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プロツアー『イクサラン』
プロツアー『イクサラン』注目の出来事
Event Coverage Staff / Tr. Tetsuya Yabuki
2017年11月5日
スペシャル・サンクス:コービン・ホスラー/Corbin Hosler、マーク・カルデラロ/Marc Calderaro、フランク・カーステン/Frank Karsten
この週末、ここアルバカーキはさまざまなドラマや盛り上がりの瞬間、楽しさ、そして海賊で満たされました。『イクサラン』の魔法使いたちが集まりお祭り騒ぎを繰り広げ、ニューメキシコ州全体が熱狂の渦に包まれたのです。ここでは未踏の地の大冒険の中で起きた出来事を厳選し、最も注目すべきことをご紹介します。
世界ランキング25位の行弘 賢がドラフトにおける宝物を探し求める
チーム「Musashi」の一員にして現在世界ランキング25位の行弘 賢は、構築フォーマットにおいて他に誰も思い付かないような変わった戦略を取ることで知られています。しかしこの週末、彼はリミテッドにおいてもその独自性を発揮しました。彼が選んだアーキタイプは、緑青の「宝物海賊」。これ自体は何でもタッチできる戦略としてすでに知られていますが、行弘は「何でも」の部分を最大限に広く解釈し、赤のトリプル・シンボルを含む《焼熱の太陽の化身》をタッチしたのです。しかも彼は《嵐を変容する者》を活かし、1ゲームに2度も《焼熱の太陽の化身》を唱えたのでした。
皆さんは真似しないでくださいね。それでも、世界ランキング5位ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonとの第1回戦のビデオ・マッチは必見です。(編訳注:「ニコニコ生放送」タイムシフト視聴でどうぞ!)
注目のチーム:「ChannelFireball」
チーム内最高成績のマイク・シグリスト/Mike Sigristが準々決勝で早々に敗退したものの、この週末はチーム「ChannelFireball」のメンバー全員が見事な成績を収め、信じられないほどの活躍を見せました。初日の成績は6人合計で38勝10敗。全員が2日目へ進出しました。
現在世界ランキング2位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaは最終的に46位、ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasは42位、ベン・スターク/Ben starkは23位という成績を収めます。つい先日プロツアー殿堂顕彰を受けたジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonと現在世界ランキング4位のマーティン・ジュザ/Martin Juzaの両名は、初日のドラフト・ラウンドを全勝しました(スコット=ヴァーガスとダモ・ダ・ロサも全勝です)。そこへマイク・シグリストのトップ8入賞を合わせ、チーム「ChannelFireball」は完璧なスタートを切ったのです!
注目のチーム:「Genesis」
チームシリーズ第2位のチーム「ChannelFireball」に触れて、現在第1位のチームに触れないわけにはいかないでしょう――そのチームは「Genesis」です。実は彼らは、ポール・ポジションを狙える位置にいませんでした......世界ランキング11位のセス・マンフィールド/Seth Manfieldが今大会を制するまでは。それでも彼らは、断じて新しいプロツアー王者がひとりで支えるようなチームではありません。彼らは昨シーズン行われた第1回チームシリーズにて決勝まで駒を進め、チーム「Musashi」に惜しくも敗れたものの準優勝という結果を残しているのです。
そして今、彼らは新たなシリーズの開幕を先頭で迎えました。どうやらもうすでに、前回の雪辱に燃えているようです。それは世界ランキング5位のブラッド・ネルソンのツイートにも表れています。
We may have lost a battle to Musashi, but we will win the war. #Genesis
— Brad Nelson (@fffreakmtg) 2017年11月6日
現時点では、彼らと戦うことになるのはチーム「ChannelFireball」になりそうです。それでも「Genesis」の照準の先には、「Musashi」の姿があるのです。
ヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunが「赤」で垢を落とす
プロツアー『破滅の刻』の準決勝で、現在世界ランキング2位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサを相手に(世界中で話題になるほどのミスを犯し)敗北を喫した、チーム「MTG Mint Card」のヤン・ウィンチャン。彼はあの日の雪辱を果たすべくプロツアーの舞台へ戻ってきました。ヤンは今大会、初日全勝を達成すると勢いそのままにダモ・ダ・ロサも下して10連勝を記録します。彼はあのときと同じく、彼の名を世界的に広めた「ラムナプ・レッド」を手に戦ったのです。
その後は失速したヤンでしたが、この週末は彼にとって、「大ポカをやらかしたプレイヤー」ではなく「強いプレイヤー」として知られるきっかけになったことでしょう。
ちなみに、無敗街道の途中でヤンは、のちにトップ8に入賞するピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowskiとの対戦でゲームを落としています。試合自体はグロゴウスキの負けに終わるのですが、彼はリミテッドでは通常ありえない量の能力を誘発させてゲームを取りました。まさしく、即投了ものです。
《川の叱責》が決勝ラウンドを揺るがす
自身初のプロツアー・トップ8入賞を果たしたピオトル・グロゴウスキは、準々決勝というさらに大きな舞台でもTwitchが大盛り上がりになった素晴らしいプレイを見せてくれました。
パスカル・メイナード/Pascal Maynardとの準々決勝の第3ゲーム、メイナードは固い防衛線を築き、ゲーム後半に向けて着々と準備を進めていました。ゲームが進むにつれて状況は悪化するばかりで、グロゴウスキの決勝ラウンドは終わりを告げようとしていました。
しかしここで彼は《根縛りの岩山》を引き込み、テーブルに叩きつけます。メイナードもすぐに、それが意味することを察しました。《川の叱責》が盤石と思われたメイナードの戦線を押し流し、グロゴウスキが勝利をもぎ取ったのです。
流動するスタンダード環境
プロツアー『イクサラン』を迎えるにあたっては、参加者のほとんどがスタンダードのメタゲーム把握に自信を持っていたことでしょう。ウィリアム・「Huey」・ジェンセン/William "Huey" Jensenが使用し世界選手権を制したことで、「ティムール・エネルギー」が人気を集めるのは明らかでした。それがメタゲーム最上位の座を維持したまま、アルバカーキでのプロツアーを迎えます。
そしてプロツアーでのメタゲームが明らかになると、およそ45%を占めた「エネルギー」系デッキの中で「ティムール・エネルギー」は大方の予想通り最上位に就き、「4色エネルギー」がそれに続きました。「ラムナプ・レッド」もメタゲーム上位に食い込み、こうして現環境は解明されたように思われました。
ですがそう判断するにはまだ早いでしょう。優勝したセス・マンフィールドが使用した「スゥルタイ・エネルギー(『巻きつき蛇』)」は、「エネルギー」系デッキの構築から大きく離れたものでした。盤面の主導権を握り膠着を打破することが何より重視される現環境においては、《人質取り》や《光袖会の収集者》の採用が完璧に噛み合っていたのです。
予想外のデッキはこれだけではありません。ギョーム・マティノン/Guillaume Matignonの「ジェスカイ『副陽の接近』」デッキは誰も意識していなかったものであり、パスカル・メイナード/Pascal Maynardが使用し決勝まで勝ち進んだ「王神の贈り物」デッキは、これほどの活躍を見せるとは思われていませんでした。
「エネルギー」系のデッキが同系対策に《慮外な押収》や《王神、ニコル・ボーラス》を積み、《削剥》や墓地対策の枚数を減らしていったことで、こうした別軸のデッキが活躍できるチャンスが生まれたのです。
マティノンは、「副陽の接近」デッキのサイドボードに《蝗の神》を採用することで《否認》に打ち勝つことができると証明しました――これでサイド後にまったく異なる勝ち手段を用意でき、とりわけ除去呪文を抜いた相手に対して極めて効果的でした。
そして真に驚くべきは、まったく新しいアーキタイプがいくつも登場したことでしょう。《アダントの先兵》はトップ8入賞こそ果たせなかったものの、「白単吸血鬼」は今大会を通して除去呪文に負けず大量のダメージを与えていき、多くの活躍を見せてくれました。また、ウィリー・エデル/Willy EdelのTwitterでの発言によると、彼の属するチームのメンバーが使用した緑白の「『イクサラン』Zoo」は、勝率60%を記録したそうです。そして5人の使用者を集めた「白単吸血鬼」は、全員を2日目へ送り出しました――驚異の進出率100%です。
現行スタンダードの本命デッキは明らかになりました。しかしプロツアー『イクサラン』は、革新的なデッキも活躍できることを私たちに示したのです。
マンフィールドがすべてを手にする
セス・マンフィールドは、もうこれ以上その実力を証明する必要がありませんでした。グランプリ・トップ8入賞11回(うち優勝5回)にプロツアー・トップ8入賞4回、世界選手権2015優勝という輝かしい戦績を打ち立てた彼のことを、世界最高のプレイヤーと評することに疑問はないでしょう。ただし彼にはひとつだけ、(殿堂入りに大きく影響する)欠けたものがありました。それがプロツアー王者のタイトルです。
しかし今や、彼はそれも満たしました。パスカル・メイナードとのスリリングな決勝は、マンフィールドとチーム「Genesis」のメンバーが奮闘した今大会の最後を華々しく飾りました。今大会では、「Genesis」のメンバーのほとんどがまだあまり意識されていない「スゥルタイ・エネルギー」を選択しました。「エネルギー」系のデッキはメタゲームの50%に迫る勢力を築きましたが、《巻きつき蛇》を中心に据えた「スゥルタイ」の形はわずか5%に留まったのです。《巻きつき蛇》とともに、《歩行バリスタ》や《ピーマの改革派、リシュカー》、《牙長獣の仔》は今大会に嵐を呼び起こし、(リミテッドの成績が奮わずメンバーのほとんどがトップ8入賞を懸けた競争からは脱落したものの)全員が目覚ましい成功を収めました。
中でもマンフィールドの活躍は群を抜いていました。準々決勝でギョーム・マティノンを打ち破ると、準決勝では彼のデッキが持つ最高の動きを引き出して4ターン・キルを決めるなど、光速の攻めでサミュエル・イレンフェルト/Samuel Ihlenfeldtを下します。
決勝で待ち受けていたのは、マンフィールドの友人であり自身2度目のプロツアー・トップ8入賞を達成したパスカル・メイナード。彼は序盤から攻勢を握り、第1ゲームを奪います。それでもマンフィールドは第2ゲームを取り返しました。サイド後はマンフィールドの側に分があると「Genesis」のメンバーは見ていましたが、第3、第4ゲームはどちらも見事な動きを見せ、この上ない接戦が繰り広げられました。
そして迎えた最終ゲーム。これほどエキサイティングなものはありませんでした。メイナードのデッキは《王神の贈り物》を用いた「コンボ」デッキから白青のミッドレンジ・デッキに変わり、除去と《賞罰の天使》のようなゲーム後半に活きるカードが投入されました。これに対しマンフィールドは、素早いスタートを切ります。4枚目の土地が引き込めなかったものの、彼は2体の《光袖会の収集者》でプレッシャーをかけ続け、大量のカードを引き込みました。そして最後は、《顕在的防御》がゲームを終わらせるのに必要な2点を彼にもたらしたのでした。
マンフィールドの勝利に会場は沸き上がりましたが、その直後にさらなる盛り上がりが待っていました。メイナードとマンフィールドの両者は、決着の第5ゲームが始まる前にハイタッチを交わしています。そして試合後、メイナードはさらに感動的な瞬間をもたらしました。彼は飛び上がるように席を離れ、テーブルを迂回すると、優勝が信じられないという様子で座っていたマンフィールドを温かく抱きしめたのです。
パスカル・メイナード、プロツアー準優勝おめでとう。そしてセス・マンフィールド、プロツアー『イクサラン』王者はあなたです!
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