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EVENT COVERAGE
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップ
生ける伝説
2020年11月30日
マジックに興味がある人々のほとんどが――そしてそうではない人々の多くが――ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasの話を知っている。
このアメリカ人プレイヤーは、友人のポール・チェオン/Paul Cheonとともに2006年のマジック・シーンで一気に名を上げた。その年にアメリカで開催された国別選手権で3位に入賞し、翌年には国別選手権とグランプリで優勝、さらに2008年にはプロツアー・ベルリンの優勝をもってその躍進は頂点へと達した。
もちろん、そのあとは歴史が示すとおりだ。新星ルイス・スコット=ヴァーガスは、生ける伝説「LSV」になった。
- 11回の大型イベント上位入賞。これはカイ・ブッディ/Kai Buddeと並んで史上4位タイ。
- プロツアー・サンディエゴ2010でのスイスラウンド全勝。
- フォーマットを打破するデッキと、披露されてきた最高レベルの見事な技術で満たされた戦歴。
その道中にはブリトーなども少し挟まる(リンク先は英語)が、これが私たちの知る「ミームとマジックの達人」スコット=ヴァーガスの戦歴だ。
彼の戦歴の中でも最大の偉業と言えるものはおそらく、2度にわたっての大型イベント連続入賞だろう。注目すべきは2016年の3イベント連続入賞で、彼はプロツアー『ゲートウォッチの誓い』、『イニストラードを覆う影』、そして『異界月』で連続してトップ8入賞を果たしている。
「ジャーマン・ジャガーノート」ことカイ・ブッディの活躍以来、誰も想像していなかった走りだった。当時と異なり競争が激化しすぎて、誰かが抜きんでるのは難しいはずだ、そうだろう? スコット=ヴァーガスは再び歴史を紡ぎあげた。彼の競技プレイ人生のピーク時期は、週に60時間以上マジックをプレイしていたと思われる。今では、マジックはその時ほどには彼のすべてを消費するものではなくなった。
では、今日の彼を駆り立てるものは何なのだろうか?
「今の自分の目標は、ここ数年変わってないかな。何であっても次のイベントに向けて準備をしっかりしておくことだ――特定の誰かのことではないが、《変わり谷》を《古えの遺恨》しようとするような殿堂顕彰者にはなりたくないんでね」と彼はトレードマークである遊び心たっぷりに話してくれた。「マジックに一番尽力していたころほどプレイしているわけではないけれど、その一方で今は旅行することがないから、そのころよりはプレイできていることになるかな。それでマジックにうまく寄せられていると思うし、かなりうまく走れていると思う」
「言えるのは、全盛期の時のようなプレイができずとも、マジックで何が起こっているのかを理解したいってことだ。私は競技の獣で、対戦相手を打ち負かすのは今も大事なことだね」
その言葉通り、スコット=ヴァーガスはここ数か月間大活躍だった。9月に開催された2020ミシックインビテーショナルでトップ8に入り、マジック・ライバルズ・リーグの2020-21シーズンではマット・スパーリング/Matt Sperlingやベルナルド・サントス/Bernardo Santos、スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaにわずかな差をつけ単独1位になっている。これまで2つの週末に行われたリーグ・ウィークエンドでスコット=ヴァーガスのテストグループ全体が良い結果を収め、彼が先頭に立ったのだ。これは最も印象的な彼の走りのいくつかを彷彿とさせる猛烈なスタートであり、ライバルズ・リーグの同期たちは彼の戦績の隣に付される脚注とならないことを望んでいるだろう。
この殿堂顕彰者にあるのは、問題へ取り組むことを恐れないという意志だ。
「私が世界最高のマジック・プレイヤーの1人であることは救いでもあるし、そう扱われるのも構わない」と彼はこともなげに言う。「だけど好成績を残せたイベントでさえ、起こりうる不幸を不安な気持ちで待ち受ける感じだったよ。かつてに比べれば、今はまた少し違うかな。不安な気持ちはリーグ・ウィークエンドよりもプロツアーの方が大きかった。セットが発売された2週間後にプロツアーという間隔だったから、プレイヤーは今ほどゲームのプレイ数を重ねられなかったんだ。僕たちがプロツアー・パリ2011で『石鍛冶』デッキをプレイしたとき、このトーナメントで『石鍛冶』デッキを使っていたのはほんの12人ぐらいのものだった。壊れたデッキが2週間も生き残っていてそれを誰も知らないなんてことは、最近はあまり起こらないだろう」
プロツアー・パリ2011の「石鍛冶」デッキは、昨年から最近のスタンダードで見られたようなスタンダードを定義する一強デッキとなった。カードが禁止になってそれが終わるところも似ている。
そしてデッキとカードに対する知識を得るための方法は変化し、世界最高のプレイヤーたちを打倒するために必要な方法も変わっていった。それはLSVとライバルズ・リーグの他の47選手が7週間をまたぐリーグ・プレイで取り組んでいることだ。すべてのマッチがシーズン全体の総合ポイントに寄与するわけだが、スコット=ヴァーガスはシーズン成績でトップ4以内に入りマジック・プロリーグ入りと第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権への出場権獲得を目指している。
「スタートダッシュにはもちろん満足しているけど、これは短距離走じゃなくマラソンだ」と彼は語った。「トラックを2周した段階で前に出ているということは分かっているが、でもこのレースは7周ある――『青甲羅』に当たってあっさり終わりってこともあるよね」と、スコット=ヴァーガスは「マリオカート」の有名なアイテムを引き合いに出した。「この2週は素晴らしいものだったけれど、築き上げた成績はどこかの週で一度4勝8敗するだけで崩れ去るからね」
2020年12月に開催される大型トーナメントのために必要な準備は、スコット=ヴァーガスがプロツアー『ゲートウォッチの誓い』でエルドラージを用いてモダン環境を打ち砕いたとときに求められたものとは大きく様変わりしているが、変わっていないものも1つある。強力なテストサークルの重要性だ。それは急速に変化するMTGアリーナのメタゲーム、とりわけスタンダード・イベントに当てはまる。
しかし世界レベルのプレイヤーは互いに交友関係を維持し続ける傾向にあり、しかもそこには最高のプレイヤーばかりが揃っている。スコット=ヴァーガスの他にウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセン/William "Huey" Jensen、リード・デューク/Reid Duke、カイ・ブッディ/Kai Budde、そしてガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifと5人の殿堂顕彰者を擁する彼のチームメンバーは新しいスタンダード・フォーマット環境を支配し、プロとしてプレイする数十人のプレイヤーの中でも最高のテストチームという地位を確立した。
しかし、それに寄与しているのは殿堂顕彰者だけではない。あるメンバーには、歴史的連勝を重ねるスコット=ヴァーガスの姿とは全く異なる彼についての思い出がある。
「2013年、《若き紅蓮術士》が登場した直後のレガシー・グランプリでした」とライバルズ・リーグの新顔イーライ・カシス/Eli Kassisは振り返った。「2敗を喫した後くらいに、私のデッキが取り挙げられました。するとLSVがやってきて、私のデッキのことを本当に気に入ったと言ってくれたのを覚えています。私が最もファンだった人が私のデッキのファンだと言ってくれたのは、本当にすごい事でした」
「チームに参加できたことは光栄で、その一員となったことはとても素敵なことでした」とカシスは述べた。「成功の秘訣は、彼らが本当に優れたコミュニケーション能力の持ち主であり、(お互いに)本当によく質問し合うところにあります」
その共同作業は成果を上げた。隠された《石鍛冶の神秘家》デッキ的存在は発見できないものの、小さな有利を得るための革新の余地はまだある。スコット=ヴァーガスはカシスの貢献を称賛し、素晴らしいチームに身を置くことの重要性について強調した。
「メタゲームの問題を回避するためにリードが《夢の巣のルールス》ではなく《サメ台風》を(『ディミーア・ローグ』に)追加したとき、それは各マッチアップで慣例となっていたプレイングをまさに変えたんだ」と、スコット=ヴァーガスはデュークに8勝4敗という成績をもたらした最初のリーグ・ウィークエンドに言及した。「このテストチームは本当に素晴らしいし、僕はこのシーズンに心躍っているよ」
「世界最高のプレイヤーが世界最高のプレイヤーとこれほど多くの対戦を重ねるシーズンはこれまでなかった。各プレイヤーは同リーグ内の他プレイヤーと84試合を戦うことになる。マジックは小さな差がたくさん関わってくるゲームで、それらを多く拾い上げることができればよりうまくやれる……1つや2つの苦手デッキで沈没するようなことはない。毎週末の準備をしっかり行えば報われるんだ」
「私たちは、継続的に努力して常に上位に顔を出すのが誰なのかを明らかにするつもりだ」マジックの歴史を鑑みれば、スコット=ヴァーガスは引き続き何らかの形で今シーズンを定義し続けるだろう。
その変わらない取り組み方は、彼をおそらく世界で最も有名なマジック・プレイヤーという位置につけ、またここまでのライバルズ・リーグでも彼をトップに導いている。彼のプレイング次第で、今シーズンはさらにいくつかの勝利を包んだブリトーが届くのかもしれない。
12月4~6日、太平洋時間の午前9時からtwitch.tv/magicで生放送される『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップで、スコット=ヴァーガスが再び歴史に名を刻むところを視聴しよう!
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップ 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況:石川朋彦(@katuobusi717)
- 実況:須田泰生(@kaicho_beda)
- 実況:ブルナー実久(@mksnake007)
- 解説:市川ユウキ(@serra2020)
- 解説:津村健志(@KenjiTsumura)
- and more...
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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