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週刊デッキ構築劇場
第13回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《テゼレットの計略》
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.05.12
第13回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《テゼレットの計略》
演者紹介:鍛冶 友浩 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。 |
「新たなるファイレクシア」の発売日も明日へと迫り、プレスリリースで獲得したカードで遊んだり、既に公開されている全カードリストを眺めてはデッキ構築に勤しむ方がとても多い時期だろう。
例えば、渡辺雄也は《戦争と平和の剣》を強い強い!と解説してくれていたり、津村は津村で、すでに《解放された者、カーン》好きすぎる(笑)と、「早く新しいカードを使いたい!」というマジックプレイヤーなら誰もが抱く新セットへの期待を感じている。
「ファイレクシア・マナ」
もちろん自分も今回のセットを楽しみにしている一人で、セットの中では特にファイレクシア・マナをコストに持つカード群に注目している。
そのカード群の中では、みんなの注目の的は《ギタクシア派の調査》と《精神的つまづき》あたりだと思うのだが、レガシーなどの広いカードプールを持つフォーマットをプレイしている人の人気カードになるのは間違いないだろう。
だが、この2枚のカードはコストと効果が共に小さいため、スタンダードに与える影響はさほど大きくないだろうと思っている。
例えば、対Caw-Goやヴァラクートではどんなことが起こるだろう。
《定業》《稲妻》《糾弾》を打ち消せるのは嬉しいが、消せない場合のリスクとそこに1枚のカードを使う価値があるかどうか?
《紅蓮術士の昇天》や《欠片の双子》を使った青赤のコンボデッキには軽いという理由で使われることになるかもしれないが、それでも限定的だろう。
では、よりスタンダード向きな、ファイレクシア・マナを持つカードはなんだろうか。
津村の連載記事「第53回:いよいよ発売!新たなるファイレクシアの与える影響」で、『中村修平曰く「増殖にはカード1枚分の価値がある」』というセリフが出てくる。
そう考えると《テゼレットの計略》は、2ライフ払うだけの無色で3マナ3ドロー分の価値ということになる。
《着実な進歩》と比較しながら見てみると、それが無色だけで唱えられることに可能性を感じないか?
「増殖」
この環境で増殖を有効に使おうと考えると、まず真っ先に思いついたのが感染による毒カウンターとアーティファクトの蓄積カウンターだった。
多分プレインズウォーカーの忠誠カウンターが最も環境で使われているはずだけれど、それは単体でも十分強いのでわざわざ増殖するイメージが湧かなかったようだ。
感染によるビートダウンにドロー+増殖も悪くないが、津村記事の「第52回:日本選手権予選の注目デッキ」で紹介されていた感染デッキはどちらも攻めの要素が強く、それなら《ファイレクシアの愛撫》の方がエンドカードになりうるので相性が良いのかもしれない。
ならば、蓄積カウンターをベースにした構築だとどうなるだろうか?
《光明の大砲》や《タイタンの炉》などは1枚でゲームに勝てるポテンシャルを秘めてはいるが、今までは自身のチャージ速度が遅すぎて使われなかったカード達を思い出してみよう。
「蓄積」
現行の蓄積カウンター関連のアーティファクトは21種、そして新しいカードに6種と案外多く、その中には、《転倒の磁石》や《永遠溢れの杯》といった単体でも構築シーンで見かけるものもある。
そして新カードの《うねりの結節》は増殖とは違い、カウンターを移し替える能力だ。
今までのカードだと《吸血鬼の呪詛術士》によってカウンターをすべて取り除かれてしまい、増殖できない無駄カードになる場面もあったが、何も乗っていない空の状態からの復活も可能になった。
しかも、この《うねりの結節》は先程のエンドカード二種に使うことで速度を倍に早められれるので、十分なスピードになるのではないか。
さて、今まで登場してきたカード達は当然ながらすべてアーティファクト。
《テゼレットの計略》もライフを払う前提で構築すれば、すべて無色のカードしか選択していないことになる。
あえて前回の構築劇場でのデッキの様に無色で突き通すこともできる・・・
が、2マナで増殖を引き起こす《かき鳴らし鳥》という相性の良いカードを見逃す理由にはならないだろう。
もちろんプレインズウォーカーも増殖との相性は明らかだ。
マナ域の都合で《精神を刻む者、ジェイス》ではなくあえて《ジェイス・ベレレン》を選びつつ、現行の2色の土地をフル活用することで、計略を考える本人《ボーラスの工作員、テゼレット》をキャストするのに困らないマナベースを確保できると思う。
そして最後に、期待の新プレインズウォーカー《解放された者、カーン》を加えてデッキは完成。
8 《島》 4 《忍び寄るタール坑》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《地盤の際》 -土地(24)- 4 《かき鳴らし鳥》 -クリーチャー(4)- |
4 《永遠溢れの杯》 4 《うねりの結節》 4 《転倒の磁石》 4 《光明の大砲》 3 《タイタンの炉》 4 《テゼレットの計略》 4 《ボーラスの工作員、テゼレット》 3 《ジェイス・ベレレン》 2 《解放された者、カーン》 -呪文(32)- |
3 《ワームとぐろエンジン》 3 《強迫》 3 《見栄え損ない》 4 《瞬間凍結》 2 《剥奪》 -サイドボード(15)- |
1,2ターン目に《うねりの結節》から《永遠溢れの杯》へ繋ぐと、杯の余ったマナで即蓄積カウンターを移し替えることができる。
これは3ターン目にして5マナと、ほとんどのデッキの初動に勝るスタートといえるだろう。
さらにもう1枚の結節か杯、または《テゼレットの計略》や《かき鳴らし鳥》が加わろうものなら、4ターン目にして《解放された者、カーン》を呼び出すことが可能になってしまう。
もちろん、毎度そんなに都合良く動けるわけはないが、土地を除く全てのカードが何らかしらのカウンターに関係しているので、プレイ中の選択肢はかなり多くなる。
その分、プレイに気をつけなければすぐに手順を間違えてしまいうかもしれないが・・・。
最後にサイドボードのカードだが、メインのカードとは違いいたって普通の15枚になっている。
例えば《転倒の磁石》は対装備としてはとても優れているが、青緑赤のコントロールには一切不要だったり、とムラがある構成なので、打ち消し呪文と手札破壊という手広く対応するものに9枚割いている。
ここまでの枚数があれば、サイドボード後にアーティファクト破壊満載なデッキにあたったとしても、プレインズウォーカーコントロールとして機能するだろう。
逆に、赤単の様に超速攻のデッキだったとしても、《ワームとぐろエンジン》と除去を多めに取ってあるので、スピード負けは軽減できるはずだ。
これで鍛冶友浩のデッキ構築劇場はおしまい。
たとえ《うねりの結節》や《テゼレットの計略》といった地味めなカードでも、十分なシナジー要素が確保できればデッキとしてとても面白い動きになる。
他にも、《通電式キー》を《粗石の魔道士》で探してみたり、《キマイラ的大群》を使って攻撃的な構築をしてみたり、もちろん、毒の要素を加えてもいいだろう。
蓄積カウンターと増殖のシナジーを軸にしたデッキの調整の幅は十分あるはず。
それでは、また週刊連載で!
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