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週刊デッキ構築劇場

第41回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・ピック、構築、サイドボード!

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週刊デッキ構築劇場

2011.12.05

第41回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・ピック、構築、サイドボード!

演者紹介:鍛冶 友浩

 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン06優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。
 現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、多くの練習と、レベルの高い理論により、多くのプレイヤーから信頼されている。特に、齋藤 友晴や森 勝洋との交流は有名であり、当時の彼らの成績に一役買っていた。
 スクラップ&ビルドを繰り返し、練習時に欠点を洗い出した上で、独創的な方法で克服した練度の高いデッキを構築することから、『欠点の破壊者(クラックスミス)』の二つ名がある。
 代表作は、Rage against the Machine・セプターチャント(北九州の形はモリカツ型と呼ばれるが、メインの構築者は鍛冶)・ストラクチャー&フォース他多数。
 現在、mtg-jp.comにて火曜日に『鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」』を週刊連載中。


☆「構築能力」

 スタンダードにモダン、レガシーやエクステンデッドと、構築という言葉から連想されるのは英語で言う「Constructed」のフォーマットだと思う。

 しかし、構築能力というのは本当にここで挙げた種目でのみ、問われるのだろうか?

 Magicというゲームは、世界各地で週末になればトーナメントが大量に開かれている。ことMagic Onlineの場合は毎日! そして構築フォーマットの入賞者のデッキリストはすぐにWeb上にアップされ、そしてコピーされる。
 もちろん、そういった意味での流行りに適応し調整する能力という点で、構築能力は問われているだろう。

 だが、構築フォーマットではないはずのリミテッドのトーナメント中にも、どうして構築時間があるのだろう?
 カードプールがその場で与えられ、制限時間内にデッキを即席で組み上げるわけなのに、これが「構築」フォーマットでないことに不思議に思わないだろうか?

 ・・・もちろんこれは冗談で、日本語と英語のギャップでおかしなことになっているだけだ。
 そんなことを考えていると、自分が世界選手権で使用したドラフトのカードプール、そこから生まれたデッキに一つ面白いものがあったことを思い出した。
 それは神河ブロックのリミテッドで秘儀ベースの《思考の鈍化》コンボを彷彿とさせるデッキ。

 今回のデッキ構築劇場の題材では、ブースタードラフトの発掘デッキを扱っていこう!


☆発端

 ことの発端は、世界チャンプとなった彌永と出発直前の日曜日にドラフトを行った時に聞いた、
「《蜘蛛の発生》と《根囲い》を集めた青緑タッチ黒の『発掘』がかなり強いらしい。」
 という一言。

 彼と一緒に、優勝した赤緑の《ケッシグの狼の地》を調整した石村 信太朗の練習の成果がこのアーキタイプだったらしく、イニストラード・リミテッドの経験値の低かった自分には当時、どんなものかはさっぱり想像がつかなかった。

 ただ、Magic Onlineでのプレイした感触では《根囲い》の評価は著しく低いということだけは知っていた。


☆世界選手権にて

 そして本番の世界選手権2日目、第1ドラフトのピックが始まり、自分の好きなアーキタイプである青黒の墓地活用へ向かう《縫い合わせのドレイク》、《禁忌の錬金術》とピックしたはいいが、すぐに青にも黒にも取るに値するカードが無いパックがやってきてしまった。

 両面カードの存在で、自分の2つ上が《血統の守り手》《忍び寄る吸血鬼》と連続して取っており、青はまだわからないが、黒はまず流れてこないとは明らかだった。

 このまま無理に青黒へ進むのはマズい、そしてパックを見直すとそこには《蜘蛛の発生》が!
 既に《根囲い》を2枚見かけていたこともあり、青緑へ一気に路線を変更すると、《根囲い》を4枚擁する発掘デッキが完成した。

イニストラード・ブースタードラフト版 『発掘デッキ』
世界選手権2011 2日目 第1ドラフト[MO] [ARENA]
9 《
5 《
2 《
1 《ネファリアの溺墓

-土地()-

2 《待ち伏せのバイパー
1 《錯乱した助手
1 《暗茂みの狼
1 《縫い合わせのドレイク
1 《電位式巨大戦車
2 《要塞ガニ
1 《月鷺
1 《森林の捜索者
1 《ただれ皮の猪
1 《モークラットのバンシー
1 《赤子捕らえ

-クリーチャー(13)-
4 《根囲い
1 《熟慮
2 《禁忌の錬金術
1 《蜘蛛の発生
1 《迫り来る復興
1 《猛火の松明

-呪文(10)-
1 《赤子捕らえ
1 《骨までの齧りつき
1 《夢のよじれ
2 《忘却の呪い
1 《腐敗した沼蛇
2 《グール起こし
2 《グール呼びの詠唱
3 《骸骨の渋面
1 《神聖を汚す者のうめき
1 《アヴァシンの巡礼者
1 《古えの遺恨
1 《業火への突入
1 《旅行者の護符

-サイドボード(18)-

 必殺技の《蜘蛛の発生》と《迫り来る復興》、その2大フラッシュバック呪文を支える《禁忌の錬金術》と《根囲い》という豪華6枚もの自分のライブラリーを掘れる呪文に加え、2枚の《待ち伏せのバイパー》、その接死能力とシナジーを生む3枚の陰鬱カード。
 そして、青の基本戦略である壁と飛行クリーチャーもあり、戦場を固めた後のファッティも十分に確保されてる。

 通常ならば、このタイトなマナ配分でゲームをするのは難しいはずだが、4枚の《根囲い》が《》を探すのに一役買う上、1枚の《ネファリアの溺墓》を掘り当てることも不可能ではない。
 また、運良くカードアドバンテージにつながることも考慮して、中盤以降も役に立つような2マナ以下のパーマネント呪文を意識してピックした。

 初めての青緑発掘だったが案外デッキはまとまっており、3-0を目指したい。・・・ところだがここは世界選手権。

 最初のラウンドは白赤の除去&クリーチャーなオーソドックスなアーキタイプだったので、都合よく戦場をクリーチャーで混戦にし、消耗戦からの必殺技で勝負を決めたのだが、2戦目(Round 8)は非常に難しいマッチとなった。


☆サイドボード

 対戦相手のデッキは青赤タッチ白。複数の《捨て身の狂乱》でライブラリーを掘って《燃え立つ復讐》と大量のフラッシュバックへつなげるデッキだった。

 《根囲い》のアドバンテージで優位にたち、《蜘蛛の発生》と《迫り来る復興》の物量で1ゲーム目に勝利するも、第2ゲームは一瞬だった。
 相手先攻からの《グール呼びの鈴》、そして2ターン目には更に2枚の《グール呼びの鈴》!

 手札の《根囲い》や《禁忌の錬金術》を唱える気は失せ、完全にゲームプランは崩壊し、2枚の《夢のよじれ》であっという間にライブラリーアウトすることとなってしまったのだ。

 さて、あなたなら次の第3ゲームに向けて一体どんなサイドボードをするだろう?


 ここで僕が選んだプランは、中途半端な《要塞ガニ》と《根囲い》を少し抜き、《夢のよじれ》、そして《》を追加しての《腐敗した沼蛇》をサイドイン。

 さらに《》を入れずに《古えの遺恨》を入れるという、通常のリミテッドデッキでは考えられないが、サイドボードをしてきた相手のプランにあわせたサイドボードをすることにしたのだ。

 そして案の定、マナに比してダメージ効率の良い5/1のプレッシャーは大きく、相手のキャストした《グール呼びの鈴》で墓地に送られた《古えの遺恨》でそれを破壊することもでき、《ネファリアの溺墓》のライブラリー破壊とライフを同時に攻めることで、何とかゲームに勝利することができたのだった。

 ここに出てくるカードの多くは通常は評価されず、とても遅い巡目で流れてくるカード群にあたるものだと思うのだが、全てのカードに可能性があることをこのゲームは思い出させてくれた。


☆顛末

 しかし残った3戦目(Round 9)、最終戦の相手はピック中に2つ上に座っていた初手《血統の守り手》のプレイヤー。
 4ターン目《血統の守り手》、5ターン目《邪悪な双子》で《血統の守り手》をコピー、6~7ターン目に《大笑いの写し身》からフラッシュバックで、《血統の守り手》を4体出されるというひどいゲーム×2!!!
 両隣でプレイしていた人たちにまでオーマイガーとか言われる始末で、あまりに歯が立たないので自分も笑ってしまいました。

 強いカードが強いことも思い出させてくれたいいドラフトでした(笑)


 というわけで、今回のデッキ構築劇場はおしまい!
 それではまた明日、週刊連載で!

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