読み物

週刊デッキ構築劇場

2011.08.15

第25回:清水直樹のデッキ構築劇場・「モダン・シミック王国の復活」

演者紹介:清水 直樹 　言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。 　「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。 　また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。 　代表作は、スクリブ＆フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。

　皆さんこんにちは！
　暑い日が続いていますが夏バテなどしていませんか！

　そんな中つい先日、マジック界に激震が走りました。9月頭に予定されている、プロツアー・フィラデルフィアのフォーマットが「エクステンデッド」から「モダン」に変更となったのです！

　もっとも、僕は参加権利が無いので（泣）あまり大きな影響があったわけではないのですが、これはおそらく今後「モダン」が競技フォーマットとしてかなり重要な位置を占めてくるだろう、ということです。
　来年はグランプリが倍増するという話もありますし、プロツアー予選のフォーマットが「モダン」になったりするかもしれません。これからは「モダン」がアツいですよ皆さん！！

　というわけで、今回の構築劇場は「モダン」でお送りします！

　モダンの良いところ、それは何といってもデッキ構築の自由度の高さでしょう。
　禁止カードは色々と指定されてて自由度なんか高くないじゃんと思われるかもしれませんが、僕が言いたいのはそういうことではありません。

　何といっても、
　《ヤヴィマヤの沿岸》！
　《溢れかえる果樹園》！！
　《繁殖池》！！！
　勿論現役の《霧深い雨林》も、ぜーんぶ使える！！！！

　使えないのは《Tropical Island》くらいなもんです。僕はいまここに、シミック王国の復活を宣言します！！
　え？青緑以外にも色々復活している？？　いやいや、マジックといえばあおみd（以下略

　というわけで、さっそく色々とデッキを考えてみました。今回、デッキとして全部紹介してもよかったのですが、紙面の都合や時間の関係など（スミマセン）で割愛させていただきますが、こんなアイデアを思いついてきました。

《シルヴォクののけ者、メリーラ》＋《エレンドラ谷の大魔導師》

　新たなるファイレクシアはこんなところにコンボを発生させていました。青マナの続く限り、クリーチャー以外は封殺できます！
　勿論《台所の嫌がらせ屋》とのコンボもありますね。

《根の壁》+《草茂る胸壁》

　あの大人気の壁が、夢の共演！！
　大量マナからの《歯と爪》なんていかがでしょう？

《侵入警報》+《傲慢な完全者》

　え、《侵入警報》使えるの！？と驚きの方もいるかも。基本セット第8版なのでギリギリセーフです。そしてこのコンボは、きわめて強力！
　《遺産のドルイド》と合わせて無限マナも出ちゃいます。

《面晶体のカニ》＋《スクリブのレインジャー》＋《獣相のシャーマン》＋《復讐蔦》

　この4枚が揃ったところを想像するだけでもニヤニヤが止まらなくなってしまうのはきっと青緑偏執狂の僕だけかもしれません。
　上陸！アンタップ！サーチ！！《復讐蔦》ジェットストリームアタック！！

　と、ちょっと思いついただけでも沢山出てきました。
　が、やはり僕として、このフォーマットで一番組みたいデッキは何かと言うと・・・

Amibitious Tron[MO] [ARENA]

1 《島》 1 《森》 4 《繁殖池》 4 《霧深い雨林》 4 《雲上の座》 4 《微光地》 4 《ヴェズーヴァ》 1 《トレイリア西部》 1 《アカデミーの廃墟》 -土地（24）- 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《隔離するタイタン》 -クリーチャー（2）-	4 《シミックの印鑑》 1 《壌土からの生命》 4 《探検》 4 《差し戻し》 2 《乱動への突入》 3 《知識の渇望》 4 《けちな贈り物》 4 《仕組まれた爆薬》 4 《卑下》 2 《精神隷属器》 1 《殴打頭蓋》 1 《解放された者、カーン》 -呪文（34）-	1 《白金の天使》 3 《漸増爆弾》 3 《四肢切断》 3 《クローサの掌握》 3 《精神壊しの罠》 1 《殴打頭蓋》 1 《地盤の際》 -サイドボード（15）-

　ザ・神座。
　《微光地》を見たとき、誰もが思ったことでしょう。どうしてお前はもっと早く出てくれなかったのか。そうしたらエクステンデッドで使えたのに・・・。

　しかしモダンでは、まさしくこの《微光地》が光り輝く環境です。《雲上の座》《ヴェズーヴァ》《微光地》こそが新時代の「トロン」なのです！
　特に、《野生のナカティル》が暴れ回りそうなモダンの環境では《微光地》がもたらすライフゲインはかなり重要になってくるでしょう。

　もちろんモダンでは《ウルザの塔》など、元祖ウルザトロンも使えるのですが、せっかくですし今回は「神座」を軸にしてみることにしました。
　元祖ウルザトロンは《地盤の際》で崩されてしまうと脆いという弱点があるのですが、神座であれば1枚割られても頭数が1枚減るだけなので安心です。

　今回神座を集めるために登場してくるのが《けちな贈り物》と《壌土からの生命》のコンボです。
　《けちな贈り物》を1枚唱えるだけで上記の土地3枚とこの《壌土からの生命》を持ってこれるので、果たしてコンボといっていいのかわからない1枚コンボなのですが、4年くらい前のエクステンデッドで一部のマニアが使っていた青緑ウルザトロンからのアイデアをそのまま復活させてみました。

　当時は《けちな贈り物》と相性抜群な《一瞬の平和》なんていう超強力なビートダウン殺しカードがあったのですが、残念ながらこれは旧枠。

　ということでビートダウン対策については《仕組まれた爆薬》を4枚取ることで解決したつもりになってみました。

　おそらく、モダンのクリーチャーは1マナ域が主体となってくるでしょう。《精神的つまづき》が禁止されてしまったのは「異議あり！！」と叫びたいところです。
　《野生のナカティル》《ゴブリンの先達》《渋面の溶岩使い》《ステップのオオヤマネコ》など、どれもこれもZooのプレイヤーにとっては垂涎ものですね。

　しかし《仕組まれた爆薬》はこうしたクリーチャー達を一網打尽にできてしまうのだから世の中うまくできています。
　ちなみにビートダウンデッキはZoo以外にも、《肌変わり》を手に入れた《包囲の搭、ドラン》（能力起動で8点パンチ！）や、日本選手権での活躍が記憶に新しい《鍛えられた鋼》、そしてエルフやゴブリンがあると思います。このどれに対しても、《仕組まれた爆薬》は有効です。

　《けちな贈り物》を使うなどして戦場に神座を並べた後は、いよいよ主役の重いアーティファクト達の出番です。
　《けちな贈り物》を2枚引くパターンが一番簡単で、1枚目でマナをそろえ、2枚目で重いものを持ってくる要領です。

　このデッキは、《アカデミーの廃墟》+《精神隷属器》の、「ずっと俺のターン」コンボが基本的な勝ち手段です。
　《けちな贈り物》＋《壌土からの生命》のコンボを使えば、《アカデミーの廃墟》は確実に手に入り、《精神隷属器》も拾うことができるようになります。あとは《アカデミーの廃墟》以外に{11}{U}のマナがあればOKです。

　なかなか上のような余裕を与えてくれない赤いデッキに対しては、現代風の《殴打頭蓋》《ワームとぐろエンジン》が非常に強力な解答です。

　《殴打頭蓋》はマナが沢山出るこのデッキにとっては相性抜群。もちろんかつてから活躍してきた《隔離するタイタン》も健在です。

　調子に乗って《解放された者、カーン》まで入れてしまいましたが、アーティファクトではないので《けちな贈り物》で持ってきても《アカデミーの廃墟》で拾えません。ご注意を。
　ただ、《雲上の座》→《雲上の座》→《微光地》で3ターン目に出てきてしまうあたり、本当にこの土地はイカれてますね。

　こういった、無色マナしか出ない展開でも安心できる《シミックの印鑑》は、僕が大好きなカードの一つです。

　その他補助するカードとしては《探検》がいぶし銀です。《雲上の座》の大きな弱点はタップインであることなのですが、そこをカバーすることができます。
　特に《壌土からの生命》を撃ったあと、手札で土地が溢れて...なんてときにも役に立ちます。

　あとは、この手のデッキの定番《差し戻し》と《卑下》ですね。《集団意識》なんかのコンボデッキも健在であることを考えると、この2枚は重宝しそうです。
　特に《集団意識》は、主要なコンボデッキが軒並み禁止されている一方でほとんど禁止の影響を受けていないので、流行る可能性が高いです。

　このデッキの弱点は、やはり《血染めの月》でしょう。《金属モックス》が禁止されているので以前のエクステンデッドのように、1ターン目に出てくることは少ないかとは思いますが、2ターン目に《炎の儀式》から出てきても全く文句は言えません。

　悩んだ結果、《乱動への突入》を採用することで対策したつもりです。《シミックの印鑑》が絡めば撃てますし。

　なぜ《撤廃》ではなく《乱動への突入》なのかというと、《ガドック・ティーグ》の存在です。
　4年前も青緑マニアたちはこのちびっ子ジジイの対処に非常に悩まされ、挙句の果てに《ツキノテブクロのエキス》を採用する暴挙に出ました。
　もっと他になかったのかと思われると思うんですが、本当にこれしかなかったんです。今では《四肢切断》という現代っ子向けアイテムが登場したおかげで全て解決しちゃいましたけどね。
　いやー便利な時代になったものです。

　サイドボードは、《精神壊しの罠》が意外かと思います。

　どんなコンボデッキが現れるかな、と予想したとき思い当たったのが《集団意識》と《ドラゴンの嵐》と《紅蓮術士の昇天》でした。
　《精神壊しの罠》は、このうち前者の2つに有効です。《紅蓮術士の昇天》に対しては《クローサの掌握》で確実に対処しに行きます。もし《鍛えられた鋼》が流行るようであれば《自然の要求》でもいいかもしれません。

　《漸増爆弾》は、追加の《仕組まれた爆薬》です。ここまでやれば、そう簡単にビートダウンに負けることはないでしょう。

　《四肢切断》は《仕組まれた爆薬》《漸増爆弾》で対処しづらい《聖遺の騎士》《包囲の搭、ドラン》用です。件の《ガドック・ティーグ》に対する解答でもあります。

　デッキ名は、シミック王国の野望を実現するため、そして記念すべきモダンの1発目のデッキ構築劇場ということで【Ambitious Tron】にしました。
　できればこのデッキを使ってプロツアー・フィラデルフィアも戦ってみたいものです。

　というわけで、僕は権利はありませんがフィラデルフィアには行ってきます！！
　権利が無くても、直前予選がありますからね！　日本各地を遠征して権利を取れなかったわけなんですが、とうとう海外の直前予選にも参加するほどの変態に僕はなってしまったようです。
　負けてしまったあかつきには、プロツアーの熱戦の模様を皆さんにお伝えする予定です！

　プロツアー開催直前でのフォーマット変更、色々と衝撃は大きかったですが本当にワクワクします。皆さんもぜひ、モダンの戦いに挑戦してみてくださいね！

　それでは、Decks, be Amibitious!!