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世界選手権11
Round 15: 渡辺 雄也(神奈川) vs. Josh Utter-Leyton(アメリカ)
By Takeshi Miyasaka
渡辺 「すごいすよ、ファイブズーですよファイブズー。どうなってるのよ、このフィーチャー!」
渡辺のテンションが上がりに上がって、対戦相手のJosh Utter-Leytonを含めて茶化したくなるのも無理はないだろう。
渡辺とJoshのほか、フィーチャーマッチに呼ばれたのは、Brian Kibler vs Owen Turtenwald、Paulo Vitor da Rosa vs Luis Scott-Vargasという組み合わせ。
チャネル・ファイヤーボール・オールスターズとでも言うべき彼ら三組のフィーチャーマッチは、渡辺以外の面々であるチャネル・ファイヤーボール勢が選択したデッキがズーであると言うことなのだ。
今回の世界選手権を迎えるに当たり、中村 修平を交えたチャネル・ファイヤーボール勢は、調整のすえにもっとも勝率の高いデッキをチームメンバーで選択しチームとしての勝率を上げることを選んできたという。それが初日は中村を含む「白単《鍛えられた鋼》」であり、最終日の本日はズーである。
一方の渡辺は先に紹介した浅原と同じくヤソコンを使用している。前日夜にチャネルズーで特攻するのをあきらめた中村とともに、遅くまで八十岡ブランドを「難しい」と言いながらも練習を繰り返し、八十岡に助言を受けながらシェアされた一品だ。
プレイヤー・オブ・ザイヤーを取るためには、同じフィーチャーエリアにいるオーウェン越えを果たす必要があり、本日4勝する必要があるということ。渡辺にとって負けられない戦いがいま始まる。
Game 1
《繁殖池》タップインの渡辺に対し、Joshは《霧深い雨林》で《踏み鳴らされる地》をアンタップインして《野生のナカティル》というズーお決まりのスタート。 《闇滑りの岸》をセットして《桜族の長老》をブロッカーとして召喚すると、《野生のナカティル》からの2ダメージを軽減しつつ《森》へ変換する渡辺。Joshは追加の土地をプレイできないが代わりに《密林の猿人》でダメージソースを追加する。 《沼》をセットし、頑強を持ちパワー3というズー相手には最高のクリーチャー《台所の嫌がらせ屋》を戦場へ投入し、ライフを22へ引き上げる渡辺。《密林の猿人》と相討ちとなるが、《野生のナカティル》によるダメージは頑強によるリターンで相殺する。Joshは《野生のナカティル》をさらに追加してターンを終える。 渡辺は《燃え柳の木立ち》ゴー。《稲妻》でブロッカーを排除すると、Joshは《野生のナカティル》2体で渡辺を襲いライフを18とする。渡辺はメインで片方を《罰する火》で焼いてターンを終えた。 Joshは待望の《乾燥台地》を入手し《神聖なる泉》をペイライフで使用、ライフを14にしつつ《野生のナカティル》(3/3)でアタックして渡辺のライフを15にすると、さらに《タルモゴイフ》(3/4)を加えてプレッシャーをかける。 しかし、ここに突き刺さる《滅び》。リセットされた戦場に3体目となる《野生のナカティル》を展開すると、ターン終了時に《燃え柳の木立ち》でJoshのライフを15にして《罰する火》を回収した渡辺は、メインで《燻し》を《野生のナカティル》へ。 Joshの追加戦力《タルモゴイフ》も《破滅の刃》の餌食となる。さらに《全ての太陽の夜明け》により《桜族の長老》《台所の嫌がらせ屋》《破滅の刃》を回収と、アドバンテージの獲得に余念が無い。 ついに弾切れを起こしたJoshはドローゴー。渡辺は回収した《台所の嫌がらせ屋》と《桜族の長老》をそれぞれ再召喚しライフを17に引き上げる。《台所の嫌がらせ屋》は《流刑への道》されて《沼》へ姿を変える。 《沸騰する小湖》からの《血の墓所》ペイライフで14として《聖遺の騎士》を新たな戦力として戦場へ投入するJosh。 だが、ターン終了時に《桜族の長老》を《島》に変えて土地を8枚にした渡辺は、メインに土地をフルタップして《粗野な覚醒》を双呪したのだった。 渡辺 雄也 1-0 Josh Utter-LeytonGame 2
《湿地の干潟》フェッチから《神聖なる泉》ペイライフで《ステップのオオヤマネコ》というスタートを見せたJoshは、続くターンに《霧深い雨林》フェッチで《踏み鳴らされる地》ペイライフと景気よくライフを14まで減らしながら上陸を二度誘発させ、《ステップのオオヤマネコ》を 4/5 として攻撃へ繰り出した。さらに《タルモゴイフ》を追加して最高のスタートを見せた。 一方の渡辺は《新緑の地下墓地》をフェッチして《湿った墓》《森林の墓地》からの《燻し》で《タルモゴイフ》除去といった第2ターン。 Joshは《タルモゴイフ》を、渡辺は《燃え柳の木立ち》をそれぞれ追加してターンを終えたのち、《タルモゴイフ》(3/4)が渡辺へ攻撃して渡辺のライフは早くも13となる。 《知識の渇望》により手札を充実させた渡辺は、土地を2枚捨てて《タルモゴイフ》を育てることなく《霧深い雨林》をセットしてブロッカーとして《桜族の長老》を戦場へ。《タルモゴイフ》をキャッチして3点のライフロスを軽減させてから《沼》へと変換した。 ターン終了時に《霧深い雨林》を《踏み鳴らされる地》に変換して、ライフは12、土地は5 枚となる。さらにメインで《偶像の石塚》をセットして6マナにすると、《永遠の証人》をキャストし《燻し》を回収してクリーチャーによる攻撃をシャットアウトするかまえだ。 《平地》をセットして久しぶりに上陸を達成したJoshは、《ステップのオオヤマネコ》と《タルモゴイフ》をレッドゾーンへ。《タルモゴイフ》を《燻し》た渡辺のライフは10。除去されても代わりはいるさと《タルモゴイフ》3号機を展開してターンを終える。 7枚目の土地として《燃え柳の木立ち》をセットして中空を見上げながら考えをまとめる渡辺は、やがて《けちな贈り物》をキャスト。 《強情なベイロス》《コジレックの審問》《消耗の蒸気》《台所の嫌がらせ屋》という4枚を提示する。 Joshはライフゲインする2枚を渡辺に贈ることにした。贈られた《台所の嫌がらせ屋》を召喚するが、これは《流刑への道》によって《森》へ変換される。 《沸騰する小湖》からの《血の墓所》ペイライフでライフを11としたJoshは《永遠の証人》をも《流刑への道》し、《ステップのオオヤマネコ》(4/5)《タルモゴイフ》(4/5)両方のクリーチャーを送り込む。 渡辺 「テイク8?」 フェッチしたJoshのライブラリをシャッフルしながら渡辺が確認すると、《部族の炎》をハンドからJoshが公開した。 渡辺 雄也 1-1 Josh Utter-Leyton 熱戦を繰り広げる渡辺とJoshの試合は、すでに多くのギャラリーが固唾を呑んで行方を見守っていた。金を払っても見たい試合というのがプロスポーツの興行であり、ファンたちの楽しみではあるが、アリーナで繰り広げられる熱戦を生で見られるのは、会場に遊びに来た人たちの特権である。 自身の試合が終わってしまえば、彼らもまたマジックファンの一人。世界のトッププレイヤーとして戦う彼らの試合を生で観戦できるのなら、そばで見ていたいと思うのは人情というものだろう。Game 3
後攻のJoshはテイクマリガンながら、ライフ18で《繁殖池》をアンタップインすると《野生のナカティル》スタート。渡辺は《湿った墓》《偶像の石塚》からメインで《罰する火》をキャストしてこの《野生のナカティル》へ対処する。 弾が切れたら補充すればいいさ。《沸騰する小湖》から《聖なる鋳造所》を用意すると《タルモゴイフ》を戦線へ投入するJosh。すでにライフは15だ。 《霧深い雨林》をセットしたのち渡辺は顎に手を当て考えをまとめると、《森》をフェッチで入手すると自身も《タルモゴイフ》を用意する。 《乾燥台地》をセットしたJoshはかまわずに《タルモゴイフ》で攻撃。渡辺はしばし考えてからこれをブロック。ライフを失うよりは、Joshの手札にある火力を《タルモゴイフ》へ引きつけることを選んだのだろう。 予定調和に《稲妻》が向けられて、渡辺の《タルモゴイフ》は墓地へ。 《血の墓所》をタップインしてターンを終える渡辺のターン終了時に《乾燥台地》で《血の墓所》をサーチするJosh。すでにライフは14だ。ようやく《タルモゴイフ》が3点のダメージを与えて渡辺のライフは16へ。 《知識の渇望》でカードを求めようとする渡辺だが、そこに《呪文貫き》が突き刺さる! しかたなく渡辺は《タルモゴイフ》2号機をブロッカーとして戦場へ投入する。 《湿地の干潟》フェッチ(ライフ 13)から《平地》を入手したJoshは《イーオスのレインジャー》で《野生のナカティル》2体をサーチして渡辺へプレッシャーをかける。土地をプレイできない渡辺は《桜族の長老》をブロッカー要因として戦場へ追加した。 しばらく考えたのちJoshは《タルモゴイフ》と《イーオスのレインジャー》を攻撃へ繰り出す。《イーオスのレインジャー》を《タルモゴイフ》で倒し、《タルモゴイフ》をキャッチした《桜族の長老》は《島》へ変換される。 戦闘終了後に《乾燥台地》をプレイして《稲妻のらせん》を《タルモゴイフ》へ(ライフ 16)打ち込んで処理すると、さらに《野生のナカティル》をプレイしてターンを終える。 渡辺は《新緑の地下墓地》をセットしてターンを終えると、アップキープに《喉首狙い》で《タルモゴイフ》を倒す。Joshの《野生のナカティル》が渡辺のライフを13とすると、《野生のナカティル》《密林の猿人》を戦線へ追加して渡辺へプレッシャーをかける。 渡辺はターン終了時に《新緑の地下墓地》で《踏み鳴らされる地》をサーチして(ライフ 12)6マナとすると、《仕組まれた爆薬》を X=1で設置し、Joshの戦線を破壊する! クリーチャーをすべて失ったJoshは、手札をすべて使って《聖遺の騎士》(5/5)と《ステップのオオヤマネコ》を渡辺にもう一度対処を迫る。 《偶像の石塚》をプレイして7マナへ到達した渡辺は、《けちな贈り物》をプレイ。《破滅の刃》《燻し》《永遠の証人》《瞬唱の魔道士》という4枚をJoshへ提示する。Joshは除去2枚を渡辺に与え、渡辺は《聖遺の騎士》を《燻し》てターンを終える。 《蒸気孔》をタップインして上陸を達成すると《ステップのオオヤマネコ》で攻撃し、渡辺に2ダメージを与えライフを10まで落とし込む。渡辺は《ヴェールのリリアナ》をプレイし[-2]能力でこれを対処するのだが、手札のなかったJoshが引き当てたのは《タルモゴイフ》。もちろんこれは先ほど入手した《破滅の刃》の餌食となる。 しかし、Joshの豪腕は止まらない。次のドローが《イーオスのレインジャー》! 《野生のナカティル》《密林の猿人》を手札に加えると、残していた《乾燥台地》から1点支払いライフを13としながら《踏み鳴らされる地》を入手、一気に3体のクリーチャーを展開してみせた! 《イーオスのレインジャー》を《罰する火》で焼いた渡辺は《ヴェールのリリアナ》を使い切って[-2]能力を使用し、《密林の猿人》が墓地へ置かれる。ブロッカーとしてキャストされた《桜族の長老》は、《野生のナカティル》をキャッチして《沼》をサーチして仕事を終える。渡辺のハンドも同じくゼロとなった。 渡辺が《タルモゴイフ》をトップデッキすれば、Joshも同じく《タルモゴイフ》を戦場へ。「やったー。」と思わず漏らしながら、渡辺は待望の《燃え柳の木立ち》を引き当て、自身のライフを狙う動物たちをコントロールする手段を手に入れた。 《ステップのオオヤマネコ》を召喚したJoshのターンエンドに、Joshのライフを14として《罰する火》2枚を回収し《野生のナカティル》を排除した渡辺は《闇滑りの岸》をタップインする。 Joshがカードを引いたところで試合終了のコールがアリーナにも届く。勝負の行方はあと6ターンの期限を切られてしまう。 ターン 0(Josh): Joshのライフを15にして《罰する火》で《ステップのオオヤマネコ》を排除する。《罰する火》 1 枚は手札へ加える渡辺。 ターン 1(渡辺): 《草むした墓》をタップイン。 ターン 2(Josh): 《聖遺の騎士》プレイ。《罰する火》がJoshに撃たれ、のちに2枚を回収する。(ライフ15) ターン 3(渡辺): 《強情なベイロス》(ライフ14) ターン 4(Josh): 《台所の嫌がらせ屋》キャストにスタックして《罰する火》×2がJoshへ。(ライフ15) そして最後のドロー。それが《粗野な覚醒》であれば・・・ ターン 5(渡辺): 《霧深い雨林》 そこまでドラマティックな展開にはならずに、痛み分けとなった。 渡辺 雄也 1-1-1 Josh Utter-Leyton 試合終了後に八十岡 翔太と秋山 貴志が渡辺の元へ集い、渡辺が選択したゲームの内容についてそれぞれの意見を提示していた。追加ターンに入る頃に「ミスったなー」と何度も首をひねりながら彼の選択してきた行動を振り返っていた渡辺。 《けちな贈り物》の選択やその他の要所要所に関して、デッキ制作者の八十岡に助言を求めていた。それに対して忌憚ない意見を述べる八十岡と秋山。 ミスしたことはしかたがない。しかし、同じミスを繰り返すことはない。人は経験の分だけ強くなり、高みを目指すことができるのだ。この男、これからも強くなることだろう。どこまで強くなるのだろう。 もっと強くなった渡辺 雄也という男の姿を、これからも見ていきたい。できうるならば、こうして観戦記録として残していきたい。そういう機会をこれからもこの男は与えてくれることだろう。RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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