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世界選手権11
準々決勝: Luis Scott-Vargas(アメリカ) vs. Richard Bland(イギリス)
by Atsushi Ito
トップ8のうち4人が同一のチーム=ChannelFireballという、前代未聞の世界選手権となった今回。
そんなChannel勢の筆頭といえば、もはや紹介は不要だろう。CFB総帥、「地上最強の男」LSVだ。
加えて、Owen Turtenwald(アメリカ)の圧勝かと思われたPoYレースにも、Owenが今回不運にも33位にとどまったことで、LSV大逆転のビジョンが見えてきたのである。
その条件は、トップ4進出。つまりこの準々決勝を勝利すること。
チームメイトのOwenにとっては複雑な心境だろう。
LSVが駆るのはもちろんCFB謹製《刻まれた勇者》入り《鍛えられた鋼》デッキ。白緑とイリュージョンの海を泳ぎ切った冬の新作である。
対するはイギリスのBland。
未だ23歳という若さながら、2010年のグランプリ・マドリード(レガシー)でのトップ4入賞に始まり、その年の国別選手権で準優勝、2011年に入ってもグランプリ・バルセロナ(スタンダード)でトップ4、そしてこの世界選手権2011の直前週に行われたグランプリ・サンディエゴ(リミテッド)でも準優勝と、あらゆるフォーマットで活躍を続けるオールラウンダーな俊英である。
デッキはメインとサイドに2枚ずつ入った《はらわた撃ち》がオシャレな白緑。
飛ぶ鳥も落とさんばかりの勢いのChannelFireball。その快進撃を、イギリスの若武者は阻むことができるか。
《鍛えられた鋼》だった。
LSV 1-1 Bland
今回Channelの快進撃を支えた、3枚目の《刻まれた勇者》なのだった。
LSV 2-3 Bland
Game 1
先手のLSVが《起源の呪文爆弾》をプレイ→起動とゆっくりとした立ち上がりなのに対し、後手のBlandは《極楽鳥》から《刃の接合者》で攻め立てる。 ここでLSVがデッキの代名詞でもある《鍛えられた鋼》をひとまず設置するが、3/3先制攻撃の守りは堅くターンエンド。返すBlandは3点のアタックの後に《刃砦の英雄》をキャスト、一気に攻勢に出ようとする。 だがLSVは4マナから《大霊堂のスカージ》《起源の呪文爆弾》と並べ、金属術達成からの《急送》と圧倒的な手数でこれに応える。3/3飛行絆魂がダメージレースを掌握しそうな雰囲気だ。 しかしBlandもまた、これがマナクリーチャーが除去されなかった緑白の真骨頂と言わんばかりの完璧な受けを見せた。《鍛えられた鋼》を《忘却の輪》で処理しつつ《迫撃鞘》をプレイ、即座に細菌トークンで《大霊堂のスカージ》を撃ち落とすと、LSVの陣容は一気に寂しいものになってしまう。 LSVも何とか2枚目の《鍛えられた鋼》を設置しつつ《きらめく鷹》を出して攻め手を途切れさせない構えだが、返すターンのBlandは既に《ガヴォニーの居住区》がアクティブになっており、《刃の接合者》本体が《きらめく鷹》と相打ちになった横から、ゴーレムトークンが着実にダメージを刻む。 LSVはさらに《鍛えられた鋼》を重ねるものの、さらに《刃の接合者》が追加されつつ毎ターン《ガヴォニーの居住区》を起動する態勢が整ってしまっては、既にマナクリーチャーさえも脅威となりつつあるBlandの戦陣を前に投了を余儀なくされたのだった。 LSV 0-1 Bland LSVは《起源の呪文爆弾》《きらめく鷹》といったカードをサイドアウトし、《四肢切断》《忘却の輪》《呪文滑り》《刃砦の英雄》などを投入。 対するBlandは《ミラディンの十字軍》《情け知らずのガラク》と《エルズペス・ティレル》1枚を抜いて《帰化》《はらわた撃ち》《機を見た援軍》をサイドインした。Game 2
《大霊堂のスカージ》をプレイするLSVに対しBlandはドローゴー。LSVはアタック後に2体目の《大霊堂のスカージ》をプレイしてからの《オパールのモックス》プレイで金属術を発動させようとするが、これにはBlandの《はらわた撃ち》が突き刺さる。 1ターン遅れでプレイされた《信号の邪魔者》に対して、Blandは《機を見た援軍》で時間を稼ぎつつ、ダメージレースを開始するためのアタッカーを確保する。 LSVが《きらめく鷹の偶像》、Blandが《刃砦の英雄》を続けて展開したところで、LSVの《大霊堂のスカージ》には《はらわた撃ち》、Blandの《刃砦の英雄》には《四肢切断》が飛び、互いに小さいクロックはあるものの、早くも消耗戦の様相を呈してきた。 LSVが2枚目の《きらめく鷹の偶像》を出すも《忘却の輪》され、Blandの2枚目の《刃砦の英雄》も即座に《急送》される。その間も互いのクロックがすれ違い、両者のライフを少しずつ減らしていく。 盤面はLSVが《信号の邪魔者》《きらめく鷹の偶像》の飛行3点クロック、Blandは《機を見た援軍》の兵士トークンが2体で地上2点クロック。ライフはLSV11点に対しBland9点だが、Blandの手札にはさらなる《機を見た援軍》が握られていた。 さらにここでBlandがトップデッキしたのは《ガヴォニーの居住区》。LSVのライフを7点まで詰め、さらにダメージレースを逆転させる。 LSVは3点を返し、Blandのライフを6としつつ4マナオープンでターンエンド。3枚ほどの手札を抱え、不気味な構えである。 この際どいライフレースを前に、Blandはずっと抱えていた《機を見た援軍》をライフゲインのみでプレイするべきか悩むが、結局プレイせずに2/2兵士トークン2体でアタック。1体に《急送》が飛んでLSVのライフは5となる。1点差でライフが多く《機を見た援軍》のゲインライフ部分を活用できないBlandは、戦闘後に《刃砦の英雄》をキャストするのみでターンを返す。 6点のライフに3点のクロック。喉元には刃ならぬ《刃砦の英雄》。LSVの回答は。Game 3
Blandがマリガンながら《極楽鳥》から《刃の接合者》と激しく攻め立てるのに対し、LSVも《大霊堂のスカージ》《メムナイト》から続く2ターン目にも《大霊堂のスカージ》《メムナイト》《信号の邪魔者》とぶん回りを見せる。 ここで《忘却の輪》2枚を抱えるBlandはしかし、冷静にエンドを宣言。LSVの戦闘宣言時に《信号の邪魔者》を《はらわた撃ち》で除去し、《大霊堂のスカージ》の2点クロックを放置して《鍛えられた鋼》などの大物に備える構えのようだ。そんなことは露知らずLSVは《きらめく鷹の偶像》を追加してターンエンド。 続いてBlandは引き込んだ《機を見た援軍》で急場をしのごうとするが、LSVが続くターンに《信号の邪魔者》を追加したため、クロックが放置できなくなりやむなく《忘却の輪》1枚を《きらめく鷹の偶像》に使用する。 さらにBlandは《迫撃鞘》を引き込んで《信号の邪魔者》を葬るが、若干マナフラッドに陥り気味。LSVはさらに《きらめく鷹の偶像》を追加、これは《迫撃鞘》の効果でトークン2体と交換となり、互いの場にクロックがほとんどなくなるものの、LSVはマナが詰まっているだけでまだ手札には実がありそうだ。 Blandが土地を引き続けている間にLSVがようやく3マナ目にたどり着くと、まずは《忘却の輪》でBlandの《忘却の輪》を追放し、《きらめく鷹の偶像》を解放。続くターンには《鍛えられた鋼》をプレイ、一気に攻勢に出る。 ここでBlandは残りライフが少ないこともあり、溜めてあった《忘却の輪》2枚を立て続けにプレイ、LSVのクロックを一時的に葬り去る。 その甲斐あってか、LSVが4マナ目タップインの《金属海の沿岸》を置いて何もできずにターンを終えた返しのドローは《エルズペス・ティレル》!! 即座にキャストしトークンを生み出すBland。 だがLSVも遅ればせながら4マナ目がアクティブになり、《刃砦の英雄》を2連打。Blandに楽をさせない。 Blandは《エルズペス・ティレル》が身を賭して生み出した兵士トークン6体を《ガヴォニーの居住区》で強化しつつ守りを固めようとするのだが、返すLSVは《刃砦の英雄》の兵士トークンが《迫撃鞘》で死ななくなる、値千金の《呪文滑り》をキャストした後に2体でアタック。 3/1が4体と4/4が2体というアタックを前に、ライフ6のBlandはダブルブロックを1体しかすることができず、コンバットを終えた《刃砦の英雄》を打ち漏らしてしまう。 結局LSVがさらに《きらめく鷹の偶像》を追加すると、《呪文滑り》に守られたそれを止める手段はBlandにはもはやなく。 それどころかBlandの最後のドローは赤マナがなくライフも支払えない《はらわた撃ち》で。 互いの17ターン目にまで及ぶ激闘を制し、準決勝にまず王手をかけたのはLSVとなった。 LSV 2-1 BlandGame 4
《アヴァシンの巡礼者》《刃の接合者》と再び先手ロケットスタートのBlandに対し、LSVは《呪文滑り》《メムナイト》《オパールのモックス》から《急送》をマナクリーチャーに合わせる上々の立ち上がり。 だが《迫撃鞘》との合わせ技で落とされるのを嫌って3/3トークンでの攻撃はスルーすると、Blandの戦線にさらなる《刃の接合者》が追加される。 ここで3枚目の土地が置けないLSVは、《メムナイト》を追加しつつ《月皇ミケウス》をX=2でキャスト。返しのゴーレムトークン2体の6点アタックも受けてライフを11まで落とす。ここであと一押しが欲しいBlandはしかし、ひとまず機能しなさそうな《迫撃鞘》を置くのみ。 攻め手が一息ついてようやく戦線を構築する目処が立ってきたLSVは、《月皇ミケウス》を立たせたまま《メムナイト》2体でのアタックの後、Blandのゴーレムトークンを2体とも《急送》で葬り去る。あとは《呪文滑り》に守られた《月皇ミケウス》が悠々とクリーチャーを強化していくはずだった。 しかし今回はBlandが1枚上手だった。 LSVがエンド前に《月皇ミケウス》がX=3へとチャージしようとしたのに対応して、今しがたトップデッキした《帰化》を《呪文滑り》に撃ち込み、さらに《迫撃鞘》の細菌トークンで《メムナイト》を除去。LSVの場を《月皇ミケウス》ともう1体の《メムナイト》のみに追い込む。 こうなるとLSVは強化するべき構築物たちを失った《月皇ミケウス》をチャージすることしかできない。 それを尻目にさらにBlandがずっと抱えていた《エルズペス・ティレル》からトークンを2ターン連続で生産、《ガヴォニーの居住区》で強化しつつアタックを始めると、勝負は最終ゲームへともつれ込んだ。 LSV 2-2 BlandGame 5
《大霊堂のスカージ》から《きらめく鷹の偶像》《メムナイト》とロケットスタートのLSVに対し、Blandは《はらわた撃ち》を抱えたまま静かにダメージをテイクし、2ターン目には遅れて駆け付けた《極楽鳥》をキャストする。 が、続く《呪文滑り》には対応して《はらわた撃ち》を《大霊堂のスカージ》にプレイせざるを得ない。 後手3ターン目、《刃砦の英雄》との2択だが、Blandはここで除去されてテンポをとられるリスクを嫌ってか《機を見た援軍》をキャストし、《ガヴォニーの居住区》ですぐにも攻めに転じられるようにする。 一方で3マナ目が置けていないLSVは、《刻まれた勇者》2枚と《鍛えられた鋼》を抱えながらも《月皇ミケウス》をX=1でキャストするしかない歯がゆい展開。 これを機と見たBlandは《刃砦の英雄》を展開することすらせず最速で《ガヴォニーの居住区》を起動し始め、《極楽鳥》も強化しつつ兵士トークン3体でビートダウンを始める。1体を《呪文滑り》で止めてLSVのライフは15。 続くLSVのドローは《四肢切断》。数で攻められている今、4点のライフが痛すぎてキャストできないカードだ。次のアタックはBlandが《極楽鳥》を立たせてエンド前《ガヴォニーの居住区》起動の構えにしたため、再び4点を受けて11。 6ターン目にしてようやく3枚目の土地を置けたLSV。まずは《刻まれた勇者》をキャストし、クロックを押しとどめようとする。だが、果たして間に合うのか。 続く3/3トークン3体のアタックは1体を《呪文滑り》、1体を《メムナイト》と《刻まれた勇者》のダブルブロック、《ガヴォニーの居住区》起動も《月皇ミケウス》起動で相殺して対処しようとするが、ここでBlandは戦闘後に《迫撃鞘》をキャスト。ギリギリ生き延びたはずの《呪文滑り》を容赦なく撃ち落とす。ライフも7まで詰まっており、いよいよジリ貧か。 LSVは2体目の《刻まれた勇者》を出し、防御に回れない《きらめく鷹の偶像》で2点を刻むのみ。 返すBlandは3/4の《極楽鳥》と4/4の兵士トークン2体をコントロールしているが、《刻まれた勇者》2体で地上は止まっているため《極楽鳥》1体でアタック、《ガヴォニーの居住区》を起動して4点を与える。さらに《迫撃鞘》をトークンに装備させてターンエンド。既にLSVのライフは3、次のターンがくればおそらく《迫撃鞘》で勝てる状況だ。 いずれにせよこれがLSVのラストターン。 「引けば勝ちなんだ」そのドローを迎える直前、LSVはそう言って手札の《鍛えられた鋼》を公開した。 BlandのライフはLSVの地道なアタックによりいつの間にか15。LSVの場には《きらめく鷹の偶像》の他に4/4と3/3の《刻まれた勇者》が1体ずついるため、鋼を置きつつ偶像が起動できればぴったり15点のライフを削りきる計算だった。 《平地》《オパールのモックス》《メムナイト》のいずれでもいい。 それが引けたなら。 たったそれだけでこのマッチの勝利は確定し、同時にPoYの栄誉に浴することができる。 最強の男もおそらくは神に祈ったであろう一瞬。その後にもたらされたドローは。RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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