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世界選手権11
国別対抗戦 Round 1: フィンランド代表 vs. 日本代表
By Takeshi Miyasaka & Shiro Wakayama
国別対抗戦の一回戦が行なわれる前に、必ず賞金がもらえる各国の代表者はそれぞれの銀行口座や必要書類の提出などを要求されていた。賞金の支払いに伴う必要事項であり、プロツアーを転戦するプロプレイヤーにとっては馴染みの儀式ともいえる。
石田 「ここなにを書けばいいんすか?」
初めてのプロツアーがこの世界選手権である日本王者・石田 龍一郎にとっては、もちろんこの書類を書くこと自体が初めてのこと。そのすべての質問に答えている三原 槙仁は、石田にとって先達の師といった立ち位置に鎮座しているように見える。藤本 知也も三原に逐一書き方を聞いていて、まるで三原がみんなの兄だか父だかのように写った。
三原がセンターに座り、両脇を石田と藤本が固めている。日本選手権の決勝を戦ったのは石田であり藤本であるが、この日本代表チームに関してはまだ経験が浅い二人の若人を老練な三原が率いるというチーム構成となっているのだろう。
書類の提出が終わり、慌ただしく各選手が自身のデッキをシャッフルし始めた。国別対抗戦は、チームの勝利はそのまま勝ち点 9に繋がる。通常の3倍勝利が美味しく、通常の3倍敗北が厳しい。
そんな美味しくも厳しい国別対抗戦の初戦では、ともにチームの獲得点数が33点、7位のフィンランドと11位の日本が対決する。
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎
三原にマリガンの是非を相談する石田と藤本。ゲーム中も三原が司令塔とするチームの方向性となっているようだ。それゆえに、石田がスタンダードとなった瞬間「レガシーについての知識が皆無である」藤本がレガシー、三原がモダンを担当することになったのは必然ともいえよう。
石田曰く、モダンとレガシーのデッキはどちらも三原が調整し、用意したものだという。少なくとも石田に関して言えば三原の存在は精神的支柱であり、頼るに十分たる存在となっている。歳が離れ、実績もある人間がチームに一人いるだけで、ワントップのチームとはうまくいくものであるかもしれない。
三原はペイライフでの《ギタクシア派の調査》で相手の手札を確認する立ち上がり。対戦相手のMikko Nurmiが操るのはバーンデッキのようだ。三原は《島》、ついで《燃え柳の木立ち》とセットするのに対し、一方のMikko Nurmiは《山》《竜髑髏の山頂》から《ケルドの匪賊》スタート。
三原は《島》をセットしてゴーすると、Mikko Nurmiが戦闘フェイズに入ったところで《詐欺師の総督》を瞬速でプレイして攻撃を抑制、帰ってきたターンには《呪文滑り》をプレイと、地上はがっちりな流れだ。Mikko Nurmiは《溶岩の撃ち込み》で三原のライフを 14 へ。
ターン終了時に《知識の渇望》をプレイして入手した《罰する火》でMikko Nurmiのライフを狙いに行く。
三原に殴りかかることなく消えていった《ケルドの匪賊》だが去り際に三原のライフを13とし、さらに《夜の衝突》でライフを10へ。三原はその間に《罰する火》の2枚目をプレイし、《燃え柳の木立ち》で両者を回収するプレイを見せる。
4マナをそろえたMikko Nurmiは手元のライフメモに目をやり《碑出告の第二の儀式》! が、これを《払拭》でカウンターする三原。突然死は許さない。
《燃え柳の木立ち》で《罰する火》2枚を回収しながら《詐欺師の総督》でコツコツと殴り続ける三原と、ターン終了時、メインと隙あらば火力呪文を叩きつけるMikko Nurmi。三原のライフは 4 まで落ち込んだが、《ギタクシア派の調査》をマナを支払って三原がプレイすると、手札には火力が満載だがインスタント火力はない。
安全確認を済ませた三原が《欠片の双子》を《詐欺師の総督》にエンチャントしてコンボを決めた。
Mikko Nurmi 0-1 三原 槙仁
三原の右隣でゲームを進めている石田の様子を見に行くと、石田の墓地には《情け知らずのガラク》と《酸のスライム》があり、Markku Rikolaの墓地には《ヴィリジアンの密使》と《審判の日》が。Markku Rikolaが《審判の日》でクリーチャーやトークンを一掃したところのようだ。
石田は《原始のタイタン》をプレイして土地を追加すると、Markku Rikolaも《ギデオン・ジュラ》でこの攻撃を押しとどめようとする。しかし、《原始のタイタン》はパワー6の弩級クリーチャー。ワンパンチで轟沈する。さらに石田が《原初の狩人、ガラク》をプレイすると、Markku Rikolaはカードを片付けた。
Markku Rikola 0-1 石田 龍一郎
《竜髑髏の山頂》タップインするMikko Nurmiに対して、三原は《燃え柳の木立ち》から《仕組まれた爆薬》をX=1で設置する。Mikko Nurmiはとりあえず双子コンボ相手の基本サイドボードである《倦怠の宝珠》を戦場へ投入し、三原も《呪文滑り》をとりあえず。
《倦怠の宝珠》キープしたのかドローゴーするMikko Nurmiに、三原は《燃え柳の木立ち》でライフを相手に与えながら《ギタクシア派の調査》をプレイ、対処カードがいくつかあるのを確認したのち《血清の幻視》をプレイしてライブラリを掘り進む。
またもやドローゴーするMikko Nurmiのターン終了時に、三原は《やっかい児》をプレイ、メインで《欠片の双子》を《呪文滑り》にエンチャントし、地上をがっちりしさせつつ上から《やっかい児》で殴るモードに入る。
殴りながら、左隣で藤本が《渦まく知識》で戻すカードを悩んでいるのに対してアドバイスを出す鬼神のような働きである。
Mikko Nurmiがようやく展開したクリーチャーは《ケルドの匪賊》。そのターン終了時に《呪文滑り》のコピーと、《詐欺師の総督》を戦場へ追加すると、メインに《やっかい児》で攻撃し、左隣でマリガンを悩んでいる石田にアドバイスをし、戦闘終了後に《詐欺師の総督》へ《欠片の双子》をエンチャントする。
トークンが邪魔で殴れないMikko Nurmiは、《夜の衝突》で三原のライフを狙う。三原は《仕組まれた爆薬》を X=2で設置して起動して《倦怠の宝珠》を破壊しにかかるが、対応して《詐欺師の総督》を《焼却》されてしまう。
「あー、ミスった!」と思わず声をあげた三原は、対応して《呪文滑り》と《詐欺師の総督》のコピーをそれぞれ生産し、《倦怠の宝珠》《ケルドの匪賊》と《欠片の双子》が2枚に《呪文滑り》《詐欺師の総督》が墓地へと落ちる大量破壊に成功した。三原は《やっかい児》と《詐欺師の総督》のコピーでライフを削る。
ターン終了時に、三原のボードに残されたアタッカーは《やっかい児》ただ一枚。
だが、すでに危険域に達していたMikko Nurmiのライフを削りきるまでこのフェアリーを守りきることは、カウンターを抱えた三原には造作もないことだった。
Mikko Nurmi 0-2 三原 槙仁
《アヴァシンの巡礼者》《真面目な身代わり》という好スタートのMarkku Rikolaに対して、石田も《極楽鳥》《ミラディンの十字軍》と好ダッシュ。Markku Rikolaがプレイした《饗宴と飢餓の剣》は《内にいる獣》でビースト・トークンへと姿を変えさせる。たたき割る。
しかし、Markku Rikolaが《饗宴と飢餓の剣》をおかわりしたところで天秤がぐらりとMarkku Rikola側へと傾いていく。《墨蛾の生息地》が剣を装備して石田に殴りかかる。石田も《最後のトロール、スラーン》を戦場へ投入して打撃力を上げてはみるが、Markku Rikolaの《最後のトロール、スラーン》によって対消滅させられ、《墨蛾の生息地》 2 体がレッドゾーンへと送り込まれる。うち一体は剣を手に握りしめて。
あっという間に致死量の毒が回った石田は、サイドボードに手をかける。
Markku Rikola 1-1 石田 龍一郎
では、レガシー担当。本日のスタンダードラウンドを5勝1敗と、日本のスコアラーとして活躍した藤本の雄姿をチェックしよう。
藤本は、即死コンボもある《実物提示教育》&《騙し討ち》によって、《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《大祖始》といった、超強力クリーチャーを高速でレッドゾーンへと送り込む、通称「Sneak Show」デッキ。
さらに勝ち星を重ねることができるのか?
対する藤本は《実物提示教育》と《引き裂かれし永劫、エムラクール》。さらには《騙し討ち》。そして《古えの墳墓》というマリガン後としては完璧に近いハンドからさらに《思案》で手札の充実を図る。
Mika Roinistoは《臭い草のインプ》で発掘した《ナルコメーバ》を生贄に捧げて《陰謀団式療法》をプレイ。
藤本が見せた情報は《Volcanic Island》と《思案》のみ。
メイン最強デッキであるドレッジ。相手の動きをけん制するのではなく、自らのベストを追及するために、指定は《Force of Will》。
手札に、レガシーの代名詞《Force of Will》はなし。さらなる《入念な研究》で、発掘を繰り返す。
藤本は手札にあった《実物提示教育》で《引き裂かれし永劫、エムラクール》を降臨させるも、次のターン、Mika Roinistoは《打開》X=0からの全力発掘。
この結果、、《ゴルガリの凶漢》の能力でライブラリに戻った1枚を含める、4枚の《ナルコメーバ》が場に登場し、墓地に落ちたのは、《エメリアの盾、イオナ》、3枚の《黄泉からの橋》、《戦慄の復活》2枚。
《戦慄の復活》によって、10体のトークンとともに《エメリアの盾、イオナ》が戦場へとあらわれ、《引き裂かれし永劫、エムラクール》の攻撃をもものともしないパーマネントを用意したMika Roinistoの勝利。
藤本 0-1 Mika Roinisto
特殊なリソースである墓地を活用するドレッジ。一般的に墓地対策をメインからすることは非常に少なく、メインボードでの勝率が圧倒的に高いと言われるドレッジを選択したMika Roinisto。
サイドボード後は対策カードの存在のために非常に難しい駆け引きが求められることが多く、レガシーの経験が少ないプレイヤーには難解なマッチとなることが多い。
実際、藤本はレガシーの経験が豊富なわけではなく、サイドボードも少し悩みながら行っていた。
結局ドレッジエンジンが回りだすことはなく、藤本が《引き裂かれし永劫、エムラクール》と《大祖始》を《騙し討ち》でレッドゾーンへと送り込み、勝利を手にした。
藤本 2-1 Mika Roinisto
日本代表勝利!
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁 Game 1
三原 槙仁 |
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎 Game 1
石田 龍一郎 |
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁 Game 2
Mikko Nurmi |
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎 Game 2
Markku Rikola |
藤本 知也 |
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 1
先手はMika Roinisto。藤本は土地が0枚という厳しい7枚をマリガン。 Mika Roinistoは1ターン目に《入念な研究》から、ディスカードは《臭い草のインプ》と《ゴルガリの凶漢》。 メイン最強の代名詞、ドレッジが対戦相手だ。Mika Roinisto |
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 2
レガシー経験の乏しい藤本。たどたどしい手つきで、対戦相手の《入念な研究》を《目くらまし》。 さらに《思案》。見つけたのは値千金の《外科的摘出》。これによって、対戦相手の墓地にある《ゴルガリの墓トロール》を追放し、Mika Roinistoの要の発掘カードを取り除くことに成功する。 さらに、手札を見ると、発掘カードを持っていないことが判明。少しもたついている相手をしり目に早々に《騙し討ち》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》を決めて、勝ち星を取り戻した。 藤本 1-1 Mika Roinistoレガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 3
マリガン後、《ライオンの瞳のダイアモンド》+《綿密な分析》という実質の1ターンキルもあり得るロケットスタートをするMika Roinisto。 《ライオンの瞳のダイアモンド》によってディスカードされた中には《臭い草のインプ》があり、《綿密な分析》によるフラッシュバックのドローに発掘パーツがあれば、さらなる加速が期待される。 そして捲れる《ゴルガリの墓トロール》。 何とか、そこからの展開は《黄泉からの橋》と《イチョリッド》と、比較的軽傷で済んだのだが、そんなことは言っていられない。 藤本は《思案》を絡めながら、手札を整理する。 発掘パーツを追加で捲れなかったMika Roinistoは祈るようにドロー。ここで《セファリッドの円形競技場》をトップデッキ。ディスカード手段を手に入れた途端に、爆発的な動きも期待できる状態だ。 さらには、先ほど出てきた《ナルコメーバ》と《イチョリッド》がダメージを刻みだす。 土地か《入念な研究》、《打開》を引かれるとかなり厳しくなってしまう藤本、できるだけ早くキーパーツに辿り着くために、《渦まく知識》、《思案》とライブラリを掘り続ける。 何とか《騙し討ち》に辿り着いて、次のターンが来れば勝利が目前という所までやってくる。 このタイミングで、Mika Roinistoがトップデッキするのは2枚目の《セファリッドの円形競技場》。RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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