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Beyond the Basics -上級者への道-
サイドボードをドラフトしよう
サイドボードをドラフトしよう
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing
2017年7月13日
「サイドボード」という言葉を聞いた時、あなたの頭に浮かぶのはおそらく60枚のデッキに関するものだ。夕方の時間を使って慎重に調整した大事な15枚があれば、ゲームの間に入れ替えができる。サイドボードはとんでもない状況を引き起こし――あるいは防ぐ。
一方、そのようなものとは違うサイドボードもあるんだ。60枚のものと比較すれば、影響力は小さいが、それでもなお決定打となる可能性を秘めている。
それがリミテッドでのサイドボードだ。
ブースタードラフトやシールドデッキ戦で、メインデッキに入れなかった残りのカードは、すべてサイドボードになる。つまりサイドボードから交換できる選択肢が大量にあるということだ!
シールドデッキ戦では、メインデッキに使わなかった残りのカードがそのままサイドボードになる。しかしドラフトでは、サイドボードになるカードも自分で選ばなければならない。構築フォーマットでサイドボードを組むこととも全く違い、ドラフトの最中にサイドボードとなるカードをピック(訳注1)していくことになる。
(訳注1:ピック/ドラフトで回ってくる束から自分のデッキ用にカードを選ぶこと)
今日はそれについて詳しく見ていこう。
サイドボードのピック
今はドラフトを始めたところだ。自分のパックを開封し、その中に、一風変わったカードを見つけた。この後に行う3マッチのうち1マッチでだけ効果を発揮する、《殺害》のような効果を持つカードだ。
そんなカードがあるとすれば、どの程度の強さなんだろうか?
リミテッド環境の《殺害》は、いつでも使いたいカードだ。効果のあるマッチであれば絶対にデッキに入れたい――デッキを大幅に強化してくれるからね。しかし、そのカードは他の2つのマッチの間は無駄になってしまうというデメリットがあるなら、メインデッキに入れたくはないだろう。
そのための場所がサイドボードだ。
今までに作られたこともない、1マッチでだけ機能するカードだなんてものを前提にした話では、変に思うかもしれない。しかしこれは、ドラフトで何度も直面する、ごく普通の状況を表現しているんだ。
別の言い方をしてみよう。基本セットを使ったドラフトをしていて、3パック目に入っている。ここまでのピックで緑白デッキに必要なカードは大体揃ったところだ。そして今のピック選択肢は、《力強い跳躍》か《垂直落下》だとする。
《力強い跳躍》は時々使うことがあるカードだ。うまいコンバット・トリック(訳注2)だし、ダメージも少し追加できる。いいね。
(訳注2:コンバット・トリック/戦闘フェイズ中に、クリーチャーを支援する呪文や能力)
一方《垂直落下》は、基本的にはドラフトでメインに入ることはないだろう。状況に左右される、特定の対戦でのみ役に立つカードだ。例えば赤緑デッキ相手に必要となる場面は少ないだろう。しかしながら、これが活躍できる白青デッキなどが相手の場合には、すこぶる良い。これは2マナの《殺害》だ!
もちろん、そこまでの状況がどのようなものだったかにもよるが、私ならほぼ間違いなく《垂直落下》をピックするだろう。
デッキがすでに良い状態で候補に溢れているなら、《力強い跳躍》はメイン候補の最低水準カード数枚よりは優先される、ぐらいの位置のカードだ。デッキに使用可能なカードが十分にある状態でピックしても、使わないで終わるだろう。
マジックのトップ・プレイヤーのドラフトを色々と見てみると、一般のプレイヤーに比べて、サイドボード向けのカードをピックすることがかなり多い。彼らはドラフト中に、デッキを作るだけではなく、サイドボードも作っているんだ。
2パック目や3パック目の時点でデッキ用のカードが良い感じに取れているのあれば、デッキに入らず終わるであろう平凡なカードを増やすよりも、強力なサイドボードとなるカードをピックするほうが基本的には良いだろう。
サイドボードの素材
サイドボード用のカードを十分にドラフトするには、どんなカードを意識すればいいだろうか?
まあ端的に言えば、状況に極めて依存する類のカードというものは、メインデッキには入れられないだろう。そのほとんどは、状況に依存する類の除去だ。
誰もが常に用意しておきたいと考えるのは、《帰化》の類のカードだろう。
サイクリングがあるため、『アモンケット』はサイドボード用のカードをメインデッキに入れておきやすいセットだ。しかし《俗物の放棄》がメインデッキに入らない状況であっても、環境に存在する強力なアーティファクトやエンチャントに対抗できるよう、サイドボードに用意しておくことをお勧めする。
前述したように、飛行クリーチャーを狙う効果も、サイドボードに駐留させておきたい。
《垂直落下》で対戦相手のドラゴンを地べたに叩き落とすなんてことができれば最高だね。
サイドボード用カードのもう一つの大分類は、色対策カードだ。今回この記事を書こうと思ったのは、『破滅の刻』に5つの「敗北」サイクルが存在するからでもある。
リミテッドでは、各登場人物に対抗するという要素の意味はほとんどない。(ドラフトで《リリアナの敗北》を使って《死の権威、リリアナ》を除去したら、私から10点のガヴィンポイントを進呈するよ。)関係してくるのは色対策の部分だ。
これらのカードは、ドラフトで取られ始めるのが遅いだろうと予想している――そして早い段階でピックすることを学ぶには、時間がかかるはずだ。対戦で当たるであろう黒魔道士に対して1マナの除去呪文を持っておければ、デッキは大いに強化される!
確かに、自分以外にその色を使うプレイヤーは1人か2人しかいないかもしれないが、それでも確保しておく価値はある。同色対戦でとても強力なので、私なら黒いデッキの時は大抵の良いカードよりは《リリアナの敗北》を優先するだろう。(それに、他の黒プレイヤーに流したくもないからね!)
今週末にドラフトするなら、敗北サイクルを後回しにしないように。これらは大きな影響を与えるものだ。
特定のデッキ相手のサイドボード
もちろん、ここまでの例は「明らかな」サイドボード・カードの一部にすぎない。これらは特定範囲のカードに対して強く、それはカード・テキストからもはっきり見て取れる。
しかしながら、リミテッドのサイドボードでは、特定のデッキに対して役割を果たすカードという要素も大きく影響してくる。一見サイドボード・カードだとは思えないようなカードであっても、より有利な状況を作るための役に立つんだ。
例えば、相手がかなりの速攻デッキで、こちらはそれよりゆっくりしたデッキだとしよう。さて、そうなると、軽量クリーチャーを増やして序盤の相打ちを狙いたくなるかもしれない。能力を持たない2マナ2/1でも構わない......相手の2マナ域と相打ちが取れればいいからね。防衛持ち(や、パワーが低くてもタフネスが高い)クリーチャーも、この対戦では頼れるだろう。
逆に、対戦相手が遅いコントロール・デッキをドラフトしていたとしよう。私なら、カード・アドバンテージ(訳注3)が取れる呪文をサイドボードから加える。例えば、《精神腐敗》はほとんどの状況でコントロールに対して効果的な手堅いカードで、リソース(訳注4)勝負を有利に運ぶことができる。ゲームが長引くのであれば、大型クリーチャーを増やしたいかもしれない。打ち消し呪文は、後半に相手が状況を押し返すために用いるであろう呪文に対処することが可能だ。
(訳注3:カード・アドバンテージ/パーマネントや手札のカード枚数における優位)
(訳注4:リソース/資源。ゲームの中で他の要素のために消費・交換できるもの)
そしてもちろん、特定のカードに対処するという方法もある。
対戦相手のデッキに《強制的永眠》が満載されているかもしれない。その場合に明確な回答となるのは《俗物の放棄》だ。しかし、自分のクリーチャーを戻せるようにバウンス(訳注4)呪文を増やすというのもうまいやり方だろう。
(訳注4:バウンス/戦場のカードを手札に戻す)
対戦相手を劣勢に追い込むサイドボードの使い方は、枚挙にいとまがない。1点ダメージの火力、《否認》、到達持ちのクリーチャー、その他さまざまなものが役に立つ。対戦相手のデッキの方向性を意識して注意を払い、それにあわせてサイドボードを使おう。そのためにも、優秀なサイドボード・カードを幅広くピックしておこう。そうすることで、入れ替えられる選択肢が増えていくんだ。
相手の敗北を選び取れ
『破滅の刻』発売となる今週末は、地元や行きつけのお店でドラフトに参加する好機だ。ぜひ今回の内容を生かしてくれ。リミテッドでサイドボードを使って勝てた時の満足感はたまらないぞ。
そして対戦相手の使う敗北カードに警戒せよ! ボーラスからの命令だ。
さらなる考えや疑問、意見、あるいはサイドボードで対戦相手をいかに打ち負かしたかについて、教えてもらえないかな? 気軽にTwitter、Tumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールするなどして伝えてほしい。
また来週会おう。それまではドラフトを楽しんでいてくれ!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
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