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世界選手権11
準々決勝: Craig Wescoe(アメリカ) vs. Conley Woods(アメリカ)
by Shiro Wakayama
――ほんとに、閻魔大王みたいなんですよ。めちゃくちゃガタイもいいし、真剣だから目も怖くて。「君チャネル?違うの?あ、じゃあガチね。」とか言われて、僕のプロツアーは終わりました。いつもなら、プロツアーサンデーに行けるはずだったんですけどね。――
そんな声が、会場内で囁かれていたとかいないとか。
事実、チームメイト以外とはIDすらしなかったチャネル・ファイアボール勢。そのスタンスに批判の声も散見されていた。
だが、そもそも冷静に考えてみてほしい。
一緒に調整した仲間と、75枚を共有できるほどにデッキに自信があったことがあっただろうか?
世界選手権を12ラウンド以上戦ったのちに、上位の半数近くが自らのチームメイトで、しかもそのうちの一人は全勝者という、圧倒的な状況を、チームを作ればだれでも実現できるのだろうか。
そんなわけがない。
彼らは、チーム依然に個人の力を極限まで高め、その上で、チームとしてまとまることができたからこその結果なのだ。
このトーナメントで、チャネルがTop8に4人という快挙を達成するためのエンジンとなったConleyが、準々決勝のテーブルに着く。
プロテクション(全ての色)は、ブロッカーとして、そしてときとして防御不能のアタッカーとして機能するユーティリティーカードだ。
これによって、《ミラディンの十字軍》でのアタックを阻まれてしまう構図ができ上がる。依然として《きらめく鷹》と《大霊堂のスカージ》がダメージを刻み、Wescoeのライフは13。Conleyのライフは19となる。
Wescoeは仕方なく、別路線からダメージを重ねる戦略を立てるべく、《刃砦の英雄》をプレイして反撃の機会を窺う。
Conleyは《起源の呪文爆弾》を起動して、カードを引き増し、さらに《大霊堂のスカージ》と《きらめく鷹》で再度アタック。ライフはWescoe10:Conley20となってターン終了。
じわじわと土俵際に追い詰められていたWescoeが、ここで《清浄の名誉》をトップデッキ! これを出して、全軍で攻撃。喚声とトークン発生のスタックを丁寧に解決して、一気に20点以上のクロックをConleyに提示。ブロックを要求する。
Conleyは表情を全く崩さずに、冷静さを保って長考。結局《墨蛾の生息地》で《レオニンの遺物囲い》をブロック、《刻まれた勇者》で《刃砦の英雄》をブロックして、他をスルー。これで一気にライフが10まで落とし込まれる。
Wescoeはさらに《宿命の旅人》を出してターン終了。クロックであるばかりか、これを除去してしても2/2の飛行トークンが生まれて、ブロッカー兼アタッカーとなる厄介な存在だ。
しかし、圧倒的な成績を残してこの日曜日に一番乗りを果たしたConleyに、女神は味方する。
ライブラリートップから、《急送》を引き込み、これを《刃砦の英雄》にキャスト。喊声と兵士製造能力による逆転の目を摘み取ると、《きらめく鷹》と《大霊堂のスカージ》が殴り、《刻まれた勇者》が地上を止めるフォーメーションを維持する。
追加の《刻まれた勇者》こそWescoeによって《マナ漏出》されてしまうものの、《墨蛾の生息地》《起源の呪文爆弾》から生まれたマイア・トークンを総動員してブロッカーを用意し、ぎりぎりのところで《刻まれた勇者》がブロック不能のアタッカーとして、レッドゾーンへオーバーラップ。
タイトなダメージレースを、Conleyが制した。
Craig Wescoe 0-1 Conley Woods
ここで、Wescoeに心強い援軍、文字通りの《機を見た援軍》が。劣勢だったWescoeのライフと戦線が急に回復する。これで何とか形ができた。
陸と空で、すれ違いのダメージレースが展開される。
Wescoe 7:Conley 9とお互いにライフが詰まったところで、Wescoeのライブラリトップから《清浄の名誉》が!!
これで急に攻撃陣に破壊力が増し、Wescoeのアタックに対して、《刻まれた勇者》と《墨蛾の生息地》がブロックへと回り、Conleyが押し込まれる。
Conleyも負けずに《鍛えられた鋼》をトップデッキして攻撃をするのだが、ギリギリ1体クリーチャーが足りず、Wescoeが1本取り返した。
Craig Wescoe 1-2 Conley Woods
このタイミングで、PV(Paulo Vitor Damo da Rosa)とLSV(Luis Scott-Vargas)が敗北していることを知るConley。ずっと無表情だった彼が、少し不機嫌そうに、少し不安そうな顔を見せる。
Game 1
大事な大事な、プロツアーサンデーの初戦。値千金の、先手をとったのはConleyだが、ここで痛恨のダブルマリガン。 5枚のハンドを渋々キープしたConleyの、《大霊堂のスカージ》でゲームが開幕。 土地を置くのみのWescoeに対して、《信号の邪魔者》《きらめく鷹》とダブルマリガンながら、どんどんプレッシャーをかけていくConley。 相手のデッキ全てがわかっている準々決勝で、何も対処ができないハンドをWescoeがキープするわけもなく、自らのターン、《レオニンの遺物囲い》で《信号の邪魔者》を異次元へと追放。今後横に並んでいくであろうconleyのデッキの攻撃力を減衰させる。 しかし、航空戦力によって攻めているConleyは《大霊堂のスカージ》と《きらめく鷹》で攻撃を繰り返し、Wescoeのライフは16。さらに《起源の呪文爆弾》《オパールのモックス》と展開して、ターンを終える。 やっと3マナ域へ突入し、ここから強力なカードを展開して盤面をひっくり返すのが基本プランとなるであろうWescoeは、《ミラディンの十字軍》をプレイ。ブロッカーとしては機能しないものの、現状のConleyを上回るクロックを用意。 《レオニンの遺物囲い》をレッドゾーンへと送り込み、《大霊堂のスカージ》で少しだけ回復していたConleyのライフを18とする。 クリーチャーデッキが跋扈するこのスタンダード環境で、おそらくチャネル勢がスタンダードで活躍した原動力になったであろうカードが、ここで登場する。Game 2
Conleyが、《刻まれた勇者》、《メムナイト》×2、《きらめく鷹》、《墨蛾の生息地》2枚、《平地》というまずまずの手札をキープ。 先手Wescoeの《ギデオンの法の番人》に対して、Conleyが《メムナイト》×2と《きらめく鷹》のスタート。 マナを使っている余裕がないため、Wescoeは《ギデオンの法の番人》は《メムナイト》と相打ちとし、《四肢切断》で比較的対処がしづらい航空戦力である《きらめく鷹》を早々に屠る。 さらに、Conleyの《きらめく鷹の偶像》は《レオニンの遺物囲い》で追放。さらにデッキ名に冠される《鍛えられた鋼》も2枚目の《レオニンの遺物囲い》をきっちりと合わせて、ライフは12と少し削られているものの、盤面をしっかり抑えるWescoe。 序盤の攻防はWescoeが制した形だが、ここからConleyの逆襲が始まる。 ゲーム中、常に脅威となる《刻まれた勇者》をプレイし、さらに《きらめく鷹の偶像》を戦線に追加。《清浄の名誉》しかプレイできないWescoeのライフをジワリと詰めて、10とする。 《刻まれた勇者》と航空戦力への回答を基本的に持たないWescoeは、《レオニンの遺物囲い》をレッドゾーンへと送り込み、ライフを削る。 さらに《悪鬼の狩人》をプレイするのだが、肝心の《きらめく鷹の偶像》と《刻まれた勇者》は対象に取ることができない。 いたしかたなく《メムナイト》をリムーブするものの、対処もブロックもできない2体のクリーチャーが、Wescoeのライフを削りきった。 Craig Wescoe 0-2 Conley Woods チャネル勢の中では、「面白デッキビルダー」としてのポジションにいるらしいConley。だが、今回のトーナメントを通して、彼が面白いところなんて、一度も見ていない。圧倒的なプレイングと、圧倒的なデッキの強さで、このままプロツアーも制してしまうのだろうか。 後がない、Wescoe。前評判では決して分が悪すぎるゲームでは無いとのことだったが、ここまでの2ゲームはほぼ虐殺劇。 サンフランシスコに突如現れた閻魔大王に、一矢報いることはできるのか。Game 3
マリガンはお互いになし。後手のConleyの《信号の邪魔者》を《四肢切断》するところからゲームがスタート。 さらに《きらめく鷹の偶像》を《忘却の輪》し、後続の《きらめく鷹の偶像》、《起源の呪文爆弾》の返しで《刃砦の英雄》と、Wescoeの反撃の可能性を感じさせる動き。 だが、これには《刻まれた勇者》プレイから《オパールのモックス》経由で《急送》と完璧な処理を行うConley。 じわじわと攻撃を繰り返す《きらめく鷹の偶像》《刻まれた勇者》が、《四肢切断》で減少したWescoeのライフを削り、残り10点と折り返し地点を過ぎてしまう。 《レオニンの遺物囲い》で《きらめく鷹の偶像》は対処できたのだが、《刻まれた勇者》が止まらない。ライフは8となり、さらに戦線に《メムナイト》が追加される。Game 4
依然王手をかけたままのConleyの先手。 だが、動きが悪いConley。《ギデオンの法の番人》を2ターン続けてプレイするWescoeに対して、《墨蛾の生息地》でアタックするのみのConley。さらに、《きらめく鷹の偶像》は即座に《神への捧げ物》で処理されてしまう。 Wescoeの《刃砦の英雄》は《四肢切断》し、《刻まれた勇者》で何とか戦線を支えようとするConley。だが、全くアーティファクトを展開できていない状態での《刻まれた勇者》はただのバニラクリーチャー。これは《悪鬼の狩人》で異次元へと追放されてしまう。 《ギデオンの法の番人》で道をこじ開けたWescoeが2体をレッドゾーンへと送ると、ここでライフが11で少し厳しいConleyが、虎の子の《四肢切断》で《悪鬼の狩人》を処理し、帰ってきた《刻まれた勇者》でブロック! ・・・しようとするのだが、これをさらにWescoeが《四肢切断》。 お互いのライフがWescoe 14:Conley 5となり、追い込まれたConley。 その中でも、《墨蛾の生息地》で毒カウンターを少しずつWescoeに蓄積させ、《鍛えられた鋼》をトップデッキしたときに一気に挽回できるよう、細い勝利への道を探す。 だが、願いかなわず。 Craig Wescoe 2-2 Conley Woods 彌永が勝利し、チャネル勢が3人負けてしまったことが判明。ここで、ビデオマッチへの移行のために10分程の調整タイムが入る。 2本取り返されて最後のゲーム。最後の一人として踏みとどまりたいConley。 2本取り返して逆王手のゲーム。勢いに乗りたいWescoe。 ふたりは、この中断をどう見るのか。Game 5
お互いにマリガンなし。 2ターン目の《きらめく鷹の偶像》に対して《清浄の名誉》がお互いの初動。 《墨蛾の生息地》と《きらめく鷹の偶像》がレッドゾーンへと送り込まれて最初のダメージが刻まれた返し、Wescoeのもとに現れるのは、《聖トラフトの霊》。《清浄の名誉》があるおかげで、クロックは単体で8点。 これに対する回答策となる《刻まれた勇者》をプレイして、《きらめく鷹の偶像》だけで攻撃するConley。 これに対して、《きらめく鷹の偶像》を《忘却の輪》で消し飛ばすと、金属術が成立しなくなった《刻まれた勇者》とConleyに対して襲い掛かる《聖トラフトの霊》とお供の天使・トークン。一気にライフは12となる。 強力なWescoeの攻撃だが、怯んでいてはじり貧のConley。《刻まれた勇者》の2枚目をプレイ、これでさすがに《聖トラフトの霊》の足も止まる。 さらに《信号の邪魔者》《刃砦の英雄》をプレイして、ぎりぎりのダメージレースが展開される予兆を見せる。 この時点で、ライフはWescoe 14:Conley 12。 ここで、Wescoeが奇跡的なトップデッキをする。《清浄の名誉》をプレイして、さらに次のカードは《悪鬼の狩人》!! これが《刃砦の英雄》を刈り取り、4/4《聖トラフトの霊》と6/6天使が走り出す! これによって、一気に窮地に立たされたConley。 Wescoeのアタックに対して、長時間悩む。常に右ひじをついて頬杖をついて表情を変えなかったConleyが、手札を置いて、唇をとがらせて顔をしかめる。 このアタックはスルーするしかない。ライフは2。 もはや絶望的と言っても過言ではないこの状況で、ここまで勝利を積み重ねてきた名手は、成立しているかわからないほど細い道を探す。 まずは《墨蛾の生息地》起動で金属術を達成、《急送》を《悪鬼の狩人》にプレイし、《刃砦の英雄》を取り戻す。 そして《信号の邪魔者》《刻まれた勇者》で攻撃し、Wescoeのライフを11とする。 そこから《きらめく鷹》をプレイし、《墨蛾の生息地》を戻して出し直す。 返す刀の《聖トラフトの霊》には、天使トークンを《きらめく鷹》で、《聖トラフトの霊》は《墨蛾の生息地》でブロック。 いったんダメージを受け止めることを確定させたうえで、天使トークンに《急送》を打ち込み、《きらめく鷹》を維持する。 Wescoeはライフゲインこそできないものの、後続となる《機を見た援軍》をプレイ。兵士トークンがばらまかれる。 ここでもう一度悩むConley。 《刃砦の英雄》によってConleyも相当の打撃力を持っている。そして、攻撃しなければ後がない。 出した結論は《きらめく鷹》《刻まれた勇者》《信号の邪魔者》《刃砦の英雄》(+兵士トークン2体が発生)でアタック。 これに対してライフ14を守らなければならないWescoeは、3体の兵士を総動員して、《刃砦の英雄》を1体でチャンプブロック、相手方の兵士と相打ちとし、《刻まれた勇者》《きらめく鷹の偶像》《信号の邪魔者》と兵士1体は通さざるを得ない。これでWescoeのライフは2へ。 生き残ったことで、《聖トラフトの霊》でもトークンでも通れば逆に勝ち、という状況である。 しかし、Conleyが 戦闘終了後にキャストしたのは、もう1枚の《きらめく鷹》。 《信号の邪魔者》を戻して出し直す。にわかにブロッカーが2体立ちはだかり、うち一方は飛行だ。 2枚の《清浄の名誉》の加護にあったWescoeの攻撃陣は、今や《聖トラフトの霊》のみ。 ドローに回答を求めるも、それは土地であった。 Craig Wescoe 2-3 Conley Woods 細い細い道を見つけ出す眼力と、勝利への糸を手繰る執念を持ったConleyが、彌永 淳也の待つ準決勝のテーブルへと向かう。RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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