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週刊デッキ構築劇場
第20回:浅原晃のデッキ構築劇場・プレインズウォーカー人材派遣会社2?追悼デッキビルド
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週刊デッキ構築劇場
2011.07.14
第20回:浅原晃のデッキ構築劇場・プレインズウォーカー人材派遣会社2-追悼デッキビルド
演者紹介:浅原 晃 マジック界のKing of Popとして知られる、強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権05・世界選手権08トップ8、グランプリ優勝2回、The Finals2連覇など。 |
前回も合わせてご覧ください。 ※この物語はフィクションです。
前回までのあらすじ
ここは、とある次元にあるプレインズウォーカー達が勤めるごく普通の会社。各地にプレインズウォーカーを派遣していたが、最近は大人気のジェイスが調子に乗っていた。そこで、前回はアジャニがリベンジを狙うがあえなく失敗、しかし、ジェイスは調子に乗りすぎたために大変なことに・・・。
■ジェイス逮捕
アジャニ(平社員)「・・・(ガチャ)はい、こちら人材派遣会社PWでございます。ジェイスですか、ええ、ちょっと今はお暇をいただいておりまして。いえ、体調が悪いというわけではなく、手癖が悪かったというか・・・いや、バーンされたでもなくて、まあ、あの、バンはされたんですが・・・」 |
ガラク(ベテラン社員)「ジェイスさんが独占禁止法で捕まっちゃって、みんな大変そうデスネ。問い合わせがすごいデス」 |
チャンドラ(OL)「その影響もあってか、うちの会社の株もストップ安で大変よ。ニコル社長も倒れちゃったみたいだし。リリアナはジェイスにべったりだったのに捕まったとたん、『わたしはしょうきにもどった!』とか言ってどっかいっちゃったし。次以降のセットのどっかで戻ってくるつもりなのかしらね」 |
「ふぅ、まったく、面倒だな」 |
ソリン(会長)「私も後始末で大変だ。よし、みんな集まっているな。ちょうどジェイスのニュースがやっているみたいだし、ちょっと見てみよう」 |
・・・ニュース
サルカン(アナウンサー)「えー、トップ8独占禁止法、ドロー交通法違反の容疑を掛けられているジェイス容疑者ですが、石鍛冶に騙された俺は悪くない、あれだけジャンドと戦わせておいてこの仕打ちか、など犯行を否認するどころか開き直っており、また、精神使いのわりに精神が不安定になっている模様で、『生で食べられる細菌トークンは流通していない』『私のことが嫌いでも、マジックのことは嫌いにならないでください』『これオフレコだから』『ノーカンノーカン』など意味不明の発言をしており・・・」 |
・・・
「実は結構メンタル脆かったのかもしれないわね」 |
「さすがのジェイスもショックだったようだな。しかし、《精神を刻む者、ジェイス》と《石鍛冶の神秘家》が居なくなってしまうとは、いけすかない奴だったとはいえ、寂しいものだ」 |
「その代わりといっては何デスけど、ニッサさん戻ってきましたケド」 |
「そうだな、ニッサ君は実家から帰って来て、今日から復職して貰っている。まずはお茶汲みからだが、ニッサ君は緑茶を入れるのが実にうまいのだよ」 |
「ニッサねぇ・・・、あ、来たわよ」 |
ニッサ(お茶汲み)「緑茶入れて来たゾッ。しかし、ニュースだねー大事件だねー。トップ8だヨ!ジェイスIN集合♪ババンババンバンBANNED♪みたいなっ。石鍛冶とかもさー、あ、いい石使ってますねって、それっ、芋だろ!はい消えた!みたいなっ」 |
「何か、怖いくらいノリノリね」 |
「《石鍛冶の神秘家》がスタンダードで禁止になった影響で《饗宴と飢餓の剣》があまり使われなくなったんで情緒不安定が直って帰ってきたかもしれないデス」 |
「まあでも、絡みにくいのが帰ってきたな・・・」 |
「おい、そこの猫。誰がプロテクション(緑)に弱いって?」 |
「す、すいません・・・」 |
「やっぱり直ってないみたいデスね」 |
■ジェイス・レクイエム
「まあ、仮にもジェイス君も我々の仲間だったわけだし、恒例の追悼を行いたいと思うのだが」 |
「追悼ですか」 |
「そうだ。我々は誇り高きプレインズウォーカーだ。去りゆくものに対しても敬意を払う。次元を渡れるからこそ、渡る前の次元のことも考えなくてはいけない。立つ鳥後を濁さずということわざがあるだろう。例えば、エルドラージを前にとんずらするような奴はだめだ。わたしは何百年もの間、あいつらが復活しないか見てきたしな」 |
ギデオン(掃除係)「ギクッ」 |
「そういえば、部署転換してきたギデオン君を紹介してなかったな。みんな、ギデオン君だ。前まではジェイス君のボディーガードをしていたが、ここでは掃除係として入ってもらっている。彼は自分の回りに自然とゴミが吸い付くという体質の持ち主で、まさに掃除をするために生まれて来た男だ」 |
「今後ともよろしく」 |
「まあ、彼の歓迎会は今度やるとして、ジェイス君には、我々の手向けとしてデッキを作ってやることが一番だろう。去りゆくものへデッキを送る。言葉ではなくカードを贈る。それが我々のなすべきことだな」 |
「なるほど、では、ジェイスを送りだすデッキを考えますか」 |
「いいわね。何かいいデッキは無いかしら」 |
「あっ! 《翻弄する魔道士》の額に『紙ジェイス』って書いて、大量に送りつけるのはどうかな?」 |
「ニッサさん。それただの嫌がらせのアイデアになってマス。後、ジェイスさんはエクステンデッドやレガシーやヴィンテージだとめちゃめちゃ活躍しているようデスよ。今やマジックの盛んなレギュレーションはスタンダードだけじゃないので、ジェイスさんは今でも高い評価を貰っているみたいデス。フォローしろという神のお告げがあったのでフォローシマスね」 |
「なるほど、それは一本取られたゾッ☆」 |
「何を言ってるのやら・・・」 |
「おい、そこのライオン風キャット。誰が忠誠度たったの2だって?」 |
「す、すいません・・・」 |
「じゃあ、ジェイスにはめげずに復活してもらう願いも込めて、復活をテーマにデッキを組むべきじゃないかしら」 |
「それはいいアイデアだな。よし、個人的にはあまり好きではないが、墓地活用のデッキを考えてみたが、これでどうだろう、デッキ名はそうだな、ジェイス・レクイエムだ」 |
4 《森》 2 《沼》 2 《島》 4 《忍び寄るタール坑》 4 《闇滑りの岸》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《面晶体のカニ》 4 《獣相のシャーマン》 4 《恐血鬼》 4 《ジェイスの文書管理人》 4 《復讐蔦》 3 《復讐に燃えたファラオ》 -クリーチャー(27)- |
4 《彼方の映像》 4 《ゾンビの横行》 1 《エルドラージの碑》 -呪文(9)- |
4 《ニッサに選ばれし者》 4 《ニッサ・レヴェイン》 3 《ヴィリジアンの堕落者》 4 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
「ほう、これは従来の墓地活用デッキにさらに『基本セット2012(M12)』から新カードを加えたスタイルか、面白いな」 |
「《復讐蔦》と《恐血鬼》は定番のカードだけど、新しく入ったのは《復讐に燃えたファラオ》かしら、このカードは墓地にいるだけで相手の攻撃を躊躇させる効果があるし、守りは結構固くなるわね。素でキャストすることは多くはなさそうだけど、スペック自体もそんなには悪くはないわ。後は、手札を墓地へ送るカードに《ゾンビの横行》が加わっているのね。確かにこのカードなら安易に墓地を肥やすことが可能になっているわね」 |
「それだけじゃないデスね。《彼方の映像》は墓地に20枚以上あると、1マナで3枚のカードが引けてしまうインスタント。普通のデッキでは到底、20枚も墓地には行かないデスが、このデッキなら、普通のデッキの3倍くらいの速度で墓地を肥やすことが可能デスから、結構現実的デスね」 |
「また、《ジェイスの文書管理人》の存在も侮れないな、捨てること自体がメリットだから、1回起動できれば、アドバンテージが取れるだろう。《ゾンビの横行》と組み合わされば尚良しだ」 |
「復活というより、復讐の念を感じるデッキだね。緑も入っているし、こういうのは嫌いじゃないゾッ。サイドにはアグレッシブサイドボードを突っ込んでおいたゾ」 |
「これが、ジェイスに向けて奏でる、レクイエム、それがジェイス・レクイエム。さようならジェイス、さよなジェイス」 |
「その最後は、何も合ってないけど・・・。というか、刻む方は捕まったけど、明日は新しいジェイスが来るわよ。確か3人目のジェイスが」 |
「そういえば、アジャニ君は知らなかったか、ジェイス君だが、明日のM12で姿を変えて現れるな」 |
「えっ、どういうことですか?」 |
「いや、むしろ、新しい方の《記憶の熟達者、ジェイス》はライブラリーを削るのに非常に適しているので、新ジェイス君を入れてみてもいいかもしれないな、そうすると、ジェイス・レクイエムというより、むしろ、ジェイス・リバイバルとなってしまうかもしれないが」 |
「『基本セット2012』が明日発売、いや、我々の契約更新が明日というのは知っていましたが、ちょっと詳しいことは・・・、何が起こるんです?」 |
「ちなみに、私も新しくなるわよ。試しに変身してみるわね」 |
「こうなるわ。どうカッコイイでしょ?」 |
「ちなみに、ワタシもこうなりマース。グフフ、力が溢れてくるようデス。」 |
「わたしも姿はそのままだが、M12で契約が更新されているな」 |
「あ、そういえば、白は俺ですね」 |
「私はM12には居ないけど、もともと、森に帰るつもりだからいいんだゾ☆」 |
「え、ギデオンが白、じゃあ僕は?」 |
・・・
「えっと・・・さよなライオン><」 |
「・・・」 |
「ぐはっ・・・」 |
そして、アジャニは倒れた。
■アジャニ・レクイエム
カーン(医者)「余命3ヶ月です。不治の病『スタンオチ』ですね。増殖剤出しておきます。1日2回、必ず服用してください」 |
「余命3か月・・・」 |
・・・病室にて
エルズペス(看護婦)「おこしやす、アジャニはん、気を落とさんといてください。ここにおたべ置いとくんで、食べといてくださいね」 |
「あの窓の外に置かれている、余命カウンターが全部無くなったら、僕は死ぬんですね」 |
「そんな弱気なこと言わんといてくださいな。会社のご友人も見舞いに来てくれはりましたから」 |
「アジャニ・・・」 |
「みんなして、スタン落ちしてしまう僕を笑いに来たのか」 |
「いや、違う。最初に言ったはずだ。プレインズウォーカーは去りゆくものに対して敬意を忘れないと。お前に贈るためのデッキを作ってきた。私とチャンドラを中心にして、みんなで考えたデッキだ。最後くらい、どでかい花火を打ち上げてやろうじゃないかと思ってな」 |
「そうよ、アジャニ。これを見てちょうだい」 |
4 《島》 3 《山》 3 《沼》 4 《忍び寄るタール坑》 4 《闇滑りの岸》 4 《黒割れの崖》 4 《沸騰する小湖》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《稲妻》 4 《噴出の稲妻》 4 《定業》 4 《思案》 4 《コジレックの審問》 4 《紅蓮術士の昇天》 4 《テゼレットの計略》 2 《ソリンの復讐》 4 《炬火のチャンドラ》 -呪文(34)- |
4 《チャンドラのフェニックス》 4 《強迫》 4 《ソリンの渇き》 3 《金屑の嵐》 -サイドボード(15)- |
「こ、これは・・・」 |
「まず、私、《炬火のチャンドラ》の能力を説明させてもらうわね。最初の能力は1点を好きなところに飛ばす能力、まあ、これはいいわ。ポイントは次、ソーサリーかインスタントの能力をコピーする力よ。これが最大に生きるには、有用な呪文でデッキを満たしておくのが一番。このデッキは《紅蓮術士の昇天》も使われているくらい、むしろノンクリーチャーデッキだから、それには事欠かないってわけ。《テゼレットの計略》といったドロー補助に対して使うのがいいわね、増殖も2回使えるから、忠誠度も増やせるわ」 |
「しかし、それだけではないですね。このデッキの最大にして最高の効果は《ソリンの復讐》」 |
「そうだ、私事で恐縮だが、《ソリンの復讐》は10点のダメージを与え10点のライフ回復する呪文。それがたったの7マナで使えるというのはまさに現代ならではのスペックと言えるだろう。このデッキではそれを《紅蓮術士の昇天》や《炬火のチャンドラ》でコピーする。10の倍は20。つまり相手は死ぬというわけだ」 |
「このデッキ、すごい、いや、いい生き方をしているデッキだと思います。今までジェイスという栄光を見続けてきてしまい、それと張り合うあまり、勝利というものに固執してしまっていたのかもしれません。せっかく生まれた以上、自分らしく華々しく生きていく。残りの3か月間の生き方、学ばせていただきました」 |
「アジャニさん、偉いデス」 |
「うむ、3か月しかないと考えるのが間違いなのだ。3か月もあると考えればいい。アジャニ君も自分のデッキを作るといいさ」 |
「本当に倒れてしまっても後は私達に任せなさい」 |
「みんな・・・」 |
・・・
「あ、お茶請けにおたべ貰ってこ」 |
プレインズウォーカー達も君たちと同じ時を生きているのかもしれない。時間は有限ということを忘れてはいけない!
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