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世界選手権11
準決勝: 彌永 淳也(東京) vs. Conley Woods(アメリカ)
By Takeshi Miyasaka
イギリス、カナダ、アメリカ、そして日本。準決勝が争われる二つのテーブルには、それぞれの選手の国旗が載せられていた。
ストリーミングで世界中へ配信されているこの準決勝の様子を、自国のプレイヤーに自身を投影することで応援しているファンもいることだろう。世界のトッププロが集う会場で、長く過酷な予選を通過した8人の強者だけが参加できる決勝ラウンド。すでに4 人が姿を消し、この4ヶ国のプレイヤーからさらに2人が姿を消す。
世界選手権の最終日、決勝シングルエリミネーションでは、スイスラウンドの勝者に先攻後攻を決めるアドバンテージが与えられる。プロ野球のポストシーズンでいうところのリーグ勝者にホーム開催権が与えられるのと考え方は近い。
シールドデッキや、ある環境のブースタードラフトでは後手を選ぶケースもたたあるが、少なくとも現代のスタンダードにおいては、先攻を選択した方が有利といえよう。
少なくとも今彌永の目の前に座る男、Conley Woodsは間違いなく先攻を選ぶだろう。
Conley Woodsをのぞく3人のチャネル・ファイヤーボールメンバーはいずれも初戦で敗退し、彼ただ1人が準決勝へ進出した。
土曜日の順位発表が終わった時点では、ベスト4は全員チャネル勢で占めよう、という決起会も行われたという噂を耳にしたが、現実とは非情である。Woodsの準決勝の相手「チャネルキラー」彌永 淳也は、準々決勝でJosh Utter-Leytonを下して勝ち上がってきた。
Josh Utter-Leytonと75枚同じデッキを使うConley Woodsにとって、気が気ではない相手だろう。ちなみに17回戦対Ben Stark、18 回戦対Luis Scott-Vargasと、彌永の「対チャネル」は4戦連続となる。
チャネル勢として彼らと同じデッキを使用した中村 修平が「テストプレイの段階で、絶望的な相性差にそれ以上テストするのを止めた」ほど、チャネル勢の《鍛えられた鋼》と彌永の赤緑タイタンコントロールには明確な相性差が、少なくともチャネル勢の認識では存在するのだという。
それゆえに、彌永のプレイオフ進出が堅そうとなった時点で、彼らは日曜日にチャネルキラーとなるであろう彌永にブランケットへ名前を刻んで欲しくないと考え、彌永は合意の上の引き分けが選択できたであろう最終戦で、総帥Luis Scott-Vargas相手にチャネルキリングをせざるを得なかったのだ。
全員が最強と信じるデッキを互いにシェアし、チームという総力戦で戦ってきたチャネル勢。チャネル勢以外は敵とみなし、プレイオフ進出の目を刈り続けてきたチャネルの番人Conley Woods。
そのチャネル勢からエネミーラベルを貼られて勝負を挑まれながら、マジック・オンライン・チャンピオンシップ・シリーズ(MOCS) 予選を個人で抜け、友人たちと練り上げた業物を手に二つの構築ラウンドを合わせて1敗で切り抜けた孤高の戦士、彌永 淳也。
初日のスタンダードで全勝を記録していた二人は、ともに準々決勝を勝ち上がってここまでのスタンダードは無敗である。
世界選手権スタンダード最強の座を賭けた、雌雄を決するにふさわしい直接対決が、準決勝のテーブルで、いま始まる。
《業火のタイタン》は巨漢のライフを14とし、巨漢が攻撃するのを止めない限り、彼に勝利をもたらしてくれるであろうことを示していた。
都合3枚目となる《刻まれた勇者》をキャストしたWoodsは、《刻まれた勇者》でタイタンマスターを攻撃するが、彼は冷静に4枚目の《墨蛾の生息地》でブロックする。
2体のタイタンによって敗着をまぬがれないWoodsは、サイドボードに手をかけた。
彌永淳也 1-0 Conley Woods
Conley Woods |
Game 1
先攻のWoodsが《墨蛾の生息地》《大霊堂のスカージ》《ムーアランドの憑依地》《信号の邪魔者》2体というグッドスタートをするのにはかまわず、彌永は自身のデッキを信じてマナベースを構築することに注力する。 《銅線の地溝》《山》から《不屈の自然》→《山》と3ターン目に4マナが見えるこちらもグッドスタート。 3ターン目に土地はプレイできなかったものの、2 度の攻撃で彌永のライフは14まで落ち込み、Woodsのライフは22へ、さらに《オパールのモックス》を追加すると《刻まれた勇者》を投入する。 《信号の邪魔者》によってバックアップされたブロックされない《大霊堂のスカージ》と《刻まれた勇者》が、彌永の命に刻限を刻む。 だがしかし、この週末にこんなマッチアップは何度も対戦してきたことだろう。圧倒的な攻撃力を展開したこの週末チャネル勢最強の男だった巨漢のアメリカ人同様に、彼の対戦相手である日本人もまた、初日のスタンダードは全勝を記録し、その後のボーナスステージでも勝ちまくった、この世界選手権でもっともスタンダードにおいて勝利した男なのだ。 世界選手権の、準決勝の席に座る男が、いまさら《鍛えられた鋼》の展開力を前におたおたするはずもない。 4マナ目を《墨蛾の生息地》で調達すると、最初から持っていた《金屑の嵐》でWoods軍に壊滅的な嵐を引き起こす。 金属術を達成していた《刻まれた勇者》こそ生き残れたものの、1対3交換で当面の脅威を取り除いた彌永は、同じく最初から持っていた《極楽鳥》をプレイして掃除を終えたビッグターンを終了する。 壊滅的なダメージを受けたWoodsだが、巨漢の威圧するような視線が、まだ試合の行方は分からないと語っていた。 《ムーアランドの憑依地》をセットすると《刻まれた勇者》をキャストしふたたび金属術を達成、プロテクションをまとった《刻まれた勇者》が彌永のライフを12へ落とす。次からそのクロックは4点となり、彌永に与えられたターン命数は3。 《森》をセットして目標の6マナへ到達した彌永は《原始のタイタン》を召喚して《ケッシグの狼の地》《墨蛾の生息地》を入手してターンを返す。 役目を終えたタイタンはすぐさま《急送》され、Woodsの《刻まれた勇者》たちが《墨蛾の生息地》とともに彌永を襲う。彌永の残りライフは8となった。最後の手札である《大霊堂のスカージ》をキャストしてターンを終えるWoods。 手札を4枚も持っているがすべて土地であることを、しかしそうであるように悟らすことも得策ではない彌永は、ここで思考時間に入った。 プロテクションを持っている勇者たちをなんとかするには、色を持たないパーマネントで対応するしかない。彌永のデッキにおいて色を持たないパーマネントは数えるほどしかないが、一方でパーマネントをサーチしてくる手段は、このデッキにはいくつも含まれていた。 《墨蛾の生息地》を戦闘へ繰り出してWoodsに毒カウンターを載せると、手札から3枚目となる《墨蛾の生息地》を設置してターンを終える。 《刻まれた勇者》2体と《大霊堂のスカージ》がゲームを終わらせるべく彌永へふたたび襲いかかる。 プランに則って《墨蛾の生息地》2体がそれぞれ《刻まれた勇者》と《大霊堂のスカージ》をブロック、《ケッシグの狼の地》の力によってどちらも相討ちとなる。《刻まれた勇者》が彌永にダメージを与えて残りは6。 7マナをアンタップした彌永はここで値千金のトップデッキ。《緑の太陽の頂点》を X=6でキャストして《原始のタイタン》をフィールドに呼び出すと、最後の「無色のクリーチャー」《墨蛾の生息地》と《ケッシグの狼の地》を追加する。 アーティファクトが足りなくなったWoodsは《墨蛾の生息地》を起動して金属術を達成してレッドゾーンへ《刻まれた勇者》を突入させ、彌永のライフを4へ落とす。ターン命数こそ伸びたものの、あと2回殴ることができれば。彌永がほかに有効なカードを持っていなければ。 そう、彌永は有効なカードを持っていなかった。 少なくともついさっきまで手にしていたカードはすべて土地で、《刻まれた勇者》へ対処したクリーチャーも土地だった。先ほど引き当てたカードで呼び出した大地の力を持つ頼もしい巨人がもたらしてくれたものも土地である。 デッキにある力を信じ、ひたすらに土地を並べて、ライブラリの有効カードを引く確率を上げて、タイタンマスターはゲームを進めてきた。 いままでも、そしてあと二つの大事なマッチでも。 彌永は10枚目となる土地をセットして11マナを用意すると、23点のライフを持つ鋼使いの巨漢へ《原始のタイタン》を向かわせる。巨漢のライフは17となり、彌永はトップデッキしてきたカードをキャストする。Game 2
不動明王のような顔で自身の初手をにらみつけていたWoodsは、嘆息するとライブラリに手をかける。一方の彌永も、土地4枚《真面目な身代わり》《真面目な身代わり》《不屈の自然》という土地しかない手札を、攻撃力に難ありとしてテイクマリガンした。 《平地》《メムナイト》《メムナイト》《墨蛾の生息地》《呪文滑り》とマリガン後としては悪くない展開のアメリカ人と、《根縛りの岩山》《森》《太陽の宝球》と順調な日本人。お互いにそれぞれの長所をぶつけ合う展開になりそうで、好ゲームが予想される。 《平地》をプレイして《墨蛾の生息地》をクリーチャー化すると、《メムナイト》たちとともに攻撃へ向かわせる。彌永は毒カウンターを1つ背負い、ライフは16となった。さらにプロテクションを持つ《刻まれた勇者》がWoods軍へ加わる。 《根縛りの岩山》をセットして4マナ揃えると、またも《金屑の嵐》がWoods軍を襲う。プロテクションを失った《刻まれた勇者》へ向かう《感電破》を《呪文滑り》が引き受けて墓地へ。 ひどい嵐に巻き込まれたWoodsは、《鍛えられた鋼》を展開して生き残った《刻まれた勇者》を鍛え上げ、彌永のライフを12とする。 火力では落としにくくなった《刻まれた勇者》だが、《森》セットで5マナとして《緑の太陽の頂点》X=3、サーチした《ヴィリジアンの堕落者》で破壊する。 わずか2ターン、表裏でダメージ源を壊滅させられてしまったWoodsはプランの変更を余儀なくされる。《墨蛾の生息地》をアクティベートして攻撃し、毒カウンターをさらに3つ彌永へ乗せる。《鍛えられた鋼》によって鍛えられた《墨蛾の生息地》は通常の3倍の速度で対戦相手を毒殺する。あと2回彌永へ殴ることができればWoodsの勝ちだ。 しかし、またしてもタイタンマスターの操るタイタンがWoodsのプランを踏みにじる。 まずは《業火のタイタン》。ブロッカーの《メムナイト》を焼き払うと、《ヴィリジアンの堕落者》がWoodsへ初太刀を入れる。《墨蛾の生息地》が戦場へ追加され、将来のチャンプブロックを推測させる。Woodsは鍛えられた《墨蛾の生息地》で2度目の攻撃をおこない、毒カウンターが3つ追加され7つとなる。《ムーアランドの憑依地》をセットしてターンを返す。 《業火のタイタン》と《ヴィリジアンの堕落者》がレッドゾーンへ飛び込み、Woodsのライフは 18 → 15 → 7と加速度的に減っていく。そしてタイタンマスター彌永が召喚するのは《原始のタイタン》。《墨蛾の生息地》2枚が戦場へ投入され、続く数ターンの毒殺回避を示唆する。 最後のドローステップ、引いたカードを苦虫をかみつぶしたような顔で眺めていたWoodsは、ライブラリに手をかけた。 彌永淳也 2-0 Conley Woods 《鍛えられた鋼》のWoodsが序盤にクリーチャーを展開しプレッシャーをかけるが、それを彌永がやり過ごしてタイタンを連打して勝ちを拾いこむという展開が二度繰り広げられた。 「二度あることは三度ある」 あまりいい意味で使われることがないこの言い回しも、彌永を応援する日本勢にとっては心地よい言い回し。同じデッキ同士を十数回と対戦させる調整の最中には、似たようなシチュエーションでビートダウンしきるか、コントロールがクリーチャーたちを圧倒するか。そうしたシーンに現役プレイヤーたちは何度となく出会ってきていることだろう。 「三度目の正直」 Woodsを応援するアメリカ人にとって、はたまたチャネル・ファイヤーボールの面々にとって、まずは彌永から一本取り返し、世界選手権のスイスラウンドをスタンディングを最上位で駆け抜けた男の本領を発揮してほしいと思っていることだろう。 無言でサイドボードを終えてシャッフルする二人の発するオーラが、テーブルの後方に控える筆者にも伝わってくる。 プライド、名誉、はたまた賞金か。いろいろなものが賭けられている一戦は、分水嶺を迎えた。Game 3
みたび先攻のWoodsは、オープニングハンドを一瞥するとすぐにライブラリに手をかける。一方の彌永は、いつものようにじっくり時間をかけて品定めを終えると、土地5枚と《ショック》《感電破》しかない手札をライブラリへ戻す。引き直したハンドにはマナソースが3枚とダブルタイタンが鎮座しており、彌永理論で言えば合格ラインだ。 Woodsがダブルマリガンを余儀なくされ、デッキをシャッフルしていると、彌永の元へジャッジが近寄り警告を出した。彌永はいつも丁寧に自身のデッキをディール・シャッフルし、対戦相手のデッキも同様にディール・シャッフルしている。 しかし、それが「シャッフルに時間をかけすぎて、スロープレイに相当する」と判断されて警告を受けた。準決勝の最中に一度同様の警告を受けていたい彌永は、シャッフルを終えたWoodsのデッキを、コンバイン・シャッフルする程度に止めて本人へ返す。 三度目の正直でキープしたハンドから《金属海の沿岸》《大霊堂のスカージ》《メムナイト》と展開していくWoods。続くターンに展開できるカードは引かなかったが、3ターン目には《きらめく鷹》を加え陣容をアップグレードさせる。彌永のライフは16となった。 彌永は《銅線の地溝》《山》から《不屈の自然》で《山》をサーチ。3ターン目には《金屑の嵐》をみたびWoods軍へ見舞うと、《根縛りの岩山》をセットして終える。すべてのクリーチャーを失ったWoodsはドローゴーを余儀なくされる。 脅威を一掃した彌永は、《根縛りの岩山》をセットして《緑の太陽の頂点》X=1で《極楽鳥》を戦場へ呼び出し6マナを用意する。 ここでWoodsが動きを見せる。《忠実な軍勢の祭殿》《メムナイト》《オパールのモックス》と展開して金属術を達成すると《極楽鳥》を《急送》して、タイタンゲームに待ったをかける。 かまわず《銅線の地溝》で6マナを用意した彌永は、どちらのタイタンではなく《最後のトロール、スラーン》を戦場へ。Woodsは《きらめく鷹》を追加する。 しかし、次のターンにはタイタンマスターは《業火のタイタン》を召喚し、Woodsが必死に調達した《きらめく鷹》と《メムナイト》を焼き払う。ブロッカーがいなくなった戦場を《最後のトロール、スラーン》が駆け抜ける。 《墨蛾の生息地》をプレイするだけのWoodsへ、《最後のトロール、スラーン》と《業火のタイタン》が襲いかかる。業火によりWoodsのライフはすでに13となった。蓄積カウンターが4つ乗った《忠実な軍勢の祭殿》を使用してブロッカーを用意して、この攻撃を《濃霧》してみせたWoodsだったが。 チャネル勢最後の刺客の介錯をするは、2体目の《業火のタイタン》。 彌永淳也 3-0 Conley Woods 彌永 淳也、世界選手権決勝進出!RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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