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モダンホライゾン3発売記念 東西モダン最強決定戦2024
達人が選択した『モダンホライゾン3』環境のデッキ 東西モダン最強決定戦エキシビションマッチカバレージ
7月21日。
東日本と西日本からそれぞれ3名の強豪が集結した。東京大会289名、大阪大会146名、それぞれのトップである。招待された選手たちはモダンでのチーム戦にのぞむ。日本マジック界の総本山、そこはウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本オフィス!
残念ながら配信がかなわず、一般プレイヤーは観戦することができなかった、貴重なエキシビションマッチの模様をお届けする。
東のデッキ選択
東西から集まった6人は事前に対戦相手を知らされている。つまり、対戦相手が使うデッキを予想したうえでのデッキ選択が可能というわけだ。そこで今回は、エキシビションマッチ前の、チームで使用するデッキ選択から取材を行った。
なお、同一チームで同名カードの使用制限は特にないが、同アーキタイプを複数名が使用することはできない。
東陣営
松浦:「相手のデッキを予想してデッキを選ぶってはじめてです。おもしろいですね」
松浦 拓海(27歳・千葉)
Hareruya Pros所属。東エリア大会は「ボロス・エネルギー」を使用し準優勝。
プロツアーでは過去に2度トップ8入賞。
小坂:「というか、メインデッキからデッキ予想して効くカードを入れるのは大丈夫なんですかね?」
――運営はこれを認めた。むしろ、こうした機会でしかなかなか見ることができない「ミクロなメタゲーム」を楽しんでほしいという考えだ。
小坂 和音(30歳・埼玉)
東エリア大会では「ボロス・エネルギー」で3位入賞。
「世界選手権2023 準優勝」、「Redbull Untapped2020 優勝」など。
松本:「だとしても、それは対戦相手も同じ。向こうの対策を乗り越えるデッキを持ち込むのもいいかも」
松本 友樹(33歳・東京)
BIGs所属。東エリア大会では「ナドゥ・コンボ」で優勝。
「第27期モダン神挑戦者決定戦」でも「ナドゥ・コンボ」で優勝しており、日本屈指のナドゥマスターとして知られる。
対戦組合せと各エリア大会での使用デッキ
- 先鋒 小坂(ボロス・エネルギー)VS. 日下部(ボロス・エネルギー)
- 中堅 松浦(ボロス・エネルギー)VS. 田中(エルドラージ・トロン)
- 大将 松本(ナドゥ・コンボ)VS. 堀(黒単ネクロ)
小坂:「松浦さんと対戦する田中さんは最近の大会結果を見るとエルドラージ・トロンが多い」
松浦:「これはエキシビションマッチにむけて練習してる感ある!相手がトロンで間違いないならバーンという手も」
小坂:「なるほどね!」
4 《エルドラージの寺院》 1 《沼》 4 《ウギンの迷宮》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 2 《ウルザの物語》 4 《ウルザの塔》 -土地(23)- 4 《運命を貪るもの》 2 《約束された終末、エムラクール》 2 《再誕世界、エムラクール》 -クリーチャー(8)- |
3 《全ては塵》 3 《虚空の杯》 4 《探検の地図》 2 《解放された者、カーン》 4 《大いなる創造者、カーン》 4 《コジレックの命令》 2 《反発のタリスマン》 3 《一つの指輪》 1 《地獄料理書》 3 《三なる宝球》 -呪文(29)- |
1 《街並みの地ならし屋》 2 《四肢切断》 1 《攪乱のフルート》 1 《罠の橋》 2 《カーンの酒杯》 1 《液鋼の塗膜》 1 《隔離するタイタン》 1 《一つの指輪》 2 《石の脳》 1 《トーモッドの墓所》 1 《ウルザの物語》 1 《ワームとぐろエンジン》 -サイドボード(15)- |
松浦:「早いデッキは《虚空の杯》と《三なる宝球》に頼っている感ある」
松本:「いまのトロンはその置物でハメるパターンが多いですよね」
松浦:「エネルギーデッキだとそのパターンはかなり厳しそうだし、それならメインに《粉々》4枚入りバーンで!」
小坂:「おもしろい!」
松浦:「ルビーストームにも強そう。サイドには《減衰球》4枚!これは勝ちだな……!」
松本:「公開制のトロンは《虚空の杯》を探すマリガンするだろうからこっちは《粉々》を探そう」
小坂:「松本さんの相手は黒単ネクロドミナンスで優勝した堀さん。強さにくわえて面白さでもデッキを選ぶ傾向がありそうです」
松浦:「松本さんはナドゥ・コンボですよね」
松本:「そうだね。当然向こうからもそう思われてるだろうね……」
松本:「ナドゥ・コンボは強いけれど、《減衰のマトリックス》とかやられるとねえ。《有翼の叡智、ナドゥ》をデッキからひっこぬくカードもやばい。除去・ハンデス+《外科的摘出》とかね。そのへんをつかわれるかどうか」
松本:「対策の対策をするのはデッキが弱くなるから悩みどころ。サイドボードに1枚《有翼の叡智、ナドゥ》を置いておいて、《有翼の叡智、ナドゥ》を《外科的摘出》されても《きらめく願い》でウィッシュできるようにする。《スカイクレイブの亡霊》みたいな不純物も入れて、相手の1枚のカードで詰まないようにしようかな」
小坂:「僕が難しいんですよね。日下部さんはいろんなデッキを使う印象があります」
松本:「基本的には強いデッキを使ってくると思う」
小坂:「ナドゥ・コンボもありうるか……」
小坂:「実はライブラリーアウトもありかなって思っているんですよね。ナドゥ・コンボにもエネルギーデッキにも有利そうで」
松浦:「このあいだ、プロツアー予選も勝ってましたよね。『モダンホライゾン3』のカードほとんど使ってないのにすごい」
松浦:「正直、エネルギー使っててライブラリーアウトに勝てたことないですよ。《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》で25枚くらい削られたりして……」
小坂:「ナドゥ・コンボが来ても切削+《外科的摘出》コンボで勝てそう!デッキ用意しておくので練習付き合ってください!」
西のデッキ選択
――一方そのころ西の3人は……
田中:「エルドラージ・トロンを使おうと思います。松浦さんはアグロやバーンの印象が強いですからヘリオッド・カンパニーなども検討しましたが、《魂の導き手》が与える飛行で乗り越えられてしまいそうです」
田中 隆(29歳・大阪)
西エリア大会は「エルドラージ・トロン」を使用し準優勝。
「第19期関西帝王戦モダン トップ8」など。
堀:「《精霊龍、ウギン》の枠を《ワームとぐろエンジン》にするのもアリ」
――田中はエルドラージ・トロンを選択。しかし東の3人が予想したような序盤の妨害を《虚空の杯》と《三なる宝球》に頼った形ではなく、《難題の予見者》を4投した形だった。最終的に提出したリストには《ワームとぐろエンジン》が2枚投入されていた。
まさに東の目論みを"粉々"にするデッキ選択。
堀:「松本さんは当然ナドゥでしょう」
堀:「一点読みでネオブランドでいきます」
堀 雅貴(32歳・大阪)
西エリア大会は「黒単ネクロドミナンス」を使用し優勝。
「第18期関西帝王戦レガシー 優勝」「チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2(モダン) トップ15」など。
――そう、堀はナドゥを対策するのではなく、ナドゥに対策させることを選んだ。妨害がなければ1ターン目での決着が起こりうる、"理論上モダン最速デッキ"で《有翼の叡智、ナドゥ》よりも早く《グリセルブランド》を繰り出して勝ってしまおうというのだ。
《アロサウルス乗り》をピッチコストで唱え、それを《新生化》して《グリセルブランド》を召喚。大量にドローし、《滋養の群れ》で大量ライフゲイン、ふたたび大量ドロー……を繰り返してライブラリーを引き切ることができる。《絡み森の大長》が絡めば1ターンキルも可能。ネオブランドは超高速のコンボデッキだ。
日下部:「裏をかけそうでよさそう!ナドゥはサイド後もネオブランドに有効なカード少なそうだね」
日下部:「僕はマルドゥ想起かマルドゥ・エネルギー、ジェスカイ・コントロールか出産オセロットか……候補を4つくらいまでには絞れたんですが、どれ使ってもそこそこ勝つみたいな感じなんでお二方にもご意見伺いたいです!普段ノリでマジックやってるので何も分かりません!!」
日下部 恭平(37歳・大阪)
BIGMAGIC MTG Manager"くーやん"。西エリア大会は「ボロス・エネルギー」を使用し3位。
「グランプリ横浜 優勝」「グランプリインディアナポリス 優勝」など。
――東西どちらも3位マッチのデッキが予想しにくく、デッキの選択に時間をかけていた。はたしてどのようなデッキを選択したのか。
デッキお披露目
――双方チームがそろった。まずは3位マッチからお互いのデッキリストを交換する。なお、サイドボードはゲーム終了時まで公開されない。
4 《霊気拠点》 2 《栄光の闘技場》 4 《乾燥台地》 1 《血の墓所》 3 《血染めのぬかるみ》 1 《優雅な談話室》 1 《神無き祭殿》 3 《湿地の干潟》 1 《山》 1 《平地》 1 《大音声の劇場》 1 《聖なる鋳造所》 -土地(23)- 4 《魂の導き手》 2 《敏捷なこそ泥、ラガバン》 4 《ナカティルの最下層民、アジャニ》 2 《オークの弓使い》 4 《色めき立つ猛竜》 4 《火の怒りのタイタン、フレージ》 -クリーチャー(20)- |
4 《電気放出》 1 《稲妻》 4 《思考囲い》 2 《静牢》 4 《鏡割りの寓話》 2 《不安定な護符》 -呪文(17)- |
1 《致命的な一押し》 1 《敏捷なこそ泥、ラガバン》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《陽光浄化者》 4 《過酷な指導者》 2 《未認可霊柩車》 3 《減衰のマトリックス》 1 《湧き出る源、ジェガンサ》 -サイドボード(15)- |
1 《栄光の闘技場》 3 《乾燥台地》 1 《血の墓所》 3 《血染めのぬかるみ》 2 《神無き祭殿》 4 《湿地の干潟》 1 《山》 1 《平地》 1 《大音声の劇場》 2 《聖なる鋳造所》 1 《薄暗い裏通り》 1 《沼》 -土地(21)- 4 《魂の導き手》 4 《ナカティルの最下層民、アジャニ》 4 《オークの弓使い》 1 《マルコフ家のソリン》 3 《火の怒りのタイタン、フレージ》 4 《悲嘆》 3 《孤独》 -クリーチャー(23)- |
4 《儚い存在》 4 《致命的な一押し》 1 《マラキールの再誕》 3 《思考囲い》 1 《不死のさざ波》 3 《鏡割りの寓話》 -呪文(16)- |
2 Wear+Tear 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《陽光浄化者》 1 《空の怒り》 2 《過酷な指導者》 2 《減衰球》 2 《未認可霊柩車》 1 《火の怒りのタイタン、フレージ》 1 《孤独》 -サイドボード(15)- |
小坂:「ミラーぽいけどちょっと違う!」
日下部:「これは……先手が欲しいですね」
蓋を開けてみれば双方とも《火の怒りのタイタン、フレージ》や《ナカティルの最下層民、アジャニ》を軸に組み立てたマルドゥカラーのデッキとなった。ゲーム開始前の双方の印象は「極端な有利不利はなさそう」、一方で「お互いに押し付ける力が強いので先手後手の差が大きい」といったところだ。
続いて中堅、松浦と田中のデッキ選択。
2 《乾燥台地》 2 《血染めのぬかるみ》 1 《焦熱島嶼域》 4 《感動的な眺望所》 3 《山》 2 《聖なる鋳造所》 2 《沸騰する小湖》 4 《灼陽大峡谷》 -土地(20)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《僧院の速槍》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(12)- |
4 《稲妻》 4 《ボロスの魔除け》 4 《粉々》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《溶鉄の雨》 4 《裂け目の稲妻》 4 《批判家刺殺》 -呪文(28)- |
4 《過酷な指導者》 4 《焼尽の猛火》 3 《減衰球》 4 《幽霊火斬り》 -サイドボード(15)- |
1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《エルドラージの寺院》 1 《森》 4 《ウギンの迷宮》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの塔》 -土地(22)- 2 《まき散らす菌糸生物》 4 《難題の予見者》 2 《ワームとぐろエンジン》 4 《運命を貪るもの》 -クリーチャー(12)- |
4 《コジレックの命令》 4 《全ては塵》 4 《探検の地図》 4 《反発のタリスマン》 3 《一つの指輪》 3 《大いなる創造者、カーン》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文(26)- |
1 《虚空の杯》 1 《トーモッドの墓所》 1 《歩行バリスタ》 1 《機能不全ダニ》 2 《漸増爆弾》 1 《金線の酒杯》 1 《石の脳》 1 《罠の橋》 1 《忘却石》 2 《三なる宝球》 1 《一つの指輪》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《街並みの地ならし屋》 -サイドボード(15)- |
――「よし、やはりトロンだ!」と喜ぶ東陣営だったが、メインデッキに《虚空の杯》も《三なる宝球》も入っていないことに気付くと言葉が少なくなっていく。《粉々》4枚ボロスバーンという意表を突く選択だったが、「やってしまったか?」という疑念を前に、もはや笑うしかない。
松浦:「これは先手が欲しいですね……」
雲行きが怪しくなってきたところで、最後に大将戦のデッキ選択。
1 《ドライアドの東屋》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《繁殖池》 2 《森》 1 《神聖なる泉》 1 《迷路庭園》 1 《地平線の梢》 1 《草萌ゆる玄関》 4 《霧深い雨林》 1 《天上都市、大田原》 1 《ペンデルヘイヴン》 1 《変容する森林》 1 《寺院の庭》 4 《ウルザの物語》 4 《吹きさらしの荒野》 1 《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》 -土地(26)- 4 《喜ぶハーフリング》 1 《森を護る者》 2 《機能不全ダニ》 1 《タッサの神託者》 4 《春心のナントゥーコ》 2 《根の壁》 1 《コーの先導》 1 《忍耐》 3 《有翼の叡智、ナドゥ》 -クリーチャー(19)- |
2 《召喚士の契約》 4 《召喚の調べ》 2 《きらめく願い》 4 《手甲》 3 《一つの指輪》 -呪文(15)- |
1 《ブレンタンの炉の世話人》 1 《呪文貫き》 2 《夏の帳》 1 《魂標ランタン》 1 《荒れ模様のストームドレイク》 1 《魂なき看守》 1 《スカイクレイブの亡霊》 2 《時を解す者、テフェリー》 1 《有翼の叡智、ナドゥ》 1 《四肢切断》 1 《忍耐》 1 《秋の騎士》 1 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
1 《繁殖池》 1 《溢れかえる岸辺》 1 《森》 2 《迷路庭園》 1 《島》 4 《霧深い雨林》 1 《汚染された三角州》 -土地(11)- 1 《マルコフ家のソリン》 2 《忍耐》 2 《フレイアリーズの信奉者》 4 《アロサウルス乗り》 1 《グリセルブランド》 1 《暴走暴君、ガルタ》 4 《土着のワーム》 -クリーチャー(15)- |
4 《召喚士の契約》 3 《有毒の蘇生》 1 《夏の帳》 4 《次元の創世》 4 《魔力変》 4 《滋養の群れ》 4 《新生化》 2 《秋の際》 4 《異界の進化》 2 《変わり樹の共生》 2 《モックス・アンバー》 -呪文(34)- |
3 《否定の契約》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 2 Nature's Claim(WWK) 3 《巻き添え》 2 《夏の帳》 2 《嵐の乗り切り》 2 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
東の松本はモダン最強デッキナドゥ・コンボを持ち込んだ。最強への挑戦を西の堀に強いるデッキ選択のはずだったが、その堀が持ち込んだのはモダン最速のデッキ。松本は思いがけず「挑戦する側」にされてしまった。それも、対策カード対策のために弱くしたデッキで……。
堀が調整したネオブランドはフィニッシャーを《マルコフ家のソリン》に担当させた。コンボパーツを探すカードに《アロサウルス乗り》のピッチコストになれる《次元の創世》、《召喚士の契約》で探せる土地として《フレイアリーズの信奉者》も採用されている。一方で、ナドゥ・コンボ相手では1ターンキルを狙うバリューが低いとみて、よりコンボの安定性を求めて《絡み森の大長》は不採用である。
「やはりナドゥだ、メインデッキは2ターンキルへの干渉手段がないぞ!」と沸く西陣営に対し、東陣営は絶句。いや、松本だけが冷静に口をひらいた。
松本:「先手が欲しいですね……」
先鋒戦:小坂(マルドゥ・エネルギー)VS. 日下部(マルドゥ想起)
第1ゲームは日下部が先手を取る。日下部のみマリガンを選択し、6枚の手札でゲーム開始。
《大音声の劇場》による諜報からゲームスタート。トップのカードをキープ。後手小坂は《思考囲い》でご挨拶。《魂の導き手》、《孤独》、《鏡割りの寓話》、《マラキールの再誕》、土地から《孤独》を選択。
気を取り直して日下部は《魂の導き手》をプレイするが、ならばと小坂から2体の《魂の導き手》が登場。日下部が《鏡割りの寓話》をプレイすればその返しに《ナカティルの最下層民、アジャニ》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》。大量に獲得したエネルギーで《魂の導き手》が空を飛び始める。
先手後手が重要なゲーム……とはいったものの、戦場の状況は先手後手が入れ替わってしまったようだ。しかし次のターンの戦闘にあわせて登場した《オークの弓使い》がゲームを動かす。着地1点が猫・トークンを除去し、《ナカティルの最下層民、アジャニ》がプレインズウォーカーとなるが、日下部はゴブリン・シャーマン・トークンを《魂の導き手》で飛ばしてアタック。圧倒的に見えた盤面差を一気に縮め、変身した《鏡割りの寓話》第2面が毎ターン《オークの弓使い》をコピーして火力を飛ばしながらライフとエネルギーを得ようという構え。
「まずいなこれは……」負けじと《鏡割りの寓話》と《不安定な護符》でカードを探すが、なかなか恵まれない。そうしているうちに《悲嘆》まで飛び出し、日下部側のクロックが増大していく。
日下部目線では、小坂が2枚の《不安定な護符》を持っており、ゲームが長引けば不利になる。時間を与えないためにリスクも承知で殴れるクリーチャーで一気にアタックを仕掛ける。
「勝てるシチュエーションを考える……」日下部の猛攻に対し、冷静にブロック指定していく小坂。「《火の怒りのタイタン、フレージ》を引けば勝つぞ!」メインに4枚入っていながら未だその姿を見ていないタイタンを切望する。右腕をこすって磨き上げ、引いたカードは――
「うお!」
お見事、《火の怒りのタイタン、フレージ》!戦場に出したあと、即脱出!《不安定な護符》のダメージも発生させながら《栄光の闘技場》の能力で速攻も与え、一気に押し込む!
「天、才、ということですね……」と自分の"腕"にほれぼれする小坂。日下部も「フレージを引かれたから負けたというより、フレージを見つけて勝つゲームを作られてしまいました」と振り返る。
続いてサイドボーディングへ。
日下部はハンデスをすべてサイドアウトし、《マラキールの再誕》《儚い存在》も減らして「想起」要素を減らした。一方で墓地対策の《未認可霊柩車》、《虚無の呪文爆弾》、そしてエネルギーキラーの《陽光浄化者》をサイドイン。
後手となる小坂は《敏捷なこそ泥、ラガバン》をサイドアウト。こちらも《未認可霊柩車》をサイドイン。
お互いに《火の怒りのタイタン、フレージ》を意識したサイドボーディングだろう。
《火の怒りのタイタン、フレージ》がプレビューで登場した当初、《死の飢えのタイタン、クロクサ》より重い3マナ、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と違ってドローできない、白赤というカラーが弱い――といった理由で「地味」という評価を受けていたが、実際に《火の怒りのタイタン、フレージ》を使ったプレイヤーはすぐに評価を一変させた。
《火の怒りのタイタン、フレージ》はまずボロス・エネルギーで試され、のちに二人が選択したマルドゥカラーやジェスカイのデッキでも採用されている。アグロ、ミッドレンジ、コントロールなど、ゲームレンジ問わず出番があり、今後も「使う側」と「使われる側」にプレイヤーを大別するカードになるだろう。
さて、ゲームに戻ろう。
日下部は諜報ランドからゲームスタート。《孤独》を見つけるとチームメイトに「どう思う?」と意見を求める。手札にはもう1枚の《孤独》があり、白いカードはあってもいいだろう、との判断で上に残す。
「ここで上に置くカード……ピッチコストにできる呪文か?」西陣営の会話は小坂に聞こえたとは思えない。見事な推理だ。小坂は《魂の導き手》をプレイ。返しに日下部から《ナカティルの最下層民、アジャニ》がでてくると小坂からも《ナカティルの最下層民、アジャニ》!そして日下部からは《鏡割りの寓話》。
「うーん、モダンホライゾンのカードしかでてない!」小坂の隣の松浦が戦場を一瞥していう。「いやいや《鏡割りの寓話》は神河!」と小坂は反論するが、松浦は「いいえ、モダンホライゾンのカードです」と聞く耳を持たない。小坂も「失礼!モダホラか!」と飲み込む。実際、『モダンホライゾン3』リリース直後の東西モダン最強決定戦でもよく見かけるカードだった。「モダンホライゾンのカードにひけをとらない」という意味では、《鏡割りの寓話》はモダンホライゾンのカードともいえるかもしれない。
そんな小坂の手にも《鏡割りの寓話》があるが、ここは《オークの弓使い》を優先し、《電気放出》を構える"モダンホライゾン作戦"を選択。
日下部のゴブリン・シャーマン・トークンを小坂は《ナカティルの最下層民、アジャニ》のトークンで相打ちにとり、《ナカティルの最下層民、アジャニ》の変身を誘発させる。しかし変身解決前に日下部から《孤独》、さらに《儚い存在》。これに小坂は構えていた《電気放出》で《孤独》のブリンクを妨害する。
日下部は《ナカティルの最下層民、アジャニ》を追加、伝説ルールを利用して変身に成功するが、これも返しのターンに飛行を持った《魂の導き手》が猫・トークンをかわして撃墜。
《鏡割りの寓話》を変身させ、エネルギーメタの《陽光浄化者》をプレイするが、《キキジキの鏡像》に《電気放出》、受け取ったターンで《静牢》を《陽光浄化者》に!
「やったか!?」と松浦。「さっきからこの人余計なことしか言わないんですけど!」
これには日下部も対応なく、まずは東陣営の先鋒、小坂 和音の勝利!
中堅戦:松浦(ボロス・バーン)VS. 田中(エルドラージ・トロン)
さて、松浦 VS. 田中戦である。
思い切った「じゃんけん」をしかけた東陣営・松浦だったが、対戦相手のエルドラージ・トロンには《粉々》が効きにくい構成であり、厳しいゲーム展開が予想される。先手も田中に取られてしまった。
松浦は1ターン目から《ゴブリンの先達》、2ターン目には《僧院の速槍》を繰り出し攻撃していくが、田中の3ターン目に《難題の予見者》が登場、4/4の壁が高く立ちはだかってしまう。
松浦の3ターン目はアタックができず、ここから攻守が逆転。田中から2体目の《難題の予見者》が登場、逆に殴られ始めてしまう。
「死にそうです……」
やむをえずブロックに回り《難題の予見者》1体を除去するが松浦の戦場は空っぽに。《一つの指輪》で見つかった第3の《難題の予見者》が戦場に出てくると、松浦は投了――
「《難題の予見者》のことは考えてなかったっすね……」
「エネルギーデッキに弱いカードだから、まさか使われると思わなかったね……」
「松浦さんのエネルギーに強いトロンはプリズン要素のあるトロン。だから《粉々》を使おう……で思考が止まってましたね……」
「どうする、あの4/4……」
さあ、サイドボーディング。松浦は《大歓楽の幻霊》4枚を抜いて《幽霊火斬り》をサイドイン。サイドボードにあった唯一《難題の予見者》を除去できるカードだ。
田中は《大いなる創造者、カーン》を抜き、《ワームとぐろエンジン》、《漸増爆弾》を追加。ただでさえ有利な相性差をさらに広げていく。
「まあ、まあ、まあ……やりますけどね?」松浦の手には火力が4枚、土地3枚。「今後に期待……って感じっす」
対する田中はダブルマリガン。喜んでしまいそうになるが相手はトロンである。ウルザトロンや《エルドラージの寺院》は事実上1枚で2枚分のカードであり、松浦の表情は暗い。
1ターン目は松浦から火力、田中から《探検の地図》。2ターン目も松浦から火力、田中は《探検の地図》起動の準備のターンのはずが、《精霊龍、ウギン》を引いたことで手札の《ウギンの迷宮》が2マナ土地に昇格!2ターン目に《難題の予見者》を着地させてしまう。
松浦の手には土地がたまり、《灼陽大峡谷》でキャントリップするが引いたのは《裂け目の稲妻》。状況を打開するカードにはならない。《難題の予見者》に殴られつつ引いた次のターンのドローも土地……
「大丈夫、大丈夫です。アレがありますから」と励ます松本。「そう、アレがね……!」とほくそえむ松浦。《幽霊火斬り》のことだろうか……?
なおも殴られ続けたが次のドローは《ボロスの魔除け》!エンド前に田中に打ち込む。ここまで地道に打ち込んできた火力で田中のライフは残り4!
東西両陣営が緊張して見守る次なるドローは……《稲妻》!「アレ」を引き込むことができず投了……!
「《難題の予見者》強かった……!」
中堅戦は、西陣営の田中 隆が勝利!
大将戦:松本(ナドゥ・コンボ)VS. 堀(ネオブランド)
決着は大将戦へもつれ込む。
「相手は明らかな格上。技量が出るゲームはしたくなかった。だからこそ、このデッキです」
「プロテクション(すべて)を乗り越える方法はなさそう。《一つの指輪》を多めにしてよかった……」
圧倒的に松本「ナドゥ・コンボ」が不利に見えるマッチ相性。先手をとれたのはせめてもの慰みだろうか。堀は6枚、松本は7枚でキープし、ゲーム開始!
松本は1ターン目《手甲》、2ターン目《春心のナントゥーコ》と動き、リーチをかける。通常のマッチならいい展開だが、松本に3ターン目はやってこなかった。
堀は自身の2ターン目に《アロサウルス乗り》を《新生化》!《グリセルブランド》を着地させ、さっそく7ドロー。《土着のワーム》をピッチコストに《滋養の群れ》で15点回復、再度ドロー!これを繰り返していく。
《モックス・アンバー》からマナを確保し、最後に《マルコフ家のソリン》を戦場に。戦闘後メインフェイズに《貪欲なる新生子、ソリン》に変身。膨大な回復ライフをそのまま松本にぶつけて見事2ターンキル!
堀、目論み通りまずは一勝!
サイドボーディング!
一方、松本は相手に《外科的摘出》なしと見て《きらめく願い》とサイドボードの《有翼の叡智、ナドゥ》を入れ替え、当てどころのない《機能不全ダニ》をサイドアウト。「ソリンビーム」をかわす《夏の帳》、そしてたった1枚の《呪文貫き》をサイドイン。決死の第2ゲームにのぞむ。
堀は3マリガン。「ゲーム時間よりマリガンしている時間の方が長そう……」達人同士の居合切りのような緊張感あるマリガン。
松本は《夏の帳》に加え《有翼の叡智、ナドゥ》も《ウルザの物語》も握ってキープしており、対話しつつも隙あらばいつでも刺せる状況だ。
堀の3ターン目。少し悩んで《召喚士の契約》で《アロサウルス乗り》をサーチ。《秋の際》をサイクリング。さらに《次元の創世》でカードを探すが……「終わりです、どうぞ」。次のターンには《召喚士の契約》の後払いの請求が待ちうけているが十分なマナはないように見える。
「何が起きている……?」と小坂。「知らん」と松浦。「ぜんぜんわからんな……新鮮な気持ちで見ています」。松本は「支払いをかわす方法は存在しているので……ワンチャン負けるかもしれない」。
松本は《ウルザの物語》から《手甲》をサーチ。《有翼の叡智、ナドゥ》を着地させ、コンボを開始する。《春心のナントゥーコ》も揃え、そのまま走り切ることもできそうに見えたが、《天上都市、大田原》と《呪文貫き》を構えてエンド。
堀はターンを受け取り「アップキープ」、との発声に続いて投了。
疑問符を浮かべ、困惑を口にしながら観戦する東陣営と対称的に、西陣営は黙してゲームを見守っている。
「いまのは次のターンにナドゥ・コンボが勝ってしまうという確信があったので《秋の際》サイクリングに賭けて突っ込んでみたんですが失敗という感じですね」と堀。たしかに堀のいうとおり、次のターンナドゥ側のコンボが点火した。あそこが堀にとって最終ターンだったのだ。同時に、ナドゥ・コンボの過程でデッキのカードを見ることができた。「《呪文貫き》が見えたのはでかいですね」。松本がコンボを完走させずターンを回したのも、非公開のサイドボードを観られてしまうのを嫌ってのことだったのだろう。
さあ、大将戦は第3ゲームへもつれ込んだ。サイドボーディングを相談する西陣営。「自分との闘いをしましょう」、と日下部。「レガシーのドレッジとかもそうでしょう。対策の対策は全部抜いて、何もさせず最速で勝つ」
「対話が大事ですから……ゆっくりやりましょう!ね」と笑顔を見せる松本。なにせこの3本目はネオブランドの堀が先手である。松本は《夏の帳》を握って7枚でキープ。とはいえ、《手甲》2枚《ウルザの物語》1枚と、《有翼の叡智、ナドゥ》へのアクセス手段がない手である。
「対話は大事ですね!殴りあいましょう。お互い3ターン、ドローゴーするってのはどうです?」とダブルマリガンする堀。小坂から「《アロサウルス乗り》が殴るところが見たい!」と要望が上がるが、「ダブマリしちゃってるから厳しいスね!」
1ターン目はお互いセットゴー。堀はエンド前に諜報ランドをフェッチし、《アロサウルス乗り》を上へ。その宣言に緊張が走るが、「このデッキはね、緑のカードはぜんぶ上なんですよ!」とふたたびセットゴー。松本は《根の壁》を戦場へ。堀からはエンド前に《次元の創世》。
そして堀の3ターン目。《召喚士の契約》。
「はじまったか……」
「はじめます!が、手札が少ないので止まりやすいですね」
《アロサウルス乗り》を《新生化》!《グリセルブランド》が着地する!14枚のカードを引くがつながらず。《モックス・アンバー》のみを置いてライフ1でターンエンド!
3ターン目がやってきた松本、悩む。コンボの要《有翼の叡智、ナドゥ》がなく、このターンに走ることはできない。なら、《ウルザの物語》第2章で作るトークンの価値が非常に高いのでは……?《グリセルブランド》に触ることができる《天上都市、大田原》も引いているがそもそも青マナがない。
「《手甲》を置いて、おわり」
「勝負は誰も予想しなかった展開へ!」
堀は《召喚士の契約》の後払いをすませ、《グリセルブランド》でアタック。ここで互いのライフは堀8点、松本11点。「このままあと2発なぐれれば……!1ターン待ちましょう、エンドです」。まさかの《グリセルブランド》ビート VS. 構築物・トークンビート。
松本はエンド前に構築物・トークン生成、ターンを受け取り第3章解決。《手甲》を戦場に出し、構築物・トークンに《春心のナントゥーコ》を授与。構築物・トークンのコピーを生成し、さらに手札からもう1枚の《手甲》!これで構築物・トークンのパワー8が見える……が、ここに堀から《否定の契約》。リーサルは回避したものの7点のアタックを受けて堀のライフは1。「待った意味!」と堀から悲鳴が上がる。
先ほどとくらべればドロー1回ぶん多いカードで勝負が仕掛けられるのだが……まずは《グリセルブランド》でアタック、ライフを8に戻す。そして決意の7ドロー……が、松本からの《夏の帳》。このターンには敗北することがなさそうだが、堀は《滋養の群れ》を発見し、ライフを13まで戻しつつ《マルコフ家のソリン》。すでに戦闘は終わっているので変身することがなく、《夏の帳》影響下ではそもそもビームが松本を対象に取れない。《有毒の蘇生》で《否定の契約》を手札に抱え、ライフを思いっきり出っ張らせ、《アロサウルス乗り》2体をたててターンエンド!
松本はここでようやく青マナでる土地を得たが、時すでに遅し。《グリセルブランド》をバウンスするも、手札の《滋養の群れ》で大量ライフゲイン、そして《マルコフ家のソリン》変身!
松本の喉首めがけてソリンが襲い掛かる!
大将戦は2-1で堀の勝利!
そして東西モダン最強決定戦エキシビションマッチは西陣営の勝利!おめでとう!
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