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Red Bull Untapped 2021 日本大会
第1回戦:小坂 和音 vs. 小鳥遊 のあ ~ディフェンディングチャンピオン、出陣~
参加費無料の賞金制大会、Red Bull Untapped 2021 日本大会開幕!
フォーマットはヒストリック。対戦はすべてMTGアリーナで行われ、初日はスイスドロー8回戦で上位64名が2日目に進出する。
第1回戦のフィーチャーマッチに選ばれたのは、2ヶ月前に開催されたライバルズ・ガントレットを突破しMPLプレイヤーとなった茂里 憲之のスパーリング・パートナーとしても知られる小坂 和音。昨年のRed Bull Untapped 2020で見事優勝した、いわばディフェンディング・チャンピオンだ。
小坂のデッキはほぼ白単に《集合した中隊》だけタッチした形の「白緑人間アグロ」、対する小鳥遊は《マグマ・オパス》と《ミジックスの熟達》や《奔流の機械巨人》とのコンボが強力な「ジェスカイ・コントロール」。
環境を代表するビートダウンとコントロールとがいきなり激突する格好となった。はたして小鳥遊は、開幕から前年度王者に黒星を付けることができるか。
ゲーム1
赤マナがない手札をマリガンした小鳥遊だったが、土地3枚に《マグマ・オパス》《大魔導師の魔除け》《ミジックスの熟達》という絶好の6枚をキープする。対する小坂もマリガンスタートだが、《エスパーの歩哨》から《光輝王の野心家》を展開して2点アタックとまずまずのスタート。
そのエンド前に予定調和で《マグマ・オパス》を捨てて宝物・トークンを生成したはいいものの、返すターンに3枚目の土地がタップインだった小鳥遊は、ひとまず《大魔導師の魔除け》を構えてターンを終える。
それを見て小坂は3ターン目に《サリアの副官》をプレイ。これに対し《大魔導師の魔除け》で打ち消すか一瞬悩んだ小鳥遊だったが、冷静に着地を許すと、巨大化したクロックに対し最高の解答となる見事なプレイングでこれに応える。
すなわち、《大魔導師の魔除け》の「マナ総量が1以下で土地でないパーマネント1つを対象とし、それのコントロールを得る」のモードで《エスパーの歩哨》のコントロールを奪ったのだ!
これにより小坂は《エスパーの歩哨》の能力でカードこそ引けたものの、せっかく育てた《エスパーの歩哨》を奪われて大幅にテンポロスした格好となってしまう。
他方、しっかりと4枚目の土地を引き込んだ小鳥遊は満を持して《ミジックスの熟達》で墓地の《マグマ・オパス》をプレイ! 8マナの呪文を4マナで唱えるというヒストリックを代表するコンボにより、小坂のクリーチャーが全滅した上で4/4のエレメンタル・トークンが登場+2枚ドローという、圧倒的なアドバンテージを獲得する。
それでも小鳥遊の土地が寝ているうちにと《集合した中隊》を唱え、《精鋭呪文縛り》と《サリアの副官》を着地させる小坂だったが、裏切った《エスパーの歩哨》が《集合した中隊》に反応して逆に小鳥遊にドローを供給する始末。
それでも、《大魔導師の魔除け》《ミジックスの熟達》《奔流の機械巨人》《ドミナリアの英雄、テフェリー》という手札内容から《ドミナリアの英雄、テフェリー》を追放して反撃のチャンスを窺おうとする小坂だったが、返すターンに小鳥遊が引き込んだ《表現の反復》が《邪悪な熱気》をもたらすと、《精鋭呪文縛り》を除去されつつの7点アタックで気が付けば小坂の残りライフはわずか7点しかない。
たまらず、小坂の顔面が爆発した。
小坂 0-1 小鳥遊
MTGアリーナではプレイヤーを示すものとして、20点のライフの部分にキャラクターアイコンが表示されている。そして決着の瞬間は、必ず敗北側のプレイヤーのアイコンが爆発して終わる。だから正確には爆発したのは小坂の顔面ではなく、小坂を表すアイコンである。
だが、プレイヤーはそのアイコンを対戦相手と見なしている。ゆえに「相手の顔面が爆発して勝利」というカタルシスが、MTGアリーナでのゲームに爽快感を与えているのだ。
ゲーム2
先攻の小坂が《エスパーの歩哨》→《サリアの副官》→《精鋭呪文縛り》というロケットスタート。だが小鳥遊は着地に対応して、後手2ターン目に《ポータブル・ホール》を当てずあえて構えていたマナから《チャンドラの螺旋炎》を唱え、《サリアの副官》と《精鋭呪文縛り》を同時に討ち取る好プレイ!
カードを引かれながらも計5マナ分のクリーチャーをわずか2マナで処理することに成功した小鳥遊は、さらに《ポータブル・ホール》で《エスパーの歩哨》をも処理し、クロックを定着させない。
一方、小坂も《集合した中隊》こそ引けていないものの2体目の《精鋭呪文縛り》から《スレイベンの検査官》と展開。この《精鋭呪文縛り》は《稲妻のらせん》で処理されるも、さらに続くターンには2体目の《スレイベンの検査官》を送り出し、単体除去しか引けていない小鳥遊に対して手札を切らさずにクロックを地道に再形成する。
さすがに手掛かりの残りカスであるただの1/2に除去を当てたくない小鳥遊は2点クロックを甘んじて受けるが、さらに《エスパーの歩哨》が戦線に追加される。
が、返す小鳥遊が引き込んだのは《ドミナリアの英雄、テフェリー》! しかも4マナを構えていた小坂からはエンド前の《集合した中隊》は飛んでこず、そうなると《サリアの副官》をトップデッキされない限り、このプレインズウォーカーがしばらく定着するものと思われた。
だが、英雄の登場は「眠れる龍」を呼び覚ましてしまったのだ。
手掛かり・トークンの起動で土地が伸びていた小坂が起動したのは、《フロスト・ドラゴンの洞窟》! 総攻撃によって忠誠度が「5」もあった《ドミナリアの英雄、テフェリー》すら一息に落とされてしまう。さらに2体目の《エスパーの歩哨》が戦線に追加。
小鳥遊もどうにか引き込んだ《プリズマリの命令》で《エスパーの歩哨》2体を屠るが、なおも小坂は《光輝王の野心家》で《スレイベンの検査官》を強化してアタックし、小鳥遊のライフを残り8点まで追い込むと、さらに《イーオスのレインジャー長》で《不屈の護衛》をサーチして展開する!
追い込まれた小鳥遊はまずは《ポータブル・ホール》で《不屈の護衛》を処理すると、《表現の反復》を連打してたどり着いた《稲妻のらせん》で《光輝王の野心家》を除去しつつライフを11点まで引き戻すのだが、返すターンの総攻撃で残りライフはわずかに2点。
それでも小鳥遊は生き残るため、細い道筋を模索する。《奔流の機械巨人》を構えてのターンエンドに対しては《精鋭呪文縛り》で安全確認宣告、やむなく対応してプレイするも、墓地の《稲妻のらせん》を対象に取ったところで《イーオスのレインジャー長》の能力を起動され、ライフ回復は許されない。さらに《黒き剣のギデオン》までもが着地し、絶体絶命。
だが小鳥遊は《焼けつく双陽》で小坂のクリーチャーを薙ぎ払ってからの《奔流の機械巨人》の攻撃で《黒き剣のギデオン》を落とすと、《フロスト・ドラゴンの洞窟》の攻撃に対してはトップしていた《稲妻のらせん》を本体に打ち込み、ギリギリ生き残ることに成功する!
わずかな望みがつながり、あとは《フロスト・ドラゴンの洞窟》を対処できる手段さえ引ければ逆転できる。はたして最後のドローは……?
……無情にも、土地。小鳥遊のアイコンが爆発した。
小坂 1-1 小鳥遊
MTGアリーナでの対戦には、テーブルトップでのそれとは異なる独特の感覚が必要となる。ひとつひとつのプレイに時間をかければ画面の中央に出現する導火線が常に急かしてくるし、相手の表情やわずかな仕草から情報を拾うこともできない。
しかもマジックはもともとインスタントで対戦相手のターン中に干渉ができるため、そもそも刻一刻と状況が変化するゲームである。そんな中で一手の間違いもなくプレイするのは至難の業だ。
たとえばラストターン、小鳥遊にはアップキープに《ヴァントレス城》を起動する選択肢があった。だがそのためにはフルコントロールにするか、あらかじめ相手のターン中に、アップキープに行動ができるようチェックを入れておかなければならない。仮にそれが正解ではなかったとしても、選択肢として検討するためにはそうした特殊な挙動が必要になるのがMTGアリーナでの対戦である。
その意味で、MTGアリーナは良くも悪くもマジックの常識を塗り替えた。そして新たな常識がそうである以上、勝つためにプレイヤーはその新常識に適応しなければならないのだ。
ゲーム3
先攻の小鳥遊がマリガン。さらに後攻2ターン目の《スレイベンの守護者、サリア》にアクションを綺麗にズラされてしまい、《精鋭呪文縛り》で《プリズマリの命令》《ミジックスの熟達》《目覚めた猛火、チャンドラ》《神々の憤怒》という手札から《神々の憤怒》を追放されてしまう。
それでも小鳥遊は《プリズマリの命令》で《スレイベンの守護者、サリア》を除去しつつ宝物・トークンを生成。アンタップインの土地をトップデッキしたなら早くも5ターン目に《目覚めた猛火、チャンドラ》が着地するという構えを見せる。
確かに、クリーチャーが横並びする上に基本的に戦闘以外でプレインズウォーカーを除去する手段を持たない白緑人間相手に《目覚めた猛火、チャンドラ》がひとたび着地したなら、ゲームの趨勢を決めかねないインパクトがあるはずだった。
だが、返す小坂のアクションは《黒き剣のギデオン》!
返しのターンで注文通りアンタップインの土地を引いた小鳥遊だったが、《精鋭呪文縛り》と《黒き剣のギデオン》という盤面に対しては、どの能力を使っても《目覚めた猛火、チャンドラ》が返しで落とされてしまう。《稲妻のらせん》《ミジックスの熟達》と手札に他の選択肢もある中で、小鳥遊の選択は……「構えてエンド」だった。
そして想定したとおり、《黒き剣のギデオン》の[+1]能力に対応して《稲妻のらせん》で《精鋭呪文縛り》を落とす小鳥遊。だが、そこからが誤算だった。
小坂が送り出したのは《イーオスのレインジャー長》! サーチされた《不屈の護衛》 に加えて《スレイベンの検査官》までもが並び、状況が悪化してしまう。
どうにか5マナの《神々の憤怒》を唱えるが、《不屈の護衛》が《イーオスのレインジャー長》を「破壊不能」で守り、《黒き剣のギデオン》と合わせての7点クロックが残って小鳥遊のライフは残り7点。
やむなく今度こそ《目覚めた猛火、チャンドラ》を出して「3点オール」で盤面を流すも、エンド前の《集合した中隊》で降臨したのは致死打点には十分な《輝かしい聖戦士、エーデリン》と《イーオスのレインジャー長》。
再び小鳥遊のアイコンが爆発し、初戦の勝者となったのはディフェンディングチャンピオン・小坂!
小坂 2-1 小鳥遊
テーブルトップとは異なる感覚を要求するとはいえ、MTGアリーナはマジックの新たな楽しみ方を提供する次世代のプラットフォームであることに変わりはない。
であるならば、MTGアリーナでの対戦に適応した小坂や茂里はデジタル世代を代表するプレイヤーと言えるだろう。
そんな彼らが、参加費無料の賞金制大会であるRed Bull Untappedという新世代の大会で覇を競っている。
ネクストジェネレーション同士が掛け合わさったその先に、はたしてどのような化学反応がもたらされるのか。この大会の結末を、ぜひとも最後まで見届けてほしい。
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