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ワールド・マジック・カップ2016
第4回戦:スコットランド代表 vs. カナダ代表
Tobi Henke / Tr. Tetsuya Yabuki
2016年11月18日
第4回戦、モダン・ラウンドに移って最初のフィーチャー・マッチで相見えるのは、互いに2勝1敗のカナダ代表とスコットランド代表だ。ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilsonやアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayneという有名プロを擁するカナダは毎年、ワールド・マジック・カップに強力なチームを送り込んでいる。しかしこれまで目覚ましい活躍を見せることはできておらず、初日を突破できたのも一度きりだ。
一方のスコットランド代表は、着実に活躍を見せてきた。昨年のワールド・マジック・カップでスコットランド代表を率い、トップ8入賞へ導いたステフェン・マレー/Stephen Murrayが今大会でも再びキャプテンを務めている。マレーはこれで4度目の代表入りを果たしているが、他のチームメイトはみなワールド・マジック・カップ初参加だ。
スコットランド代表が選択したデッキは、マルク・ファーガソン/Marc Fergusonの「感染」、ブランドン・バルフォア/Brandon Balfourの「アブザン」、そしてステフェン・マレーの「ブルームーン」の3つ。4人目のメンバーであるケヴィン・パス/Kevin Passはモダン・ラウンドでの戦いをパスし、コーチ役に徹するようだ。
ファーガソンとの「感染」同系対決に臨むのは、プロツアー『アヴァシンの帰還』王者にして現在世界ランキング21位のアレクサンダー・ヘイン。バルフォアの「アブザン」には、「タイタン・シフト」を操るブライアン・スー/Brian Suが当たる。この対決では《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》のコンボを擁するスーの方がごくわずかに有利だろう。カナダ代表のコーチ役は、グランプリ・モントリオール2016で準決勝まで進出したフェリックス・ツェ/Felix Tse。彼はスーの隣に座りアドバイスを送り、ヘインとウィルソンには戦いを任せるようだ。
「ヴァラクート」デッキにはマレーの繰り出す《血染めの月》が効くが、彼の相手は「アブザン」、しかもその使用者はモダンのプロツアーで2度のトップ8入賞を果たしているジェイコブ・ウィルソンだ。青系のコントロール・デッキと黒緑をベースにしたミッドレンジ・デッキの伝統的な対決は、どちらに転ぶかわからない。この試合の見どころになるだろう。
A席:マルク・ファーガソン(感染)vs. アレクサンダー・ヘイン(世界ランキング21位/感染)
ファーガソンは《樹木茂る山麓》、《ぎらつかせのエルフ》、《荒廃の工作員》、《古きクローサの力》、《怨恨》、《変異原性の成長》、《よじれた映像》という初手をキープ。《よじれた映像》が「感染」のメインデッキに採用されるのは珍しいが、同じ「感染」デッキや《呪文滑り》が多く見受けられる環境にはうってつけだろう。
一方のヘインはダブル・マリガンを強いられ、マナを生み出せるのが《墨蛾の生息地》と《貴族の教主》のみという手札をキープ。しかし幸運にも《霧深い雨林》がライブラリー・トップにあり、その後2枚目も手に入れると淀みなく動くことができた。
ファーガソンは1ターン目に《ぎらつかせのエルフ》を繰り出し、続けてヘインの《貴族の教主》を除去するか考えた。だが彼も《貴族の教主》を戦線に加えることを選択し、ヘインに毒カウンター2個を与える。ヘインが《荒廃の工作員》を展開してターンを渡すと、《よじれた映像》で《貴族の教主》を除去された。ファーガソンは《ぎらつかせのエルフ》に《怨恨》を付けて攻撃。《貴族の教主》の「賛美」によって4/2に......
のちにヘインは語る。「ここが試合の決め手だったね。《荒廃の工作員》でブロックする手があったし、今では相討ちに取るべきだったと思う。でも相手が《変異原性の成長》を2枚持っていなければ、返しの《荒廃の工作員》の攻撃で勝てたんだ。まあ2枚持たれてたんだけど」
「2ゲーム目は《呪文滑り》を出されて、それを除去できなかった。基本的にはそれで勝負が決まるよね」と、ヘインは付け加えた。勝負は決した。スコットランド代表が1勝を得る。
マルク・ファーガソンがアレクサンダー・ヘインを2連勝で下す。
B席:ブランドン・バルフォア(アブザン)vs. ブライアン・スー(タイタン・シフト)
スコットランドのブランドン・バルフォアは、第1ゲームの攻め手に欠けた。効果的な手札破壊もできず、スーのゲーム・プランを崩せない。そうなれば、「タイタン・シフト」は定石をしっかりと打てる――土地をサーチし、《稲妻》でクリーチャーを除去して時間を稼ぎ、そして《風景の変容》から大量の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》2枚を繰り出して一撃でゲームを終わらせたのだ。
第2ゲームは面白い展開になった。スーは3枚目の土地を置けず、一方のバルフォアは4ターン目までに《深き闇のエルフ》、《思考囲い》、《残忍な剥ぎ取り》、《タルモゴイフ》、《漁る軟泥》と快調な動きを見せ、そしてついに《ヴェールのリリアナ》も降り立った。
しかし、《ヴェールのリリアナ》の[+1]能力によってスーは《強情なベイロス》を繰り出すことに成功し、さらに2枚の《桜族の長老》がマナを伸ばす助けとなった。だがバルフォアの軍勢が襲いかかり、スーは劣勢に立たされる。
それでもスーは、《カルニの心臓の探検》と「フェッチ・ランド」で7枚の土地を揃え、さらに《原始のタイタン》を唱えた。《原始のタイタン》の能力で《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の能力が1回誘発し、《ヴェールのリリアナ》を退場させると、《原始のタイタン》は強力なブロッカーとしてバルフォアの前に立ちはだかった。
そしてスーは再び《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で一挙21点のダメージを叩き出し、敗色濃厚のゲームを覆したのだった。
ブライアン・スーがブランドン・バルフォアを2連勝で下す。
C席:ステフェン・マレー(ブルー・ムーン)vs. ジェイコブ・ウィルソン(アブザン)
他のふたつの試合が2連勝で素早く決着し、勝負はこの試合に委ねられた。
第1ゲーム、マレーは《稲妻》と《瞬唱の魔道士》、残りが土地という初手をキープし、一方のウィルソンは3枚目の土地を引き込めないまま戦うことになった。しかしこのゲームでは、マナ・フラッドよりマナ・スクリューの方が好ましいことがマレーによって証明される結果となった。
「《タルモゴイフ》の除去を失敗したのが痛かった」とマレーは試合後に語った。「あんなことをやったのは初めてだよ。《収穫の火》の使い方を間違えた。墓地からインスタントをすべて追放したんだけど、もちろん《収穫の火》自身もインスタントだから、もう1枚墓地を追放しないといけなかったんだ」
マレーは第2ゲームも土地5枚を含む初手をキープ。今度は《祖先の幻視》があり、ウィルソンの《コジレックの審問》の前に「待機」させることができた。もう1枚は《謎めいた命令》で、これも《コジレックの審問》に引っかからない。
そこからゲームは長引き、《未練ある魂》によるトークンと《ヴェールのリリアナ》を盤面に持つウィルソンがリードしていた。しかしここで、すべてをひっくり返す強烈なターンを迎える。《イゼットの静電術師》がトークンをすべて除去し、《稲妻》が《ヴェールのリリアナ》を撃ち抜き、さらに《血染めの月》がウィルソンの土地を黒マナ源ひとつと大量の赤マナ源に変えたのだ。ウィルソンは体勢を立て直すことができず、間もなくして《嵐の神、ケラノス》がマレーに勝利をもたらしたのだった。
第3ゲームは、ここまでの2ゲームにも増して激しい交換が行われた。《コジレックの審問》が《焼却》を取り去り、《タルモゴイフ》に《呪文嵌め》が当てられる。それでもウィルソンは2枚目の《タルモゴイフ》と《未練ある魂》を通し、やや優位に立った。マレーの《祖先の幻視》が「待機」から明けても、ウィルソンは動じない。《血染めの月》に対する《突然の衰微》も構えていた。
ミスプレイや大きな逆転は起こらなかった。小さなアドバンテージを積み重ねる展開だ。そしてそういう展開になれば「アブザン」の多芸さが発揮され、青赤のコントロール・デッキを打ち破るすべを見出すことができる――使い手がジェイコブ・ウィルソンであり、土地を引き過ぎていないなら、これは必然だろう。
ジェイコブ・ウィルソンがステフェン・マレーを2勝1敗で下す。
カナダ代表が2勝1敗でスコットランド代表を破り、成績を3勝1敗に伸ばした!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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