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週刊デッキ構築劇場
第45回:清水直樹のデッキ構築劇場・目を覚ます物語
読み物
週刊デッキ構築劇場
2012.01.16
第45回:清水直樹のデッキ構築劇場・目を覚ます物語
演者紹介:清水 直樹
言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。
みなさん、あけましておめでとうございます!!
2012年はマジックにとって大きな変化の一年になりそうですね。
皆さんご承知のとおりプレインズウォーカーポイントのシステムが本格的に始まり、プロツアー・世界選手権の制度も変わり、「ワールド・マジック・カップ」という新たなイベントも行われることが決定しました。
今後のマジックの展望としては、「とにかく大会に出てマジックをプレイをすること」が「勝ち負け」よりも優先されるようなものになります。
とにもかくにも「プレイをすること」というのは通常楽しいものですが、やはり人間ですからずっと同じことばかりしていては面白くないでしょう。
例えばどこかからデッキリストを仕入れてきて、そのデッキをひたすらやりこむ!というプレイスタイルの方は少なくないかと思うのですが、僕がオススメしたいのは、
「こんなデッキ作ってみたよ!」
と言いつつ大会に出まくってみるということです。
負けてもレーティングが下がることはありません! どんどん大会に出て、新しいデッキをどんどん試してみると、2012年のマジックを感じることができるんじゃないでしょうか。
僕のデッキ構築劇場では、「新しいデッキをどんどん使ってみよう!」というコンセプトのもと、これまでメタゲームには登ってこなかったけれども、実は結構戦えるよ!というデッキを紹介していきたいと思います。
間もなく2012年の最初のエキスパンションである『闇の隆盛』が発売されますが、それと同時に「プロツアー・アヴァシンの帰還」の予選もいよいよ始まろうとしています。
フォーマットは、「モダン」です。
このフォーマットは本当に今アツいフォーマットで、Magic Onlineでも様々なデッキが生まれては上位入賞を果たし、プレイヤーたちを驚かせています。
「モダン」発表当初はとんでもないコンボデッキ環境だったのですが、禁止カードの整備によってかなりバランスが取れた環境になってきているように思えます。先日行われたThe Finalsではまだ最新の禁止改定が入る前のものでしたが、今回発表された新たな禁止改定が環境に大きな影響をもたらしています。
一つは、《野生のナカティル》。
やっぱり1マナ3/3は強すぎたかな、ということですね。
ただ個人的な見解では、所詮バニラはバニラなのでそれほどこの禁止はインパクトの大きいものではありませんでした。
しかしもう一つの《罰する火》禁止は、とてつもなく大きな影響を与えています。
《燃え柳の木立ち》と組み合わせると、たちまちクリーチャーを全滅させてしまうことができるこのカード。
これのせいでタフネス2以下のクリーチャーはほぼ人権が無いような環境だったのですが、禁止によって彼らに大きな可能性が生まれました。
その証拠といってもいいのがこのリストでしょう。
18 《島》 2 《変わり谷》 -土地(20)- 4 《呪い捕らえ》 4 《珊瑚兜の司令官》 4 《アトランティスの王》 4 《銀エラの達人》 4 《マーフォークの君主》 4 《メロウの騎兵》 -クリーチャー(24)- |
4 《霊気の薬瓶》 4 《呪文貫き》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 -呪文(16)- |
3 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 3 《大祖始の遺産》 3 《鋼の妨害》 3 《否認》 3 《睡眠》 -サイドボード(15)- |
「マーフォーク」です。
Magic Onlineをよく遊ぶプレイヤーにとっては知らない人はいないというほど有名な_Batutinha_さんのこのリスト。
マーフォークはレガシーでの活躍は古くから知られていましたが、モダンでは《罰する火》が流行っており、新鮮な魚が全部焼き魚になっちゃうよ!ということであまり選択肢に上がってくるデッキではありませんでした。
しかしそれも過去の話で、今まで《罰する火》怖さに泳ぐことも許されなかった魚人達が字義通り水を得た魚になっています。
マーフォークということで、プロツアー・フィラデルフィアでは一部のマニア、というか八十岡大先生しか使わなかった《霊気の薬瓶》が輝いていますね。
《マナ漏出》《呪文貫き》といったカウンターに加え、スタンダードの虫人間デッキでおなじみの《蒸気の絡みつき》が4枚搭載されているのは間違いなく《欠片の双子》コンボを意識してのことでしょう。
と、《罰する火》の禁止の影響がいかに大きいかを語ってみましたが、決してそれだけで終わるつもりはもちろんありません。
今回紹介するデッキは間違いなく《罰する火》禁止のお陰で成立するものです。
まずはリストを見てみましょう。
2 《島》 1 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《神聖なる泉》 4 《金属海の沿岸》 1 《アゾリウスの大法官庁》 4 《霧深い雨林》 2 《変わり谷》 2 《地盤の際》 1 《嘆きの井戸、未練》 -土地(25)- 3 《翻弄する魔道士》 1 《幻影の像》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 3 《誘惑蒔き》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 2 《エレンドラ谷の大魔導師》 4 《熟考漂い》 4 《目覚ましヒバリ》 -クリーチャー(21)- |
4 《霊気の薬瓶》 4 《流刑への道》 4 《差し戻し》 2 《一瞬の瞬き》 -呪文(14)- |
3 《レオニンの遺物囲い》 3 《呪文滑り》 3 《台所の嫌がらせ屋》 3 《大祖始の遺産》 3 《神の怒り》 -サイドボード(15)- |
あの「ヒバリ」が帰ってきました!
ヒバリデッキの半分は優しさ・・・ではなく2/2で出来ていますから、今までは《罰する火》に一網打尽にされてしまうため、手を付けることすらもできなかったのです。
しかし《罰する火》無き今、かのような恒久的なクリーチャー除去のシステムは存在しません。
あるのは《ヴェールのリリアナ》だったり、《大渦の脈動》だったり、《終止》だったり、基本的に1対1交換を前提にした除去呪文ばかりです。
そうなれば、《目覚ましヒバリ》はそうした除去をほぼ無駄にすることができますから、突如光り輝くカードになるわけです!
そして、スタンダード時代では辛酸を嘗めさせられた《苦花》も、モダンには咲いていないのです。
また、厄介なコンボデッキについても《翻弄する魔道士》で対策ができますし、《流刑への道》もあるので《欠片の双子》にはそう簡単にコンボを決められることはありません!
時のらせん+ローウィンや、ローウィン+アラーラの断片のスタンダード環境で、常にファンをつかんで離さなかった《目覚ましヒバリ》。
とくに前者のスタンダードでは《一瞬の瞬き》とのコンボが強烈でした。
《熟考漂い》でカードを引きながら、《誘惑蒔き》で相手の攻撃を阻害しつつ、それらが除去されてしまっても《目覚ましヒバリ》で復活させる、という動きが、莫大なアドバンテージをもたらします。
使っていて、それがとても気持ちの良いデッキでした。無論、やられている側にとってはたまったものではないと思いますが・・・。
上でも述べていますが、クリーチャー除去に強いのが大きな特徴で、カウンターを擁していないコントロールデッキには非常に簡単に勝つことができるのが長所です。
クリーチャーを一生懸命除去したと思っていたら全部《目覚ましヒバリ》で戻ってきたりするわけですから、コントロールデッキにとっては本当に悪夢ですね。
参考までに、当時のデッキリストもご紹介しておきたいと思います。
6 《島》 4 《平地》 4 《アダーカー荒原》 4 《秘教の門》 1 《反射池》 4 《変わり谷》 -土地(23)- 4 《台所の嫌がらせ屋》 4 《誘惑蒔き》 3 《造物の学者、ヴェンセール》 4 《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》 4 《熟考漂い》 4 《目覚ましヒバリ》 -クリーチャー(23)- |
2 《否定の契約》 4 《思案》 3 《一瞬の瞬き》 4 《精神石》 1 《冷鉄の心臓》 -呪文(14)- |
2 《エレンドラ谷の大魔導師》 1 《ザルファーの魔道士、テフェリー》 2 《隆盛なる勇士クロウヴァクス》 1 《否定の契約》 3 《糾弾》 3 《霊魂放逐》 3 《神の怒り》 -サイドボード(15)- |
さすがナベ、と言った感じの安定性を重視した綺麗なリストだったことが印象的です。
当時は1マナドローとして《思案》や《祖先の幻視》が使われていましたが、これらは残念ながら禁止カードですから、うっかりモダンで使っちゃったりしないように気をつけましょう。ジャッジが出てきて大変です。
スタンダードのころからあったデッキの焼き直しということで、ローウィンブロックでスタンダードをプレイされていた皆さんにはなじみ深いカードが多いかと思います。
今回のフォーマットはモダンということで、当時個人的に「あったらいいな」と思っていたカードを加えて搭載するという贅沢が実現しています。
《霊気の薬瓶》
ヒバリデッキはクリーチャーの重さがネックになっており、スタンダード時代は《精神石》でマナ加速することで解決していたのですが、モダンではこのカードが解決してくれます。
マナを使わずに、かつインスタントタイミングでクリーチャーが出せるので、突然《目覚ましヒバリ》で相打ちを取って莫大なアドバンテージを取ったりすることもできます。
また、ヒバリデッキは打ち消し呪文に弱いところがあったのですが、それもこのカードが解決してくれます。
まさしく、欲しかったけど使えなかった一枚。
《差し戻し》
スタンダード時代はカウンター呪文として《ルーンのほつれ》を使っている人も多かったかと思いますが、モダンでは敢えて《マナ漏出》ではなくこちらを選択しました。
通常の青白コントロールとは異なり、積極的に攻撃を仕掛けていくこのデッキでは、根治的に相手の呪文を打ち消すよりは一時的にテンポを稼ぐことのほうが重要になる、という理由です。
ちょっとこういう感覚は実際にプレイをしてみないと難しいかもしれませんが、通常のクロックパーミッションでは相手の《神の怒り》なんかは絶対にカウンターをしたい1枚である一方、このデッキにとってはそういった致命的な呪文は少ないので、時間を稼いでカードを引く方が価値が大きくなるのです。
《翻弄する魔道士》
上記《差し戻し》と相性がいいのがこちらです。加えて、《ヴェンディリオン三人衆》との相性も抜群です。
何度も言っていますが、《罰する火》ありの時代ではまず考えられない採用のこのカードですが、それが無い今、有効な《欠片の双子》対策となっています。
《幻影の像》
今回は1枚の採用にとどめましたが、今後モダンでクリーチャーデッキが流行ってくるようなら増やしてもいいカードですね。
《一瞬の瞬き》で対象に取ってしまうと死んでしまうのでご注意を! ただし、《目覚ましヒバリ》をコピーしている状態であれば、墓地に落ちたときの効果で「自分自身を対象に取る」というズルい芸当が可能です!
《嘆きの井戸、未練》
こっそり入っているのですが、このカードこそ僕がヒバリデッキで最も使いたかった1枚です。
伝説の土地なので採用は1枚にとどめていますが、《誘惑蒔き》で奪ったクリーチャーを食べたり、《目覚ましヒバリ》を誘発させたり、本当に至れり尽くせりです。
《熟考漂い》《造物の学者、ヴェンセール》《誘惑蒔き》《エレンドラ谷の大魔導師》
「ヒバリ四天王」の4名です。
それぞれが「ドロー」「カウンター・パーマネント対策」「クリーチャー対策」「非・クリーチャー対策」という重要な役割を担っています。彼らなしではヒバリデッキは成立しません!
サイドボードのほうは非常に丸く作ってみました。
墓地対策の《大祖始の遺産》、エンチャント・アーティファクト対策の《レオニンの遺物囲い》、
速攻対策の《台所の嫌がらせ屋》と《神の怒り》、《欠片の双子》対策の《呪文滑り》です。
ただ現状ではストームデッキがノーマークなので、もし《翻弄する魔道士》だけでは足りないと考えられる場合には、《神の怒り》などを《精神壊しの罠》にするとよいかと思います。
デッキ名は、スタンダード当時から愛用していた「Beautiful Sky」の名前をそのまま復刻させました。美しい空ですね。ヒバリですね。
今回の構築劇場では、現在のモダン環境がどうなっているのかを考えつつ、過去活躍したスタンダードのデッキをモダン仕様にしてみるというアプローチを進めてみました。
もちろん《目覚ましヒバリ》に限らずこの考え方は有効です。というか、既に活躍している「ジャンド」はまさしくこの考え方から生まれてきたデッキでしょう。
皆さんもスタンダード落ちでお別れを余儀なくされてしまったデッキというのは少なからずあると思います。
是非そんなデッキたちを、モダンの力でよみがえらせてみて下さい! ひょっとすると、そのデッキがあなたにとっては最強のデッキかもしれませんよ!
それでは2012年も、Decks, Be Ambitious!!
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