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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第63回:清水直樹のデッキ構築劇場・情熱のうねり

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週刊デッキ構築劇場

2012.05.28

第63回:清水直樹のデッキ構築劇場・情熱のうねり

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・アヴァシンの帰還 トップ8、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 皆さんこんにちは!

 あれから2週間が経ちましたが、改めてご報告させて頂きたいと思います。
 先日行われたプロツアー・アヴァシンの帰還で見事トップ8に入賞することができました!!


 使ったデッキは、ナヤ。

「でむぱ婚活」[MO] [ARENA]
10 《
2 《
1 《平地
4 《断崖の避難所
4 《進化する未開地
2 《ケッシグの狼の地
1 《ガヴォニーの居住区

-土地(24)-

4 《アヴァシンの巡礼者
3 《軽蔑された村人
4 《国境地帯のレインジャー
3 《ウルフィーの報復者
4 《高原の狩りの達人
4 《修復の天使
4 《ウルフィーの銀心

-クリーチャー(26)-
3 《火柱
4 《硫黄の流弾
3 《忌むべき者のかがり火

-呪文(10)-
2 《士気溢れる徴集兵
3 《墓掘りの檻
1 《火柱
1 《信仰の盾
1 《大物潰し
1 《高まる残虐性
3 《小悪魔の遊び
1 《忌むべき者のかがり火
2 《情け知らずのガラク

-サイドボード(15)-

 なお、デッキ名ですが《ウルフィーの銀心》が「けっこん」するということで、最近僕が必死になっているらしいと噂の「婚活」とかけてみました。

 お気づきの通り青緑ではありません。
 各所から「青緑を捨てた」「シミチンじゃなくてナヤチンだな」といった苦情を頂きました(笑)。

 確かに今回の大会では青緑でないデッキで出場しましたが、それには色々と訳があるのです。というか、別に青緑でないデッキで大会に出るのは、けして僕にとっては珍しいことではありません。まぁ、青か緑どちらかが含まれている率はほぼ100%なんですけど。

 先日のコガモ大先生の記事の中で、「仕事とマジックを両立する秘訣を語って」といったことが書かれていたので、今回はいつもの構築劇場と併せて、仕事とマジックを両立する秘訣についても語らせていただきたいと思います。

第15回戦にて

 一言でいえば、その秘訣は「一人でマジックしない」ということに尽きると思います。

 当たり前といっては当たり前のことです。ただ、意外にも一人でマジックをしている人は少なくありません。
 インターネットのおかげで自宅にいればさまざまな情報を仕入れることができることができますし、Magic Online(MO)を使って練習することもできます。

 しかし、社会人マジックプレイヤーというのは学生に比べて圧倒的に時間がありません。
 いくら便利な世の中になったといえども、少ない時間で得られる情報や練習の成果というのは、どうしても限られてしまいます。

 そこで、できるだけ多くの人と情報交換を行うことにしました。

 自分が持っている情報は、他の人から口止めをされているもの以外については一切隠しません。自分だけのシークレットテクということで、情報をできるだけ隠そうとするプレイヤーは昨今非常に多いように思いますが、時間が十分にあるプレイヤーならともかく、僕のような境遇の人にはそれはあてはまりません。

 一人だけでは時間が少なくても、皆の情報をもらうことができればそれは大きなものになるのです。社会人になってからこうした作戦で調整をしてきましたが、これまではなかなか結果にはなかなか結びつきませんでした。しかし、今回は環境の特性もあって大きな効果を出すことができました。

 今回は『アヴァシンの帰還』が発売してからすぐ、しかもブロック構築という『アヴァシンの帰還』参入の影響が色濃く出るプロツアーでした。

 これまでのように、MOの結果などからメタゲームを分析してそれに合わせてデッキを作るという戦法は全く使えなかったのです。
 幸いなことに、代わりにゴールデンウィークがありました。このゴールデンウィークを利用して、前半は関東勢と、後半は関西勢とデッキの調整をすることにしました。

 その調整で得ることができた収穫は、具体的には以下の通りです。

 わずか数日の調整で、一気に「新しいブロック構築」という環境を把握することができたと思います。

 そしてゴールデンウィーク後半で、関東での情報を活かしたデッキ(赤緑の《ウルフィーの銀心》《忌むべき者のかがり火》が入ったビートダウン)を和歌山へ持ち込んで調整、《修復の天使》を足すべきだというアドバイスをもらうことができ、今回のデッキが完成しました。

 デッキ自体の詳しい調整過程については僕のブログ「でむぱまじっく」のほうでも少し触れているので、興味がある方はご参照ください。

 最終的にはGaudenis Vidugrisのバント(皮肉にも青緑です)に敗れてしまいましたが、ブロック構築ラウンドは7勝3敗。ダイスロールにほぼ全敗したうえでこの成績なので、今回のデッキは「成功」したものだったと言えると思います。


 さて、前置きはこれくらいにして今回の構築劇場本編へまいりましょう!

 今回の「種」はこちらです!

 圧巻の{8}{G}{G}! 誰が撃つんだこの呪文!?

 10マナというコストの割に、効果がパっと見では分かりづらいので確認しておきましょう。

  1. ライブラリの一番上をめくる
  2. インスタントかソーサリーがめくれた?
  3.  はい→乙!!
  4.  いいえ→そのカードを戦場に出して、最初へ戻る

 そうなのです。インスタントかソーサリーがめくれてしまうまで上記プロセスを繰り返すので、デッキの中にほとんどインスタントもソーサリーも入っていなければ、もう戦場がそれはそれは凄いことになるのです! この「1枚ずつめくっていって連鎖する」というのはどこか《精神の願望》を思わせますね。

 往年の名カードのひとつで、このカードが使える環境では常に警戒される1枚でした。

 《原初のうねり》は、その《精神の願望》よりも4マナも重いですが、ストームを稼いだりする必要はないので、それほど唱えるのは難しくないはずです。

 唱えることさえできれば、きっとゲームに勝つことができるようにデッキを組みましょう!

 ・・・頼むから1枚目で《原初のうねり》はめくれないでくれ!と祈るデッキになりそうです(笑)。

「刺激的絶命拳」[MO] [ARENA]
8 《
1 《
2 《魂の洞窟
1 《ケッシグの狼の地
4 《根縛りの岩山
4 《銅線の地溝
4 《微光地

-土地(24)-

4 《極楽鳥
2 《ラノワールのエルフ
4 《夜明け歩きの大鹿
4 《高原の狩りの達人
3 《士気溢れる徴集兵
3 《原始のタイタン
3 《業火のタイタン
1 《孔蹄のビヒモス

-クリーチャー(24)-
4 《太陽の宝球
4 《際限無き成長の祭殿
4 《原初のうねり

-呪文(12)-
4 《夜明けのレインジャー
1 《ファイレクシアの変形者
2 《墓掘りの檻
3 《漸増爆弾
4 《忌むべき者のかがり火
1 《魂の洞窟

-サイドボード(15)-

 完成形は、いわゆる「Wolf Run Ramp」の亜種のような形になりました。

 もちろん《原始のタイタン》から《ケッシグの狼の地》、というお馴染みの動きも可能ですが、このデッキが真価を発揮するのはやはり《原初のうねり》を撃ったときです。なので、敢えて《墨蛾の生息地》は採用していません。

 代わりに10マナに到達するまで耐えなければならないので《微光地》を全力で採用しています。
 普通のデッキだったらフィニッシャーである《原始のタイタン》も、このデッキでは途中の1段階に過ぎないのです。

 ようやく10マナに到達し、《原初のうねり》を唱える瞬間はもはやテンションが最高潮です。
 もし近くに紙袋があったら、目の部分に穴を開けてそれを頭にかぶりつつ、「何が出るかな?」と呟きながらトップをめくりましょう。

 《原初のうねり》がめくれてしまうと残念ながら失敗になってしまうのですが、すぐめくれてしまうというのは非常にまれなので、最低でもだいたい5~6枚くらいは「何か」が戦場に出てきてくれます。1枚目でめくれたら「ちくしょーなんでだー!!」と叫ぶといいと思いますが、他のプレイヤーの迷惑にならないようにしましょう。

 で、出てくる「何か」ですが、《孔蹄のビヒモス》が大当たりです。戦場に大量のクリーチャーがいるでしょうから、能力で一気に勝つことができると思います。

 もう一つ、小当たりとして《士気溢れる徴集兵》があります。普通に使っても強いこのカードですが、《原初のうねり》で出てきた時は、横に出てきた《業火のタイタン》などに「速攻」を付与することができます! 対象を選ぶのは《原初のうねり》が全て解決し終わってからになるので、戦場に出てくるタイミングは問いません。

 成功すれば、10マナでは安いくらいのアドバンテージをとることができると思います。もちろん、そのままゲームに勝っちゃうことも!

 今回、10マナという莫大なコストを解決するために大量の「パーマネントによるマナ加速」を採用することになります。
 《極楽鳥》《ラノワールのエルフ》《夜明け歩きの大鹿》《太陽の宝球》などなど...

 どれもパーマネント・カードなので、《原初のうねり》を邪魔することはありません。
 ただ、どうしても10マナというのは思っている以上に厳しいものがあります。7、8マナくらいだったら簡単に到達することができるんですが、なかなか10マナとなると厳しいです。

 何か瞬間的にでもいいので10マナに到達できるようなカード、かつパーマネント...と考えていると、どこからともなく「まつがん(伊藤敦)」の声が聞こえてきました。

 「困った時は1つ前のブロックのカードリストを見直せ。」

 そして、発見!!

 《際限無き成長の祭殿》! じゃんじゃじゃーん!

 そういえば、塚本さんの記事にもありましたが、効果を覚えていない人もおそらく多いかと思います。けっしてカードリストとにらめっこのしすぎで風化してしまった僕のなれの果ての姿ではありません(笑)。

 このカードを《極楽鳥》経由で2ターン目に出すことができれば、他のマナ加速とも絡めてあっというまに10マナに到達することができます。
 一昔前のスタンダードなら《引き裂かれし永劫、エムラクール》を目指したかもしれませんが、今なら《原初のうねり》が最も相性の良いカードだと思います。

 これを使えば、4ターン目くらいに《原初のうねり》をぶっ放すことも決して夢じゃない!? 是非ともこのドキドキを味わっていただきたいと思います。

回転

 ちゃっかりと4枚入っている《高原の狩りの達人》ですが、《原初のうねり》との相性も申し分なく、かつ単体でのカードパワーは折り紙つき。
 このデッキなら4枚使わない理由はないでしょう。どうしてもデッキの中でクリーチャーを除去できるカードが少なくなってしまいますが、《高原の荒廃者》がそれをカバーしてくれます!

 なお、こっそりとメインから《魂の洞窟》を2枚、サイドに1枚採用しています。このデッキは《マナ漏出》で《原初のうねり》を弾かれてしまうという致命的な弱点があるので、地道に「巨人」や「人間」を宣言して《原始のタイタン》や《高原の狩りの達人》《士気溢れる徴集兵》をねじこみましょう。

 サイドボードには《忌むべき者のかがり火》も4枚用意していますが、これは《マナ漏出》で《原初のうねり》が弾かれてしまうのを想定して入れています。

 つまり、《原初のうねり》と4枚総とっかえをするのです。こちらが10マナにたどりつくまで《マナ漏出》を構えずに温存していた相手の意表を突くことができますよ!

 もちろん、奇跡したときのオーバーパワーは一度体験するとやめられない魅力があります(笑)。

 その他、主に《未練ある魂》対策の《漸増爆弾》と《夜明けのレインジャー》はこのデッキでは欠かせないカードですね。

 特に流行りの《秘密を掘り下げる者》デッキに対しては《原初のうねり》《際限無き成長の祭殿》と《忌むべき者のかがり火》《夜明けのレインジャー》を総とっかえすることで相性をかなり改善できると思います。《魂の洞窟》で打ち消されない《夜明けのレインジャー》は悪夢でしょう!

 なお、《ファイレクシアの変形者》ですが、また「青緑じゃないじゃん!」というクレームが再燃しないようにするために入れています!

 ・・・いや、普通にこのデッキと相性いいので入れてあります(汗) 《出産の殻》が流行っているなら枚数を増やしてもいいかもしれません。
 主に「Wolf Run Ramp」の相手などを想定しているカードですが、自分の《際限無き成長の祭殿》をコピーすることもできるので意外に活躍しますよ!

 今回のデッキ名ですが、「何が出るかな?」から連想して、某マニアに人気の格闘ゲームからあの技をチョイスしてみましたが、かなり元ネタがアレなので分かる方はきっと僕と仲良くなれると思います(笑)。

 今年どうやら新作が出るらしいんですが、実はかなり楽しみにしていたりいなかったり。


 さて、プロツアー・ラヴニカへの回帰予選も始まり、もうすぐワールド・マジック・カップ予選もありと、スタンダードがアツいですね。そして6月下旬には横浜でモダンのグランプリ! これからどんどんマジックがアツくなる!

 皆さんもぜひ、自分の信じたデッキで大会を勝ち抜く喜びを味わってください!

 Decks, be Ambitious!!


 最後に、バルセロナの思い出を振り返る意味でいくつか写真をご紹介したいと思います!

写真1

 今回トップ8に入ったスウェーデンのDeniz Rachidと仲良くなれました! 実はドラフトラウンドとスイスラウンド、あわせて2回彼に負けています(笑)。
 日本の漫画が大好きだそうです。是非日本のイベントにも顔を出してほしいですね!

写真2

 サグラダ・ファミリアの内部です。本当にステンドグラスが綺麗でした。完成するまでにあと何年かかるでしょうか...

写真3

 一番のお気に入り写真です。観光に行った皆で集合写真を撮ってもらいました。こうやって仲間と海外旅行を楽しむことができるのはプロツアーの大きな魅力ですよね!

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