By Takeshi Miyasaka & Shiro Wakayama
国別対抗戦の一回戦が行なわれる前に、必ず賞金がもらえる各国の代表者はそれぞれの銀行口座や必要書類の提出などを要求されていた。賞金の支払いに伴う必要事項であり、プロツアーを転戦するプロプレイヤーにとっては馴染みの儀式ともいえる。
石田 「ここなにを書けばいいんすか?」
初めてのプロツアーがこの世界選手権である日本王者・石田 龍一郎にとっては、もちろんこの書類を書くこと自体が初めてのこと。そのすべての質問に答えている三原 槙仁は、石田にとって先達の師といった立ち位置に鎮座しているように見える。藤本 知也も三原に逐一書き方を聞いていて、まるで三原がみんなの兄だか父だかのように写った。

三原がセンターに座り、両脇を石田と藤本が固めている。日本選手権の決勝を戦ったのは石田であり藤本であるが、この日本代表チームに関してはまだ経験が浅い二人の若人を老練な三原が率いるというチーム構成となっているのだろう。
書類の提出が終わり、慌ただしく各選手が自身のデッキをシャッフルし始めた。国別対抗戦は、チームの勝利はそのまま勝ち点 9に繋がる。通常の3倍勝利が美味しく、通常の3倍敗北が厳しい。
そんな美味しくも厳しい国別対抗戦の初戦では、ともにチームの獲得点数が33点、7位のフィンランドと11位の日本が対決する。

レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁 Game 1
 |
三原 槙仁 |
三原にマリガンの是非を相談する石田と藤本。ゲーム中も三原が司令塔とするチームの方向性となっているようだ。それゆえに、石田がスタンダードとなった瞬間「レガシーについての知識が皆無である」藤本がレガシー、三原がモダンを担当することになったのは必然ともいえよう。
石田曰く、モダンとレガシーのデッキはどちらも三原が調整し、用意したものだという。少なくとも石田に関して言えば三原の存在は精神的支柱であり、頼るに十分たる存在となっている。歳が離れ、実績もある人間がチームに一人いるだけで、ワントップのチームとはうまくいくものであるかもしれない。
三原はペイライフでの《》で相手の手札を確認する立ち上がり。対戦相手のMikko Nurmiが操るのはバーンデッキのようだ。三原は《》、ついで《》とセットするのに対し、一方のMikko Nurmiは《》《》から《》スタート。
三原は《》をセットしてゴーすると、Mikko Nurmiが戦闘フェイズに入ったところで《》を瞬速でプレイして攻撃を抑制、帰ってきたターンには《》をプレイと、地上はがっちりな流れだ。Mikko Nurmiは《》で三原のライフを 14 へ。
ターン終了時に《》をプレイして入手した《》でMikko Nurmiのライフを狙いに行く。
三原に殴りかかることなく消えていった《》だが去り際に三原のライフを13とし、さらに《》でライフを10へ。三原はその間に《》の2枚目をプレイし、《》で両者を回収するプレイを見せる。

4マナをそろえたMikko Nurmiは手元のライフメモに目をやり《》! が、これを《》でカウンターする三原。突然死は許さない。
《》で《》2枚を回収しながら《》でコツコツと殴り続ける三原と、ターン終了時、メインと隙あらば火力呪文を叩きつけるMikko Nurmi。三原のライフは 4 まで落ち込んだが、《》をマナを支払って三原がプレイすると、手札には火力が満載だがインスタント火力はない。


安全確認を済ませた三原が《》を《》にエンチャントしてコンボを決めた。
Mikko Nurmi 0-1 三原 槙仁
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎 Game 1
 |
石田 龍一郎 |
三原の右隣でゲームを進めている石田の様子を見に行くと、石田の墓地には《》と《》があり、Markku Rikolaの墓地には《》と《》が。Markku Rikolaが《》でクリーチャーやトークンを一掃したところのようだ。
石田は《》をプレイして土地を追加すると、Markku Rikolaも《》でこの攻撃を押しとどめようとする。しかし、《》はパワー6の弩級クリーチャー。ワンパンチで轟沈する。さらに石田が《》をプレイすると、Markku Rikolaはカードを片付けた。
Markku Rikola 0-1 石田 龍一郎
モダン:Mikko Nurmi vs 三原 槙仁 Game 2
 |
Mikko Nurmi |
《》タップインするMikko Nurmiに対して、三原は《》から《》をX=1で設置する。Mikko Nurmiはとりあえず双子コンボ相手の基本サイドボードである《》を戦場へ投入し、三原も《》をとりあえず。
《》キープしたのかドローゴーするMikko Nurmiに、三原は《》でライフを相手に与えながら《》をプレイ、対処カードがいくつかあるのを確認したのち《》をプレイしてライブラリを掘り進む。
またもやドローゴーするMikko Nurmiのターン終了時に、三原は《》をプレイ、メインで《》を《》にエンチャントし、地上をがっちりしさせつつ上から《》で殴るモードに入る。
殴りながら、左隣で藤本が《》で戻すカードを悩んでいるのに対してアドバイスを出す鬼神のような働きである。
Mikko Nurmiがようやく展開したクリーチャーは《》。そのターン終了時に《》のコピーと、《》を戦場へ追加すると、メインに《》で攻撃し、左隣でマリガンを悩んでいる石田にアドバイスをし、戦闘終了後に《》へ《》をエンチャントする。
トークンが邪魔で殴れないMikko Nurmiは、《》で三原のライフを狙う。三原は《》を X=2で設置して起動して《》を破壊しにかかるが、対応して《》を《》されてしまう。
「あー、ミスった!」と思わず声をあげた三原は、対応して《》と《》のコピーをそれぞれ生産し、《》《》と《》が2枚に《》《》が墓地へと落ちる大量破壊に成功した。三原は《》と《》のコピーでライフを削る。
ターン終了時に、三原のボードに残されたアタッカーは《》ただ一枚。
だが、すでに危険域に達していたMikko Nurmiのライフを削りきるまでこのフェアリーを守りきることは、カウンターを抱えた三原には造作もないことだった。
Mikko Nurmi 0-2 三原 槙仁
スタンダード:Markku Rikola vs 石田 龍一郎 Game 2
 |
Markku Rikola |
《》《》という好スタートのMarkku Rikolaに対して、石田も《》《》と好ダッシュ。Markku Rikolaがプレイした《》は《》でビースト・トークンへと姿を変えさせる。たたき割る。
しかし、Markku Rikolaが《》をおかわりしたところで天秤がぐらりとMarkku Rikola側へと傾いていく。《》が剣を装備して石田に殴りかかる。石田も《》を戦場へ投入して打撃力を上げてはみるが、Markku Rikolaの《》によって対消滅させられ、《》 2 体がレッドゾーンへと送り込まれる。うち一体は剣を手に握りしめて。
あっという間に致死量の毒が回った石田は、サイドボードに手をかける。
Markku Rikola 1-1 石田 龍一郎
 |
藤本 知也 |
では、レガシー担当。本日のスタンダードラウンドを5勝1敗と、日本のスコアラーとして活躍した藤本の雄姿をチェックしよう。
藤本は、即死コンボもある《》&《》によって、《》や《》といった、超強力クリーチャーを高速でレッドゾーンへと送り込む、通称「Sneak Show」デッキ。
さらに勝ち星を重ねることができるのか?
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 1
先手はMika Roinisto。藤本は土地が0枚という厳しい7枚をマリガン。
Mika Roinistoは1ターン目に《》から、ディスカードは《》と《》。
メイン最強の代名詞、ドレッジが対戦相手だ。


対する藤本は《》と《》。さらには《》。そして《》というマリガン後としては完璧に近いハンドからさらに《》で手札の充実を図る。
Mika Roinistoは《》で発掘した《》を生贄に捧げて《》をプレイ。
藤本が見せた情報は《》と《》のみ。
メイン最強デッキであるドレッジ。相手の動きをけん制するのではなく、自らのベストを追及するために、指定は《》。

手札に、レガシーの代名詞《》はなし。さらなる《》で、発掘を繰り返す。
藤本は手札にあった《》で《》を降臨させるも、次のターン、Mika Roinistoは《》X=0からの全力発掘。


この結果、、《》の能力でライブラリに戻った1枚を含める、4枚の《》が場に登場し、墓地に落ちたのは、《》、3枚の《》、《》2枚。


《》によって、10体のトークンとともに《》が戦場へとあらわれ、《》の攻撃をもものともしないパーマネントを用意したMika Roinistoの勝利。
藤本 0-1 Mika Roinisto
 |
Mika Roinisto |
特殊なリソースである墓地を活用するドレッジ。一般的に墓地対策をメインからすることは非常に少なく、メインボードでの勝率が圧倒的に高いと言われるドレッジを選択したMika Roinisto。
サイドボード後は対策カードの存在のために非常に難しい駆け引きが求められることが多く、レガシーの経験が少ないプレイヤーには難解なマッチとなることが多い。
実際、藤本はレガシーの経験が豊富なわけではなく、サイドボードも少し悩みながら行っていた。
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 2
レガシー経験の乏しい藤本。たどたどしい手つきで、対戦相手の《》を《》。
さらに《》。見つけたのは値千金の《》。これによって、対戦相手の墓地にある《》を追放し、Mika Roinistoの要の発掘カードを取り除くことに成功する。
さらに、手札を見ると、発掘カードを持っていないことが判明。少しもたついている相手をしり目に早々に《》+《》を決めて、勝ち星を取り戻した。
藤本 1-1 Mika Roinisto
レガシー:Mika Roinisto vs 藤本 知也 Game 3
マリガン後、《》+《》という実質の1ターンキルもあり得るロケットスタートをするMika Roinisto。
《》によってディスカードされた中には《》があり、《》によるフラッシュバックのドローに発掘パーツがあれば、さらなる加速が期待される。
そして捲れる《》。
何とか、そこからの展開は《》と《》と、比較的軽傷で済んだのだが、そんなことは言っていられない。
藤本は《》を絡めながら、手札を整理する。
発掘パーツを追加で捲れなかったMika Roinistoは祈るようにドロー。ここで《》をトップデッキ。ディスカード手段を手に入れた途端に、爆発的な動きも期待できる状態だ。
さらには、先ほど出てきた《》と《》がダメージを刻みだす。
土地か《》、《》を引かれるとかなり厳しくなってしまう藤本、できるだけ早くキーパーツに辿り着くために、《》、《》とライブラリを掘り続ける。
何とか《》に辿り着いて、次のターンが来れば勝利が目前という所までやってくる。
このタイミングで、Mika Roinistoがトップデッキするのは2枚目の《》。



結局ドレッジエンジンが回りだすことはなく、藤本が《》と《》を《》でレッドゾーンへと送り込み、勝利を手にした。
藤本 2-1 Mika Roinisto
日本代表勝利!