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週刊デッキ構築劇場

第69回:井川良彦のデッキ構築劇場・最強と最高の邂逅

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週刊デッキ構築劇場

2012.07.16

第69回:井川良彦のデッキ構築劇場・最強と最高の邂逅

演者紹介:井川 良彦

 2007年の横浜でプロツアーに初参加、「初の海外旅行は、マジックのプロツアーで行きたい」という自身の言葉を2010年のプロツアー・サンディエゴで実現、海外緒戦にしてトップ8入賞を決めてみせた「驚嘆の男(ザ・ワンダーリング・ワン)」。
 その後も、伊藤 敦・高橋 純也と組んだ調整チーム『神様へのブラフ』で切磋琢磨し、日本選手権2011で4位に入賞するなど、多忙な日々にあってもフォーマットを問わずマジックに取り組む、情熱あふれるプレイヤー・ライターである。


 最新セット、発売!!!!

 ということで、7/13(金)に『マジック基本セット2013(M13)』が発売されました!
 『13日』に『2013』発売とは、Wizardsが狙ってやったとしか思えませんね。

 《闇の領域のリリアナ》、《群れの統率者アジャニ》という新しいプレインズウォーカー。《吸血鬼の夜鷲》《吸血鬼の夜侯》といった最近のセットからの実績あるカード。

 《怨恨》のような10年前のエクステンデッドで活躍していた、古えの強力カードまでも収録されたこの『基本セット2013』。ベテランから初心者まで幅広く楽しめるセットと言えるのではないでしょうか。

 個人的には、《セラのアバター》の再録が非常に嬉しいですね。
 僕は第6版の頃にマジックを始めたのですが、最初の頃はスタンダードやエクステンデッドというフォーマットの規定も知らず、カジュアルに遊んでいました。

 お気に入りだったのは、《再誕のパターン》。
 これを《胞子カエル》や《心の管理人》にエンチャントして、生け贄に捧げると同時に《セラのアバター》が降臨!!!
 20/20でアタック!!と見せかけて《投げ飛ばし》!!!
 というのがいい思い出です。
 今思うと、《セラのアバター》が場に出るころにライフが20点あったのか、怪しい気もしますが(笑)

 さて、思い出話はここら辺にして、本題に移りましょう。


 『基本セット2013』のスポイラーを目にして、ほぼ全ての方が思ったことでしょう。
 このカードは強い、と。

 サイズだけ見れば5マナ5/3という、構築的には最低限のスペックですが、書いてある能力が非常に強力。
 「戦場に出たとき、あなたは5点のライフを得る。」がビートダウンへの抑止力となり、「戦場を離れたとき、緑の3/3のビースト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。」という除去耐性が、相手を苦しめます。

 特に後者の能力は、環境に跳梁跋扈している"王者"青白Delverに対して抜群の耐性を持っています。
 青白Delverは基本的に相手のクリーチャーを《蒸気の絡みつき》で捌きながら、そのタイムラグで殴り勝つデッキなのですが、この《スラーグ牙》は《マイアの種父》や《ワームとぐろエンジン》とは異なり、バウンスされても3/3のビースト・トークンを生み出せるのです!

 戦場に出るだけで5点ゲイン、バウンスしようとすれば3/3ビースト・トークン。殴られると5点ダメージ。相打ちしても3/3ビースト・トークン...

 圧倒的な存在感と、盤面に対するプレッシャー。そして5マナというコストはあの《目覚ましヒバリ》を彷彿させますね!

 そして、この《スラーグ牙》と最高の組み合わせとなるカードが、同じく『基本セット2013』に存在するのです!!

 そのカードとは...

/

 『基本セット2013』が誇るトンデモ神話レア、《世界火》です!

 これまで《ジョークルホープス》や《黙示録》など様々な種類の"リセット"呪文がありましたが、ここまでド派手で、ここまで強力なカードが他にあったでしょうか!?

 《世界火》が解決されると、それまでのゲームが全て無に帰し、パーマネント0個、手札0枚、ライフ1点という瀕死のプレイヤーだけが残ります。
 そして、お互いがドローを神に祈りながら、いかに残りの1点を奪うかという泥仕合が始まるのです。

 ですが、《世界火》が解決されるときに《スラーグ牙》をコントロールしていると話は変わります。

 そう、皆さんお気づきの通り、全てが無に帰した後に「戦場を離れたとき、緑の3/3のビースト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。」という能力が誘発し、無人の荒野に3/3ビースト・トークンが降臨するのです!!!

 「やられたよ。お前の勝ちだ。」

 マナも手札も無い対戦相手ができることは、ライブラリーから1枚カードを引き、そしてそっと手を差し伸べることだけでしょう。

 「最強」《スラーグ牙》と、「最高」《世界火》のスーパータッグが、今、スタンダードに一石を投じるッ!!!

『The Beast Stands Alone』[MO] [ARENA]
5 《
3 《
1 《平地
4 《根縛りの岩山
4 《銅線の地溝
2 《陽花弁の木立ち
3 《魂の洞窟
1 《ケッシグの狼の地
1 《ガヴォニーの居住区
1 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

1 《ヴィリジアンの密使
3 《修復の天使
3 《真面目な身代わり
1 《高原の狩りの達人
4 《スラーグ牙
1 《原始のタイタン

-クリーチャー(13)-
4 《不屈の自然
4 《遥か見
3 《太陽の宝球
1 《信仰無き物あさり
1 《忘却の輪
2 《緑の太陽の頂点
4 《忌むべき者のかがり火
3 《世界火

-呪文(22)-
4 《刃の接合者
4 《鞭打ち炎
2 《押し潰す蔦
3 《どんでん返し
1 《解放された者、カーン
1 《

-サイドボード(15)-

 《スラーグ牙》+《世界火》=圧倒的勝利!!
 これこそが、新スタンダードの《The Cheese Stands Alone》!!!!

 この単純かつ強力な方程式を完成させるために、素直な構成に仕上げました。

 ここで必要になるのは、《スラーグ牙》、《世界火》、そしてそこまで生き延びる手段と豊富なマナブーストです。

 マナブーストとしてはこれらを採用。

 《世界火》に必要な9マナに到達するためには、《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》のような貧弱な生物に頼るわけにはいきません。彼らは《はらわた撃ち》+《瞬唱の魔道士》や《迫撃鞘》の餌食になったり、《忌むべき者のかがり火》でまとめて吹き飛ばされるのが今のスタンダードですからね。

 11枚入った2マナ圏のマナブースト、そして安定と信頼の《真面目な身代わり》のおかげで、序盤のマナブーストをスムーズに行うことができます。

 皆さん既にご存知でしょうが、《スラーグ牙》と《修復の天使》の組み合わせは、非常に強力です。

 《スラーグ牙》を「明滅」させて5点ゲインと3/3ビースト・トークン。単純に強いカード同士がこれほど相性いいのも珍しいですね。

 《世界火》をプレイするまでもなく、《スラーグ牙》+《修復の天使》だけで相手を蹂躙することも十分に可能です!
 《スラーグ牙》+《修復の天使》はこれから1年間、スタンダード落ちするまで見続けることになることでしょう。

回転

 《スラーグ牙》は残念ながら4枚までしかデッキに入れることができないので、その水増しとして《緑の太陽の頂点》を。

 《緑の太陽の頂点》を使うからには、このラインナップをはずすことはできないでしょう。
 序盤のブロッカー圏マナブーストであり、赤緑やナヤ、ゾンビといった相手に燻し銀の活躍を見せる《ヴィリジアンの密使》。
 「闇の隆盛」生まれのスーパーカード。《修復の天使》とも相性抜群の《高原の狩りの達人》。
 そして、「基本セット2010」が発売されてからその名を見ないトーナメントは無かったと言っても過言ではない、《原始のタイタン》。

 《ギタクシア派の調査》をプレイして前方確認。意気揚々と《聖トラフトの霊》を出してエンド!!

 ...の返しに《忌むべき者のかがり火》を撃たれて涙したプレイヤーは少なくないでしょう。
 「奇跡」された者を絶望の淵に追いやり、「奇跡」した者を勝利へ近づける、名実ともに『アヴァシンの帰還』のトップレア。

 このデッキは土地が並びますので、「奇跡」でなくとも3~4点を叩き込むことが可能です!

 一般的に万能なカードとして知られている《忘却の輪》ですが、このデッキではその能力を普段と違う方向性で活かされます。

 自分のクリーチャーを追放することにより、《世界火》のリセットから守ることができるのです!

 もちろんその逆もしかりで、相手のクリーチャーを追放してしまうと二度と《世界火》がプレイできなくなってしまうので要注意です!
 相手のパーマネントを追放する場合は、できる限り《ルーン唱えの長槍》《戦争と平和の剣》といった「非常に危険、かつ《世界火》後に影響が無いカード」か、クリーチャー・トークンを対象にしましょう。

 サイドボードも、その用途が明確なカードがほとんどですね。
 クリーチャーデッキ全般に強く、《修復の天使》とも相性の良い《刃の接合者》。

 環境の王者、青白Delverに有効な《鞭打ち炎》《押し潰す蔦》。

 ケッシグのようなビッグマナ戦略のデッキやコントロールに強い《解放された者、カーン》。

 この辺りはトーナメントシーンでよく見かけるカードだと思いますので、サイドボードはこのカードだけ解説して終わりたいと思います。

 《スラーグ牙》+《世界火》デッキの最大の弱点。それは相手の《スラーグ牙》なのです。

 相手に《スラーグ牙》を出されてしまうと、こちらが相手より多く《スラーグ牙》を出さない限り、コンボで勝つことができません。
 そして、相手の《スラーグ牙》を対処するカードも限られています。

 そこで、サイドボード後はこの《どんでん返し》が光ります!!!

 《スラーグ牙》をプレイしてくるデッキは、《絡み根の霊》や《刃の接合者》を使っていることが多いので、こちらもは《刃の接合者》《どんでん返し》《》をサイドイン!
 相手の《スラーグ牙》を、こちらの不要な生物と交換してもらいましょう!

 用済みの《刃の接合者》と相手の切り札《スラーグ牙》を《どんでん返し》すれば、もう勝ったも同然ですね!

 《太陽のタイタン》、《原始のタイタン》のような強力なフィニッシャーを使ってくる相手にも是非サイドインしてみて下さい。



 《スラーグ牙》はその性能と色拘束の薄さゆえ、これからスタンダードを中心に様々なデッキで使われていくでしょう。

 《世界火》もスタンダードでは相棒が少ないかもしれませんが、モダンまで目を向けると...

 と、相性の良いカードが多数ありますので、ひょっとしたら大成する1枚かもしれませんね。

 今回紹介した以外にも、『基本セット2013』には魅力的なカードが多数あります。
 色んなカードに触れてみて、貴方だけのコンボを是非発見してみてください!

 それでは、また次回お会いしましょう!

基本セット2013

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