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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第15回:『サンダー・ジャンクションの無法者』とプロツアーがもたらしたもの
皆さんこんにちは。原根健太(@jspd_)です。
今回は『サンダー・ジャンクションの無法者』環境のスタンダード記事となります。現在「ストアチャンピオンシップ」開催期間の真っ只中であり、今月末にはプレイヤーズコンベンション愛知2024内で「チャンピオンズカップファイナル」や「ジャパンスタンダードカップ」が開催されます。本稿が現在のスタンダード環境理解のお役に立てれば幸いです。
さて、『サンダー・ジャンクションの無法者』がリリースされてから早1か月が経過しようとしています。今セットも非常に魅力あふれる内容となっており、環境に影響を与えるカードが多く収録されています。
さらに今回は「ビッグスコア」と呼ばれる特殊な収録があり、30種の神話レアが追加収録されています。全種神話レアというだけあって、この枠にもパワフルなカードが盛りだくさんの内容でした。
プロツアー『サンダー・ジャンクション』
そんな中、セットリリースからわずか1週間(!)の日程でプロツアー『サンダー・ジャンクション』がスタンダードにて開催されました。3年ローテーションの集大成であり、最もカードプールが多く、かつセットリリースから最速のイベント開催。短い準備期間で膨大な量のカードを検証する必要があったため、プレイヤーも苦労したことでしょう。
かくいう僕自身もこの大会に参加したのですが、本当に大変でした。本大会はスタンダードとブースタードラフトの複合フォーマットによる開催のためそちらも練習する必要がありますし、前述の通りカードプールも3年分のセットがフルで使用できる状態ですから、テストすべき事項が山ほどありました。
プロツアーのような大きな大会には、プレイテストの効率化を目的として調整チームを組むことが多いです。一人で本番までに全てのデッキをテストするのはほぼ不可能ですので、負荷を分散しあらゆる選択肢を検証していく訳です。この大会に向けては総勢10名からなるチーム「森山JAPAN」の面々で臨みました。
井川さんおめでとうございます!
優勝者の井川良彦さんを筆頭に1・2・3位を独占するなどチームとしては非常に優れた結果を残すことができましたが、1点非常に興味深い事があります。それはメンバーの使用デッキがバラバラであったことです。
氏名 | 総合成績 | スタンダードデッキ | スタンダード成績 |
---|---|---|---|
井川 良彦 | 優勝(18-1) | 版図ランプ | 13-0 |
高橋 優太 | 準優勝(13-4-2) | アゾリウス・コントロール | 9-2-2 |
松浦 拓海 | 3位(14-4) | ボロス召集 | 9-3 |
森山 真秀 | 12位(11-5) | エスパー・ミッドレンジ | 7-3 |
井上 徹 | 28位(10-5-1) | ボロス召集 | 7-2-1 |
加茂 里樹 | 37位(10-6) | 赤単アグロ | 7-3 |
中村 修平 | 48位(9-7) | ティムール・アナリスト | 5-5 |
市川 ユウキ | 53位(9-7) | ティムール・アナリスト | 6-4 |
原根 健太 | 68位(9-7) | エスパー・ミッドレンジ | 8-2 |
佐藤 レイ | 203位(1-5) | ボロス召集 | 0-3 |
調整チームとは本来、チーム一丸となって「ベストデッキ」なるものの発見を目標に掲げます。大抵はその候補が1つか2つ見つかり、そのどちらを選ぶかは各人の好みに委ねるといったケースが多いのですが、今回は10人で6種のデッキを使用しました。明らかに絞り込めていません。また同じアーキタイプでも構築に差異があり、全く同じデッキリストをプレイしたのは2人しかいませんでした。非常に珍しい事態です。
これは現在のスタンダードシーンの難解さを示すものであり、プロと称されるプレイヤーたちが集まってベストを議論しても、何通りもの選択肢が発生してしまうほどバランスの取れた環境という訳です。最終的な選択は各人のプレイスキルに寄せたものとなっており、そして上記の通り、どのデッキタイプもそれなりの成果を得ています。
今回の記事では現在のスタンダードシーンで活躍しているデッキをプロツアーの結果ベースで網羅していきたいと思います。
プロツアー『サンダー・ジャンクション』のメタゲーム
最初に、プロツアー『サンダー・ジャンクション』のデッキシェアは以下の通りでした。
プロツアー開催前に本命と称されていたのはエスパー・ミッドレンジ、ボロス召集の2種で、その2つは予想通り多くのシェアを占めました。まず、前提として話しておく必要があるのがエスパー・ミッドレンジの存在です。
エスパー・ミッドレンジ
2 《地底の大河》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《平地》 2 《砕かれた聖域》 1 《島》 4 《不穏な投錨地》 3 《さびれた浜》 1 《天上都市、大田原》 1 《ラフィーンの塔》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《闇滑りの岸》 3 《秘密の中庭》 2 《コイロスの洞窟》 -土地(26)- 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 4 《大洞窟のコウモリ》 3 《敬虔な新米、デニック》 3 《フェアリーの黒幕》 -クリーチャー(15)- |
2 《放浪皇》 3 《忠義の徳目》 4 《喉首狙い》 3 《喝破》 3 《切り崩し》 4 《婚礼の発表》 -呪文(19)- |
1 《放浪皇》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 3 《ティシャーナの潮縛り》 1 《第三の道のロラン》 3 《害獣駆除》 2 《否認》 1 《邪悪を打ち砕く》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《長い別れ》 1 《切り崩し》 -サイドボード(15)- |
このデッキは万能型であり、できないことがほとんどなく、サイドデッキまで含めればあらゆるデッキ相手に五分以上に戦うことが可能な王道デッキです。
ミッドレンジ同士の対戦にもすこぶる強く、現在のスタンダードにはディミーア・ゴルガリ・ラクドスといったミッドレンジデッキが存在しますが、ミッドレンジデッキ群の中ではエスパーが頭一つ抜けています。
ちなみにこのエスパー・ミッドレンジには多種多様な形があり、他アーキタイプと比べて明らかにリストが定まっていません。大きなところでは《婚礼の発表》採用の有無、《精神の決闘者》採用の有無があり、攻撃的なのか守備的なのかでも様々です。環境トップにありながらこれだけ内容が定まっていないのは非常に珍しいですね。
中間ゲームレンジでエスパーに競り勝つのは非常に難しく、その関係上対抗馬にはいわゆる「尖ったデッキ」が台頭し始めました。あくまで「バランス良く戦える」というだけであって、すなわち一点突破のやり方には対応策が限られることを意味しています。
ボロス召集
2 《ミレックス》 2 《反逆のるつぼ、霜剣山》 2 《皇国の地、永岩城》 2 《魂の洞窟》 4 《戦場の鍛冶場》 3 《平地》 4 《感動的な眺望所》 3 《山》 -土地(22)- 4 《イーオスの遍歴の騎士》 2 《血滾りの福音者》 4 《イモデーンの徴募兵》 4 《毅然たる援軍》 1 《ヨーティアの前線兵》 4 《ひよっこ捜査員》 4 《ヴォルダーレンの美食家》 4 《内なる空の管理人》 -クリーチャー(27)- |
4 《上機嫌の解体》 3 《戦導者の号令》 4 《門道急行の事件》 -呪文(11)- |
2 《祭典壊し》 2 《石術の連射》 2 《邪悪を打ち砕く》 2 《失せろ》 3 《ウラブラスクの溶鉱炉》 4 《ゴバカーンへの侵攻》 -サイドボード(15)- |
尖りの極致として挙げられるのがこのボロス召集です。現スタンダードデッキの中でも特に異質な存在で、特定のメタカードを用いない限りその対処は至難の業です。《上機嫌の解体》を筆頭としたクリーチャーを複数隊展開するカードを駆使し、《イーオスの遍歴の騎士》の高速召喚や《イモデーンの徴募兵》による苛烈な攻めで対戦相手を責め立てます。
《切り崩し》や《喉首狙い》のような単体除去が主力となっている現在のメタゲームにおいて、ひたすら横に並べる戦略はとにかく強力です。
デッキのクオリティも高く、パイオニアに存在する同デッキタイプとほとんど変わらない呪文構成となっています。このデッキの存在により環境のほぼ全デッキがサイドボードに全体除去を採用しています。参考までに、僕の場合プロツアーで使用したデッキのサイドボードに専用の全体除去を5枚採用しました。引かなければほぼ負けぐらいの意識を持っています。
上記2デッキが環境のトップを占めることはおそらく全参加者が思い描いたことでしょう。実際のシェアも2デッキ合わせて40%となりました。ザックリと言えば、2回に1回はどちらかのデッキと対戦する覚悟をする必要があります。
そしてそうなってくると、プレイヤーとして考えるのは「上記2つのデッキに対して有利、最低五分以上は戦えるデッキ」の模索です。前述の通り、ボロス召集が非常に尖ったコンセプトを持っているため、全体除去を無理なく扱えることは必須要件になってきます。その上で、エスパー・ミッドレンジのバランス重視のコンセプトから軸をずらした戦い方ができることが理想。
結果として、それを実現させる選択肢としてはティムール・アナリスト、版図ランプ、アゾリウス・コントロールの3種類が選ばれることになりました。
ティムール・アナリスト
4 《山》 4 《貴顕廊一家の劇場》 6 《島》 6 《森》 3 《舞台座一家の中庭》 4 《斡旋屋一家の潜伏先》 2 《土建組一家の監督所》 1 《残響する深淵》 -土地(30)- 4 《復活した精霊信者、ニッサ》 4 《事件現場の分析者》 1 《樹海の幻想家、しげ樹》 -クリーチャー(9)- |
4 《強靭の徳目》 4 《間の悪い爆発》 3 《世界魂の憤怒》 4 《記憶の氾濫》 3 《勝利の炎》 3 《洞窟探検》 -呪文(21)- |
1 《産業のタイタン》 1 《巨大な空亀》 2 《乱伐者、ボニー・ポール》 1 《ドッペルギャング》 3 《毒を選べ》 2 《吸血鬼の復讐》 3 《否認》 2 《掘り返し》 -サイドボード(15)- |
このデッキは《事件現場の分析者》をキーカードにしたランプ型のデッキで、《斡旋屋一家の潜伏先》のような墓地に送られるタイプの土地をふんだんに使用し、それらを《事件現場の分析者》や《世界魂の憤怒》で使い回し、大量の土地を並べます。
そして最後には《強靭の徳目》からの《世界魂の憤怒》で凄まじいダメージを叩き出します。
このデッキもボロス召集同様メインデッキから対策するのは至難の業で、サイドデッキには《ティシャーナの潮縛り》《未認可霊柩車》《安らかなる眠り》といった専用の対策カードの採用を要求しています。
版図ランプ
1 《ラフィーンの塔》 4 《ジアトラの試練場》 3 《平地》 4 《魂の洞窟》 4 《スパーラの本部》 1 《島》 3 《森》 4 《ジェトミアの庭》 1 《沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(26)- 3 《偉大なる統一者、アトラクサ》 4 《怒りの大天使》 1 《イモデーンの徴募兵》 4 《装飾庭園を踏み歩くもの》 -クリーチャー(12)- |
4 《群れの渡り》 3 《太陽降下》 1 《地図作りの調査》 3 《集団失踪》 1 《中心核の瞥見》 1 《長い別れ》 4 《力線の束縛》 2 《洞窟探検》 3 《豆の木をのぼれ》 -呪文(22)- |
1 《向上した精霊信者、ニッサ》 2 《温厚な襞背》 2 《金属の徒党の種子鮫》 3 《否認》 3 《長い別れ》 2 《一時的封鎖》 2 《安らかなる眠り》 -サイドボード(15)- |
『団結のドミナリア』で登場した版図ギミックを軸に据え、『ファイレクシア:完全なる統一』で完成したこのデッキ。成立後は常にメタゲームに食い込んでいます。エスパー・ミッドレンジとは常にライバル関係にありましたが、『イクサラン:失われし洞窟』にて《魂の洞窟》を獲得して以降、優劣がハッキリとするようになりました。
《偉大なる統一者、アトラクサ》に加え《怒りの大天使》も天使の種族で統一されており、「打ち消し不可能」な怒涛の攻めがエスパーの牙城を突き崩します。
打ち消し呪文では歯が立たないため、エスパー側は積極的にライフを責め立てる他ないのですが、版図ランプは豊富な全体除去を有しておりそれも簡単にはいきません。従来の版図ランプは4ターン目を《ゼンディカーへの侵攻》のようなマナブーストのターン、5ターン目を《太陽降下》の全体除去のターンとしていました。そのため4ターン目までにダメージ源を展開し5ターン目以降は打ち消し呪文で全体除去に備えるというプレイがセオリーだったのですが、ここ最近はマナブーストの代わりに《集団失踪》を使用するリストが増えており、その目論見に裏目を与えられる構図が出来上がっています。
アゾリウス・コントロール
3 《島》 2 《金属海の沿岸》 1 《天上都市、大田原》 1 《解体爆破場》 4 《不穏な投錨地》 3 《廃墟の地》 3 《アダーカー荒原》 1 《皇国の地、永岩城》 2 《ミレックス》 1 《沈んだ城塞》 4 《さびれた浜》 3 《平地》 -土地(28)- -クリーチャー(0)- |
4 《放浪皇》 3 《太陽降下》 4 《記憶の氾濫》 3 《推理》 1 《失せろ》 4 《喝破》 1 《かき消し》 4 《三歩先》 2 《幻影の干渉》 4 《冥途灯りの行進》 2 《一時的封鎖》 -呪文(32)- |
1 《船砕きの怪物》 1 《加護をもたらす戦乙女》 3 《ティシャーナの潮縛り》 2 《邪悪を打ち砕く》 3 《否認》 2 《未認可霊柩車》 1 《金線の酒杯》 2 《一時的封鎖》 -サイドボード(15)- |
上記の通り版図ランプは全体除去を多く採用しておりコントロール色が強くなっている傾向がありますが、全体除去を扱うコントロールの元祖と言えばアゾリウス・コントロールです。打ち消し呪文で対戦相手を妨害し、並んだクリーチャーは全体除去で吹き飛ばし、相手側の攻め手が尽きればドローソースで手札を補充。「古き良きコントロール」の代名詞です。
もちろん妨害するだけではゲームに勝てないので何かしらの勝ち手段が必要になりますが、一般的にその勝ち手段は少なければ少ないほどコントロールデッキとしての立ち回りは強固になると言われています。対戦相手の攻め手をシャットアウトするのに専念するためのカードを多く扱えますからね。例えば、《船砕きの怪物》のようなカードはフィニッシャーとしての性能は高いですが、7ターン目以降に隙があるタイミングでしかプレイできず、それまでは手札1枚を腐らせた状態で対戦相手の攻めを捌かなければならなくなります。
現在のアゾリウス・コントロールはそれを《放浪皇》と《不穏な投錨地》に委ねており、どちらも攻守両面で活躍する万能カードで隙がありません。デッキ60枚すべてが対戦相手の攻め手をいなすためのカードで構成されていると言っても過言ではないでしょう。
また青いコントロールデッキは新セットでの収穫もあります。それは《三歩先》です。どのデッキでも馴染みのある打ち消し呪文としては《否認》や《軽蔑的な一撃》がありますが、これらはサイドボードから「特定のカードへの対策」として投じられることが多く、コントロールが求める打ち消し呪文とは性質が異なります。
コントロールデッキはあらゆる攻め手を対処するためにも「万能な打ち消し」を求めており、一定数「確定打ち消し」が採用されます。従来は《雲散霧消》なんかが使われていましたが、これと比べると《三歩先》によるデッキの強化具合がよくわかります。5マナでプレイすればドローのおまけつきで、「2枚引いて1枚捨てる」なので実質の手札増加量は1枚でも手札の不要牌と交換することで有効牌が2枚増加するパターンもあり得ますから、単純なキャントリップよりも優れています。
ちなみに同カードにはコピートークンを生成する能力もあり、このカードの価値を最大限引き出すために《砂塵の憎悪》や《略奪者の荷物》を使う構築もあります。しかしながら、コントロールデッキは対戦相手の除去呪文を腐らせることができる点が魅力の1つにあり、コピー対象のクリーチャーを用意することは除去の影響を受けてしまうことも意味するため、今大会で好成績を残したリストでは採用されていません。《略奪者の荷物》のようなアーティファクトは除去呪文の影響を受けませんがデッキが欲する要素とは少し離れてしまいます。
前述の通り、環境にはエスパー以外にもディミーアやゴルガリといったミッドレンジが存在しますが、同じミッドレンジの枠組みの中ではエスパーにそのシェアを押し出され気味で、使用率も当日の成績も控えめなものとなっていました。
2 《島》 4 《沼》 3 《ミレックス》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《地底の大河》 1 《天上都市、大田原》 3 《難破船の湿地》 3 《不穏な浅瀬》 4 《闇滑りの岸》 -土地(25)- 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《復活したアーテイ》 4 《分派の説教者》 4 《ヨーグモスの法務官、ギックス》 4 《フェアリーの黒幕》 4 《大洞窟のコウモリ》 4 《遠眼鏡のセイレーン》 -クリーチャー(24)- |
4 《かき消し》 4 《喉首狙い》 3 《切り崩し》 -呪文(11)- |
2 《ヴェールのリリアナ》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 2 《ティシャーナの潮縛り》 1 《ギックスの命令》 3 《危難の道》 1 《覆い隠し》 1 《否認》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《呪文貫き》 1 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
4 《ラノワールの荒原》 3 《魂の洞窟》 4 《眠らずの小屋》 4 《死天狗茸の林間地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《花盛りの湿地》 1 《森》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《沼》 -土地(26)- 2 《ドロスの魔神》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《温厚な襞背》 3 《グリッサ・サンスレイヤー》 1 《墓地の侵入者》 3 《分派の説教者》 4 《苔森の戦慄騎士》 3 《腐食の荒馬》 -クリーチャー(19)- |
1 《ヴェールのリリアナ》 2 《ギックスの命令》 1 《泥沼の略奪》 3 《強迫》 1 《保安官を撃て》 4 《喉首狙い》 3 《切り崩し》 -呪文(15)- |
2 《ヴェールのリリアナ》 1 《苦難の収穫者》 3 《敵意ある調査員》 1 《温厚な襞背》 3 《危難の道》 1 《強迫》 2 《羅利骨灰》 1 《切り崩し》 1 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
コントロール系の枠組みとしてはディミーア・コントロールもありましたが、こちらはアゾリウス・コントロールと比べて振るわずの結果となってしまっています。
4 《廃墟の地》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《沼》 2 《沈んだ城塞》 4 《難破船の湿地》 3 《不穏な浅瀬》 2 《ミレックス》 3 《島》 3 《地底の大河》 1 《天上都市、大田原》 -土地(26)- 2 《最深の裏切り、アクロゾズ》 -クリーチャー(2)- |
2 《完成化した精神、ジェイス》 4 《死人に口無し》 2 《危難の道》 4 《記憶の氾濫》 1 《シェオルドレッドの勅令》 2 《長い別れ》 4 《喉首狙い》 2 《否認》 4 《推理》 3 《切り崩し》 4 《三歩先》 -呪文(32)- |
2 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《金属の徒党の種子鮫》 3 《ティシャーナの潮縛り》 2 《悪意ある覆い隠し》 1 《危難の道》 2 《寄生性掌握》 2 《否認》 1 《ミレックス》 -サイドボード(15)- |
ディミーア・コントロールの代名詞である《死人に口無し》は対戦相手のキーカードを吹き飛ばすことが可能で、勝ち手段を特定のカードに寄せているティムール・アナリストや版図ランプに強く出られるというメリットはあります。一方で、2マナの打ち消し呪文に《喝破》が使えなかったり、《放浪皇》の有無であったり、《失せろ》や《冥途灯りの行進》がないことによるエンチャント・アーティファクトへの干渉力の低さなど、アゾリウスと比較した際にデメリットも際立ちます。
環境に触れなければ劣勢必至のエンチャント・アーティファクトがしっかりと存在している点は明確にマイナス要素で、この辺りが振るわなかった要因となっていそうです。
ここらで一旦、今大会で好成績を収めたデッキの一覧を見てみましょう。ここでは好成績の基準を次回のプロツアーの継続参戦権利獲得(10勝6敗以上)に置きます。
デッキ | 上位入賞数 |
---|---|
エスパー・ミッドレンジ | 15 |
4色レジェンズ | 8 |
ボロス召集 | 6 |
ティムール・アナリスト | 3 |
アゾリウス・コントロール | 2 |
オルゾフ・コンボ | 1 |
赤単アグロ | 1 |
ジャンド・アナリスト | 1 |
版図ランプ | 1 |
版図コントロール | 1 |
ディミーア・ミッドレンジ | 1 |
アゾリウス・アーティファクト | 1 |
基本的には、エスパー・ミッドレンジを筆頭に事前評価の高かったデッキ達が上位を占めているのがわかります。使用者の多いデッキはデッキのポテンシャルが間違いなければ一定数の上位を輩出しますからね。
しかしながら、ここまで全く名前が上がっておらず、それでいて多数の好成績者を生んでいるデッキがあるのがお判りでしょうか?そう、4色レジェンズです。このデッキはトップ8に2名を送り込んだチーム「Sanctum of All」の面々が主に使用しており、大会全体の使用者は17名でした。つまり17名の内8名が好成績を収めています。プロツアーでの上位入賞率が約50%のデッキということになります。
4色レジェンズ
1 《沈んだ城塞》 4 《英雄の公有地》 2 《魂の洞窟》 4 《ジアトラの試練場》 1 《ザンダーの居室》 4 《天上都市、大田原》 3 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《沼》 4 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《硫黄泉》 3 《闇滑りの岸》 1 《眠らずの小屋》 -土地(29)- 2 《復活したアーテイ》 4 《大スライム、スローグルク》 2 《ガイアの声、ティタニア》 3 《正直者のラトスタイン》 4 《侵攻の伝令、ローナ》 4 《太陽の執事長、インティ》 2 《ガチョウの母》 1 《陽気な擲弾兵、薬瓶砕き》 -クリーチャー(22)- |
3 《喉首狙い》 2 《切り崩し》 4 《伝説の秘宝》 -呪文(9)- |
1 《完成化した精神、ジェイス》 2 《ヴェールのリリアナ》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 1 《復活したアーテイ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《ぎらつく氾濫》 1 《危難の道》 3 《強迫》 1 《長い別れ》 1 《切り崩し》 1 《掘り返し》 -サイドボード(15)- |
4色レジェンズ自体はプロツアー前から存在しており、もっと言えばデッキのベースとなっている《大スライム、スローグルク》ギミック自体はかなり前から研鑽が続いていたデッキです。『サンダー・ジャンクションの無法者』にて《正直者のラトスタイン》が追加されたことでワンショットコンボが搭載されました。
ギミックについて解説します。戦場に《伝説の秘宝》が出ると全ての伝説のクリーチャーがマナクリーチャーとなります。そして《侵攻の伝令、ローナ》は伝説の呪文を唱えるたびにアンタップされ、《正直者のラトスタイン》はクリーチャーのコストを1軽くします。この時点でかなり“匂い”ますよね。「アンタップ」と「コスト軽減」は無限コンボの定番パッケージです。
①ローナとラトスタインを秘宝でタップして黒と緑のマナを出す
②2枚目のラトスタインをコスト軽減された2マナでプレイ
③ローナをアンタップ
④2枚目のラトスタインが着地、伝説ルールで片方を墓地へ。2枚目のラトスタインの効果で1枚目を回収。
この手順により無限にラトスタインを出し入れすることが可能になります。後は隣に《チビボネの加入》や《陽気な擲弾兵、薬瓶砕き》や《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》がいれば対戦相手のライフを削り切ることが可能になります。
見ての通り、同一カード2枚を含む5枚コンボです。これだけだとよくあるドリームコンボデッキとなってしまうのですが、このコンボを現実的なものとしているのが《大スライム、スローグルク》を軸とした伝説エンジンです。
《太陽の執事長、インティ》が戦場にある状態で《侵攻の伝令、ローナ》を起動すれば、手札を捨てる効果に反応してインティが誘発します。この2枚だけでも無尽蔵にアドバンテージを生み出す強力コンボなのですが、ここに《大スライム、スローグルク》が絡んでくるとコンボがより凶悪化します。土地カードを捨てた場合はスローグルクにカウンターが乗り、カウンターが溜まると墓地の土地カードを手札に戻すことが可能になります。ライブラリー・手札・墓地が高速回転するわけです。
さらに、これらのクリーチャーは全て伝説のクリーチャーなので、魂力土地はほとんど1マナでプレイが可能です。これにより《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を次々と魂力していくことで、インティ&ローナのコンボと合わせてどんどんライブラリーを掘り下げることが可能で、最終的に上記コンボ達成のためのカードが揃います。コンボはあくまで最終的な勝ち手段で、ゲームの組み立てはその他のカード郡がこなしている訳ですね。
このデッキの強みとして、対戦相手のメタ手段への回答をメインデッキ時点でほとんど用意できていることが挙げられます。クリーチャーコンボデッキである以上、コンボの核となるクリーチャーに除去カードがプレイされるのは至極当然の流れですが、それらは《英雄の公有地》や《天上都市、大田原》で回避が可能です。追放でなければ《見捨てられたぬかるみ、竹沼》でも回収できます。
また墓地を経由するためそれへの対策である《安らかなる眠り》や《未認可霊柩車》もありますが、これにも《耐え抜くもの、母聖樹》が標準搭載されており、デッキの動きを阻害することなく対策が完了しています。
このデッキの《復活したアーテイ》は非常に良い味を出すクリーチャーで、《天上都市、大田原》や《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で複数回使いまわすことが可能で、全体除去のような大振りのアクションは咎められ、一発逆転のような動きばかりを狙っているとソフトロック状態に持ち込まれてしまいます。
僕もプロツアーではこのデッキにいいようにやられてしまい、除去や《未認可霊柩車》のような対策カードを複数枚引いたにもかかわらず圧倒されてしまいました。実際に相手にしてみるとかなり厄介なデッキであることがわかります。対戦経験が乏しい内は何が起きているかも理解が難しいでしょう。動きが非常に複雑で扱うのが難しいデッキですが、裏を返せば相手側も対策が難しいデッキですので、研究することに価値があるデッキとも言えるでしょう。今後も要注目です。
今後のスタンダード
本大会を圧倒的な成績で優勝した井川さんの影響で、プロツアー後は版図ランプのシェアが一気に増加しました。しかしながら、直近のトーナメントでその版図ランプが好成績を残しているかと言えばそうではなく、むしろ版図ランプの成績はあまり振るっていません。優勝デッキの影響度は大きなものですが、それは単純にシェアが広がるだけではなく、対策意識も上がることを指しています。
直近の大会ではコントロールデッキの活躍が目立っており、プロツアー時点では不振だった前述のディミーア・コントロールも版図ランプのシェアが増したことで立ち位置が向上しており、少しずつ数を増しています。
1 《天上都市、大田原》 4 《不穏な浅瀬》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《沼》 4 《難破船の湿地》 1 《解体爆破場》 3 《島》 4 《廃墟の地》 2 《沈んだ城塞》 3 《闇滑りの岸》 1 《地底の大河》 -土地(27)- -クリーチャー(0)- |
2 《危難の道》 1 《否認》 4 《記憶の氾濫》 2 《長い別れ》 4 《推理》 3 《喉首狙い》 2 《切り崩し》 1 《強迫》 4 《死人に口無し》 2 《完成化した精神、ジェイス》 4 《三歩先》 1 《セレスタス》 2 《シェオルドレッドの勅令》 1 《幻影の干渉》 -呪文(33)- |
4 《ティシャーナの潮縛り》 2 《強迫》 2 《否認》 1 《極悪非道の盗人》 2 《未認可霊柩車》 1 《顔を繕う者、ラザーヴ》 1 《危難の道》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 -サイドボード(15)- |
このディミーア・コントロールに採用されている《完成化した精神、ジェイス》は対版図ランプにおいて重要な役割を有しているカードで、各種マナブースト、《豆の木をのぼれ》、《偉大なる統一者、アトラクサ》など、ライブラリーをガンガン消費する版図ランプにライブラリーアウトは非常に現実的な勝ち手段です。ディミーアだけでなくアゾリウスにも採用される流れにあり、今後も版図ランプに対するガードは強まりそうな気配が出ています。5月5日にカナダで開催された地域チャンピオンシップでもジェイスを採用したアゾリウス・コントロールが優勝しました。
4 《平地》 4 《不穏な投錨地》 4 《さびれた浜》 1 《天上都市、大田原》 3 《島》 2 《金属海の沿岸》 4 《廃墟の地》 2 《アダーカー荒原》 1 《ミレックス》 1 《沈んだ城塞》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(27)- 1 《ティシャーナの潮縛り》 -クリーチャー(1)- |
4 《三歩先》 4 《喝破》 2 《一時的封鎖》 4 《放浪皇》 4 《記憶の氾濫》 4 《推理》 3 《太陽降下》 1 《失せろ》 1 《邪悪を打ち砕く》 1 《告別》 3 《冥途灯りの行進》 1 《完成化した精神、ジェイス》 -呪文(32)- |
1 《邪悪を打ち砕く》 1 《痛烈な一撃》 1 《未認可霊柩車》 1 《機械の母、エリシュ・ノーン》 3 《ティシャーナの潮縛り》 1 《否認》 2 《一時的封鎖》 1 《船砕きの怪物》 2 《クチルの側衛》 1 《加護をもたらす戦乙女》 1 《二重視》 -サイドボード(15)- |
この大会ではシミック・アーティファクトやバント毒性といった明らかに版図ランプに狙いを定めたデッキ群が活躍しており、これらのデッキはボロス召集を苦手としていることから、メタゲームの変化を前提とした選択を行うプレイヤーも出始めており、早くもメタゲームは動いています。
2 《島》 3 《眠らずの蔓茎》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 2 《森》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《植物の聖域》 2 《夢根の滝》 3 《ミレックス》 1 《天上都市、大田原》 -土地(22)- 4 《名もなき都市の歩哨》 3 《遠眼鏡のセイレーン》 2 《帆凧の窃盗犯》 4 《堅いクッキー》 3 《ジンジャーブルート》 3 《高波エンジン》 4 《生歯の子ワーム》 -クリーチャー(23)- |
1 《とんずら》 3 《痛烈な質問》 4 《生命ある象形》 3 《地底のスクーナー船》 3 《アガサの魂の大釜》 1 《呪文貫き》 -呪文(15)- |
1 《呪文貫き》 2 《機能不全ダニ》 1 《帆凧の窃盗犯》 3 《ティシャーナの潮縛り》 1 《痛烈な質問》 2 《毒を選べ》 3 《排撃の変異》 1 《とんずら》 1 《首謀者、オーコ》 -サイドボード(15)- |
4 《アダーカー荒原》 2 《植物の聖域》 1 《島》 2 《ミレックス》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《種子中枢》 4 《スランの門》 -土地(22)- 2 《別館の歩哨》 4 《這い回る合唱者》 4 《顎骨の決闘者》 4 《離反ダニ、スクレルヴ》 2 《殺戮の歌い手》 4 《敬慕される腐敗僧》 -クリーチャー(20)- |
2 《ダニの突撃》 4 《消えゆく希望》 4 《渦巻く霧の行進》 4 《血清の罠》 4 《スクレルヴの巣》 -呪文(18)- |
2 《別館の歩哨》 2 《有貌体の向上》 3 《邪悪を打ち砕く》 2 《門衛のスラル》 2 《安らかなる眠り》 4 《呪文貫き》 -サイドボード(15)- |
現在のスタンダードは3年ローテーションの集大成であり、環境にはありとあらゆる選択肢が用意されています。秋のローテーションが迫りつつある最終シーズン、この広大なスタンダードを最後まで楽しみつくしましょう!
それではまた次回。
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