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世界選手権11
Round 12: 渡辺 雄也(神奈川) vs. Paulo Vitor da Rosa(ブラジル)
By Takeshi Miyasaka
ともに2敗ラインで、ブースタードラフトを5連勝しているふたりがフィーチャーマッチに選ばれた。PVは昨年の世界選手権トップ8であり、プロツアー・サンファンに優勝し、プロレベルは8。
彼の戦績を書き始めたら紙幅が足りないくらいの戦績があるブラジルが誇るスーパースター、いわばラスボスである。
そのラスボスと対峙するのが渡辺。せめてドラフトで 5-1 しておきたいという目標をすでに有言実行し、気がつけば日本人最上位で現在8位。残す最後の一戦でラスボスを踏んだ、といった様相だ。
ところで、チャネル・ファイヤーボールのシャツのデザインが新しくなっていることにお気づきだろうか。
バックには以前のロゴがあしらわれ、正面はそれぞれのプレイヤーごとに自国の国旗がデザインされた新しいロゴとなっている。たいへんクールでうらやましい。
個人的には中村 修平が着ている日本バージョンが欲しいところだが、PVがいま着ているブラジルバージョンもカッコイイ。
どちらも、最終日への足がかりを残すにはここは2敗で踏ん張りたい。なにより、ブースタードラフトを全勝してスタンディングを一つでもあげたいところだろう。全勝者として歴史に名を刻めるのは、いずれか一人。
先攻の渡辺はテイクマリガン後に《森》《アヴァシンの巡礼者》《森》《果樹園の霊魂》という好ダッシュ、3ターン目に《平地》をセットして《アヴァシンの巡礼者》と《果樹園の霊魂》で攻撃してライフレースで先攻する。
一方のPVも《平地》《平地》《森》から《礼拝堂の霊》というファーストアクション。
渡辺は《山》をセットするとノータイムで《果樹園の霊魂》をレッドゾーンへ、PVは《礼拝堂の霊》でキャッチするが、渡辺は《レインジャーの悪知恵》で《果樹園の霊魂》をサイズアップして《礼拝堂の霊》を討ち取る。
戦闘終了後に《ただれ皮の猪》が陰鬱によって 5/5 として渡辺の支配下に登場する。
このモンスターを《森》セットから《信仰の縛め》で無力化して急場をしのぐPVだが、《果樹園の霊魂》と《アヴァシンの巡礼者》が無人の戦場を駆け抜けて、PVのライフは早くも14となる。渡辺は《平地》をセットするとPVへターンを渡す。
5枚目の土地として《森》をセットしたPVは、《スレイベンの歩哨》を戦線へ追加して反撃の機会を探る。その隙に《果樹園の霊魂》は軸をずらしてPVのライフを12へ減らす。
ここまでイニシアチブを握ることができなかったPVだが、《エストワルドの村人》を戦線へ投入することで状況の打破を画策する。《エストワルドの村人》で《果樹園の霊魂》を《捕食》することでダメージレースをイーブンにし、《スレイベンの歩哨》が初ダメージを渡辺に与える。
ふたたび天秤を傾かせたい渡辺は《赤子捕らえ》をプレイするが、これは《悪鬼の狩人》に追放され、《スレイベンの歩哨》と《エストワルドの村人》に殴られて渡辺のライフは14へ。
戦いの主導権は攻撃の要を失った渡辺からPVへと委譲される。PVは《エストワルドの村人》を狼男の群れへ変身させると、《エストワルドの吠え群れ》と《スレイベンの歩哨》をレッドゾーンへ。
この攻撃で渡辺のライフは8へと落ち込み、ダメ押しに《ガツタフの羊飼い》と《果樹園の霊魂》をPVが展開すると、ドローを確認した渡辺はカードを片付けるのだった。
渡辺 雄也 0-1 PV
本日最後のフィーチャーマッチということで、いつの間にか多くの観客が渡辺とPVの試合の行方を見守っていた。渡辺もPVも人気者だし、実力もある。くわえて、この二人が本日の全勝対決となれば、なおさら、か。
ふたたび先攻の渡辺は《アヴァシンの巡礼者》で発進するが、2ターン目に 3マナのクリーチャー召喚はかなわず、攻撃ののち《平地》セットというスタート。一方PVは《ガツタフの羊飼い》から。
渡辺が《森》セットから《ただれ皮の猪》を召喚すれば、PVは《平地》《エストワルドの村人》を戦場へ送り出す。
渡辺は3枚目の《森》をプレイしてから、今後の方針を検討する。じっくり考えを巡らせたのちに出した答えは、《ただれ皮の猪》で攻撃したのち、《声無き霊魂》を追加するというものだった。PVのライフは16へ減少する。
今度はPVが考える番だった。しばらく考えたのち《エストワルドの村人》でアタックし、3枚目の《平地》セットから《肉屋の包丁》をインプレイ。現代の《ロクソドンの戦槌》はリミテッドではかくも恐ろしい装備品たり得る。
この戦況を前にして、4枚目の《森》をセットした渡辺は深いため息をつき、ついで指で机をとんとん、と叩きながら思考を巡らせる。
人によっては「早くしてください」とつっこまれるかもしれない長さかもしれないが、考えなくてもいいところは渡辺もPVも早いのだ。考えなければいけない場面だからこそ、選択肢を十二分に選択した上で、後悔しない決断をしたい。とPVが考えていたかは分からないが、少なくともPVは渡辺に対してとくにリアクションを取ることもなかった。PVもここが重要な場面だと考えていたのだろうか。
渡辺が最終的に決したプランは、《旅の準備》で+1/+1 カウンターを《アヴァシンの巡礼者》と《ただれ皮の猪》に載せ、《声無き霊魂》も合わせてすべてをレッドゾーンへ送り込むことだった。《アヴァシンの巡礼者》は《ガツタフの羊飼い》にブロックされて相討ちとなるが、PVに7点のダメージを与えてライフは9へ。そして《夜明けのレインジャー》を追加してターンを終える。
PVは《エストワルドの村人》に《肉屋の包丁》を握らせた 5/3 絆魂によって、ついに渡辺にダメージを与え、自身のライフを14へ回復する。さらに《断崖の避難所》セットから《幽体の乗り手》をプレイして渡辺へターンを返した。
《旅の準備》をフラッシュバックし、《夜明けのレインジャー》と《声無き霊魂》をそれぞれ+1/+1 すると、《ただれ皮の猪》(4/4)と《夜明けのレインジャー》(3/3)で攻撃してPVのライフを7としてターンを終える。PVがなにも持っていなければダメージレースは制することができるかもしれない。なにも持っていなければ。
しかし、それは淡い期待というものだった。《硫黄の流弾》。そのためにタッチしているのであろう《断崖の避難所》からキャストすると、《声無き霊魂》へプレイしブロッカーを排除して《肉屋の包丁》を握った《エストワルドの村人》と《幽体の乗り手》がレッドゾーンを駆け抜ける。
これで渡辺に7点ダメージを与えて残りライフを8とし、PVのライフは12となる。
じっくり考えた末に、生き残っている自軍のクリーチャーたちをすべて戦闘へ向かわせる渡辺。先ほどと同じく7点が与えられてPVのライフは5となる。
戦闘終了後に《ただれ皮の猪》(4/4)が《幽体の乗り手》(2/2)を《捕食》しようとする。対応をしばらく考えていたPVは《幽体の乗り手》を《勇壮の時》で 4/4 とし、《ただれ皮の猪》と相打つとともに、ライフを9に引き上げる。
綱渡りを繰り返したダメージレースは、やがて終焉を迎える。
渡辺が追加の攻撃クリーチャーを送り込めぬ間に、PVは《エストワルドの村人》が《エストワルドの吠え群れ》へと姿を変え、ターン終了時に《待ち伏せのバイパー》を追加し、《スレイベンの歩哨》までプレイして見せたのだから。
いま目の前でブースタードラフト全勝を決めた対戦相手を称えるべく、渡辺は右手を差し出した。
Paulo Vitor da Rosa、イニストラード・ブースタードラフト6連勝!
渡辺 雄也 0-2 PV
渡辺 「いやー、ミスったな-。ミスりましたね。」
渡辺は試合後にテーブルにカードを並べながら二戦目の振り返りを始めた。筆者にはタイトなダメージレースをPVが凌ぎきって制したように見えたが、渡辺によればそれは彼の選択ミスにより喫した敗北であって、正しいプレイをすれば三戦目があったという。
渡辺 「《肉屋の包丁》の返しで、全部アタックしたじゃないですか。あれがミスでした。正解は《声無き霊魂》を残して残りで殴る。その後《夜明けのレインジャー》を追加してブロッカーが 2 体という場なら先がありました。」
途中から渡辺の試合を観戦していた八十岡が渡辺に声をかけた。
八十岡 「PV 相手にミスしたら負けるよね。」
渡辺 「ミスったなあ。もっとうまくやっていれば勝てた試合だったよ。もったいない。」
渡辺は勝利に貪欲な男である。ほかのマジックが好きなプレイヤーたちと同じように、敗北した試合を検討し、そこからなにかを学び、自身の糧とする。そうすることで彼は草の根トーナメントからスタートし、グランプリを制し、世界の強豪を相手に戦うまでに至ったのだ。
渡辺 「とにかく 3 点欲しいですからね、明日もがんばります。まずはデッキをなんとかしないといけないですけどね。」
昨シーズンは届かなかった最高レベルのプロレベル8を目指す渡辺の戦いは、あと一日は続く。渡辺の最終日の活躍に期待したい。
Game 1
渡辺雄也、本日最終戦にて | |
Game 2
Paulo Vitor da Rosa |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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