By Takeshi Miyasaka
ともに2敗ラインで、ブースタードラフトを5連勝しているふたりがフィーチャーマッチに選ばれた。PVは昨年の世界選手権トップ8であり、プロツアー・サンファンに優勝し、プロレベルは8。
彼の戦績を書き始めたら紙幅が足りないくらいの戦績があるブラジルが誇るスーパースター、いわばラスボスである。
そのラスボスと対峙するのが渡辺。せめてドラフトで 5-1 しておきたいという目標をすでに有言実行し、気がつけば日本人最上位で現在8位。残す最後の一戦でラスボスを踏んだ、といった様相だ。
ところで、チャネル・ファイヤーボールのシャツのデザインが新しくなっていることにお気づきだろうか。

バックには以前のロゴがあしらわれ、正面はそれぞれのプレイヤーごとに自国の国旗がデザインされた新しいロゴとなっている。たいへんクールでうらやましい。
個人的には中村 修平が着ている日本バージョンが欲しいところだが、PVがいま着ているブラジルバージョンもカッコイイ。
どちらも、最終日への足がかりを残すにはここは2敗で踏ん張りたい。なにより、ブースタードラフトを全勝してスタンディングを一つでもあげたいところだろう。全勝者として歴史に名を刻めるのは、いずれか一人。
Game 1
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渡辺雄也、本日最終戦にて | |
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先攻の渡辺はテイクマリガン後に《》《》《》《》という好ダッシュ、3ターン目に《》をセットして《》と《》で攻撃してライフレースで先攻する。
一方のPVも《》《》《》から《》というファーストアクション。
渡辺は《》をセットするとノータイムで《》をレッドゾーンへ、PVは《》でキャッチするが、渡辺は《》で《》をサイズアップして《》を討ち取る。
戦闘終了後に《》が陰鬱によって 5/5 として渡辺の支配下に登場する。
このモンスターを《》セットから《》で無力化して急場をしのぐPVだが、《》と《》が無人の戦場を駆け抜けて、PVのライフは早くも14となる。渡辺は《》をセットするとPVへターンを渡す。
5枚目の土地として《》をセットしたPVは、《》を戦線へ追加して反撃の機会を探る。その隙に《》は軸をずらしてPVのライフを12へ減らす。
ここまでイニシアチブを握ることができなかったPVだが、《》を戦線へ投入することで状況の打破を画策する。《》で《》を《》することでダメージレースをイーブンにし、《》が初ダメージを渡辺に与える。

ふたたび天秤を傾かせたい渡辺は《》をプレイするが、これは《》に追放され、《》と《》に殴られて渡辺のライフは14へ。
戦いの主導権は攻撃の要を失った渡辺からPVへと委譲される。PVは《》を狼男の群れへ変身させると、《》と《》をレッドゾーンへ。
この攻撃で渡辺のライフは8へと落ち込み、ダメ押しに《》と《》をPVが展開すると、ドローを確認した渡辺はカードを片付けるのだった。
渡辺 雄也 0-1 PV
本日最後のフィーチャーマッチということで、いつの間にか多くの観客が渡辺とPVの試合の行方を見守っていた。渡辺もPVも人気者だし、実力もある。くわえて、この二人が本日の全勝対決となれば、なおさら、か。
Game 2
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Paulo Vitor da Rosa |
ふたたび先攻の渡辺は《》で発進するが、2ターン目に 3マナのクリーチャー召喚はかなわず、攻撃ののち《》セットというスタート。一方PVは《》から。
渡辺が《》セットから《》を召喚すれば、PVは《》《》を戦場へ送り出す。
渡辺は3枚目の《》をプレイしてから、今後の方針を検討する。じっくり考えを巡らせたのちに出した答えは、《》で攻撃したのち、《》を追加するというものだった。PVのライフは16へ減少する。
今度はPVが考える番だった。しばらく考えたのち《》でアタックし、3枚目の《》セットから《》をインプレイ。現代の《》はリミテッドではかくも恐ろしい装備品たり得る。
この戦況を前にして、4枚目の《》をセットした渡辺は深いため息をつき、ついで指で机をとんとん、と叩きながら思考を巡らせる。
人によっては「早くしてください」とつっこまれるかもしれない長さかもしれないが、考えなくてもいいところは渡辺もPVも早いのだ。考えなければいけない場面だからこそ、選択肢を十二分に選択した上で、後悔しない決断をしたい。とPVが考えていたかは分からないが、少なくともPVは渡辺に対してとくにリアクションを取ることもなかった。PVもここが重要な場面だと考えていたのだろうか。

渡辺が最終的に決したプランは、《》で+1/+1 カウンターを《》と《》に載せ、《》も合わせてすべてをレッドゾーンへ送り込むことだった。《》は《》にブロックされて相討ちとなるが、PVに7点のダメージを与えてライフは9へ。そして《》を追加してターンを終える。
PVは《》に《》を握らせた 5/3 絆魂によって、ついに渡辺にダメージを与え、自身のライフを14へ回復する。さらに《》セットから《》をプレイして渡辺へターンを返した。
《》をフラッシュバックし、《》と《》をそれぞれ+1/+1 すると、《》(4/4)と《》(3/3)で攻撃してPVのライフを7としてターンを終える。PVがなにも持っていなければダメージレースは制することができるかもしれない。なにも持っていなければ。
しかし、それは淡い期待というものだった。《》。そのためにタッチしているのであろう《》からキャストすると、《》へプレイしブロッカーを排除して《》を握った《》と《》がレッドゾーンを駆け抜ける。
これで渡辺に7点ダメージを与えて残りライフを8とし、PVのライフは12となる。
じっくり考えた末に、生き残っている自軍のクリーチャーたちをすべて戦闘へ向かわせる渡辺。先ほどと同じく7点が与えられてPVのライフは5となる。
戦闘終了後に《》(4/4)が《》(2/2)を《》しようとする。対応をしばらく考えていたPVは《》を《》で 4/4 とし、《》と相打つとともに、ライフを9に引き上げる。
綱渡りを繰り返したダメージレースは、やがて終焉を迎える。
渡辺が追加の攻撃クリーチャーを送り込めぬ間に、PVは《》が《》へと姿を変え、ターン終了時に《》を追加し、《》までプレイして見せたのだから。
いま目の前でブースタードラフト全勝を決めた対戦相手を称えるべく、渡辺は右手を差し出した。

Paulo Vitor da Rosa、イニストラード・ブースタードラフト6連勝!
渡辺 雄也 0-2 PV
渡辺 「いやー、ミスったな-。ミスりましたね。」
渡辺は試合後にテーブルにカードを並べながら二戦目の振り返りを始めた。筆者にはタイトなダメージレースをPVが凌ぎきって制したように見えたが、渡辺によればそれは彼の選択ミスにより喫した敗北であって、正しいプレイをすれば三戦目があったという。
渡辺 「《》の返しで、全部アタックしたじゃないですか。あれがミスでした。正解は《》を残して残りで殴る。その後《》を追加してブロッカーが 2 体という場なら先がありました。」
途中から渡辺の試合を観戦していた八十岡が渡辺に声をかけた。
八十岡 「PV 相手にミスしたら負けるよね。」
渡辺 「ミスったなあ。もっとうまくやっていれば勝てた試合だったよ。もったいない。」
渡辺は勝利に貪欲な男である。ほかのマジックが好きなプレイヤーたちと同じように、敗北した試合を検討し、そこからなにかを学び、自身の糧とする。そうすることで彼は草の根トーナメントからスタートし、グランプリを制し、世界の強豪を相手に戦うまでに至ったのだ。
渡辺 「とにかく 3 点欲しいですからね、明日もがんばります。まずはデッキをなんとかしないといけないですけどね。」
昨シーズンは届かなかった最高レベルのプロレベル8を目指す渡辺の戦いは、あと一日は続く。渡辺の最終日の活躍に期待したい。