスパー)
- 青黒赤(グリクシス)
- 黒赤緑(ジャンド)
- 赤緑白(ナヤ)
- 緑白青(バント)
その中でも《乱脈な気孔》、《伐採地の滝》などの「ミシュラランド」が採用できる
- 白青黒(エスパー)
- 緑白青(バント)
は環境で最も優れているマナベースを持った組み合わせと言えます。
次点は、バトルランド、フェッチランドによるマナベースの構築が難しいながらも《乱脈な気孔》、《伐採地の滝》が採用できる「楔の3色」のカラーリングです。
- 白黒緑(アブザン)
- 黒緑青(スゥルタイ)
- 赤白黒(マルドゥ)
- 緑青赤(ティムール)
上記の友好3色とのマナベース上の強弱は微差です。
その差は「バトルランドとフェッチランドでマナベースを組める」ことと、「《砂草原の城塞》などに代表される『トライランド』を軸にマナベースを構築する」ことのギャップから来ています。
《乱脈な気孔》か《伐採地の滝》を4枚採用することを前提とした場合、確定タップインランドが4枚、またバトルランドも潜在的なタップインであるため、それらを含めると6~10枚程度のタップインランドがデッキに入ることとなります。
トライランドは強力な土地ではありますが、さらにこれをデッキに組み込むとデッキ内のタップインランドが10枚から14枚程度となってしまい、展開の阻害になりやすくなってしまいます。
これまでの話題に唯一出てきていないカラーリングがあります。
- 赤白青(ジェスカイ)
前環境では白黒緑(アブザン)とスタンダードで二枚看板となっていた青赤白(ジェスカイ)。
新環境では「ミシュラランド無し」「バトルランドとフェッチランドを絡めたマナベースの構築も難しい」と、最も弱いマナベースからのスタートとなりました。
ただ、前環境からマナベース以外の構築級のカードを最も引き継げたのもジェスカイカラーと言え、『マナベースは弱いがカードは強い』形となっており、このバランスもウィザーズの狙いなのかな?と全カードを見ながら考えていました。
■新しいデッキタイプ
もちろん、見ているのは土地だけではありません。
新しいカードからどんなデッキが出てくるか予想します。
赤緑上陸
《鎌豹》、《マキンディの滑り駆け》などの軽量の上陸クリーチャーを軸にしたビートダウン。
《アタルカの命令》との相性は抜群で、今まで殆ど使われていなかった「あなたは、あなたの手札にある土地カードを1枚戦場に出してもよい。」のモードも上陸クリーチャーと絡めるととてつもない爆発力を持ちます。
上陸のためにフェッチランドを大量に採用することから、探査カードも無理なくデッキに組み込めます。
《強大化》と《ティムールの激闘》の相性は抜群で、盤面がどれだけ窮していてもこの2枚を組み合わせれば大ダメージを与えられ、相手をコンボ的に倒してしまうこともできます。
また《強大化》を引かなくとも、《マキンディの滑り駆け》と《噛み付きナーリッド》はフェッチランドと組み合わせればパワーが4以上になるため、《ティムールの激闘》の獰猛も達成できます。
軽く組んでテストプレイをしてみたところ、4ターン目くらいには安定して相手を倒してしまう力があり、環境最速のデッキと予想しました。
エルドラージ・ランプ
新カード《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をゴールとした緑軸のランプデッキ。
《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の制圧力は圧倒的で、ミッドレンジ以降のデッキに対して最も効果的と言えるカードです。
《龍王アタルカ》、《精霊龍、ウギン》といった旧環境から引き継いでいるカードも依然として強力ですし、新しく入った《ウギンの聖域》や《見捨てられた神々の神殿》などの無色土地も見逃せません。
全カードが出てパッと思いついたのが上記2つのデッキで、いずれもベクトルが違い過ぎるデッキであることから、前環境ではトップメタだった「アブザンコントロール」のようなミッドレンジデッキは環境に存在できないのではないかと考えていました。
1.蓋を開けてみたら......ミッドレンジ祭り
発売週に開催されたStarCityGames.com Standard Open Indianapolis。
参加人数も多く、プロツアーの指標となる重要な大会です。
■ダーク・ジェスカイ
3 《平地》 1 《島》 1 《沼》 2 《山》 2 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 2 《燻る湿地》 3 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《神秘の僧院》 -土地(25)- 2 《竜使いののけ者》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《カマキリの乗り手》 1 《軍族の解体者》 4 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(15)- |
2 《乱撃斬》 1 《払拭》 1 《焦熱の衝動》 3 《勇敢な姿勢》 4 《はじける破滅》 1 《ジェスカイの魔除け》 2 《オジュタイの命令》 3 《時を越えた探索》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(20)- |
3 《アラシンの僧侶》 1 《払拭》 2 《正義のうねり》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 3 《光輝の炎》 2 《虚空の接触》 1 《オジュタイの命令》 1 《悲劇的な傲慢》 -サイドボード(15)- |
『ミシュラランドが採用できないなら、4色にすれば良いじゃない』
と言わんばかりの、3位と6位に入賞していたダーク・ジェスカイ。
ジェスカイカラーが苦手としている《包囲サイ》などの、火力で対処できないサイズのクリーチャーに対しての回答として、《はじける破滅》を採用しています。
2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス》から3ターン目《はじける破滅》はクリーチャーを主軸とするデッキに対してとにかく強力で、《ヴリンの神童、ジェイス》を対処されなければ勝ったも同然。
トップ8デッキの中で最も完成度が高く、4色ゆえにデッキパワーも高く、プロツアー本番にも一定数居そうだなと感じました。
■5色《白日の下に》
1 《平地》 1 《島》 2 《森》 1 《沼》 1 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 1 《燻る湿地》 1 《燃えがらの林間地》 1 《梢の眺望》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 3 《血染めのぬかるみ》 1 《樹木茂る山麓》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《伐採地の滝》 1 《乱脈な気孔》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《包囲サイ》 1 《賢いなりすまし》 1 《光り葉の選別者》 1 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー(13)- |
2 《軽蔑的な一撃》 2 《魂裂き》 4 《アブザンの魔除け》 1 《破滅の道》 1 《スゥルタイの魔除け》 1 《衰滅》 1 《完全なる終わり》 4 《白日の下に》 2 《残忍な切断》 1 《命運の核心》 1 《ウギンの洞察力》 -呪文(20)- |
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 1 《漂う死、シルムガル》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《氷固め》 1 《光輝の粛清》 3 《光輝の炎》 1 《シルムガルの命令》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
SCGの看板ライター、ジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonが持ち込んだ5色《白日の下に》。
誰しもが考えそうなデッキですが、それをしっかり形にし、結果を出すのは流石の一言。
連打したら勝てるカード代表の《包囲サイ》や、アグロデッキに滅法強い《衰滅》などのポピュラーなカードはもちろん、
《ウギンの洞察力》や《賢いなりすまし》など、《白日の下に》のサーチ用に珍しいカードがデッキを構成しています。
その他、前環境から引き継ぐ緑白大変異。
6 《森》 4 《平地》 3 《梢の眺望》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 3 《溢れかえる岸辺》 1 《荒廃した草原》 -土地(25)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《搭載歩行機械》 2 《隠れたる龍殺し》 4 《死霧の猛禽》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 3 《風番いのロック》 -クリーチャー(24)- |
4 《ドロモカの命令》 3 《勇敢な姿勢》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(11)- |
3 《アラシンの僧侶》 2 《囁きの森の精霊》 3 《進化の飛躍》 2 《絹包み》 1 《見えざるものの熟達》 1 《光輝の粛清》 1 《勇敢な姿勢》 2 《悲劇的な傲慢》 -サイドボード(15)- |
これも同じく前環境からのエスパー・ドラゴン。
5 《島》 4 《沼》 2 《大草原の川》 4 《窪み渓谷》 4 《汚染された三角州》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《荒廃した湿原》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(27)- 4 《龍王オジュタイ》 2 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー(6)- |
3 《蔑み》 4 《シルムガルの嘲笑》 2 《手酷い失敗》 3 《忌呪の発動》 2 《完全無視》 2 《風への散乱》 3 《完全なる終わり》 1 《衰滅》 2 《命運の核心》 4 《時を越えた探索》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(27)- |
4 《アラシンの僧侶》 3 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《払拭》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《忌呪の発動》 1 《衰滅》 1 《護法の宝珠》 1 《龍王の大権》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
このように結果を見ると、戦前に私が予想した赤緑上陸も緑軸のエルドラージ・ランプもおらず、トップ8に6つのミッドレンジデッキが入賞と、まさにミッドレンジ祭りとなっていました。
唯一入賞したアグロデッキは前環境からのアタルカ・レッド。
8 《山》 1 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《吹きさらしの荒野》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 4 《鐘突きのズルゴ》 2 《稲妻の狂戦士》 4 《ケラル砦の修道院長》 1 《マキンディの滑り駆け》 2 《カラデシュの火、チャンドラ》 -クリーチャー(17)- |
4 《タイタンの力》 4 《乱撃斬》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 3 《ティムールの激闘》 3 《強大化》 -呪文(22)- |
2 《ゴブリンの踵裂き》 2 《雷破の執政》 4 《搭載歩行機械》 2 《焦熱の衝動》 2 《焙り焼き》 3 《弧状の稲妻》 -サイドボード(15)- |
マナベースがフェッチランド+《燃えがらの林間地》で強化され、前述の《ティムールの激闘》と《強大化》のコンボを搭載。
その他にも《タイタンの力》や《ケラル砦の修道院長》の果敢を多重に誘発させるなどして《ティムールの激闘》の獰猛を達成させることができますし、安定性の面を含めて赤緑上陸よりこちらの方が良さそうです。
2.プロツアー1週間前 ~Big Magic Open~
プロツアーの1週間前に開催されたBig Magic Open Vol.5。
私は「雑多なミッドレンジデッキに勝つ」を目標にオリジナルデッキを携えていました。
■緑黒ハスク
3 《沼》 2 《森》 1 《燻る湿地》 1 《燃えがらの林間地》 4 《ラノワールの荒原》 4 《ジャングルのうろ穴》 4 《血染めのぬかるみ》 3 《樹木茂る山麓》 1 《ならず者の道》 -土地(23)- 4 《膨れ鞘》 4 《捕らわれの宿主》 4 《搭載歩行機械》 4 《ズーラポートの殺し屋》 4 《地下墓地の選別者》 4 《ナントゥーコの鞘虫》 4 《異端の癒し手、リリアナ》 -クリーチャー(28)- |
4 《骨の粉砕》 1 《進化の飛躍》 4 《集合した中隊》 -呪文(9)- |
4 《肉袋の匪賊》 3 《強迫》 1 《進化の飛躍》 3 《光輝の炎》 3 《前哨地の包囲》 1 《山》 -サイドボード(15)- |
このデッキはミッドレンジデッキには無類の強さを誇ります。
ダーク・ジェスカイの《はじける破滅》は《捕らわれの宿主》や《地下墓地の選別者》などの「代役」のおかげで除去呪文として機能しませんし、アブザン・コントロールの《衰滅》などにも、各種除去耐性のあるクリーチャーや、《集合した中隊》で粘り強く攻勢に出ることができます。
《骨の粉砕》は環境では希有の裏目の無い軽量除去とも言えますし、《ナントゥーコの鞘虫》は《アブザンの魔除け》の対象にならず、《乱撃斬》などの火力呪文には他のクリーチャーを生け贄に捧げることで耐えることができ、額面以上の除去耐性があります。
《集合した中隊》から《ナントゥーコの鞘虫》と《異端の癒し手、リリアナ》を戦場に出すことができたら突然死もあり得るなどのコンボ要素もあり、テストプレイではミッドレンジデッキ全般にほとんど負けませんでした。
アタルカ・レッドなどのデッキにも《膨れ鞘》や《捕らわれの宿主》などの除去耐性のあるクリーチャーが場を固めてくれますし、《ズーラポートの殺し屋》のドレイン能力も強く、相性良し。
グランプリ・千葉2015を優勝した松本友樹さんのデッキアイディアでしたが、私が気に入ったこともあり、独自に調整を開始。
元々はアブザンカラーで《先祖の結集》や《アブザンの隆盛》などが入っていましたが、アブザンカラーではダブルシンボルがキツく《異端の癒し手、リリアナ》が採用できない点が気になり、緑黒に色を減らしました。
緑黒だとバトルランドもミシュラランドもなく、2色にしてもマナベースが依然として弱かったので、緑と黒の間のカラーである赤いフェッチランドとバトルランドを入れてデッキを構築。
となれば、サイドに赤いカードもタッチ可能になり《光輝の炎》と《前哨地の包囲》を少々。
出来栄えとしてはかなり満足していて、大会での使用感が良ければプロツアーでも使おうと考えていました。
ところが......!!
■非情な現実
- 1R 4色中隊 ○
- 2R アタルカ・レッド ○
- 3R アブザン・アグロ ×
- 4R アブザン・アグロ ×
- 5R アタルカ・レッド ○
- 6R ジャンド・ミッドレンジ ○
- 7R アブザン・コントロール ○
- 8R 4色《先祖の結集》 ×
- 9R アタルカ・レッド ○
- 10R マルドゥ・ミッドレンジ ○
- 11R アブザン・アグロ ○
- 12R アブザン・アグロ ×
- 13R ダーク・ジェスカイ ○
- 14R ティムールドラゴン ○
- 15R アブザン・アグロ ×
15ラウンドを戦い抜いて10勝5敗。
成績だけ見るとそこまで悪くは見えないのですが......。
とあるアーキタイプとの試合だけをこの結果から抽出してみましょう。
- 3R アブザン・アグロ ×
- 4R アブザン・アグロ ×
- 11R アブザン・アグロ ○
- 12R アブザン・アグロ ×
- 15R アブザン・アグロ ×
そう!アブザン・アグロに1勝4敗!メタメタのボロボロだったのです!
2 《平地》 1 《沼》 3 《森》 1 《梢の眺望》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 4 《ラノワールの荒原》 1 《ジャングルのうろ穴》 2 《コイロスの洞窟》 4 《乱脈な気孔》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《搭載歩行機械》 3 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(21)- |
2 《ドロモカの命令》 1 《究極の価格》 1 《勇敢な姿勢》 4 《アブザンの魔除け》 1 《破滅の道》 1 《残忍な切断》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(13)- |
3 《アラシンの僧侶》 3 《強迫》 2 《自傷疵》 2 《正義のうねり》 1 《究極の価格》 2 《悲劇的な傲慢》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
最大の問題は《先頭に立つもの、アナフェンザ》。カード1枚で緑黒ハスクを機能不全にさせます。
唯一の対処方法が《骨の粉砕》ですが、クリーチャーの生け贄はコストなので、《先頭に立つもの、アナフェンザ》の能力のせいで対処するにはアドバンテージの損失は必至。
また対処したとしても2体目の《先頭に立つもの、アナフェンザ》や《棲み家の防御者》で《先頭に立つもの、アナフェンザ》を回収など、依然として不利なマッチアップが続きます。
また、その他にも表向きになった《棲み家の防御者》がなかなか止まらない、普通に《包囲サイ》のトランプルがキツい、《搭載歩行機械》が居ると《ナントゥーコの鞘虫》のダメージが全然通らないなど、相手が《先頭に立つもの、アナフェンザ》を引いていなくても不利なマッチアップであることが判明。(《先頭に立つもの、アナフェンザ》を引かれていたらもちろんド不利です。)
デッキパワーが高く、対応力もあり、Big Magic Openではアブザン・アグロは上位卓を独占していました。
もちろんプロツアーでも一定数いることは容易に予想され、どう構成してもアブザン・アグロへの相性が覆らない、手塩に掛けた緑黒ハスクは泣く泣くお蔵入りすることに。
3.プロツアー1週間前 ~StarCityGames.com Standard Open Atlanta~
Big Magic Openと同じ週末、アメリカではプロツアー前最後となるStarCityGames.com Standard Open Atlantaが開催されていました。
■緑白大変異の躍進
前回大会で頭角を現したダーク・ジェスカイが複数トップ8入りする一方、それらを押しのけてワンツーフィニッシュを決めたのは緑白大変異でした。
6 《森》 5 《平地》 3 《梢の眺望》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 3 《溢れかえる岸辺》 -土地(25)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《搭載歩行機械》 2 《隠れたる龍殺し》 4 《死霧の猛禽》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 3 《風番いのロック》 -クリーチャー(24)- |
4 《ドロモカの命令》 3 《勇敢な姿勢》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(11)- |
2 《徴税の大天使》 2 《囁きの森の精霊》 1 《龍王ドロモカ》 3 《正義のうねり》 2 《進化の飛躍》 2 《ギデオンの叱責》 1 《見えざるものの熟達》 2 《悲劇的な傲慢》 -サイドボード(15)- |
なぜ緑白大変異が急に結果を出したのか。
それはダーク・ジェスカイ、特に《はじける破滅》への耐性が理由でした。
《死霧の猛禽》や《巨森の予見者、ニッサ》、《搭載歩行機械》など、《はじける破滅》をされても損をしないカード群で構成されており、除去コントロールには無類の強さを誇ります。
また、環境随一のパワーカードと目される《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を、マナベースの無理なく採用できるところも見逃せない点です。
プロツアーでは最大勢力が予想されるダーク・ジェスカイに強いのはポジティブな要素ですし、他のデッキにも粘り強く戦うことができる緑白大変異。
プロツアー直前週にそれはトップメタに食い込みました。
4.ここまでの環境まとめ
ダーク・ジェスカイの出現
日本でのアブザン・アグロの隆盛
アメリカでの緑白大変異の台頭
ふむふむなるほど、段々わかって来たぞ!と思ったらもう出発前日。
時間が無いー!困ったどうしよう。と筆者が頭を抱えていると、とある友人から連絡が。
???『飛行機一緒だよね?また家来て一緒に練習しよー』 |
と、いうことでプロツアー直前の調整記から次回は始まります。
つづく
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