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週刊デッキ構築劇場
第67回:渡辺雄也のデッキ構築劇場・約束された勝利のデッキ
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週刊デッキ構築劇場
2012.07.02
第67回:渡辺雄也のデッキ構築劇場・約束された勝利のデッキ
演者紹介:渡辺 雄也
グランプリ・京都2007の優勝を皮切りに、同シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーや2009年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー、グランプリ2連続優勝等の輝かしい成績を収め、もはやグランプリ優勝程度では驚かれない。プレイヤーとしては初となる禁止カード候補に挙がったほどの戦績は、過去の偉人になぞらえて『ジャパニーズ・ジャガーノート』と形容されることも。
また、日本の文化に傾倒しており「無我の境地に到達したら勝利していた」という彼特有のプレイスタイルは唯一無二。グランプリ・クアラルンプール2012の優勝時には「天使にふれたよ」という謎のコメントを残しており、あらゆる角度で常軌を逸するトッププレイヤーといえよう。その計り知れぬ姿は『底なしの頂点(アンノウン・ゼニス)』の二つ名を込めて畏怖される。
渡辺雄也の使うデッキが、時のスタンダードやエクステンデッド、モダンを支配することもしばしばある。
構築劇場でこうしてお会いするのは初めてですね。
初めまして。渡辺雄也です。
いつもは当サイト内で新エキスパンションが出るごとにリミテッドのことについて書かせてもらっていますが、今回はゲスト枠ということでこの構築劇場に参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
さて、普段は青緑関係のカードを執拗に使ったり、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を如何に使い倒すかを考えたり、プレインズウォーカー達が会社を経営していたり、マンモス!!とか叫んだりしているデッキ構築劇場ですが(こうして書くとろくでもねーなこいつら)、今回の僕の記事は彼らの書いてきた構築劇場とはちょっと異なります。
紹介するデッキはオリジナリティ溢れるものではなく、むしろ今のスタンダードをやっている方なら見飽きているデッキと言ってもいいでしょう。
これが今回紹介するデッキです。
8 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(15)- |
4 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 3 《マナ漏出》 3 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(26)- |
2 《幻影の像》 2 《精神的つまづき》 1 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 3 《天界の粛清》 1 《マナ漏出》 1 《幽体の飛行》 1 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 1 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
そう、今回紹介するデッキは約2週間前のグランプリ・マニラで僕が実際に使用し、優勝という最高の成績を残した「青白デルバー」デッキです。
いわゆる「現行スタンダードのトップメタのデッキ」ですが、なぜ今回このデッキを紹介するに至ったのかというと、多くの方から僕の使ったこのデッキリストについての解説をして欲しいという意見をもらったからです。
ウェブ上でのメッセージや、先日のグランプリ・・横浜で対戦した方にもこのデッキのことについて聞かれることが多く、もっと直接的に「あのデッキの記事とか書かないの?」という声も頂きました。そう言われて前々からデッキ構築劇場に誘われていたことを思い出し、編集の方に聞いてみたら二つ返事でOKをもらい、このような形で筆を取らせていただくことになりました。
というわけで、今回の構築劇場はこのデッキができるまでにどんな調整したのか、また最終的な細かい部分のカード選択やサイドボーディングプランについても語っていこうと思います。
普段の構築劇場とはちょっと毛色が違いますが、これもまた、一つのデッキを構築する話。最後までお付き合い頂けたら幸いです。
グランプリ・3週間前
アヴァシンの帰還が出た直後はプロツアー・アヴァシンの帰還のためにブロック構築ばかりやっていたのでスタンダードの知識なんてあるわけもなく、グランプリ・クアラルンプールのときのことを思い出しながら適当に組んでアヴァシンの帰還のゲームデーに出たのがスタートです。
以下がその時に使ったリスト。
9 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 2 《刃の接合者》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(17)- |
3 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 1 《ルーン唱えの長槍》 1 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
2 《幻影の像》 2 《地下牢の霊》 3 《精神的つまづき》 1 《変異原性の成長》 1 《鋼の妨害》 1 《存在の破棄》 2 《機を見た援軍》 2 《雲散霧消》 1 《月の賢者タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
この時期はまだ周りのリストも固まっている時期ではなかったので、単純に『アヴァシンの帰還』の新しいカードをなるべく試そうという構成だったのですが、色々試そうとしすぎてデッキ全体が重く、かなり歪んだ構成になってしまっています。今見るとなかなかに酷い構成ですね(笑)。
とりあえず調整初日の収穫として、
- 《修復の天使》はとにかく強い。単純にカードパワーが高くデッキの動きにも合っていて非常に優秀。
- 《修復の天使》と相性の良いという名目で入れた《刃の接合者》は、《修復の天使》と噛んだときは強いがデッキ本来の動きに合ったカードではない。メインというよりはサイド向けのカード。
- 《月の賢者タミヨウ》は出たら強いがとにかく重い。
新しいカードに関してこんな印象を得られました。
そしてこれが一番の収穫だったのですが、デルバーデッキは《修復の天使》の加入により、以前にも増して強力なデッキになったと感じたこと。
グランプリ・クアラルンプールの経験値もあり、自分のプレイスタイルにも合っているデッキなので、調整初日のこの時点でグランプリ・マニラはこのデッキで行くことを決めました。
この時点で本番のグランプリまでは3週間以上の時間があったので、後はその期間で最強のデルバーデッキを組み上げることに全力を注ぐのみ!
グランプリ・2週間前
その後はMO上で時間の許す限り試行錯誤を繰り返す日々。
- 《修復の天使》がとにかく強かったので4枚に増量。
- 同系の《修復の天使》や赤緑の《高原の狩りの達人》などをまとめて対策できる《四肢切断》の採用。
- 装備品を同系や赤緑の《忌むべき者のかがり火》に強く、《四肢切断》のライフ損失をカバーできる《戦争と平和の剣》に変更。
といった感じにデッキをちょっとづつ重い方向へとシフト。このときのメタが青白デルバーと赤緑ビートダウンに寄っていたこともあり、その二つをかなり意識しています。
そして各地のワールド・マジック・カップ予選やプロツアー予選などで結果を残しているデルバーのリストを参考にしつつ色んなカードを試していたところ、アメリカのワールド・マジック・カップ予選であのLSVが予選を突破したという情報が飛び込んできました。
8 《島》 1 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《魂の洞窟》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(16)- |
3 《ギタクシア派の調査》 2 《はらわた撃ち》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 1 《四肢切断》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
2 《幻影の像》 3 《刃砦の英雄》 1 《精神的つまづき》 3 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《四肢切断》 2 《雲散霧消》 2 《月の賢者タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
LSVが使ったデッキということで早速このリストをコピーして使ってみたのですが、思ったよりも多くの問題点を発見しました。
《魂の洞窟》による色マナ供給の不安定さ
《魂の洞窟》は確かに同系の《マナ漏出》に対して有効な回答なのですが、クリーチャータイプが揃っていないデルバーデッキでは使いづらい印象を受けました。《聖トラフトの霊》と《修復の天使》を両方持っているときに、どちらかをプレイするためにどちらかを諦めなくてはならないというケースが発生するのはかなりのストレスでしたね。
また、メイン戦では《マナ漏出》を無視できるという利点もサイド後に《マナ漏出》を全てアウトされてしまうとほとんど意味を成しません。《魂の洞窟》を見せられて、サイド後に《マナ漏出》を残すようなことはしてこないでしょう。
他にもマナバランス的には白マナカウントなのに《天界の粛清》が打てなかったり、《魂の洞窟》のせいで《思案》や《思考掃き》といった軽量ドローを1ターンの間に複数回打てなくなったりと、個人的には利点より欠点のほうが多いと感じました。
マナフラッドの多さ
土地22枚というのは1マナドローを多用するデルバーデッキではかなり多い枚数です。
確かに《修復の天使》や《戦争と平和の剣》をちゃんと適正ターンにプレイしたいというのは分かりますが、その代わりに後半のマナフラッドが増えたという印象を受けました。
《魂の洞窟》を複数枚使うためには必要な枚数なのかもしれませんが、まず《魂の洞窟》自体に疑問をもっていたのでこの土地の枚数もしっくりきませんでしたね。
デッキリストの蔓延
これが一番の問題だったのですが、この情報化社会ではデッキが広まるなんて一瞬のこと。 しかもあのLSVが使ったデッキとなれば尚更です。
もっとも情報の伝達の速いMO上の大会では、デルバーデッキはこれと似たようなリストになり、その他のデッキもこのデッキ相手に戦えるように構成を見直されていきました。
実際にそれまでは赤緑系のデッキのサイドボードは装備品と《聖別されたスフィンクス》対策も兼ねた《押し潰す蔦》が主流でしたが、これ以降は《刃砦の英雄》を対処できる《焼却》が《押し潰す蔦》と一緒に併用されるようになりましたね。他のデッキもカードの選択がこのデッキを意識したものになっていきました。
つまりLSVがこのリストで成果を挙げた以上、自分が同じことをしても良い結果は望めないということ。
既にこのリストは「環境の仮想敵」になっており、その仮想敵に向けて周りが意識を向けている以上、似たような構成で出ても結果は期待できません。
なので自分が勝つためには、これとはまた違ったアプローチが必要だと認識。
それまで似たようなアプローチでデッキを組んでいたので、それまでの調整を一旦白紙に戻し、デッキの根本から見つめなおすことになりました。
グランプリ・1週間前
新しいアプローチといっても、デッキの核である《秘密を掘り下げる者》《瞬唱の魔道士》《聖トラフトの霊》のラインナップは崩せませんし、《思案》や《蒸気の絡みつき》といったデルバーデッキでこそ上手く使えるカードも枚数を変えることはしません。言ってしまえばこれらのカードはデルバーデッキの確定枠です。
これらの「確定枠」以外の部分で、どのようなアプローチをできるかを考えました。
《修復の天使》の枚数の調整
《修復の天使》はたしかに強いカードなのですが、デルバーデッキの4マナは重いと感じることが多く、特に後手のときに2枚以上手札に来てしまうと手札で持て余してしまうことも少なくありませんでした。
また、出した瞬間に《四肢切断》や《蒸気の絡みつき》のような1マナのカードで対処され、マナ面でのテンポをとられるシーンがしまうことが多く、4枚は多いだろうという見解に。
ただ、自分が《修復の天使》を多く積まない以上、相手が使ってくる《修復の天使》に対する回答は何かしら用意しておきたいと思いながら他の枠を見直していくことになります。
《戦争と平和の剣》を《ルーン唱えの長槍》に変更
《戦争と平和の剣》は設置に3マナという重さがどうしても好きになれず、試しに《ルーン唱えの長槍》に代えてみたところ、デッキが驚くほどスムーズに動くようになりました。
元々2マナのアクションが相手依存の《マナ漏出》と、ファイレクシア・マナのカードが絡むと嬉しい《瞬唱の魔道士》しかなかったので、2ターン目に自分から動けるアクションが少なく、そこを埋めてくれる《ルーン唱えの長槍》はかなりの好感触でした。
設置と装備を合わせても4マナなので、相手が4ターン目に《修復の天使》を構えていても、同じマナを使って《修復の天使》を気にせず殴りにいける動きもできるので、上で挙げた相手の《修復の天使》に対する回答にもなっています。
3ターン目《聖トラフトの霊》→4ターン目《ルーン唱えの長槍》の動きも単純に強いというのもありましたね。
そんな感じの思考ルートを辿って、とりあえず組んだのがこのリスト。
9 《島》 1 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(15)- |
4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 3 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 1 《四肢切断》 4 《マナ漏出》 3 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(24)- |
2 《幻影の像》 2 《刃の接合者》 1 《地下牢の霊》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《はらわた撃ち》 2 《精神的つまづき》 1 《鋼の妨害》 1 《天界の粛清》 1 《否認》 2 《機を見た援軍》 1 《雲散霧消》 -サイドボード(15)- |
サイドがちょっとうろ覚えですが、確かこんなだったかと。
とりあえず実戦をこなしてみようと、東京の「五竜杯」という大会に上のリストで参戦してみました。
が、結果は3勝3敗と奮わず。
《修復の天使》や《ルーン唱えの長槍》は期待通りの結果だったのですが、他の部分の練りこみ不足を感じましたね。
具体的には、
1マナドローの枚数不足
この時は《思案》と《思考掃き》の合計8枚だったのですが、追加の1マナドロー、具体的には《ギタクシア派の調査》が欲しいと感じました。
4ターン目には《ルーン唱えの長槍》を装備して攻勢に出たいので、それまでにできるだけ墓地に呪文を落としておきたいのですが、そのためには8枚の《思案》と《思考掃き》だけでは少ないと感じることが多く、《ルーン唱えの長槍》を効果的に使う以上最低でも10枚程度は必要だと認識。
また、アヴァシンの帰還後のスタンダードは《修復の天使》と《忌むべき者のかがり火》を相手が持っているかどうかで自分のゲーム展開を変える必要があるので、それを確認できる《ギタクシア派の調査》の需要が以前よりも上がっていると感じました。
2ターン目に《瞬唱の魔道士》をプレイするために、0マナでプレイできるファイレクシア・マナのカードをもうちょっと増やしたかったというのもあります。
《ムーアランドの憑依地》の弱体化
《修復の天使》が増えたことにより、以前よりも中盤以降に出る飛行クリーチャーの需要が下がったという印象を受けました。以前と違い、「これを引いた方が同系は有利」というゲームが少なくなった気がします。
序盤の色マナ事故の元凶にもなるカードだったので、これは枚数を減らすことに。
《マナ漏出》の弱体化
メタの上位に位置するデルバー・ゾンビ・ナヤが《魂の洞窟》を使い始めたことにより、打てずに手札でもじもじしてしまうことが多く、メインに4枚積むのはリスクが高いと認識。
ただ、コントロールのような《マナ漏出》が無いと負けてしまう相手もいるので、最低限3枚は確保しておくといった感じで。
この日に自分が持ち込んだデッキの不満点はこんなところでした。
そして大会後は会場でデルバーを使っている知り合いと意見交換。
ここでこの日の最大の収穫がありました。いつもデルバーデッキを使っている知り合いに、「土地とか18枚でも回るよ」と言われたことです。
確かに彼はいつもドローソースが多い代わりに土地が少ないデルバーで好成績を挙げていて、多くの草の根大会で結果を残していました。
ちょうどその日も5勝1敗という成績を残していましたね。
7 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(16)- |
2 《はらわた撃ち》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《信仰の盾》 2 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(26)- |
3 《幻影の像》 2 《地下牢の霊》 2 《精神的つまづき》 2 《神への捧げ物》 2 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 2 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
一応実際にリストを見たこともあるのですが、「流石に土地18枚はマリガンリスクが高すぎるだろう」という固定概念を持っていて、自分ではそれほど試さなかったのです。
ただ試してもいないのに判断するのは悪ということで、お願いしてデッキを貸してもらって回してみたところ、思いのほかマナ面で苦労することは少なく、むしろ《秘密を掘り下げる者》がすぐに変身したり、ドローソースが多い分デッキの核でもある《聖トラフトの霊》にたどりつきやすかったりと、非常に好感触でした。
デッキの中の呪文の比率が多いことで《ルーン唱えの長槍》をちゃんと運用できるという、自分の調整方針と合っていたのも大きいですね。
このデッキを回させてもらって土地は削っても何とかなると認識させられました。
これがこの日の一番の収穫でしたね。早速家に帰ってMO上で試してみることに。
大会3日前
これまでの自分の経験を反映させつつ、MO上で最終調整。
あーでもないこーでもないと試行錯誤して、何とかメインデッキは完成しました。
8 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(15)- |
4 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 3 《マナ漏出》 3 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(26)- |
最終的に土地は19枚に
確かに18枚でも問題なく回せたのですが、単純に白マナが出ないことが多かったので19枚目の土地として《平地》を追加。
サイドに《天界の粛清》や《機を見た援軍》を取ることを考えても9枚目の白マナは必要でした。
《四肢切断》の不採用
《修復の天使》や《高原の狩りの達人》に強い《四肢切断》ですが、この構成だとあまりにもファイレクシア・マナのペイライフがきつかったので泣く泣く解雇。既に8枚のファイレクシア・マナ呪文を採用しているので、これに加えて《四肢切断》を採用するのはライフ的に不可能でした。
残りの部分は自分のこれまでの調整過程を参考に。
デッキのコンセプトとしては、土地を19枚にした関係で、デッキをできるだけ軽く動かせるようにしました。
LSVのリストが「重いデルバー」だとしたら、これは「軽いデルバー」といったところですね。
実際に回して見ても、自分が考えていた要望などはきちんとクリアできていて特に文句はなし。メインデッキはこれで完成です。
後はこれに合わせたサイドボードを組むのみ。
サイドボードを組むときに考えたことは、この2点。
- メインの構成が非常に安定しているデッキなので、その安定性をあまり崩さないようにする。どんな相手でも4~5枚くらいのサイドチェンジが目安。
- 特定の相手に強いカードを多く入れる。《刃の接合者》のような目的がぼんやりしたカードより、ゾンビ用の《天界の粛清》や同系用の《精神的つまづき》のような用途のはっきりしたカードを優先。
特に意識したのは2つ目で、今のスタンダードのデッキパワーはどれも高く、半端なカードを入れても効果的ではないと感じました。ならは、特定の相手に劇的に効くカードとメインの戦略を後押しするカードだけを用意するのが一番効果的だと考えました。
そんなことを考えつつできたのがこのサイドボード。
2 《幻影の像》
2 《精神的つまづき》
1 《はらわた撃ち》
1 《変異原性の成長》
3 《天界の粛清》
1 《マナ漏出》
1 《幽体の飛行》
1 《雲散霧消》
2 《機を見た援軍》
1 《戦争と平和の剣》
2枚以上のものは特定の相手に劇的に効くカード。逆に1枚のものはメインの戦略を後押しするサイド後の調整枠といった感じですね。
せっかくなので、実際のサイドボードプランを交えながら説明していきます。
vs. デルバー同系
アウト
3 《マナ漏出》
1 《変異原性の成長》
1 《ルーン唱えの長槍》イン
2 《精神的つまづき》
2 《幻影の像》
1 《戦争と平和の剣》後手番のときは追加で
アウト
1 《ギタクシア派の調査》イン
1 《機を見た援軍》
同系の《秘密を掘り下げる者》や《思案》に対する有効な回答である《精神的つまづき》と、《聖トラフトの霊》に対処できる《幻影の像》はイン。《戦争と平和の剣》は《機を見た援軍》などでゲームが膠着したときを突破する用に1枚だけ。
《機を見た援軍》は《聖トラフトの霊》の返しで打ってこそのカードなので、先手番のときは入れないですね。
抜くのは《魂の洞窟》のせいで役に立たない《マナ漏出》と、《蒸気の絡みつき》のせいで打つタイミングが難しい《変異原性の成長》。加えて、《戦争と平和の剣》を入れる都合上、装備品過多にならないように《ルーン唱えの長槍》を1枚アウト。
vs. 赤緑ビートダウン
《魂の洞窟》を見たかどうかで大きく変わるのですが、この時は赤緑に《魂の洞窟》が入ってないものが主流だったのでこのプランで。
相手のマナクリーチャーに絶対に触るために追加の《はらわた撃ち》と、《聖トラフトの霊》を戦闘や《忌むべき者のかがり火》から守れる《変異原性の成長》を追加。
サイド後多くなるファイレクシア・マナによるライフ損失をカバーしてくれる《機を見た援軍》と、《聖トラフトの霊》につけたらイージーウィンな《幽体の飛行》をイン。
抜くのは《古えの遺恨》の的である《ルーン唱えの長槍》。ただし全部抜くと攻め手が薄くなるので1枚は残します。1枚なら《古えの遺恨》でのアドバンテージも取られないので。
あとは《ルーン唱えの長槍》を抜く関係でスペルを適当に。《マナ漏出》は《忌むべき者のかがり火》を消したいので全部は抜かないほうが良いですね。
vs. ナヤ
基本は赤緑ビートと一緒です。
ただ、ナヤには概ね《魂の洞窟》が入っているので、《マナ漏出》は全抜き。
そこの枠は相手の《刃の接合者》も意識して《幻影の像》を追加で。
vs. ゾンビ
ほぼゾンビ用に用意した《天界の粛清》とライフ水域を確保してくれる《機を見た援軍》をイン。
抜くのは《魂の洞窟》のせいで腐りやすい《マナ漏出》と、用途の狭い《変異原性の成長》。あとは手札を見てもあまり意味のないマッチなので《ギタクシア派の調査》を一枚。
《はらわた撃ち》を抜かないのは《血の芸術家》用。あいつを生かしておくとどんどん不利になるので、それに対する回答は抜かないほうが良いです。
対ゾンビはメイン戦は厳しい戦いになりますが、サイド後は多めにカードを取っているおかげで何とか戦えるようにしています。
vs. 赤緑ケッシグ
倒せるクリーチャーが少ない《はらわた撃ち》を全て抜き、《古えの遺恨》を意識して《ルーン唱えの長槍》の枚数を調整。
入れるのは追加のカウンター2種類と、《金屑の嵐》から《聖トラフトの霊》を守れる《変異原性の成長》と《幽体の飛行》。ゲームプランとしてはとにかく《聖トラフトの霊》をサポートしていく戦略です。
《幻影の像》はコピーして嬉しいクリーチャーが《最後のトロール、スラーン》しかいないのでサイドインせず。相手の《原始のタイタン》をコピーしても持ってこられた《ケッシグの狼の地》で対処されてしまうのであまり効果的とはいえません。
vs. エスパーコントロール
撃つべき対象が少ない《はらわた撃ち》と《蒸気の絡みつき》、サイズを上げる意味も特にないので《変異原性の成長》をアウト。《蒸気の絡みつき》は本来もうちょっと抜きたいのですが、これを抜いてまで入れたいカードが無いので。
追加のカウンター2種と、《未練ある魂》のトークンを突破するための《戦争と平和の剣》をイン。
《幻影の像》は抜くものよりは役に立つくらいの認識で、主な仕事は《瞬唱の魔道士》になって《思案》や《思考掃き》を使いまわしてアドバンテージを稼ぐ役割ですね。
自分が事前に組んでいったサイドボードプランはこんな感じでした。
実際に本番でここから少し変えた部分もありましたが、それをしたのは相手のリストが分かっているプレイオフ以降で、予選ラウンドはこのサイドプランでやっていましたね。
そんなこんなでデッキ・サイドプラン共に満足した状態でグランプリ・マニラに参戦。
結果はご存知の通り、優勝という最高の結果を残すことができました。
自分の3週間の成果が形として残せて、本当に嬉しかったですね。
このデッキの構成には非常に満足していて、もし今から同じように大会に出るとしても変更する部分はほとんどないでしょう。
唯一変更するとしたら、《出産の殻》のようなアーティファクトに触れる手段を用意するくらいかと。《鋼の妨害》か《神への捧げ物》のどちらかを、サイドボードのどこかのスペースを割いて入れるくらいですかね。
津村の記事でも触れているように、今のスタンダードはデルバーが一大勢力となっています。
実際日本で行われたワールド・マジック・カップ予選を制したデッキは全て「青白デルバー」でしたし、この前の禁止改定で「デルバーデッキのパーツが禁止になるのでは?」と各地で議論になるほどでした。確かに今のデルバーデッキはその議論の対象になってもおかしくないほどのポテンシャルを秘めています。
しかしそれも今の環境での話。次の『基本セット2013』による新規カードが入るまでの話です。
スタンダードという使えるカードがそう多くないフォーマットで、新しいセットが入って環境が変わらないということは考えられません。
ここまで環境を支配しているデルバーデッキも、もしかしたら次の環境では苦戦を強いられるようになるかもしれません。
そのデルバーを苦しめるデッキを作るのは、もしかしたら今ここを見ているあなたかもしれませんよ。
以上で僕の構築劇場は終了です。長文となってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、またどこかで。
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